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連載:第64回 IT・SaaSとの付き合い方

「数字の報告」よりも「対策の議論」を。経営会議と店舗運営の効率化を目指す予実管理システム導入

BizHint 編集部 2025年9月18日(木)掲載
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フランチャイズの飲食店を100店舗以上展開するタニザワフーズ株式会社。同社は各店舗がExcelで作成した数字を取りまとめた「巨大なExcel群」を使って全社数字を管理していました。しかし昨今「経営側が見たい数字をすぐに見られるように」、そして「現場の作業負荷を低減する」ことを目指して、予実管理システムの導入を進めています。多くの現場店舗に影響が及ぶことから進捗は緩やかながらも、経営会議においては「数字の報告」の時間が減少し「対策の議論」に時間がより割かれるようになるなど、少しずつ変化が表れてきています。その背景やシステム選定の経緯、社内展開の進め方について担当者に話を聞きました。

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(お話を伺った方)
タニザワフーズ株式会社(愛知・マルチフランチャイジー・社員数約130名)
経営企画室 ユニット長
森 克浩 さん 


※本記事は取材時点(2025年8月)の情報に基づいて制作しております。各種情報は取材時点のものであること、あらかじめご了承ください。

膨大なExcelファイルでの数字管理。見たい情報がすぐに見られなかった。

――貴社の予実管理システム導入。どのような課題意識から始まったのでしょうか?

森克浩さん(以下、森): 当社では4年ほど前(2021年)にDXプロジェクトが立ち上がり、非効率な業務の改善やアナログな部分をデジタル化することを目指してきました。

当時、私は営業企画という立場だったのですが(現在は経営企画室)、情報システムの担当者と一緒に、DXプロジェクトを担当することになりました。その一環として、私自身が日々の業務として頻繁に向き合っていた「経営数字のExcel運用」の効率化を目指すことにしました。

「経営数字のExcel運用」という課題には、中長期と短期、2つの側面があります。

まずは中長期的な課題について。当社はいわゆるメガフランチャイジーとして、様々なブランドの飲食店を多店舗展開しているのですが、各店舗では様々な数字をExcelで管理していました。月次の数字をまとめるのもExcelです。

そしてこの数字を現場でまとめるのは、各店舗の店長。店長は基本的に多忙ですので、こうした作業の工数低減は常に取り組んでいかなければなりません。とはいえ、当社にはフランチャイズごとに様々な店舗があり、運営も多種多様。現在のExcelを変えるのは影響が広範に及ぶのですぐには難しい…。いつか手をつけたい類の課題となっていました。

次に短期的な課題。各店舗で作成された120~130ものExcelファイルは、経理部門によってPLに落とし込まれます。そして私は、それを経営会議のために二次加工してまとめていました。この作業はたしかに非効率ではあるのですが、正直、慣れもあり、そこまでの負荷というわけではありませんでした。

より大きな課題だと感じていたのは、 そうして作った資料が、実際の経営会議では有益な議論になかなか結びつかないという感覚を持っていた ことです。

経営会議では「この店舗とこの店舗の去年の売上は?一昨年は?」「これらのブランドを合わせた営業利益の予算差異は?」といった、様々な切り口での数字の確認や質問が飛び交います。

その際私は、関連するExcelのファイル・シートをいくつも開いては、その場で急いで計算して答えるのですが、すぐに回答できない場合は宿題になったりしていました。

つまり、 会議の出席者全員が「会議の場で現状の数字を正しく把握し、共通認識をもって対策を議論する」ということができない状況 が多々ありました。

また数字については「経営会議の場で、紙の資料を配布して共有」という運用だったことも、議論を深めることを阻んでいました。結果、「この数字になった理由を説明してほしい」という所で経営会議が終わることも。本来であれば「今後、どのような対策を講じるべきか」を話し合うことこそが重要です。

こうした 「経営会議での議論の深化」が、私としては短期的に解決したい課題 でした。

システム選定の要件を事前にまとめ確認。相談のしやすさが決め手に。

――「経営数字のExcel運用」という課題の解決。何から始められたのでしょうか?

森: DXプロジェクトでは外部のアドバイザーに助言・協力を仰いでいました。そうした課題について相談すると「こういうシステムがありますよ」と、 Loglassという経営管理システムを紹介していただきました。

当社では施策を進める際には基本的にいくつかの手段を比較検討しますので、まずLoglassについて調べ、比較できるシステムをWEBで探しました。その中で「当社に合いそう」と感じたのが、DIGGLEでした。

あらためて両者に資料請求して話を聞き、結果DIGGLEを使ってみようと思いました。

――商談や比較検討の際、どのような部分を重視されたのでしょうか?

森: 特に重視していたのは「パラメータや条件を変えた時に、臨機応変に数字が出せそうか」という所です。

我々のほうで「これができないと困る」「こんなことがしたい」という要件を事前にまとめて、商談の際に聞いてみました。 両者ともしっかり答えていただいて、またそれを説明いただいたデモもわかりやすかったです。ですので、我々が求める要件という面では、どちらもクリアしていました。

ただ、こればかりは私の心象というか個人差になってしまうのですが、DIGGLEの担当者のほうが話しやすい、相談しやすいというか、私と波長が合うような印象を受けました。

長く使っていくシステムですし、私自身のコミュニケーションの取りやすさについては一つの判断軸になったとは思います。

導入後の設定作業はもちろん、使いこなすまでには多くのやり取りが発生しますし、将来的な社内展開を見据えても、 サポートの体制含め「話しやすい・相談しやすい」といったことは重要視していました。

あとは費用感ですね。当社がやりたいことを鑑みると、DIGGLEのほうが安価でした。

会社・経営層が最重要視するポイントを押さえる

――社内提案・稟議についてはどのように進められたのでしょうか?

森: 「社内の数字管理にDIGGLEを使います」という一つの稟議で決裁をいただくような進め方ではありませんでした。

関係各所にヒアリングや相談をしながらExcel運用の問題意識を共有し、経営会議でも何回か報告や議題を上げながら、段階的に意見収集を進めていきました。

その上で、DXプロジェクトでは様々な取り組みが進んでいましたので、その中の一つという形で提案し、決裁を得ました。

提案においては、その目的として『店舗の負担を軽くする』ことを強調しました。というのも、当社は約100以上の店舗を運営しています。例えば、1店舗あたり30分の工数削減であっても、それが100店舗となれば全体では大きな効率化に繋がります。実際、会議の場で議論される内容として「いかに現場・店舗の運営を効率化するか」という議論は熱を帯びます。

この訴求ポイントのピントが合っていたからこそ、決裁いただけたものと思います。 経営会議の効率化という課題の解決はもちろん重要ですが、当社においては「いかに現場を楽にするか」という視点は、最も重要視されますので。

数字の報告の時間が減り、対策の議論が深化

――実際にDIGGLEを導入していかがでしょう?当初の課題は解決できましたか?

森: 2023年の導入から2年ほどが経ちましたが、前に進んだ部分と、まだまだな部分があります。

まずは経営会議の運営改善。特に「月次の数字」については以前の課題が解決しつつあります。

現在は、店舗ごとのPLは引き続きExcelで作成しているものの、前年比較や予算比較などの分析業務はDIGGLEで行っています。数字がDIGGLEに入ることにより、 経営会議の中で様々な数字を聞かれた際に、その場ですぐに回答できることが以前に比べ増えました。 特に、過去の数字との比較がシームレスにできるのがよいですね。

見たい数字を出すのにいくつものExcelをガチャガチャやっていたものが、DIGGLEを使えば一発で出せる。それだけでも大きな革新です。

また、 以前は数字の共有を経営会議の場ではじめて行っていました、今は事前にDIGGLEでデータを作成し、参加者は会議の前に目を通すという運用に変わってきています。 「予算と10%以上乖離がある箇所」などを事前にピックアップし、担当者がその理由や今後の対応策をもって会議に臨んでもらうといったことも、DIGGLEを使うことでかんたんにできるようになりました。

総じて、 経営会議の中身が「数字を報告する」から「対策を議論する」へ大きく前進した ように思います。

ちなみに数字のまとめ方については「以前と同じ書式で見たい」という要望もあったので、現状はそれを個別に作成するという一手間は発生しています。こうした既存の仕組みの移行に際しては、急な変化よりもスムーズな変化を最優先すべきだと思いますので、「時間とともに一本化されていけばいいかな」くらいで考えています。

現場を混乱させない。時間はかかっても、確実さを重視

――まだまだな部分というのは?

森: お話ししたとおり「店舗マネジメントの数字管理は以前と変わらずExcelのまま」ということです。そしてこの部分へのDIGGLEの導入は、 時間をかけてもいいのでとにかく慎重に進めています。

その背景としてあるのが、メガフランチャイジーである当社ならではの事情かもしれないのですが「フランチャイズごとに、店舗内で使うシステムや運用が違う」ということ。

飲食店のフランチャイズごとにお客様の注文のシステムが違うのはイメージしやすいと思いますが、店舗のスタッフの勤怠や会計まわりをはじめとした管理システムも、当然フランチャイズごとに違います。

現在のExcelは、そうした各フランチャイズのシステムと整合性を取る形で、それぞれカスタマイズして作られています。そこにDIGGLEを導入するにあたっては、そうしたカスタマイズを一つ一つ設定していく必要があります。

当社で時間がかかっているのは、まさにその設定です。現状、ここは全体最適を目指すべきだと考えていまして、その落とし所を探っている状態でもありますね。

さらにいえば、DIGGLEの設定を全体最適した後には、それを各店舗に展開していくというプロセスも発生します。ここで重要なのは「実際に使ってもらえるかどうか」「使えそうと思ってもらえるかどうか」です。DIGGLEの設定においては、そこまで見据えて試行錯誤を繰り返しています。

事を急げば必ず現場の混乱を招き、負担を増やすことに繋がります。時間はかかりますが、何より確実さに重きをおいて進めている部分です。

そういった意味では、多少わがままな要望にはなりますが、飲食店の店長など現場レベルで「これだったら自分でも使えそうだな」と思えるようなユーザーインターフェースを、DIGGLEさんが開発してくれるととてもありがたいですね(笑)。

店舗レベルで「PLを意識したマネジメント」の浸透を

――DIGGLEのサポートについてはいかがでしょうか?

森: おかげさまで真摯にご対応いただいています。途中、サポートの担当者が変わりましたが、変わらず良好な関係でやり取りさせていただいています。

当社の場合、決してITまわりに強い社員が多いわけではありませんし、お話しした設定の複雑さなど、逐一相談に乗っていただきながら進めています。

基本的にはメールでやり取りしながら、月に一度はオンラインでMTGをしていくというスキームですね。

――今後について教えてください。

森: 中期的な目標として、店舗数字のExcel管理をDIGGLEに置き換えていくことはお話しした通りなのですが、 最終的なゴールとしては、店舗レベルでPLベースの考え方・マネジメントを浸透させたいという思いがあります。

店舗でのDIGGLE利用が進めば、店舗ごとでリアルタイムにPLを作れるようになります。そして店長のPL理解が進めば、売上予測やそれに伴う食材発注、人員のシフトなどの精度が高まり、利益率や生産性は必ず向上するはずです。

現状のExcelによる数字管理では、どうしてもそのExcelを作る「作業」の比重が大きいというのが現実です。そして店長というのは、とにかく忙しい。 店長の作業負荷をできるだけ減らし、よりPLに寄与する施策の立案や実行に時間を割いてもらえるような環境を整えていきたい と思っています。

(撮影:カメイ ヒロカタ)

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