連載:第91回 経営危機からの復活
社員の主体性を引き出す、たった2つの当たり前。10年来の赤字体質を黒字化したリーダーが貫いたこと


産業廃棄物処理業を営む株式会社旭商会。2020年4月、妻の家業である同社に入社した浦部大輔社長が直面したのは、営業利益率1.2%という厳しい現実でした。過去10年間で約半分が営業赤字、慢性的な赤字体質に陥っていた状態。社員たちも指示待ち状態になってしまっていました。しかし浦部社長は、そこからわずか数年で2024年度には10.4%の安定した利益率を実現、長年の赤字体質からの完全脱却を果たします。そして、利益の改善とともに指示待ちだった社員は自ら業務改善ついて提案できるまでに変貌を遂げました。同社はなぜ、この短期間で生まれ変わることができたのか?その改革の根底にあったのは、「2つの当たり前のことを実践する」という浦部社長の地道なアプローチでした。詳しく伺います。

赤字体質を安定黒字化したリーダー、2つの「当たり前」
――2020年4月に家業である旭商会に入社されましたが、当時の会社の状況はいかがでしたか?
浦部大輔さん(以下、浦部): 当時は、言われたこと以外は何もしない社員ばかりいる「指示待ち組織」の状態に陥っていました。
まず、創業時からの「見て覚えろ」という昭和的な教育スタイルが深く浸透していたことです。新入社員は先輩の真似をして作業を覚え、同じことができるようになれば評価される、という環境で育っていました。そのため、「なぜこれをやるのか」といった本質的な思考を促す教育が欠如していました。
新卒で入社した社員も、そうした環境で育つことで本質を考える習慣が身につかず、結果として彼らが後輩を指導する立場になっても、同じような表面的な教育しかできない。こうした負のサイクルが組織全体に定着してしまい、結果的に指示待ちの文化が根付いてしまったんです。
実際に私が入社して以降、社員に「今日の仕事はどうだった?」「今日の廃棄物の案件で利幅の良いものはあった?」と聞いても「いや、ちょっとわかりません」、「私に聞かれても…」という反応ばかり。 現場の作業員から管理者まで、誰も会社の状況を答えられる人はいませんでした。
――そうした組織の問題は、業績面にも影響していたのでしょうか?
浦部: 2019年度の営業利益率は1.2%でしたが、これはむしろ好転した方で、 2018年度は10.1%の赤字という壊滅的な数字でした。 さらにさかのぼると、2009年のリーマンショック時には14.7%の赤字という記録もありました。
そして過去10年間で見ると、約半分は営業赤字という状況が続いていたんです。 それ以前からほとんど赤字で、利益を上げても1%程度という状況でした。
――そうした状況から、どのような改革を始められたのでしょうか?
浦部: 実は、複雑な戦略や派手な施策は一切やっていないんです。 私がやったのは、どの会社でも当たり前にやっているはずの、たった2つのことだけ。 この2つの「当たり前」を徹底しただけで、 長年の赤字体質から安定した黒字体質へと転換し、指示待ちだった社員が自ら業務改善などについて積極的に提案してくれる、主体性の高い組織へと変貌を遂げたのです。
――その2つの当たり前とは何でしょうか?
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