連載:第5回 プロ・リクルーター、河合聡一郎さんが聞く【事業承継のカギ】
創業150週年の老舗ブランドを守りつつ、次を画策する木村屋のこれから
プロ・リクルーター、河合聡一郎さんによる事業承継の成功のヒントを探る連載。前篇に引き続き、株式会社木村屋總本店 代表取締役社長の木村光伯さんにお話を伺います。2006年に28歳の若さで7代目社長に就任するも、業績不振による経営再建に直面。しかし事業改革を推し進め、4期連続赤字からV字回復を果たします。また、従来のトップダウン型からボトムアップ型の組織へシフトするなど、対話を重視した組織づくりにも積極的です。後篇では、木村さんが描く木村屋總本店の未来について迫ります。
株式会社 木村屋總本店
代表取締役社長 木村光伯さん
2001年、学習院大学経営学科卒業後、家業である木村屋總本店に入社。02年に日本パン学校で、翌年にはアメリカに留学してパン作りを本格的に学ぶ。05年に取締役、06年に常務取締役に就任。同年、7代目社長となる。
10年の経営のなかで改革したもの
河合聡一郎さん(以下、河合): 社長に就任されて約10年立ちましたが、その中で改革したものとはなんでしょうか。
木村光伯さん(以下、木村): まずは赤字体質から脱却するため、取扱商品やお取引先様の選択と集中、物流と生産工程を見直し業務改善を図りました。その一環で2011年の震災後に工場の製造ラインを一部マニュアル化します。その結果、作業を効率化し品質も安定したのですが……。必ずしも毎日100点のパンができるかというと、そうではなかったんです。ご存知のように パンは発酵食品でとてもデリケートです。気温や湿度、わずかな環境の違いで仕上がりが大きく変わります。 昔、製造ラインに立っていた時に職人さんから言われた言葉「パンは生き物。毎日向き合うことが大事」を痛感しました。
河合: 自分たちが理想とするパンづくりを追求するためには、日々、目の前の品質に向き合う必要がある。そこには決してマニュアル化できない、職人にしかわからない勘や経験があるということですね。実際、現場では日々どんなことを実践しているのでしょうか?
木村: チームでMTGを実施するようになりました。成功事例を共有し、技術をブラッシュアップしていく。反対に何か納得のいかないことがあれば「なぜそれが起こったのか?」「何が原因だったのか?」を話し合う。皆で考えながら改善していくようになりました。ここでも先輩たちの教えが思考の基盤です。
河合:マニュアル化したことで、かえってチーム内にセクショナリズムが生まれていた。 ここでもやはり対話とボトムアップがカギになっています。ものづくりも組織もよく似ていますね。
木村: そうですね。それに私個人としては、 結果的に「年功序列」に“なった”組織はとてもいいなと 思うんです。
河合: なんだか意外に感じます。それはなぜでしょうか?
木村: 最近では「年功序列=旧態依然の制度」として語られることがあります。ですが、 パン作りにおいてはやはり職人の長年の経験が問われます。マニュアルである程度高い品質のパンは作れても100点以上にするには、その日その日に応じた対応が求められる。 社員それぞれが経験を積み、結果的に皆が成長して、自然と年功序列型の組織が形成されていく。そんな流れが作れたら面白いんじゃないかなと思っています。社員の帰属意識ももっと高まるのではないでしょうか。
河合: いわば今の時代に即した、「新しい年功序列型」の組織。それはとても面白いですね。
創業150年、木村屋總本店が描く未来
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