連載:第39回 成長企業 社長が考えていること
3世代3分野で偉業を果たした中小企業。 再現性しかない「勝てる組織」の絶対条件
通信電線市場でトップシェア、医療用カテーテルチューブの供給量も国内トップの企業が次の新規事業として選んだのは……キャビア!? その金子コード株式会社は、今やグループ全体で年商70億規模の企業へ成長しています。しかしその偉業の裏には、銀行からの融資を断られるほどの「苦難の10年間」があったのだとか。「会社が潰れず済んだのは、新規事業があったおかげ」と語る3代目社長の金子智樹さんに、経営危機を乗り越えるまでの道筋と、同社の「失敗を恐れない組織」を作り上げてきた過程について伺いました。
金子コード株式会社
代表取締役社長 金子智樹さん
大学卒業後の1990年、祖父の立ち上げた金子コード(株)に入社する。営業として成績を残したのち、1994年シンガポール現地法人の初代社長へ就任。中国生産拠点とあわせた海外事業の責任者としてグローバル化に尽力する。2005年、38歳で同社代表取締役社長に就任。経営革新と新規事業に取り組み業績を上げ続けている。
10年赤字だった新規事業が「苦難の10年」の救世主に
――貴社は、電話機コードをはじめとした電話線事業を祖業とし、現在は国内トップの医療用カテーテルチューブをはじめとするメディカル事業を主軸として、年商はグループ全体で約70億。今もさらなる成長を続けています。そんな貴社は、2015年から新規事業としてキャビアづくりを行っているそうですね。
金子智樹さん(以下、金子):キャビアの生産は、中小企業である当社にこそ勝ち目があるビジネス だと踏んだためです。キャビアは、富裕層向けの高級品として利益が望めるにも関わらず、国産の生キャビアを取り扱っている企業はほとんどありません。
その理由は、チョウザメは採卵できるようになるまで7~8年かかる上、稚魚から飼育するのが難しいから。だからこそ、他企業の参入が難しく、参入したとしても簡単には真似できません。また私が調べた当時、大手企業における社長の平均在任期間は6.2年というデータがありました。株主をはじめとするステークホルダーは、いつ利益が出るか分からない事業を長い目では見てくれませんから、成功までに時間を要する事業なら大手企業の社長は簡単には手を出さないだろう、と。
実は日本に出回るキャビアの90%以上は輸入品であり、長期保存のために保存料や大量の塩が添加されています。「国産のフレッシュなキャビアを作ることができれば、日本の食文化とともに世界に届けられるはず」と考えたことが、当社がキャビアの製造に踏み切った理由です。
ブランド名は「ハルキャビア」。生産拠点のある浜松市春野町にちなんで名付けられた。日本有数のホテルやレストランで使われるほか、海外にも輸出されている。2019年6月には、イギリスで開かれたポロ競技の世界大会で、世界の著名人に提供された。
――既存事業と全く異なる事業を選ばれていますね。
金子: 既存事業に縛られていると、ビジネスチャンスを見過ごしてしまうからです。ものすごいスピードで世界の技術革新が進んでいる今の世の中で、既存のノウハウにこだわっていては視野が狭すぎます。
現在、チョウザメの養殖数は2万尾を超え、キャビアの出荷量は、1tを目指しています。ただ、当初は“生みの苦しみ”だらけでした。はじめての養殖で1,000尾のチョウザメを全滅させてしまったことも。設備投資にも多額の資金を投入し、いくつもの困難にも遭遇しました。
――本業が好調なのに、なぜこれほどのリスクを追ってまで新規事業にチャレンジされるのでしょうか。
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