連載:第20回 リーダーが紡ぐ組織力
誰かの真似では本物のリーダーになれなかった。15年貫いた社長の覚悟が「自律型組織」へと成長させた
「理念に基づいた行動をしている社員は、業績も良かった」360度評価の結果と業績を照らし合わせた時、それがリンクしていることに驚いたと話すのは、広島県で医療機器の商社や福祉サービスを手掛ける、株式会社ミクセル代表取締役の島幸司さん。2008年の創業時から重視してきたのは、理念の「共感」。一時は多くの退職者を見送るも、それを貫き通し、現在は常に前向きに挑戦し、「社長が居なくても業務の90%は回る」というほど、自律的な組織に生まれ変わっています。その裏にあったリーダーとしての苦悩、組織改革の過程について伺いました。
株式会社ミクセル
代表取締役 島 幸司さん
1973年長崎県五島市生まれ。県立広島大学 大学院 経営管理研究科卒。経営修士(MBA)取得。2008年に株式会社ミクセルを創立。大学病院などの研究施設向けに、研究用機器や試薬の販売、各種コンサルティングなどを手掛ける「研究支援事業」と、運動特化型デイサービスや福祉用具のレンタルなどを取り扱う「ヘルスケア事業」を展開。GPTW Japan社の「働きがいのある会社」小規模部門(従業員100名以下)にて、広島県の優秀企業5社に2年連続で選出された。従業員数は37名(2023年4月現在)。売上高は13億3,000万円(2022年3月期)で、毎年10%以上の伸びを見せている。
“完璧なリーダー”にならなくては…理想に囚われていた社長。社員の一言で目が覚めた
――貴社の創業の経緯について教えてください。
島幸司さん(以下、島): 創業前は医療機器の商社で執行役員を務めていたのですが、リーマンショックの影響で会社が倒産危機に追い込まれてしまったんです。なんとか社員の雇用を守らねばならない…そう決意し創業したのが、株式会社ミクセルです。前の会社から12名のメンバーがついてきてくれました。
前の会社では仕事のやりがいを感じていた一方、組織には多くの課題がありました。だからこそ、自分が創業した会社ではそれらを反面教師として、最初から組織づくりをしていこう、そう決めていました。 会社が大きくなってから方向転換するのは難しい と思ったんです。
――具体的にはどのような問題があったのでしょうか?
島: 耳障りな意見は遠ざけられてしまいがちで、思ったことを発言しやすい環境ではなかったですね。また、「稼ぎたい」意欲のある社員は多かったものの、個人プレーで競い合いになってしまいがちで、社内がいつもピリピリした雰囲気。仲がいいとは言えない状況でした。
このような問題が起きていた理由の一つに、「我々はどうあるべきか」という姿が明確ではなかったことがあるのではないかと考え、 私の思いを「経営理念」という形に落とし込んで創業時から提唱。 そして「人間は言われたことをやるより、自分で考えて行動するほうが楽しい」という私のスタンスから、 自律型組織を志したい と考えました。理想の会社としては「女性社員でも男性社員でも、子供を抱っこして連れてきてくれるような、安心できる会社にしたい」とイメージしていました。
ただ、最初からうまくいったわけではまったくないんですよ。理念に共感してくれた社員たちが自律的に動けるようになったのはここ2~3年。会社の在るべき姿を決めたとしても、それを実現するまでには多くの困難がありましたし、これまでの道のりは決して楽なものではありませんでした。
振り返ると、何よりも自分自身がリーダーとして未熟だったのではないかと思うんです。創業当時、自分についてきてくれた社員と会社を守るためにも、 「理想のリーダーにならなくてはいけない」「弱みは見せてはいけない」といった強迫観念に近いものを持っていました。
そのため、「理想のリーダー」「経営者の在るべき姿」を探し求め、さまざまな会社の経営者をベンチマークし、気になった会社には直接話を聞きに行っていました。たとえば、エネルギッシュで強いリーダーシップを発揮し、人を動かせるリーダーってカッコいい。自分もそんな風になりたいと真似してみたのですが、うまくいかないんですよね。その会社はうまくいっているのに、私がやっても人を動かすことができない。ほかにも、うまくいっている会社の経営者のリーダーシップを取り入れ、試行錯誤を繰り返しました。しかし…どれもいい方向にいかないんです。
そんな自分が間違っていたことに気付かされたのは、ある社員に言われた言葉です。
――どのような言葉だったのでしょうか?
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