企業における効果的なインターンシップ受け入れのポイントとは?


インターンシップとは、主に学生が在学中に行う就業体験のことを意味します。採用候補者の獲得、内定後のフォローアップ、企業のPR、採用ミスマッチの回避、企業内の人材育成などといったメリットがあります。一方、受入の目的に応じて、期間や対象者、内容などを調整しなければ、望む成果が挙がりにくいものでもあります。この記事では、効果的なインターンシップ受け入れのポイントや受け入れ時に注意することについて解説します。

インターンシップとは
インターンシップの概要について説明します。
言葉の意味
インターンシップとは、主に学生が在学中に行う就業体験のことを意味します。略称で「インターン」とも言われ、インターンの実習生は「インターン生」と呼ばれます。
収入を主目的とするアルバイトとは異なり、インターン生は一般的に、仕事に関する経験の獲得やスキルの向上を主目的として参加します。その為、インターンシップではマンパワーとして業務をこなしてもらうことよりも、インターン生の成長を主目的としたプログラムを提供していくことが必要とされます。
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インターンシップは、日本では1990年代後半から認知されはじめてきました。一方欧米では、100年以上の歴史があると言われています。
欧米では日本と異なり、業務遂行能力を持つ人を採用する「ジョブ型雇用」が主流です。従って、新卒の大学生であっても、即戦力としての経験や知識、能力が求められます。その経験や能力を獲得するための機会としてインターンシップが活用されています。
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インターンシップ受け入れの目的
企業がインターンシップを受け入れる目的は何でしょうか。
目的の一つとして、採用候補者の獲得が挙げられます。インターンシップを通じ、会社の魅力や仕事の面白みを体験してもらうことで就職への興味を喚起したり、インターン応募者を採用候補者とし、母集団形成を行う狙いがあります。
また、内定後から就職までの期間を利用し、一種の新入社員教育としてインターンシップを実施するケースもあります。この場合は、内定後のフォローとして人材育成を行いながら、内定辞退の件数も減らすことが目的です。
インターンシップを通じ、企業の知名度や好感度、イメージを向上させる、といった目的もあります。また、純粋に若者に就業体験の機会を提供する、という社会貢献を目的として受入を実施する場合もあります。
インターンシップの種類
一口にインターンシップと言っても、実施形態は様々です。インターンシップの種類について解説します。
短期インターンシップ
短期間のインターンシップは、期間は半日~数週間とまちまちです。一般的には大学生の長期休暇のタイミングで開催され、企業の採用活動の一環として実施されることが多いです。
短期インターンシップには、「セミナー・見学型」「プロジェクト・ワークショップ型」「職場体験型」の、大きく3つの種類があります。
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セミナー・見学型
会社の説明や職場見学などが主体となる形式です。会社の説明、企業の魅力や仕事の面白みなどを人事や先輩社員から聞いたり、職場や工場などを見学します。経営者や役員が講演を行うケースもあります。大企業で多く見られる形式です。
プロジェクト・ワークショップ型
インターン生でチームを組み、与えられた課題について取り組む形式です。ディスカッションやグループワークを経て、業界や仕事内容についての知識を習得することができるよう設計されることが一般的です。
ユニークで面白いワークショップ・プログラムを提供することで、採用ブランド力や企業イメージを向上させたり、通常の採用活動では出会いにくい採用候補者と接触できる可能性があります。
例えば、メディア事業やアドテクノロジー事業を展開する株式会社VOYAGE GROUPでは、無人島を舞台にした体験型インターンシップ「Island」をはじめ、ユニークなインターンプログラムを複数実施しています。これらプログラムのユニークさが、企業への求心力や魅力となり、採用力の高さにつながっています。
職場体験型
短期間でインターン生に職場体験をしてもらう形式です。特に地域の高校生や中学生などを対象に、仕事への興味を喚起したり、社会の仕組みを理解させる機会として実施されることが多いようです。
長期インターンシップ
長期インターンシップは数ヶ月~年単位で業務にコミットします。週に1~3日、フルタイム勤務が一般的で、給料が発生することも多いです。インターン生は実務経験を積むことを目的とし、受入企業側はマンパワーとしての人材活用、及び優秀な人材の採用を主目的としています。
インターンシップ受け入れの現状
日本におけるインターンシップの受け入れは、拡大・多様化が進む傾向にあります。
日本の中長期的成長戦略である「未来投資戦略2017」が、2017年6月9日に閣議決定されました。この未来投資戦略2017においては、従来のインターンシップの積極的推進に加え、外国人留学生の就職促進のための中長期インターンシップ等を含む「留学生就職促進プログラム」を国内の12大学において実施予定となっています。
国や大学などの教育機関のみならず、地方においてもインターンの受け入れが進んでいます。地域における交流人口の拡大や移住推進を目的とし、地方公共団体やローカルベンチャーが、地域インターンシップを企画したり受け入れることも増えています。
大学生だけではなく、社会人を対象にしたインターンプログラムも広がっています。優秀な人材の採用や、雇用のミスマッチの防止、イノベーションの創出を主目的として実施されています。
このように、インターンシップは、より多様化が進んでいくものと考えられます。
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インターンシップ受け入れのメリット
インターンシップ受け入れのメリットについて解説します。
採用候補者の獲得
インターンシップの受け入れは、採用候補者の獲得において有効な手段と言えます。新卒採用の母集団形成はもちろん、採用直結型インターンシップによる人材獲得が行われています。インターンシップでの経験がインターン生に与える印象は強いため、魅力的なインターンシッププログラムの提供は、採用力の向上にもつながります。
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採用ミスマッチの回避
インターンシップの受け入れにより、採用ミスマッチの回避も期待できます。
実際の働きぶりや職場でのコミュニケーションなどは、面接や筆記といった選考プロセスでは判断しづらいものです。インターンシップにより採用候補者に業務内容を体験してもらうことで、戦力として活躍してくれそうか、自社の風土に合っているかを確認することができます。
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企業のPR
インターンシップの受け入れは、企業のPRにも貢献します。
インターンシップを通じて企業に好印象を持ってもらえれば、例えそのインターン生が別の会社に就職したとしても、ファンとして企業に貢献してくれるはずです。
若手・中堅社員の人材育成
インターンシップの受け入れは、若手や中堅社員の人材育成にもつながります。
インターン生のマネジメントは、一般的には管理職ではなく、現場で働く若手や中堅社員が担当することになります。インターン受入により、マネジメントを経験する機会や、指導する中で自身の仕事を見つめ直す機会が生まれます。
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職場の雰囲気が良くなる
インターン受け入れには、職場に活気が出て雰囲気が良くなる効果があります。自分たちの仕事ぶりが見られているという感覚と、インターン生達の模範になろうという意識から、普段よりも活気のある職場となることが期待できます。
実習生のメリット
インターンシップへの参加は、実習生にとっても様々なメリットがあります。就業経験や実績を積めたり、スキル向上の機会を得ることができます。仕事を通じて自分の適性について考え、自らの進路を考えるきっかけを得られる効果もあります。
社風や人間関係、業務内容など、就職後発覚し退職理由となりやすい要素が体感値として理解できるため、採用ミスマッチの軽減にもつながります。
スタートアップや中小企業におすすめ
ここまで、インターンシップ受け入れのメリットについて解説してきました。総じてインターンシップの受け入れは、中小企業やベンチャー企業において特に有効であると考えられます。
理由としては、これらの会社では人数が少なく、従業員一人の採用成功・失敗が会社の業績や職場の人間関係を大きく左右するためです。労力やコストがかかったとしても、十分なメリットがインターンシップの受け入れにはあるでしょう。
企業における効果的なインターンシップ受け入れのポイント
実際にインターンシップを受け入れるにあたって、成果を挙げるためにはどのようなポイントがあるのでしょうか。受け入れの流れに沿って解説します。
事前準備
事前準備がインターンシップの成功の鍵を握っているといっても過言ではありません。
1.目的の整理
これまで解説した内容をまとめると、インターンシップ受け入れには以下のような目的があります。
- 採用候補者の母集団形成
- 採用ミスマッチの回避
- 内定後のフォローアップ
- 企業のPR、ファンづくり
- 若手・中堅社員の人材育成
- 職場の活性化
- 社会貢献
- 戦力としての企業への貢献
何を一番の主目的に実施するのかを決めておくと、以降の意思決定がスムーズになり、成果の挙がるインターンシッププログラムが構築できます。
2.対象の選定
インターンシップのメインターゲットを検討しましょう。
採用候補者の母集団形成なら、就職を考え出す大学2~3年生、採用ミスマッチの回避が主目的であれば選考対象者がターゲットとなります。戦力としてインターン生に活躍してもらうことを考えているのであれば、メインターゲットは長期間のインターンシップに参加しやすい大学1~2年生となるでしょう。
3.就業体験の内容検討
対象者にどのような経験を与えれば目的を達成することができるか、インターンシップの内容やカリキュラム、期間を検討しましょう。
大まかに考えて、大人数の対象者に対し接触する場合は短期インターンシップ、少数の対象者に対し深く関わりたい場合は長期インターンシップがお勧めです。
短期インターンシップの場合は、他社が主催するインターンシップに埋もれないように、ユニークな企画が求められます。長期インターンシップの場合は、与えられるミッション自体の面白さややりがい、仕事を通じてインターン生が得られる成長の機会が重要視されるでしょう。
カリキュラムとしては、インターン期間中にどのような体験を提供するのか、時系列で整理することをお勧めします。例えば三週間のプログラムの場合、一週目は人間関係の構築と課題着手、二週目は課題への集中的取り組みと中間評価、三週目は最終発表とフィードバックなど、フェーズを分けてメリハリのあるプログラムを構築できると良いでしょう。
4.実施スケジュールの検討
実施スケジュールを検討しましょう。
大学生を対象とする短期インターンの場合、夏季や春季の長期休暇のタイミングが主となります。長期休暇の日程は大学によって異なりますので、メインターゲットとする大学の日程を把握できると良いでしょう。大学によってはインターンに関する相談窓口や事務局を設置している所もあります。コンタクトを取ってみるのも良いかもしれません。
5.受入体制の整備
インターンの受入体制を整備しましょう。大きく以下のような実施内容が挙げられます。
- 事務局の設置
- インターン受け入れチームの結成
- インターン中の各プログラムの責任者や担当者の決定
- インターン中の各プログラム内容の検討
- 仕事環境の整備(仕事用パソコンやシステムのアカウント、席や社員証などの準備)
- 秘密保持契約や労働契約などの締結準備
- 日報や定期面談などのコミュニケーション手段の準備
- 会社での就業ルールをまとめた手引の作成
- インターン生受け入れに関する社員教育の実施
- 経営者や管理職との方針すり合わせ
6.選考方法の検討
候補者の選考方法を検討します。書類や面接による選考を行うケースが一般的です。申込者が多いインターンシッププログラムの場合、筆記試験や適性検査を実施し、ふるいに掛ける場合もあります。
7.連絡手段の検討
企業担当者とインターン生間の連絡手段を決めましょう。主な連絡手段として、メール、電話、SNSが挙げられます。ビジネスマナーの習得度合いも判断できるため、メールをベースにコミュニケーションを取るのが一般的です。
8.インターン生の募集
インターン生の募集を実施します。場合によってはインターン紹介業者や採用サイトの活用も検討しましょう。募集媒体をしっかり選定し、メインターゲットに届くようにしましょう。
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インターンシップの受け入れ
実際にインターンシップを受け入れる際には、以下のことに気をつけると良いでしょう。
チームの一員として対等に接する
好印象を持ってもらうことを意識しすぎて、お客様扱いしすぎてしまうケースがあります。お客様扱いはインターンシップにおいて望ましいものではありません。あくまでメンバーの一員として、フラットに接することを実習生も求めています。
一方、特に長期インターンシップで起こりがちですが、「期間限定の実習生だから」と軽視することも良くありません。例えば全社員が参加している会合や交流会などがある場合は、インターンの実習生にもできるだけ声をかける事が望ましいです。
フランクなコミュニケーションが取れる時間をつくる
インターン生は慣れない環境で初めての仕事に取り組むため、緊張していることがほとんどです。忙しそうに働く社員を見て遠慮してしまい、与えられた課題の相談ができず、クオリティの低いアウトプットとなってしまうケースも散見されます。
対策としては、メンターや事務局はもちろん、担当外の社員であっても、積極的にインターン生に対し雑談をしかけるようにすると良いでしょう。インターン生の緊張を緩和し、相談しやすい雰囲気をつくる効果があります。
締めるところは締める
仕事の厳しさや難しさを教えるのもインターンシップの大きな目的です。フランクなコミュニケーションも大事ですが、仕事の進捗状況のフィードバックや成果発表のシーンなど、締めるところは締めるようにしましょう。
インターンシップ受け入れ後の評価
インターンシップ受け入れが終了したら、目標の達成状況や次への改善点など、事務局内で評価と振り返りを実施しましょう。
インターンシップを受け入れる上での課題と対策
ここでは、インターンシップを受け入れる上での課題と対策について解説します。
給与など労働条件の検討
短期インターンシップでは就業体験のニュアンスが強いため、給与が発生しないケースが一般的です。一方、長期インターンシップでは実務のニュアンスが強く、給与が発生するケースが多いです。インターン生の給与や社会保険、労働保険の加入についても検討しましょう。
各種リスクへの対策
インターンシップ中に発生しうるリスクについて想定し、対策を検討しておきましょう。
文部科学省は、インターンシップ中に発生するリスクを「学生が被災する事故」「学生の行為による損害」「学生による機密の漏えい」と3つに分類しています。リスクの予防策として、事前研修での指導や保険への加入、守秘義務の締結、事前大学との取り決め(大学が窓口となる場合)などを挙げています。
【図表】インターンシップ中のリスクとその予防策
【出典】文部科学省高等教育局専門教育課:インターンシップの導入と運用のための手引き~インターンシップ・リファレンス~
まとめ
- インターンシップとは、主に学生が在学中に行う就業体験のことを意味する
- インターンシップの受け入れは、採用候補者の獲得、内定後のフォローアップ、企業の知名度やイメージの向上、採用ミスマッチの回避、若手・中堅社員の人材育成などといったメリットがある
- 短期や長期、ワークショップ型や実践型など、目的に応じて様々な実施スタイルがある。インターンシップ受け入れの目的を整理し、目的にあったプログラムを考えよう
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