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連載:第6回 自社だけで悩まない!専門家に相談してみよう

「今どきの社員はやる気がない」と悩む経営層がすぐやるべきこと

BizHint 編集部 2021年3月31日(水)掲載
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BizHintは経営層を中心とした読者アンケートを実施。その中で従業員のモチベーション維持・向上について質問をしたところ、「悩んでいる」と回答した管理職の方は、約85%にも及びました。従業員と言っても、能力や想い、抱えている事情、仕事に対する熱量は人それぞれ。そこで本記事では、組織人事マネジメントのエキスパートである曽和さんと中西さんとのお二人に、「モチベーションの悩み」の正体と、読者から寄せられたお悩みの解決方法について語っていただきました。

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曽和 利光 さん

リクルート、ライフネット生命等で人事・採用部門の責任者を務め、主に採用・教育・組織開発の分野で実務やコンサルティングを経験。人事歴約20年、これまでに面接した人数は2万人以上。2011年に株式会社人材研究所設立。

中西 一統 さん

企業人事一筋21年。P&G日本で人事をスタート。グリーでは急成長、グローバル化の一翼を担う。ファーストリテイリングではユニクロ米国人事責任者、豪州人事責任者等を歴任。現在は外資系人事ディレクター。

Q1:自分に自信のない部下。どうやってやる気にさせると良い?

A:「フロー状態」を作り出してあげることを意識してみては?

中西: 自信のない従業員は、 のめり込むものがなかったり、褒められるなどの成功体験をあまりしていない方が多い のではないでしょうか。

私の前職であるユニクロにもいろんな従業員がいました。中には「お金がもらえたらいいや」や、「お金はどうでもいいから近所だから来ている」という人も。しかし、自らスキルアップのために学んだ結果、新しいことができるようになったり、自分のアウトプットだけじゃなく店舗の経営や計画にも影響を与えられるような成功体験を積むと、どんどん人は変わっていきます。実際の事例をたくさん見てきました。

曽和: ミハイ・チクセントミハイというアメリカの有名な心理学者がいるのですが、彼が提唱する “フロー”という心理状態 があります。“フロー”とは、 「のめり込んでいる状態」 のこと。

このフローを生み出すためには、 4つの条件 があると言われています。

その中でも、4つめの「外のノイズをシャットアウトして集中できる環境」について注目してみましょう。

この環境をつくるためには、適度な忙しさも必要。ブラック企業と言われてしまうかもしれませんが、仕事漬けの会社ってみんなやる気があるんですよね……。チクセントミハイがそういう言い方をしているわけですが、自分に自信のない部下には、 外のノイズをシャットアウトして集中できるような適度な忙しさも大事 なのかもしれないな、と。

適度な難易度の仕事を、フィードバックを適切に受けながらこなしていくうちに、いつの間にか夢中になっていく…というサイクルが働いていたら、そもそも「モチベーション」という概念自体が消えますよね。 夢中になるというのは“忘我”。まさに”フロー”の状態 なのです。

Q2:自発的に学んだり、根拠を探るべく深く調べたり、率先して業務の効率化を考えたりしない部下。どう対処すれば?

A:自発性が高まる環境づくり&自己効力感を高められるようなサポートが◎

中西: 例えば、同じ時給で働いているスタッフがいるとします。一方は、レジの打ち方を教えられた通りにボタンを押しているだけ。もう一方は、お客様の応対をしながら、今はどれが売れているのかをチェックしたり、「欠品があったら足しておかないと売り上げ損するかも」とチェックを入れたり。おそらく 後者のほうが仕事は大変ですが、自発性は高まっていくでしょう。 そういう働きができるよう、環境を整えるというのは一つの手です。

ユニクロでは、ビジネスの数字や結果といった店舗の状況を全員が見られるようになっています。誰もがまるで店長のように、このお店が今どれだけ売れていて、どの商品のどのカラーがどれくらいお客様に好まれているのか、知ろうと思えば調べることができるのです。

曽和: 別の軸で考えると、たまに自分のプライドを守るために失敗したくないっていう人がいるんですよね。あえて難しいものにチャレンジしなかったり、わざと手を抜いたり。これを 「セルフハンディキャップ行動」 と言います。この行動から脱してもらうためには、「なんかできそうな気がする」という根拠のない自信をつけてもらう、つまり 「自己効力感」を高めてもらうことが有効 です。

具体的な方法としては、カナダ出身の心理学者であるアルバート・バンデューラの 「自己効力感4要素」 というものが参考になります。

1〜3が本筋だと思うのですが、おもしろいのは4。4の「情動的な喚起」とは、例えば“ロッキーのテーマを聴くとやる気になる”というような、 ある意味「自発的なやる気」のハッキング ですね。

これはオフィス環境にも活用できます。仕事中に流す音楽や、パーテーションのありなしも。「ないほうがオープンだよね」っていうけれど、パーテーションありのほうが生産性が上がることもあります。席順なども影響があると思います。組織やメンバーに合わせて適切な環境を整えてあげることが大切です。

Q3:メンタルが弱いメンバーに対して、どのようなサポートやケアをすれば良い?

A:その人のストレスと感じる部分を一緒に見つけだしサポートを。さらに伸びしろを見つけてあげよう

中西: まず病気かどうかを見極めましょう。心療内科などに通院されている方に対してがんばれって言うのは違うので、そこは専門医にお任せしてください。

一般的にメンタルが弱い人に対してのマネジメントですが、「自分の中でどういうプレッシャー・ストレス・状況に弱いかが認識できておらず、自身をコントロールできない」ということへの対処だと、私は思っています。なので、 その人の苦手なところやストレスに感じるところを一緒に見つけ出し、負担にならないようサポートしてあげる ということが理想です。一方で、ストレッチをしてあげないと人は成長しないので、どこが伸びしろか、どこまで伸びるかを見極め、それに合った課題を出すことが上司の力量じゃないかなと思います。

曽和: 中西さんのおっしゃる通りで、管理職が部下の能力に見合った仕事を与えられているのかが重要です。そのためには、本人のメンタルがどの程度強いのか弱いのか、アセスメントする必要もあるのではないかと思います。

Q4:自分の年齢よりはるかに若い世代や、年上のシニア世代のマネジメントって難しい…

A:若い世代には「言語化」を意識、シニア世代には“ジェネラティビティ”を活かしたミッションを

中西: 私もよく「おっさんからすると」と若い子に言ってしまうのですが(笑)。

「最近の若いもんは」っていう話って、結局は 「自分たちと違う価値観とか経験を持っている人たちを理解できているのか」 ということ。「自分はこうやって育ってきたのに」と思い続けていると、そういう人ばっかりが育ってくるのでそれはやめたほうがいいですよね。職人的な育ち方してきた人ってそういう教え方を繰り返していると思います。時代の常識に合わせた教え方に、自分たちが変わっていく努力をしないといけません。上に立つ人や先輩など教える側の人が、引き出しを増やしながらアプローチを変えていく必要があります。

曽和: 若い層は 「ローコンテクスト」 が進んでいます。阿吽の呼吸が通じないとか、共通基盤が変わってきていると感じることも多いです。そのため、なんでも言語化していくことが今後のマネージャーの役割として重要。ローコンテクスト化に伴う言語化は必ず取り組むべきです。

中西: 一方、シニア世代のマネジメントでは、「上司だから全部できなきゃいけない」と気負っちゃてしまうようなマネージャーは、最初苦労することが多い気がします。長く現場を経験してきた年配層は仕事ができるのはわかっていますよね。その場合、無理にマネジメントするのではなく、その人たちに気に入ってもらい可愛がってもらうほうがうまくいきます。型にはまった店長像や上司像とは違うような、その人なりの生き方をうまくやる人が成功する、そんな印象があります。

また、シニア世代は「金銭」だけでモチベートし続けるのが相当難しい。 「なんでその人にいてほしいのか」というところを、本人に伝えられていますか。 例えば、培ってきた知識だったり人脈だったりを会社が必要としているなら、そこに対してリスペクトは必要でしょうし、評価しないといけないですよね。

曽和: “ジェネラティビティ”という概念があるのですが、 人間は50代になってくると「俺が、私が」ではなく、後進に対する育成欲求が出てくる時期 なのです。なので“ジェネラティビティ”を活かしたミッションを与えるといいですね。例えば、組織での育成係やメンタリングなどのミッションをつくってあげるとすごく機能するし、やりがいを持ってくれる人はたくさんいるのではないかと思います。

「モチベーションの悩み」の正体とは?

中西: 上司が考えるモチベーションの悩みとは、言い換えると 「部下のアウトプットが自分の期待通りに出ているか否かではないか」 ということなのかもしれません。思った通りの結果を導けないから悩む。それだったら私もよく悩みます。

曽和: 実際モチベーションが高くても間違っていることを一生懸命やられたら、マイナスなことが起こるじゃないですか。 モチベーションが高まったら業績が上がるなんて単純なことは、まずない。 ただ、モチベーションが高まると行動可能程度は高まります。とりあえず部下が自ら動こうとするところが、モチベーションの効果ではないでしょうか。

モチベーションには、 “内発的動機付け・外発的動機付け” の2つがありますが、組織マネジメントの世界では、外発的動機付け寄りの意味で使われることが多いです。なぜなら、コントロールが利くから。

一方で、内発的に動機づけられた行為に対して、外発的な動機づけを行うことによって、モチベーションが低下する現象 「アンダーマイニング効果」 というものがあります。

一例として、2つのケースをご紹介します。

  1. 無償で働いていたボランティアに、より頑張って欲しいと思い給料を与えると、やる気が低下し報酬なしでは働かなくなる
  2. 算数がおもしろいと思っているからやろうとしている子に、「100点とったらおもちゃ買ってあげるね」と言うとおもちゃのためにやり始めてしまって、算数がおもしろいと思ってやっていた気持ちが消えてしまう

短期間にやる気にさせるには「外発的動機付け」も悪くないのですが、やりすぎると「内発的動機」を蔑ろにしてしまうので、注意が必要ですね。

中西: 外発的動機付けに頼りすぎると人は育たないんですよね。 結局は内発的動機付けが大事。 自分の中にちゃんと意味を見つけてコミットして働くということをしないと、良い人材に育ちません。

曽和: モチベーションに対し、管理職は全ての責任をとることはできません。採用のミスや、適材適所の配置ミスも含めて複合的に考えるべきだと思います。つまり、モチベーションは管理職だけでなく、 会社全体で高めていくべきもの ということです。

(イラスト/沼田光太郎 対談コーディネート/徳田琴絵)

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