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連載:第18回 人材育成 各社の取り組みを追う

自動車業界の大変革期に挑むSUBARUの人財育成改革

BizHint 編集部 2021年8月4日(水)掲載
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「100年に1度の大変革期」といわれる自動車業界。株式会社SUBARU(以下、SUBARU)では人財育成改革の一環として、2019年から新卒社員を対象にオンライン人財育成サービス『グロービス学び放題フレッシャーズ』を導入しました。人事が直面した課題と導入後の成果とは? 人事部担当部長の井野岡大さん、人事部人財マネジメントグループ鈴木雄太さんに聞きました。[sponsored by 株式会社グロービス]

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内向きだった人財育成を変える

井野岡大さん(以下、井野岡): 自動車業界は「100年に一度の大変革の時代」と言われており、まさにSUBARUもその渦中です。とりわけ「CASE」と呼ばれる「Connected(コネクティッド)」「Autonomous(自動運転)」「Shared/Service(シェアリング)」「Electric(電動化)」の新潮流が押し寄せ、業界外からの参入も増えるなど、競争が激化しています。

SUBARUは業界内では比較的小さなメーカーですが、創業以来「SUBARUとしてどう生き抜くか」を考えてきた結果、「人を中心としたクルマづくり」で「安心と愉しさ」を提供することにたどり着きました。単純に車で移動するだけではない“愉しさ”を皆様に評価いただき、ここ10年で販売台数50~60万台から100万台に、売上1.5兆円から3兆円へと大きな成長を遂げています。

次の100年に向けて、単なる移動手段を超えた独自の価値をどのようにして届けるか。メーカーとしての生き残りが最大の課題となっています。

同時に人財育成にも課題がありました。これまではいわば“内向き志向”で“画一的”な統制型の人財育成となっていました。しかし、従来と同じ教育方法では変化に適応できず、世の中から取り残されてしまう。

それは既存の社員だけに求められるものではありません。これから会社を担う内定者・新入社員にも変化への適応力を期待しており、内定時からどのようなアクションが必要かを社内で議論してきました。

新入社員研修、課題は課題図書とビジネスマナーのみだった

――これまでの新入社員研修の内容はどのような内容だったのでしょうか?

鈴木雄太さん(以下、鈴木): SUBARUには毎年約270名の新卒総合職社員が入社します。メーカーということもあり、8割が自動車エンジニア、1割が航空エンジニア、残り1割が事務系社員です。

内定者時代には勉学を最優先してもらいたい思いから、2つの必須課題のみを与えていました。

一つは新聞やテレビなどをチェックして「自動車業界の動向やSUBARUを取り巻く環境についてニュースを通じ知り、広い視点を養う」こと。もう一つは、ビジネスマナーに関する課題図書を精読し、「社会人として最低限の知識やマナーを身につける」ことです。

入社後は2週間、座学中心の新入社員研修を集合形式で実施していました。更に、メーカーですので全員3か月間の工場での生産実習もカリキュラムとして用意しています。

研修の内容は主にビジネスの全体概要や業務で必要な知識、社内の制度等を学ぶ「インプット型」の研修です。加えて、2019年からはグローバルでビジネスを行うための視点醸成として「グローバルマインドセット研修」を実施しています。

コロナ禍の2020年以降では、集合型研修が難しいため、新入社員研修はオンラインでのプログラムに変更し、期間も1年間としています。短期集中型で学ぶのではなく、現場での実践を継続的に振り返るアクションラーニングスタイルをとっています。

従来の新入社員教育では「ビジネス視点の思考力」が足りなかった

――従来の新入社員研修ではどのような課題感を持っていたのでしょうか?

鈴木: これまでのSUBARUの新入社員研修は、社内の知識は十分学べるものの、世間一般で必要とされるスキルセットは盛り込めていませんでした。変化がめまぐるしい時代に新しいものを創造するには、ベースとなるビジネススキルが必要です。特にビジネス視点の思考力の育成が必要だと感じました。

井野岡: 実は、内定者からも「入社までに何を身につければいいですか?」と質問があがっていました。つまり、彼らはもっとビジネスの基礎知識を身につけたい。書籍を渡して「読んでおいてね」と伝えるだけでは「期待に応えられていない」と感じたんです。確かに、課題を与えるだけでは理解度を追えませんし、果たして世の中的にも適切な方法かも検証できていなかった。

内定者から新人時代に身につける知識が業界の理解だけではなかなか立ち行かなくなります。論理思考を鍛えたり、データや情報分析能力なども必要になってきます。ビジネスにおける基礎体力を養う期間だと思うのです。

そして、 今や新入社員はデジタルネイティブ世代です。本で学ぶよりも、スマホで手軽に学べる方が合っているのではとさまざまなサービスを探していたところ、「グロービス学び放題フレッシャーズ」の存在を知りました。グロービスの新入社員向けのコンテンツで、スマートフォンでもコンテンツ視聴ができるものです。カリキュラムもコンパクトにまとまっていて、隙間時間に効率的に学べることから、2018年に導入を決め、2019年度の新卒社員の内定者研修から導入しています。

新入社員に起きた変化

――導入前後で、新入社員にどのような変化が起きたのでしょうか?

井野岡: まず、「グロービス学び放題フレッシャーズ」のお互いの学習状況を可視化できる点がモチベーションアップに寄与しました。内定者のアンケートでも「ランキング機能で自分の立ち位置がわかり、闘争心に火がついた」「進捗度合いがわかってやる気が起きた」とプラスの変化があらわれました。

入社後も「研修の学びが多い」「満足感が得られた」などポジティブなコメントが多いですね。

鈴木: 加えて、私たち人事がそれぞれの受講状況を確認できるのは便利ですね。以前は「課題図書どうでしたか?」と聞いても、実際に全員が読んだか、内容を深く理解しているかを人事側が推し量るのは難しかった側面があります。学習状況の進捗が分かるのは人事側としても嬉しい限りですね。定期的に「学習の進み具合はどうですか?」とプッシュ通知を送ったり、内定者サイトを使って学習コースのポイントを説明したりと、内定者とのタッチポイントも生まれました。

井野岡: 2019年から新入社員教育を根本的に見直してきたため、複合的要因はあると思いますが、内定者・新入社員研修を通して、仕事に対するモチベーションやエンゲージメントも高くなってきている感触はあります。

――特に好評だった「グロービス学び放題フレッシャーズ」の特徴などはありますか?

井野岡: ビジネス思考の基礎となる『論理思考入門』は好評です。他にも、マーケティングやアカウンティングといった専門的なコースを学びたいという声もあがっています。

井野岡: 「グロービス学び放題フレッシャーズ」があることで、内定時から学びの風土ができたのはよかったと思います。入社後もグロービスのビジネスナレッジを動画で学べる「グロービス学び放題」が受講できますので、一気通貫で学べる仕組みが整いつつあります。

今後は自社の内定者サイトとも連動させて、入社前から学び合う文化と関係性を作ることが課題です。

鈴木: (受講活性のために)プッシュ通知を使って全体へのコミュニケーションをとりながら促進はしていますが、現状は全体に対しての問いかけにとどまっています。もっと個別の学習状況を踏まえて1on1のコミュニケーションをするなど、一人ひとりの学びを促す働きかけができればと思います。

鈴木: 「グロービス学び放題フレッシャーズ」のコメント機能も、もっと活用の余地があると思います。今はコロナで関係性が希薄になりがちですが、コメントが活発になれば内定者同士の繋がりが強まり、入社後のコミュニケーションもスムーズになります。

井野岡: 将来的にスバルの社内でも従業員同士が自然と学び合える文化を作っていきたいと思っていますので、内定の時期からそういった環境を作っていきたいです。サントリーさんの「寺子屋」や、ソニーさんの「PORT」のような自律的な学びの場が作れたら理想ですね。

また、SUBARUでは、2021年4月から社内の人事制度、賃金制度を刷新しました。人事も「自律・個・共感」の3つキーワードを掲げ、抜本的な人財育成改革に取り組んでいるところです。

「自律・個・共感」をSUBARUが掲げる理由

――「自律・個・共感」。この3つのキーワードについて詳しく教えてください。

井野岡: まず「自律」ですが、今の時代はモノを作れば必ず売れる時代ではありません。変革の時代には、自ら学び様々なことに自発的にチャレンジする精神が不可欠です。そのためにも自分で考え行動できる人財を育てたいと考えています。

「個」も同様です。かつての時代は、教育も研修も一律的でよかったかもしれませんが、これからは「脱・一律」の時代です。多様性や価値観など、個人の個性を伸ばすことが、イノベーションや変革につながると考えます。

最後に「共感」ですが、「自律」と「個」の成長は、会社や従業員、商品への「共感」が前提です。

他社の方と話すとよく「なぜ御社の社員はそんなにSUBARUが好きなんですか?」と聞かれるほど、うちには「SUBARU」愛が強い社員が元々多いんです。一方で、若い世代は価値観が多様化していますが、私たちSUBARUのものづくりへの思いは必ず共感してもらえると信じています。共に歩み、共に成長する。それがよりよい強い組織を育みます。

――SUBARUらしさは、どのような点にあるとお考えですか?

井野岡: 日頃から感じるのは「人を大事にする会社」だということです。「人を中心としたクルマづくり」を追求してきた結果、普段の仕事でも同僚や仲間を大事にする気持ちや、気遣い、思いやる気持ちが染み付いているように思います。

今後も一人ひとりの個性を大切にし、自分で考え創造できる人を育て、「個の成長を後押しする」ことが人事のミッションです。

鈴木: 同じ方向性を目指すときの一体感はとても強いと感じます。SUBARUの提供価値を表す「安心と愉しさ」は、2011年に制定されました。これは先代社長の吉永が社員と一緒に考え生み出したものですが、この言葉ができてから、社員が一斉に同じ方向を向くようになり、団結が深まったと感じます。

ですから、人事の改革のキーワードにも「共感」を掲げました。強い一体感が会社全体を動かすエンジンになると信じています。

井野岡: 自動車業界は今後も苦しい戦いが続きますが、「安心と愉しさ」を突き詰め、お客様の笑顔を作る会社でありたい。それこそがSUBARUらしさです。

そのためにも、お客様のニーズ、世の中の変化を感じ取り、ビジネス思考を持ちながら商品に落とし込める人財が求められています。これまでの常識に捉われるのではなく、常に自ら変化し続け戦い抜ける人財を育てていきたいですね。

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