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シニア活用

2020年6月11日(木)更新

シニア人材をどう活用するか?超高齢社会に突入し若い労働力人口が減少する中、慢性的な人材難となっている現代の日本において、65歳以上の「シニア層」をどう活用していくかは、企業にとって重要な課題となっています。しかし、まだまだ課題も多く、多くの企業では有効活用できていないのが現状です。今回は、「シニア層」を取り巻く日本の状況やシニア人材を活用するメリット、シニア活用が難航する理由。そしてシニア活用を成功させるポイントを「マネジメント」「就業機会の創出」それぞれの側面から詳しくご紹介します。

シニア人材の活用が注目される背景

そもそも「シニア」とは、「年長者」や「高齢者」を指す意味の言葉です。「高齢者」とは65歳以上を指し、この世代の人口増加や近年問題となっている人手不足などの影響もあり「シニア活用」に注目が集まっています。

日本における「シニア層」の現状と今後の推計について見てみましょう。内閣府の発表によると、2018年時点での65歳以上の人口は3,558万人で、全人口の28%以上を占めています。これが2030年には3,716万人(31%)、2065年には3,381万人(38%)と、実に人口の約4割に達すると推計されています。

【出典】令和元年版高齢社会白書/内閣府

このように、世界中で類を見ないほどの超高齢社会となっている日本において、労働力の確保を維持することは企業にとって最重要課題となっており、その人材源として女性や外国人とともに労働市場で注目されているのが、「シニア世代」なのです。

シニア人材活用の現状

それでは、シニア活用について様々な側面から現状を見ていきましょう。

働きたいシニア世代

2018年の明治安田生命の「50代・60代の働き方に関する意識と実態」の調査(対象:50代・60代の全国の男女6,250名)によると、「定年後も働きたいか」という質問に対して、「働きたい」という意欲のある人は8割にものぼる事が分かりました。

【出典】50代・60代の働き方に関する意識と実態/ 明治安田生命

その理由としては、男女各年齢層共に「日々の生計維持のため」がトップで、次に「生活のハリ・生きがいを持つため」となっています。

シニア活用の実態

令和元年の「高年齢者の雇用状況(厚生労働省)」を見てみると、「継続雇用制度」「定年廃止」などを導入し、「66歳以上働ける制度のある企業」は30.8%で、前年より3.2ポイント増加しています。その中でも70歳以上も働ける企業は28.9%に達しています。

【参考】令和元年「高年齢者の雇用状況」集計結果/厚生労働省

高年齢者雇用安定法によるシニア世代の雇用義務

「高年齢者雇用安定法」が2004年に改正(2006年施行)され、企業は60歳以上の従業員に対し、

  • 定年を廃止する
  • 定年を65歳まで引き上げ
  • 希望者には再雇用や勤務延長といった継続雇用措置をとる

いずれかの実施を義務付けられました。また、2013年に再び改正され、希望者に対する65歳までの雇用が義務化されました。

【参考】高年齢者雇用安定法の改正~「継続雇用制度」の対象者を労使協定で限定できる仕組みの廃止~/厚生労働省

シニア人材を活用するメリット

それでは、企業にとってシニア人材を活用するとどのようなメリットがあるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

人件費や採用コストの削減

65歳以上の従業員を雇い続ける場合、新たに人材を雇用する必要がないので採用コストを低く抑えられます。また、既に経験のある人材を継続採用する事により、即戦力となるだけでなく、新たな人材育成の費用もかかりません。

また、高年齢者雇用に関する助成金の活用や、再雇用制度によって労働条件を変更して新たな雇用契約を結ぶなど、様々な制度を活用した人件費の抑制も可能です。

若手社員の育成に期待

これまでに培ってきた知識や経験、スキルなどを活かしたスペシャリストとしての役割だけでなく、豊かな社会人経験を生かして若手社員の教育を任せることもできるでしょう。

また、トラブル発生時にはリーダーシップを発揮して問題解決に導いたり、管理職に従事する中堅社員をサポートしたりと、組織のマネジメント面での効果も期待できます。

フレキシブルな勤務形態に対応

65歳を過ぎても就業したいと考えているシニア層は、フルタイムでの仕事へのこだわりが少ないというのも特徴です。

空いた時間を有効活用することを目的としているケースも多く、イレギュラーな勤務形態も柔軟に受け入れてもらえるため、既存の従業員では難しい時間帯(早朝や休日など)での活用にも有効です。

シニア層のお客さまからの信頼を得られる

急激な高齢化は従業員だけでなく、企業にとっては商品やサービスの対象となるお客さまにも高齢者が多くなることを意味します。

特にエンドユーザーとの対面機会が多いビジネスにおいては、高齢のお客さまに対して若いスタッフが対応するよりも、同世代の高齢者スタッフの方がコミュニケーションも円滑になり、スムーズな対応となるケースも多くあります。

シニア人材活用における課題

いざシニア人材を活用しようとしても、スムーズにいかないという声も多く聞かれます。これらの理由として代表的な3つの理由をご紹介します。

個人によって状況が異なり、一律の対応が難しい

前述の「シニア人材を活用するメリット」ではフレキシブルな勤務形態に対応できるというポイントをご紹介しましたが、就労時間に対する希望も含め、65歳を過ぎても働きたいと考えているシニア層には様々な事情があります。

いわゆる経済上の理由で働く人が多いのはもちろんですが、他にも生きがいのため、社会とのつながりのため、健康のためなど、目的も様々です。ひとえに「労働意欲のあるシニア世代」と言っても、仕事に対するモチベーションはバラバラなのです。そのため、一律の制度やルールなどでは対応しきれない面も多いでしょう。

シニア人材に対するマネジメント・ノウハウが乏しい

シニア人材を受け入れる側も、これまで経験のない場合が多く、当然ノウハウもありません。実際、つい昨日まで上司だった役員が今日から同僚になるというケースもあり、現場の戸惑いは火を見るよりも明らかです。

年功序列の慣例が抜け切らない日本社会では、「年下の上司」や「年上の部下」といった関係性はまだまだ受け入れられにくく、シニア人材に対する適正な評価も難しいのが現状です。

【関連】マネジメントの意味とは?ドラッカー理論から役割、仕事内容まで徹底解説/BizHint

シニア人材が環境に対応できない

このような戸惑いは、採用されるシニア世代でも同様です。役割も処遇も変わっているのに定年前の役職や立場から抜け出せず、周囲と馴染めないケースも多く見受けられます。

職場や仕事が変わっても、同僚に対して上から目線で接してしまう、上司に対して露骨に意見してしまう、口だけで自分では動かないなど、すぐに切り替えられずトラブルとなるケースも後を絶ちません。また急激に変わる報酬面も、自身の価値を見失い、モチベーションを下げてしまう要因となっているようです。

シニア活用を成功させるためのポイント①~マネジメント~

それでは、シニア人材の活用を成功に導くためには、どのようなことがポイントとなるのでしょうか。

大きく分けて、シニア人材の管理や受け入れ体制の整備といった「マネジメント」的な側面と、実際の現場での役割や職務領域といった「就業機会創出」としての側面がありますので、それぞれに分けて解説したいと思います。

まずはマネジメントの上で重要となるポイントをご紹介します。

個々のモチベーションを理解する

前述のように、労働意欲のあるシニア世代と言っても、年金受給年齢に達するまでの生活費を稼ぎたい人、社会とのつながりを維持したいと考えている人、自身の技術を埋もれさせたくないと考えている人など、モチベーションは様々です。

中途採用ならば、自社が希望する職種やスキルに合わせて応募者の経験や入社後にやりたいことなどをきちんと吟味した上で選考・採用するのが一般的ですが、シニア人材に関しては、まだまだ確たる方針を定めて採用活動を行っている現場は少なく、「シニア採用」と一くくりにしてしまっているのが現状です。

まずは、シニア人材の個々のモチベーションを理解し、個人に焦点を当てる考え方にシフトすることが大前提となります。

【関連】モチベーションの意味とは?低下の要因や上げる方法、測定手法や企業施策までご紹介/BizHint

年齢による人事のあり方を見直す

当然のことながら、現役社員とシニア世代の社員は、働く目的も違えば将来描いているキャリアも違うでしょう。そのため、一律な人事制度では対応が難しくなっています

例えば「定年後どのように働くのか」「定年後のキャリアプラン」などの検討を、定年前の研修などに盛り込むなど、現役の社員とは違う人事的なサポートが必要になります。また、「人事評価制度」についても、既存のものを流用するのではなく、定年後の働き方・仕事内容に沿った専用の制度が必要になるでしょう。

また、定年の年齢を選択制にし「定年→再雇用」の時期をフレキシブルに対応することで、社員は早い段階から定年後のキャリアプランを意識することが可能となります。今後、若年労働力が減少し、より一層の労働人口の高齢化が見込まれる中、現在のような年齢による一律的な退職を前提とした人事管理は、意味をなさなくなる可能性も考えられます。

【関連】人事評価制度とは?評価対象や評価手法、企業事例もご紹介/BizHint

シニア人材の受け入れ体制を構築する

シニア人材を受け入れる現場にも、意識改革・体制強化が必要となります。実際にシニア人材とともに働く現場の従業員やスタッフに対しても研修や教育が必要です。

年齢や過去の肩書に囚われないコミュニケーションを行い、後述するシニア人材に期待する役割や働き方を共有できるようにすることも、重要なポイントとなってくるでしょう。

シニア活用を成功させるためのポイント②~就業機会の創出~

最後に、シニア人材をどのような現場や職務領域で活用すればよいか、効果的な就業機会の創出に関するポイントをご紹介します。

シニア人材への役割を明確化する

まずは、個々にモチベーションやバックボーンが異なるシニア人材に対して、企業として何を望んでいるのか、役割を明確にすることが重要です。

一般的に、技術的・知識的なスペシャリティを発揮してもらう、若手社員の育成や中堅社員のサポートを期待する、組織やグループでリーダーシップを発揮してもらうといった役割が挙げられますが、それをより具体的に設定することで、企業として求める人材像も鮮明に浮かび上がってきます。

近年、シニア層の活用には、主に以下のようなパターンがあると言われています。

業務継続型

これは、定年まで従事していた業務、あるいは経験のある業務に継続して取り組むパターンです。雇用形態や勤務体系は変わっても、経験やスキルのある業務を続けられるので、最も抵抗無く雇用を継続できます。多くの企業で取り入れられているスタイルです。

専門性活用型

こちらは、高いマネジメント力や専門的な知識・技術を活かしたパターンです。例えば、専門職の後進育成にあたる、一部の組織で後見人的な役割を果たすなどが挙げられます。ただし、「代替えが効かない」と言えるほどの高いスキルが必要であるため、極めて少ないケースでもあります。

ルーチンワーク型

こちらは、一般的に非正規雇用の社員に委託するような、単純作業に従事するパターンです。例えば、一部の庶務業務、清掃、書類のコピーや整理、郵便物の仕分けなどが当てはまります。先ほどの「業務継続型」の雇用において、人員数の問題などで一定の部門で雇用し続ける事が難しい場合などに、こちらのスタイルにシフトするケースも多くあります。

個人に合わせた働き方を用意する

同様に、個々にモチベーションやバックボーンが異なるシニア人材に対して、様々な働き方を用意するのも、有効なシニア活用に必要なポイントとなります。

常勤・非常勤、シフト(交代)制・フレックス制といった勤務形態や、時間給や能力給、出来高給といった賃金形態、契約や嘱託、アルバイト、パートタイムといった雇用形態など、シニア人材の個々のケースに対して、どれだけ採用方法を柔軟に対応できるかが鍵となります。

【関連】「雇用形態」とは?正社員・契約・派遣などの種類、変更方法を解説/BizHint

シニア人材ならではの仕事を用意する

今後は、シニア人材ならではの職務領域の開発が不可欠となります。

増加するシニア層ユーザーへのサービス

前述の「シニア人材を活用するメリット」でもご紹介した通り、企業にとって社会の高齢化はエンドユーザーの高齢化も意味しています。営業職や接客の現場などでは、シニア世代ユーザーへの対応はもちろん、同世代の視点での商品開発やサービスの向上、サポートなどが期待できます。

知識や経験を生かした品質管理

研究・開発といった現場では、長年培った知識を活用することで既存製品の保守や品質管理といった分野での活躍も期待できます。また、個々が持つ暗黙知を形式化するようなナレッジマネジメントの分野も、シニア人材に適した業務と言えるでしょう。

セカンドキャリアを意識したUターン・Iターン

若者の仕事に対する価値観が変化し、転勤が好まれなくなってきていることから、新卒・中途採用の現場でも積極的に実施されている地方採用・現地採用。生まれ育った地元や企業が事業展開している地域への「Uターン・Iターン」といった地方勤務も、シニア人材の職務領域として挙げられます。定年退職後は田舎でゆったり仕事をしながら暮らしたいと考えているシニア世代も多く、セカンドキャリア・サポートの観点からも有効だと考えられます。

特に近年では「地方創生」がキーワードに挙げられる機会も多く、助成金を受けることができたり積極的に支援する自治体も出てきたりするなど、企業としても取り組みやすくなっていると言えます。

まとめ

  • シニア人材の活用にはコスト面だけでなく、若手社員の育成効果や既存社員では難しい勤務形態の融通性といったメリットもある。
  • シニア世代は個々に労働へのモチベーションが異なることから、それらにフレキシブルに対応することが重要となる。
  • シニア人材の新たな職務領域の開発が急務。特に、社会の高齢化は消費者の高齢化も意味することから、それらへの対応などにシニア人材の活用の道がある。

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