close

はじめての方はご登録ください(無料)

メニュー

BizHint について

カテゴリ

最新情報はニュースレター・SNSで配信中

連載:第34回 IT・SaaSとの付き合い方

拡大組織での「コミュニケーション円滑化」チャットの選定・導入事例。情報の安全を守り、交流を促進。

BizHint 編集部 2024年7月23日(火)掲載
メインビジュアル

飲食店向けを中心とした総合食品卸を手掛ける株式会社プレコフーズ。1955年の設立から約70年、同社では多拠点展開や1000名以上への組織規模の拡大などから、旧来の業務フローでの弊害が散見されるようになってきていました。その一つが「情報共有・コミュニケーション」。様々な情報を組織内に正しく届け、また安全性も担保するためにグループウェア活用の議論が始まり、Microsoft365/Teamsの導入に至ります。その選定や定着のプロセスを伺いました。

メインビジュアル

※本記事は2024年5月の取材に基づいて制作しております。各種情報は取材時点のものである旨、あらかじめご了承ください。


株式会社プレコフーズ
情報システム部 部長 田中 伸二 さん

株式会社プレコフーズ
飲食店向けを中心とした総合食品卸。首都圏に18箇所の拠点が存在。
1955年創業、売上約272億(2024年3月決算)、従業員数約1223名(2024年5月時点、グループ合計)


組織拡大とセキュリティの課題から、情報管理・コミュニケーション変革が必要に

――貴社では2023年にMicrosoft365/Teamsを導入されました。そこに至る組織課題はどのようなものだったのでしょうか?

田中伸二さん(以下、田中): もともとは2018年頃にスタートした、グループウェアの導入プロジェクトにさかのぼります。

当時はグループ全体で社員がいよいよ1000名を超えてきた頃でした。しかし、社内の情報共有はメールや社内掲示など、旧態依然としたまま。会社全体への情報伝達や情報共有の非効率が目立ってきていました。

当時、これを解決するために様々なグループウェアの情報を集めて商談を行い、ある程度の見立てはできていたのですが、2020年初頭から始まったコロナ禍で、いったんストップしました。

他方、コロナ禍が落ち着いた2022年頃、社内コミュニケーションにおいて別の課題が出てきました。それは「一部社員による個人スマホの業務利用」です。

当時、営業の社員にはスマートフォンを貸与していましたが、「通話できれば業務に支障はない」という社員にはガラケーを貸与し、それ以外の社員には貸与はしていませんでした。そうした環境下で、一部社員の間で個人のスマホで業務連絡を取るというケースが起こっていることが判明しました。

幸い、顧客情報・個人情報のやりとりはなく、個人スマホの利用によるトラブルや事故はなかったのですが、会社としては当然リスクと判断。会社として情報セキュリティをより強化するためのコミュニケーションツールの導入も課題となりました。

そうして、情報共有・情報セキュリティ・社員にとって利便性の高いコミュニケーションという課題を解決するためのシステム導入を進めることになりました。よりストレートに言えば、安全で使いやすい「グループウェア」と「チャットツール」ですね。

このプロジェクトは、私を含む情報システム部門の3名で主導しました。

「LINEに近い」が決め手。組織のITリテラシーに鑑みたチャット選定

――ツールの選定にあたり、どのように情報収集を進められたのでしょうか?

田中: 2018年の時点である程度選定を進めていたのですが、その時はまず、グループウェアの比較をしているWEB記事を参考にしました。それに加えて、知名度や市場シェア、価格などを参考にしながらいくつかに絞り込み、複数の代理店に声をかけて話を聞いていきました。

複数の代理店にお声がけするのは、社内で相見積もりのルールがあることに加え、同じサービスであればより安い所から購入するという考え方があるためです。当社では契約時だけでなく更新時にも相見積もりを取りますので、同じサービスを使っていても、お支払いする代理店が変わるということは普通に起こります。

――どのようなツールを比較・検討されたのでしょうか?

田中: まず、2018年時点である程度絞り込んでいた3つのツールの再検討を始めました。

以前はあるツールで進めようと考えていたのですが、あらためて要件に加わったチャット機能を含めて見直してみると違和感を覚えました。

今回、スマートフォンやチャットをメインで使ってほしい社員は決してITリテラシーが高い社員ばかりではありません。スマートフォンでの円滑なコミュニケーションを想定すると、チャットについては「LINEっぽい」見た目や使い方のほうが使いやすいと考えました。

そこで、チャット機能を軸に別のグループウェアを探そうと調査を進めていた中で、Microsoft 365とTeamsが選択肢に加わります。シェアが伸びてきたことや、各所で耳にすることが増えたので調べてみました。するとTeamsのチャットのUIが、LINEに近いものでした。「これは使いやすいのではないか」と感じました。

そもそもWordやExcelは普段の業務で使っていましたので、Microsoft 365をグループウェアとして利用し、チャット機能としてTeamsを使う方向性が固まりました。

また代理店については、初期設定作業などにかかる初期費用と、費用・サポート内容で最後は判断しました。メールの既存ベンダーであったことも決め手の一つになりました。

――Microsoft 365/Teamsを会社に提案する際、上層部からのニーズはありましたか?

田中: 当社は職種によっては1人につき1台PCが貸与されているわけではないので、「誰がどこまで機能を使えるのか」はしっかり吟味しました。

Microsoft 365のライセンスにはいくつかあり、Teamsだけ使えるもの、デスクトップ版は使えないがWeb版は使えるもの、デスクトップ版含めすべての機能が揃っているものなど、権限が異なります。

職種ごとにPC環境が異なる当社にとって、こうした切り分けができるのはありがたいことでした。「職種に応じて必要な人に必要なライセンス」という管理がしやすくなり、無駄・過剰なコストが発生しないことにつながります。会社に対しても、決してどんぶり勘定ではなく「必要十分なプラン」という説明がしやすくなりますので。

各部門に「誰にどの権限が必要か」を確認してもらい、取りまとめて会社側に提案しました。

――とはいえ業務システムの刷新には相応のコストが発生します。

田中: 会社としては大きな決断ではあったと思います。

ただ「個人スマホの使用をやめ、情報共有やセキュリティを向上させる」という目的に照らせば、必要な投資であることは関係各所で理解していたと思います。コストは当然かかる、それが「適正かどうか」という部分が重視されていました。

ですので社内提案においては、ツールの検討・比較の経緯を説明し、またMicrosoft365/Teamsのプラン選択について、実際の利用人数まで細かく明示しました。

情シスの担当者が、全拠点を回る。時期をずらして徐々に導入

――現場への導入はどのように進められましたか?

田中: 拠点が複数箇所あるのですが、情報システム部門の担当者が直接足を運んで説明をしていきました。ツールやアプリをインストールする前の週に対面での説明会を開催して、事前準備や使い方の説明をします。そして翌週に、我々がインストール作業を行うといった段取りです。

拠点のスタッフにPCの設定やインストールを依頼するのは非現実的でしたし、事故やトラブルを避ける最良の方法は我々が直接足を運ぶことでした。

ちなみに導入スケジュールについて、当社の場合は全社一斉でなくても問題ありませんでしたので、各拠点を順番に回っていきました。人的リソースは限られていますし、時間はかかってもリスクを最小にするような方策を選びました。全拠点で導入するのに、2023年6月から9月までかかりましたね。

各拠点での導入・利用開始日は月曜日に設定していたのですが、業務開始時にログインができて拠点の業務に影響が出ないよう、情報システム部のメンバーが交代制で朝6時から待機するサポート体制も取っていました。

情報システム部 主任 松崎 有樹さん。拠点への説明などを担当した。

――導入後、現場からの問い合わせはいかがでしたか?

田中: やはり導入当初は問い合わせが多かったですね。一番大変な時は、情報システム部の16人全員で窓口対応をしていました。それから徐々に落ち着いてきて、現在は4人くらいで運用できるようになっています。

ただ、問い合わせが多くなることは事前にある程度想定していました。というのも今回、Microsoft 365およびTeamsを導入するにあたって、会社貸与の端末からしかログインできないようにシングルサインオンの仕組みを導入して、認証を強化したのです。

これがそもそも「はじめて利用する」という段階では、それ以前とは大きく変わります。そして最もハードルが上がる部分なので「ログインの仕方がわからない、パスワードを忘れた、操作の仕方がわからない…」といった問い合わせが多数来るであろうことは想定して準備していました。

情報システム部 主任補 宮崎 健一さん。社員からの問い合わせ対応などの運用に尽力。

部署間のコミュニケーションも活発に

――社内のコミュニケーションはどう変わりましたか?

田中: 社員からは「部署・チームをまたいだプロジェクトのコミュニケーションが円滑になった」という声をいただいています。

メールと異なりTeamsはデータの扱いや検索が容易で、案件ごとにチームを分けることもできます。以前は面倒だった部門間のやり取りもチームやチャットでスムーズになったようです。

――Teamsを導入した現在の課題としてはどのようなものがありますか?

田中: 各拠点・部門によって、まだまだ活用度合いにばらつきがあるのは感じますね。

ITリテラシーが高い社員が多くいる組織とそうでない組織で、浸透に差がある印象です。チャットを見る習慣も、人や部署によって違いますし、メッセージに気づかないことも起こっています。

ただこれはスピードの差こそあれ、段階を踏みながら定着していくものだと思っています。まずは嫌がらずに使ってもらうことが大事。躓いている所があれば、適宜フォローアップをして皆が使いこなせるようにしていくつもりです。

また、デスクトップ版のTeamsの利用は今一歩ですね。そもそもこのプロジェクトの出発点は「スマホのチャットツール」だったので、それに比べるとPCでの利用はこれからという印象です。

そして「全社ポータルサイト」。2018年頃の課題感ではこちらが先だったのですが、結果としてTeamsの導入・定着を優先しています。これは社員がTeams・チャット文化に慣れてから着手するほうが混乱が少なく、スムーズに情報が行きわたると判断したためです。

当社の場合、取り残される社員がいないように、一歩一歩着実に進めていく方針が背景にあります。

他社の例を見ると、チャット移行に際して「今日から社内メールは廃止、すべてチャット!」といったものも見受けられますが、当社では「無理にメールをやめる」のではなく「社員間のコミュニケーションの底上げ」を目標としています。

ですので現状では、メール文化も残りつつ、チャットツールも併用しているような状態です。今、社員が便利に使っているものはそのままに、情報セキュリティという課題をピンポイントで解決して、将来のコミュニケーション円滑化のための種まきをしているようなイメージです。

変化は大切ですが、「一歩一歩着実に進めていく」というやり方が、当社の企業風土には合っていると思います。

(文:安藤 ショウカ 撮影:岡戸 雅樹)

この記事についてコメント({{ getTotalCommentCount() }})

close

{{selectedUser.name}}

{{selectedUser.company_name}} {{selectedUser.position_name}}

{{selectedUser.comment}}

{{selectedUser.introduction}}