連載:第49回 リーダーが紡ぐ組織力
「週休3日制の導入」で最高業績の老舗企業。ワンマン経営から自走する組織への軌跡
週休3日制度を導入し、社員の休暇を増やして以降、業績が上がった会社があります。それは愛媛県に本社を置く、創業106年の老舗黒板屋 株式会社サカワ。従業員数25名という規模でありながら、「年間休日135日」を実現させると、売上高が6.7億円増加。昨年度は、過去最高を記録しました。同社の働き方は話題を呼び、国内だけでなく海外メディアも取材に訪れています。休暇が増えたことと、業績向上の因果関係とは。同社 代表取締役社長 坂和 寿忠さんに、詳しく伺いました。
株式会社サカワ
代表取締役社長 坂和 寿忠さん
1986年愛媛県生まれ。大学卒業後、2009年に家業である株式会社サカワに入社。東京支店にて電子黒板の営業職や、新規事業開発に従事したのち2018年より現職。黒板アプリや革新的なプロジェクター開発などを手掛け、就任から5年間で売上高を3倍以上伸ばしている。株式会社サカワは、大正8年の創業以来106年にわたり学校用黒板を製造販売してきた老舗企業。現在は教育ICT事業に注力する。売上高18.6億円(2024年4月期)、社員数25名(2024年12月現在)。
休暇を増やしたら業績が上がった、その理由
――貴社は「週休3日制度」を導入されて以降、業績が上がったそうですね。
坂和寿忠さん(以下、坂和):はい。当社は2023年2月、月に一度の「週休3日制度」を導入し年間休日を135日にしたのですが、2023年度(2024年4月期)は過去最高収益の18.6億円を記録しました。前期と比較すると、6.7億円の伸びを見せています。当社は従業員数25名という規模の会社ですし、正直驚きましたね。もちろん外的要因もありますし、短期的な成果なので数年かけて検証していく必要はあります。ただ、ひとまず今回の業績向上と週休3日制度の導入は関連しているのではないかと思います。
――そもそも、なぜ週休3日制度を導入されたのでしょうか?
坂和:大きなきっかけがありました。僕が社長就任して以降右肩上がりだった売上高が、鈍化し始めたことです。それが2022年。「来年の売上が立たない!」と危機感を覚えたとき、その要因について徹底的に考えました。すると、今の経営体制に限界があることが見えてきたんです。
当社は創業106年の老舗企業で、かつてはトップダウン型の組織でした。指示待ちで考えることが苦手な人材が多く、それでは時代の変化についていけないと、ボトムアップ型の組織に変化させてきた。ただ、振り返ってみると僕自身も「ワンマン経営」になっていた部分があったんです。社員たちを信頼し、共に事業を進めていたものの、任せきることができなかった。ある意味古い体質から脱却できていなかったんでしょうね……。大事な部分は「社長が決めなければ」という意識がすごく強かった。それで、僕が旗振りをするけれど方向性を間違ってしまったり、現場からアイデアがあまり出てこなかったりして……。退職者が度々出てしまったり、社員の主体性が育たなかったりしました。これは、もう本当に僕の責任。反省ですね。
結局、船は一人では漕げない。僕は、口では「みんなで一緒に船を漕いでいこう」と言っていたものの、現実は一人で漕いで、みんなを真ん中に乗せていた。でも、それでは沈んでしまう……。これ以上事業を伸ばしていくことは難しいと思いました。そこで気づいたのは、企業は「社員が業務を自分ごと化してどこまでコミットしてくれるのか」が非常に重要だということ。つまり、いかに会社を「勝たせよう」とする社員を増やしていくかが大事だということです。
――その答えが、なぜ「週休3日制度」だったのでしょうか?
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バックナンバー (49)
リーダーが紡ぐ組織力
- 第49回 「週休3日制の導入」で最高業績の老舗企業。ワンマン経営から自走する組織への軌跡
- 第48回 自走する組織へと導いた「凡人社長」が気づいたリーダーシップの本質
- 第47回 社員の反発で目覚めたリーダー。自律型組織を生み出すために貫いた葛藤と覚悟
- 第46回 教育で人は変わらない。社長の信念が証明した「人が辞めない組織」の作り方
- 第45回 倒産寸前の企業を蘇らせたリーダー。社員の主体性を引き出すために20年貫いたこと