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連載:第8回 IT・SaaSとの付き合い方

「昭和のまま継がせたくない」、娘へ業務承継するために母が行ったこと

BizHint 編集部 2020年4月15日(水)掲載
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地方の中小企業にとってIT導入は課題の一つ。長野県御代田町でレタスの生産・販売を展開する有限会社トップリバーでは、都度現金で精算するなど古くて非効率な“昭和”のやり方で給与計算や財務会計を行っていましたが、クラウドサービスに移行して経営の自動化を実現しています。改革には長野県上田市に拠点を持ち中小企業の「IT伝道師」として活躍するつづく株式会社代表の井領明広さんが伴走者として携わったそう。地方企業のIT化を成功するためのヒントに迫ります。

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有限会社トップリバー
専務 嶋崎田鶴子さん

「儲かる農業」をビジョンに掲げ、実践する農業生産法人トップリバーで創業期から専務として給与計算や財務会計、ITシステム導入などを担う。トップリバーは外食産業やスーパーなどの実需者と年間契約を交わすことで確実に利益を出せるビジネスモデルを構築。新規就農者の育成にも積極的に取り組む。


つづく株式会社
代表 井領明広 さん

大学卒業後、株式会社NTTデータイントラマートで、金融・製造業向けシステムコンサルティングに従事。後に、freee(フリー)株式会社でクラウドサービスの導入支援コンサルタントを経験。2017年に「つづく株式会社」を起業し、現在は中小企業の IT 伝道師 として講演など精力的に活動。noteに投稿した「地方でSaaS導入支援会社を起業して3年、階段から降りられなくなった」は大きな話題を呼んだ。https://note.com/iryo


売上15億、従業員100人、このままでは業務承継できない

井領明広さん(以下、井領): まず、改めて御社の事業について概要とどんなビジネスモデルなのかをお伺いできますか?

嶋崎田鶴子さん(以下、嶋崎): トップリバーは、レタスやキャベツ、白菜などの高原野菜を農家から仕入れて業務用に販売しています。創業は2000年と業界では後発ですが、現在年間約100万ケースを外食チェーンなどに卸しています。売上は15億、従業員は繁忙期には100人ほどになります。長野県の佐久地域では比較的大きめの農業法人です。

私は専務としてずっと会社の会計やシステムを担当してきました。社長である夫は野菜づくりやビジネスモデルについては造詣が深くても、会計やシステムには無頓着だったので自然と私が担当することになりました。中小企業ではよくあるパターンだと思います。

IT導入以前は労務管理や給与計算などすべて手作業で確認していて、毎月100人分の経費精算は本当に大変な作業で……。社内のルールも特になかったので、全員からレシートや領収書の束をもらい、それを経理が一つ一つ入力していく流れでした。農業では収穫時、早朝から作業が始まります。メンバーの朝食や休憩の時のお菓子、飲み物をみんなで買うことも多いので少額の精算がたくさんあるんです。

毎月の締め日には金額が合わず……。たった1円の差額が合わなくて、帳簿を合わせるのに丸一日かかったこともあります。

給与計算も大変でした。出勤や退勤は紙に書いて自己申告する仕組みだったのですが、打刻を忘れたり申告した時間が間違っていたりすることも多く……。しかも、弊社は茨城の農業法人に人を派遣しているので、その方たちからは別途勤怠の連絡をもらわなければなりませんでした。

井領: 紙での精算が当たり前の中でクラウド導入はなかなか大きな決断だったと思います。導入を決めたきっかけは何だったのでしょうか?

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