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組織・チームワーク

2019年4月12日(金)更新

飲食業界が人手不足である理由と改善策を徹底解説

Logo markBizHint 編集部

中小企業を中心に広がる深刻な人手不足ですが、飲食業界もその例外ではありません。人手不足は日本が抱える構造的な問題であり、移民を受け入れない限り日本の労働人口は減少する一方です。業績は好調なのに人手不足が原因で廃業するという「人手不足倒産」という言葉も誕生しています。こうしたなか、とくに根深い人手不足の問題を抱えるのが飲食業です。本記事では、飲食業で深刻化する人手不足の理由や改善策について解説していきます。

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飲食業界における人手不足の現状と原因

深刻な人手不足に悩まされている飲食業界ですが、その実情はどうなっているのでしょうか。その原因とともに解説していきます。

人手不足の現状

人手不足について、飲食業界ではとくに深刻な状況にあることがうかがえます。

帝国データバンクが発表した「人手不足に対する企業の動向調査」内、業種別の従業員の過不足状況では、飲食店が労働力として依存することが多い非正社員について、85%にせまる企業が「不足」と回答しています。他の業種と比較しても非正社員の人手不足は明らかです。

【出典】帝国データバンク

正社員についても深刻な状況です。飲食店の場合、正社員が不足していると回答した割合は、2017年度は53.1%で28位でしたが、2018年度は9.2ポイントも増加して17位に上昇しました。

飲食店では非正社員だけではなく正社員についても人手不足が深刻な状況にあり、状況はどんどん悪化しています。

【参考】帝国データバンク

人手不足に陥っている原因

とくに非正規雇用社員については、ほかの業種より深刻な人手不足に陥っている飲食業ですが、こうした状況を生み出している飲食業特有の原因はどこにあるのでしょうか。

労働環境の悪さ

外食産業特有の要因として劣悪な労働環境があげられるでしょう。

多くの飲食店は週休2日制を採用していません。統計でも1ヶ月の月平均休日数は4日から5日の割合が最も多くなっています。1週間あたりの労働時間も店長からスーパーパイザーと立場が上がるにつれて増加する傾向にあり、非正規雇用社員でもこうした傾向は変わりません。

業務内容も決して楽ではないのが実情です。深夜勤務や、作業環境によっては高温にさらされ続ける、同じ姿勢の単調作業が続くといった、体力的にきつい場合もあります。客商売となるため、ときにはクレーム対応も求められることもあり、精神的にも決して楽な仕事ではありません。

深刻な人手不足は、現場の従業員に穴埋めすることを強いるためさらなる労働環境の悪化をまねき、人材流出につながるという負のスパイラルも生み出しています。

【参考】農林水産省食料産業局:「外食・中食産業における 働き方の現状と課題について」
【参考】厚生労働省:「飲食店営業(料理店)の実態と 経営改善の方策」

給与水準の低さ

飲食業界の給与水準は、ほかの産業と比較した場合最も低くなっています。

厚生労働省の「平成 29 年賃金構造基本統計調査の概況」によると、主な産業別で賃金をみた場合、男女ともに「宿泊業,飲食サービス業」が最も低いという結果がでました。

また、非正規雇用社員についても、最低賃金に近い1,000円以下の金額で募集していることが多くみられます。

その要因として、客単価の低迷があげられるでしょう。飲食業界では、長らく客単価を上げることができず、客数増で売上を維持してきた経緯があります。客単価を上げることは客離れを招く恐れがあり、メニューの値上げに二の足を踏んできたのです。これでは、増加した客数に対応するために仕事量が増えて労働環境は悪化し、一方で売上は変わらないため人件費を上げることは難しくなります。

近年では客数も客単価も上昇し、売上が増加している傾向も見て取れます。今後の人手不足解消のためには、従業員に適切に還元するため、給与の見直しが求められるといえそうです。

【出典】日本フードサービス協会
【参考】厚生労働省:「平成28年民間給与実態統計調査」

飲食業の人手不足を解消する方法

劣悪な労働環境のなか、給与水準も低いのであれば深刻な人手不足は解消できません。しかし、飲食業の長期的な成長戦略は、人手不足の解消なくして描くことはできません。ここでは、人手不足を解消するための解決策について解説していきます。

労働環境の改善

まずは労働環境を改善することを取り組みましょう。SNSが普及した現在では、商品やサービスのクチコミだけではなく、働く環境のクチコミも簡単に拡散します。一度拡散してしまった悪いクチコミはなかなか元には戻せません。

それでは労働環境の改善はどのように進めればよいのでしょうか。

一般的には、まず従業員とコミュニケーションを取ることが重要となります。従業員がどんな不安を抱え、どのように改善してほしいのか、こうした声を把握することなしに労働環境の改善を進めてしまうと、場合によっては無意味になるだけではなく、ときにはマイナスの効果をもたらすことさえあります。

雇用に関する問題点やニーズをしっかりと確認し、そのうえで次のような改善策を実行に移していきます。

多様な働き方の導入

非正規雇用社員が多い飲食業とはいえ、知らず知らずのうちに労働時間が固定的になり、ワークライフバランスが取りづらい労働条件になっているかもしれません。こうした場合は、従業員のニーズを最大限に反映させ、柔軟性の高いシフト管理を実現するようにしてください。近年ではシフト管理アプリも複数登場しており、従業員自身が自分のシフトをアプリから登録できる仕組みを簡単に構築できるようになっています。

正社員については、後述する業務効率化を前提に、残業の抑制や有給休暇の取りやすい環境の整備も可能な範囲で取り組んでください。近年では、給料だけではなく多様な働き方ができるかどうかが、勤務先を選ぶ際に重視される傾向にあります。

【関連】働き方改革を推進して生産性向上に繋がる「働き方」とは?/BizHint

働きやすい職場環境の提供

長時間の立ち仕事で体力的につらい、厨房での夏場の仕事は暑くて過酷、こうした現状があって従業員が苦痛に感じているようであれば、できる限り改善するべきです。休憩場所に椅子を置くことや、辛い仕事を交代制にするだけで従業員満足は向上するかもしれません。

少なくとも従業員に寄り添って不満やニーズを聞き出し、それを改善しようとする姿勢を見せるだけでも、一定の効果が期待できるでしょう。

値上げを前提とした賃金アップ

食材や人件費は高騰し原価は上がる一方、しかし客単価はあげられないと嘆いている飲食店経営者も多いのではないでしょうか。たしかに安易な値上げはいとも簡単に客離れを引き起こします。

その一方で、値上げをしても客離れを抑制し売上を向上させる例も少なくはありません。その差は、経営努力にあるといえます。たしかに単なる値上げは顧客に受け入れられません。商品開発やプロモーション、顧客とのコミュニケーションといったトータルな経営努力が実を結び値上げは実現するのです。

2019年10月、値上げをする大きなチャンスが訪れます。消費税の増税がいよいよ迫ってきました。メリハリのある値上げをおこなうことで、収益力を向上できる可能性があります。例えば、650円で販売している目玉商品は増税後も価格を据え置きにし、100円のトッピングを150円に値上げすることで、メニュー全体の実質的な値上げを実現するという方法が考えられます。

値上げに成功したら得られた利益を従業員に適切に還元し、従業員の定着率向上と新規採用の獲得につなげてください。

研修制度や人事制度の見直し

雇用している従業員の能力を最大限に発揮する制度の導入も、人手不足に悩む飲食業では重要です。ここでは従業員の能力を高めるための方策について解説していきます。

公正な評価制度の構築

不透明な人事制度は、従業員のモチベーションを減少させ、人材流出を加速させる要因になります。まずは店長への昇進やのれん分けの条件を明確にし、その店で働くことで将来に希望をもてるキャリアプランを描けるようにしてください。そのうえで、昇進・昇格につながる人事考課などについて従業員とコミュニケーションを取った上で、待遇を決定するようにしましょう。

条件をオープンにした透明性の高い評価制度の導入や従業員とのコミュニケーションは、従業員の納得性を高め従業員のモチベーションを向上させます。仕事の生産性と定着率の向上も期待できるでしょう。

【関連】人事評価制度とは?評価対象や評価手法、企業事例などもご紹介/BizHint

マニュアルや研修の整備

マニュアル整備や充実した研修制度の導入は、従業員の能力を向上させ短期間で即戦力化が期待できます。人手不足で新規採用が難しいのであれば、すでに雇用している従業員の能力を向上させればよいのです。

前述の公正な評価制度の導入とあわせて制度化できれば、従業員は意欲的にマニュアルや研修制度を活用し、その能力を高めていくことが期待できます。

【BizHintオリジナル記事】なぜ、サービス業の生産性は上がらないのか

現場への権限の委譲

従業員に対して業務の全てを細かく指図し、従業員の自由度が極端に小さくなっていないでしょうか。飲食業に限らず、現場の従業員への適切な権限の移譲は、働く意欲の醸成を通じてモチベーションを向上させる効果があります。

たしかに、飲食店においては技術を身につけるための” 修行”という位置づけが強い場合もあり、権限委譲が難しいと感じられる場合もあるかもしれません。そうした場合は、店のPOPづくりやホームページ作りなど、若手社員のほうが得意な分野を見つけて権限を委譲すればよいのです。ある程度技術が身についたと感じられるのであれば、新しいメニューの開発を任せてもよいかもしれません。こうした取り組みにより客数や客単価を向上できれば、新たに優秀な人材の獲得にもつながるはずです。

採用方法の見直し

採用するための一般的な方法は、求人サイトや求人情報誌に求人広告を掲載することがあげられます。場合によっては、求人チラシを配布することもあるかもしれません。しかし、昨今の人手不足のなか、それだけでは応募に動いてくれません。応募の判断に必要な情報が少なすぎるのです。

求人サイトや求人情報誌に求人広告を掲載すること自体は決して間違いではないのですが、QRコードなどでお店のホームページの求人サイトに誘導するようにしてください。そして、ここまでに紹介した働きやすい環境や充実した研修制度をお店のホームページでアピールするのです。働く先輩の声は、クチコミに近い効果があり有効です。

何より従業員が働きやすく、会社に対する貢献意欲が高い職場であれば、従業員のクチコミ効果も期待できます。こうなれば、従業員の定着率も新規採用も改善することができるでしょう。

テクノロジーを活用した業務効率化

中小企業でも深刻な人手不足を背景に、業務効率化に取り組む企業が増えてきました。業務効率化は、多くの場合ITツールを活用することで実現します。従来はITツールの導入には、大規模なサーバーなどが必要となり中小企業が導入するのは現実的ではありませんでした。しかし近年では、クラウドにより手軽に導入できるITツールが増加傾向にあり、飲食店でも活用することで業務効率化が期待できます。

そうしたITツールの中で、飲食店が導入を検討したいのがレジ周りのツールです。スマホやタブレットさえあれば、無料でレジとして使うことができるアプリが登場しています。加えて近年ではキャッシュレス化が加速しており、こうした動きは業務効率向上につなげることができるでしょう。お金を触る必要がないキャッシュレスは飲食業と相性がよいといえます。

2019年10月には消費税が増税される予定です。飲食業でも弁当などの持ち帰りなどをおこなっている場合は、販売時に通常税率と軽減税率を区別しなくてはなりません。軽減税率対策補助金やIT導入補助金などの国の支援も充実しています。レジ導入やキャッシュレス化のよい機会ですので前向きに検討してみてください。

【関連】【用途別】業務効率化ツール12選!導入ポイントもご紹介/BizHint

まとめ

  • 中小企業を中心に広がる深刻な人手不足の問題は飲食業では特に深刻で、人手不足が原因の人手不足倒産も増加傾向にあります。
  • 人手不足の原因は、劣悪な労働環境にもかかわらず給与水準が低いことがあげられます。
  • 飲食業の人手不足を解消するためには、従業員との密接なコミュニケーションを前提に、労働環境の改善や採用方法の見直し、業務効率化といった対策を適切におこなっていくことが必要です。

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