連載:第6回 「人材マネジメント」のツボ
Hondaの進化に向けて今必要な「組織内の関係性」を創り出すために。現場と伴走した3年間の歩みとは
創業者から受け継がれる“Hondaフィロソフィー”を礎に、社員の個性や現場の躍動感に定評のある本田技研工業株式会社。ただ、2016年から現場ではHondaフィロソフィーの根幹を成す個人の尊重や職場内の関係性に課題が見え始めていました。そこで、人事が現場とともに伴走する取り組みをスタートさせたそうです。成長する組織の原理原則と実践を探る本連載。今回は『図解人材マネジメント入門』の著者であり、人事コンサルタントの坪谷邦生さんが、Hondaの人事部人材開発課に深掘りします。
左から鈴木翔さん、坪谷邦生さん、笹野真紀さん、山崎紘和さん
人事部 人材開発課 課長 主幹 笹野真紀さん
人事部 人材開発課 主任 鈴木翔さん
人事部 人材開発課 チーフ 山崎紘和さん
Hondaの根幹「個人の尊重」に対する危機感
坪谷邦生さん(以下、坪谷): 御社はかの有名な“ワイガヤ”に代表されるように、組織開発の分野では先進企業と捉えられてきました。2020年8月に出版された野中郁次郎・竹内弘高の『ワイズカンパニー』(東洋経済新報社刊)においても「組織の全員が原則を実践し、持続的なイノベーションを実現している企業の一つがHonda」だと紹介されていますね。
Honda持続的イノベーションの原動力(野中郁次郎・竹内弘高『ワイズカンパニー』をもとに作成)
特に組織開発に問題がなさそうな御社が 「人と組織が活きる関係性のマネジメント(Honda People Driven Management)」 に改めて取り組まれていると伺って驚きました。この取り組みについて背景を教えてください。
山崎紘和さん(以下、山崎): 当社では1990年頃から3年に一度、国内の全従業員を対象にした意識調査を実施しています。実は2016年の調査結果から、 「チャレンジ精神」や「満足度」、そして「個人の尊重」といった項目のポイントが低下 していました。
坪谷: 御社で「個人の尊重」が低下するとは、大変意外です。“Hondaらしさ”とは、「本質を考え抜いた末にたどり着く価値」、そして「独創性」だと言われていますが、まさに「個人の尊重」はそれらを支える最も大切な強みのはずですよね。
山崎: ええ。当時は品質問題もあり苦しい時期でもありました。 従業員から「Hondaらしさが失われている」というメッセージだった と認識しています。
またグローバル化や事業変化など、4万2000人の従業員がいる日本においては、組織のマネジメント層のオペレーションが、過去に比べ複雑になってきていました。
坪谷: 2016年の意識調査では社員の方の不安が数値としても現れたのですね。まず人事ではどのような手を打ったのですか?
研修だけでは解決できない「関係性のマネジメント」
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バックナンバー (8)
「人材マネジメント」のツボ
- 第8回 人事制度では自律的な社員は作れない(後編)
- 第7回 人事制度では自律的な社員は作れない(前編)
- 第6回 Hondaの進化に向けて今必要な「組織内の関係性」を創り出すために。現場と伴走した3年間の歩みとは
- 第5回 組織のピンチを救った「ななめの繋がり」。リクルートキャリアに学ぶ組織活性化のヒント
- 第4回 サイボウズに聞く人材マネジメントの流儀。カギは「自立」と「一貫性」