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2019年6月21日(金)更新

採用マーケティング

採用マーケティングとは、人材採用に消費者マーケティングの考えを活かす取り組み全般を指します。労働人口が減少する中、企業ニーズにマッチした人材の確保は難しくなりつつあります。そのため、自社の戦略に基づいた採用ターゲットと自社の魅力を定義し、さまざまなチャネルを通じてアプローチしていく採用マーケティングに注目が高まっています。

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採用マーケティングとは?

採用マーケティング(Recruitment Marketing)とは、人材採用の世界にマーケティングの考え方を取り入れたアプローチです。米国のHRテック企業を中心に、優秀な人材の採用効率性を重視して取り入れられています。

自社の戦略に基づいた「採用ターゲットとなる人材」と、採用ターゲットにとって有益な自社の魅力を定義し、それらを転職サイトや広報活動、社員紹介、イベントなどさまざまなチャネルを通じて発信していく取り組みが多くの企業で始まっています。また、デジタルマーケティングの技術を応用し、どの採用手段への投資が最も効率的なのかを可視化しながら、注力すべきチャネルにリソースを集中させようとする動きも活発になっています。

今回は採用マーケティングの概要や注目される背景、具体的な手法を中心にご紹介します。

HR Technology Conference 2015 Smashfly社の展示内容より

採用マーケティングが注目される背景

採用マーケティングが注目される背景には「採用競争の激化による潜在層獲得の必要性」と「多様な価値観に合わせた情報発信」の2点が挙げられます。

採用競争の激化による「潜在層」獲得の必要性

少子高齢化が進んで国内の労働人口が減少する一方、変化の早いビジネス環境に適応するために優秀な人材を確保する重要性は高まっています。そのため、必要とする人材の採用が非常に困難な時代 になっていると言えるでしょう。

日本企業の採用活動は学生を対象とした新卒一括採用が中心で、「未経験の若者を受け入れて長期間かけて育成する」というアプローチが一般的であり、現在でも大企業は新卒一括採用が一般的です。

一方で、外資系企業・異業種からの新規参入や、従来のビジネスモデルが破壊される 破壊的イノベーションが次々と起こり、競争環境は激しさを増しています。その結果、大手企業でも中途採用で即戦力を受け入れようとする動きが活発化しています。

こうした中、求人広告や人材紹介会社を利用した母集団形成に頼りきった中途採用活動は限界を迎えているといわれています。

優秀な人材は、現在の会社での活躍と他社への転職の可能性を両方とも視野に入れてキャリアを考えており、転職サイトや人材紹介会社に登録して活動する「転職顕在層」になる前に、リファラル採用を通じた転職を利用する傾向も強まっています。

そのため、転職サイトなどを通じた情報発信だけでなく、自社がターゲットとする人材であれば潜在層までもターゲットにしてメッセージを届けようとする採用広報が求められています。

多様な価値観に合わせた情報発信

転職サイトや人材紹介会社を経由した採用活動でも、採用マーケティングの重要性は増しています。

多様な価値観が尊重され、労働者のモチベーションも多様化しています。 大手企業であっても将来の不確実性が増しており、会社の知名度や安定性、高い年収などに加え、「多面的に働ける場所かどうか」を会社選択の判断基準としています。

  • 「社会的にどんな意義のある事業なのか」
  • 「どのような人たちと働くのか?」
  • 「どのような経験・スキルを得ることができ、50~60代までを視野に入れたキャリアが築けるのか?」

といった点も重視する応募者・求職者が増えています。

そのため、自社の魅力を「顕在層」だけでなく、「潜在層」にもわかりやすく伝えることが重要です。

「新たな働き方」や「キャリア」に関心を持っている人たちに、転職活動に入る前から自社を認知してもらえるように、継続的な情報発信を行っていくことが採用市場における差別化の重要なポイントとなっています。

「採用マーケティング」の概要

採用マーケティングでは採用ターゲットが自社を認知してから、入社し活躍するまでのプロセスを、上記の図のような「ファネル」(見込み客が検討・商談・成約などのプロセスを進むごとに少数になっていくこと)で表現します。

採用マーケティングにおけるファネル

「潜在層」として企業から発信される情報に接触した人材が、より具体的に転職の検討を始めることで「顕在層」となります。

「顕在層」の人材が特定のポジションへの応募や、企業からのスカウトに返信すれば「候補者」となり、選考を通過して企業からの内定(オファー)を受諾すれば、入社して「従業員」となります。

これら、一連のプロセスの中にはさまざまな課題があり、この課題を解決していくことで、採用活動を効率化できる手法が採用マーケティングです。

従来の採用手法の課題

従来、一般的だった採用手法の課題には以下が挙げられます。

  • 企業の情報発信のターゲットが、求人サイトや人材紹介会社の利用者など顕在層に偏っていた
  • 企業から発信される情報が、企業概要や経営トップのメッセージなどに偏っており、そこで働く従業員のリアルな姿が伝わっていなかった
  • 情報発信と母集団形成に投下されるリソースが「応募数」など、最終的な採用の成果と必ずしも一致しない指標で決定されており、リソースにムダがあった
    (採用に結びつかない求人媒体への広告費の投下など)
  • 応募やスカウト返信後の「ユーザー体験」が重視されず、選考プロセスの途中で企業に対するイメージの改善・悪化に戦略的に取り組めていなかった

採用マーケティングでは、実際に面接に進んだ人材だけでなく、企業の情報発信に触れる「潜在層」を含めた採用広報が重要です。デジタルマーケティングの技術を併用し、「潜在層」への効果的な施策の洗い出しから「顕在層」の質の分析も含めた対策が必要となります。

消費者マーケティングの世界で起きたこと

採用の世界でも、消費者 マーケティングの世界で起きてきたことと同じ現象が起きています。

消費者マーケティングの世界では「テレビ広告に代表されるマスマーケティングを通じ、消費者に「刺激」を与えることがブランド認知に効果的である」という認識が一般的でした。 (採用の世界では求人サイト上の目立つ場所に広告を表示し、大量の応募を集めようとする手法が該当します)

そのため、消費者が実際に店に足を運び、商品を目の前にした意思決定に影響を与える余地は少ないと考えられてきました。

しかし、2000年代以降からP&Gが大規模な消費者の行動分析に基づいて打ち出した、「First Moment of Truth(FMOT)」や「Second Moment of Truth(SMOT)」という考え方を採用したことで、マーケティング市場は一変したといわれています。

First Moment of Truth(FMOT)

Moment of Truthとは「真実の瞬間」を意味し、消費者が企業の商品やサービスと接する僅かな時間で、そのブランドに対する評価を決定する瞬間を指します。

P&Gの調査では、消費者はテレビ広告を見てすぐに次に購入するブランドを決定しているのではなく、店に足を運び、棚を眺めた際のわずかな時間で意思決定をしていることが明らかになりました。

この瞬間を「First Moment of Truth」(1つ目の真実の瞬間)と呼びます。

【出典】 ZMOT 公式サイト/Google

Second Moment of Truth(SMOT)

Second Moment of Truth(SMOT)とは、消費者が購入した商品を実際に使用し、使用感に基づいて評価を決定する瞬間を指します。

実際に使用した上での評価は、リピート購入の意思決定や、周囲の家族や友人への口コミに影響するため、マーケティング上ではSMOTも非常に重要です。

Zero Moment of Truth (ZMOT)

その後、インターネットの普及により、P&Gが打ち出したフレームワークに対し、検索エンジンであるGoogleが「Zero Moment of Truth (ZMOT)」という新たな視点を付け加えました。

【出典】ZMOT 公式サイト/Google

Zero Moment of Truth (ZMOT)とは、 消費者がテレビCMやWeb広告で商品やサービスを認知してから、実際に店頭やWebサイトで購入するまでの間に行われる検索行動を指します。

実際に商品・サービスを使用した消費者の声は、その人の周囲の限られた範囲に留められていましたが、インターネットの登場により、だれでも自分の口コミを投稿し、また他の人の投稿を検索して読んだ上で、購入の意思決定をすることが可能になりました。

この変化は情報発信の主導権が、大手メーカーやマスコミから、消費者の手に移ったことを意味しており、マーケティングの世界にとっても大きな変化です。

マスメディアは資金力の多寡により利用する企業が限られていました。しかし現代は、企業側が発信するメッセージが非常に重要で、消費者の共感を呼ぶものであるか、あるいは実態に即していて裏表のないものであるかどうか、といったことが求められます。

消費者に共感される企業のメッセージはSNSなどを通じて拡散され、投下した広告費以上の効果をもたらすのに対し、商品やサービスそのものの価値とかけ離れたメッセージは、消費者の反論やネガティブな口コミによって効果が打ち消されてしまいます。

そのため、企業には、自社の商品やサービスがターゲットとする顧客を明確にし、彼らの共感を呼ぶような大義名分、「世の中にどういう価値を届けたいのか」というビジョンを打ち出しながら、それを具体化した商品を提供していくことが、これまで以上に求められています。

採用の市場でも同様の変化が起きている

採用市場・転職市場でも、消費者マーケティングの世界と同様の変化が起きています。

従来は採用活動自体が「顕在層」に偏っていました。しかし、人材不足による競争激化と応募者・求職者が多様な情報源を使って自由に企業情報にアクセスできるようになったことをきっかけに、今までの採用活動を見直す動きが加速しています。

そのため、企業はインターネット上のリアルな情報が採用候補者に強く影響を与えることを認識し、「潜在層」に対する採用広報も徹底しなければいけません。今まで以上に組織の ミッション・ビジョンを外部に打ち出し、外部向けのイメージと企業の実態に乖離がないコンテンツの制作(従業員の生の声など)が、採用市場の差別化につながるようになりました。

採用マーケティングの具体的な手法

採用マーケティングの導入には、従来の採用活動と異なる手法を踏まなければいけません。ここでは、採用マーケティング手法の一例をご紹介いたします。

ターゲット(人材要件)の明確化

採用マーケティングでは、事業の拡大・縮小を踏まえた上で獲得したい人材の質・量(人材要件)を見極め、優秀な人材像の可視化を行います。社内で高い業績やパフォーマンスを上げている人材を対分析し、自社の採用戦略に基づいた人材要件を構築していきます。

ターゲットの明確化は採用マーケティングの結果を左右する重要なプロセスであり、採用基準の策定にもつながるため、丁寧に定義していくことが大切です。

自社・競合他社分析

自社が必要とする人材を獲得するためには、採用担当者や管理職の自社に対する理解を深めなければいけません。その作業のひとつとして、自社・競合他社を分析し、自社の魅力や強みを可視化、採用ターゲットに訴求するポイントを見出すことが挙げられます。

自社・競合他社の分析では、SWOT分析3C分析などのフレームワークが有効です。

自社の強みと弱みを知り、応募者・求職者の視点から「働きやすい職場」や「キャリア形成がしやすい社内制度」、「一緒に働く上司や同僚の生の声」など興味を持ってもらえるような自社の魅力を洗い出します。

ファネル別に課題を整理

採用したいターゲットや自社の強み・魅力を決定したら、今までの採用活動を採用候補者のファネル別に課題を洗い出し、整理します。

課題の洗い出しでは、採用ターゲットとなる「潜在層」「顕在層」「候補者」のチャネルごとのアプローチ方法や広告施策、情報発信の内容を中心に精査していきます。また、デジタルマーケティングツールを使って、KPIを設定し、それぞれのファネルでのターゲットの行動特性や質なども考慮することも効果的です。

KPIには、広告における応募率やアクションを実施する際の費用対効果(人件費やその他のコスト)を設定すると課題を可視化しやすく、改善策の立案に役立ちます。

優先順位を決めて実行

課題に対する改善策の見通しが立った段階で、優先順位をつけて、施策を実施していきます。施策の一例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 求人票の見直し
  • 社員紹介の実施
  • 採用会食
  • 採用管理システムの導入
  • 社内メディア(記事コンテンツ)の運用
  • 外部イベントの企画・運営
  • 活用する求人サイトや複数のSNSの選択

これらの施策ごとに得られる効果やコストを予測し、優先順位を付けます。中でも、求人票の見直しや活用する求人サイト・SNSの選択は自社が求める人材像との相性もあり、費用対効果が高く、改善しやすいアクションといえます。

施策の振り返り・データ検証

採用マーケティングでは、実際に行った施策の振り返りやデータ検証を通じて、次回の採用施策を改善していきます。採用プロセスの中で起きた問題や採用後のミスマッチ、応募率やイベントの反応、さらには入社後のパフォーマンス・周囲の評価、離職率も踏まえて、総合的に判断し、PDCAを実施していくと効果的です。

また、労働市場の応募者・求職者の動向やニーズの変化に対しても素早く対応できるように継続的な調査も実施しておきましょう。

採用マーケティングに取り組む企業に求められるもの

採用マーケティングに取り組むためには「データの蓄積・分析による採用活動の効率化」と「採用マーケティングに適した魅力ある組織の構築」が必要です。

データの蓄積・分析による採用活動の効率化

消費者マーケティングの世界では、2000年代以降、インターネット広告の普及やアドテクノロジーの登場によって、広告による効果の可視化と効率化が進みました。

ムダの可視化と効率化は必ずしも広告費の削減を意味しません。「実は効果が無かった」広告に投入されていたリソースを削る一方、本当にターゲットとしたい消費者に対し、よりきめ細かく、行動や感情の理解に基づいたコミュニケーションが行われます。

採用の世界でも従来は顕在層だけをターゲットとしていたのに対し、今後は潜在層もターゲットにする必要があります。

「新卒採用のみを行っていた企業が、即戦力の中途採用を開始する」あるいは「優秀なエンジニアを求め、海外からの直接採用に進出する」など、採用担当者が向き合うべき人材、情報のチャネルなど、やるべき事は増え続けています。

「企業が成長するために、最も必要な人材を獲得するには何をすべきか?」に対して妥協無く取り組むためには、応募経路ごとの採用コスト(総額・単価)や、人材会社ごとのパフォーマンスなど、採用活動の問題点を可視化し、リソースを再配分していく事が必要です。

また、選考における見極め精度の向上も重要です。

従来の中途採用では、面接の質問が面接官の裁量に委ねられており、「採用した人材が本当に優秀であったのか?」「自社でパフォーマンスを発揮できる人材であったのか?」という観点が十分に顧みられてきませんでした。

しかし、採用活動が人材の獲得を通じた事業貢献と定義すれば、本来は入社した人数ではなく、事業に貢献できたかで評価されるべきです。

これまでこうした視点が十分に追求されていなかったのは、採用を担当する部署と入社後の受け入れや育成・評価を担当する部署は別であることが原因といえます。

まずは現在の採用活動に関するデータを集約し、改善の余地を洗い出し、採用後の人材のパフォーマンスをデータ化することが大切です。

こうした人材のデータ活用を促進するツールとして、近年採用プロセス(採用経路や面接過程での質疑応答内容など)を一元管理し、振り返ってデータを分析することのできる「採用管理システム」に注目が高まっています。


採用管理システムの詳細については、こちらの記事をご覧ください。
【関連】「採用管理システム」導入メリットと、比較・検討のポイント/BizHint


採用マーケティングに適した、魅力ある組織の構築

採用マーケティングを企業の成長に最大限活かすためには、データ分析だけでは不十分です。

データ分析の結果、さまざまな情報チャネルからの発信を最適化し、採用プロセスにおけるムダを徹底的に省いた上で、「自社がどんな職場なのか?」を向き合う必要があります。

  • 企業・組織として、優秀な人材が能力を最大限に発揮し、また学習しながら成長していける場所であるか?
  • 優秀な人材がミッション・ビジョンに共感し、組織へのエンゲージメントを持ちながら、より貢献したいと思える組織なのか?

職場としての自社の魅力を明確にし、採用ターゲットに「働く従業員がいかに魅力的に映るか?」というポイントを抑えながら、日々の情報発信の在り方を追求することが大切です。

まとめ

  • 採用マーケティングとは、消費者マーケティングの考えを採用した採用手法で、優秀な人材の採用活動を効率化する手法として注目されています。
  • 採用マーケティングでは、自社が獲得したい人材を定義し、自社・競合分析で出した自社の強み・魅力を、ファネル(潜在層、顕在層、候補者)ごと最適な手法で発信し、定量的な視点からPDCAを回すことが重要です。
  • 採用マーケティングを実施するには、データの蓄積・分析による採用活動の効率化と採用マーケティングに適した、魅力ある組織の構築が必要です。

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