はじめての方はご登録ください(無料)会員登録

2016年12月22日(木)更新

採用マーケティング

「採用マーケティング」とは、人材採用に消費者マーケティングの視点を活かす取り組みを指します。労働人口が減少する中、企業のニーズにマッチした人材の確保は益々難しくなりつつあります。そこで、自社の戦略にもとづいて採用ターゲットとなる人材を定義した上で、ターゲットにとっての「働き場所」としての自社の魅力を定義し、その魅力を従来の転職サイトだけで無く、広報活動や社員紹介など様々なチャネルを通じて発信していこうという取り組みが採用に力を入れる企業で始まりつつあります。また、デジタルマーケティングの世界の技術を応用し、どういった採用手段への投資が最も効率的なのか、可視化しながら注力すべきチャネルにリソースを集中させようとするのも採用マーケティングの発想と言えます。

採用マーケティング に関するニュースや勉強会の情報を受取る

フォローする

目次

    1.採用マーケティングとは?

    「採用マーケティング」(Recruitment Marketing)とは、人材採用の世界にマーケティングの考え方を取り入れようとするアプローチで、米国のHRテック企業などを中心に、優秀な人材を効率性を重視して採用するための手法として提唱されています。

    この記事では採用マーケティングと従来の採用手法とでは何が違うのか、また日本企業が取り組んでいる採用マーケティングの実例についてご紹介します


    HR Technology Conference 2015 Smashfly社の展示内容より

     

    2.採用マーケティングが注目される背景

    採用競争の激化による「潜在層」獲得の必要性

    経済活動に占める製造業の割合が低下し、ソフトウェア開発や企画職、サービス業など第3次産業の割合が高まり続けています。

    社会全体の少子高齢化が進み、同時に企業の競争優位に占める人材の重要性が高まっていることから、優秀な人材の採用が非常に困難な時代になっていると言えるでしょう。

    従来であれば、日本企業の採用活動は新卒一括採用が中心であり、未経験の若者を受け入れて長期間かけて育成するというアプローチが機能していました。

    現在でも大企業を中心に新卒採用は盛んに行われています。一方で、海外や異業種からの競合企業の参入や、従来のビジネスモデルが通用しなくなる破壊的なテクノロジーの普及によって競争環境の変化は激しさを増しており、結果として大手企業でも中途採用で即戦力を受け入れようとする動きが活発化しています。

    こうした中、いわゆる「ナビサイト」に代表される求人広告や、人材紹介会社を利用した母集団形成に頼り切った中途採用活動は限界を迎えていると言えるでしょう。

    というのも優秀な人材であればあるほど、現在の会社での活躍と、中長期的な他社でのキャリアの可能性の両方を視野に入れて活動しており、転職サイトや人材紹介会社に登録して活動する「転職顕在層」になる前に、知り合いからの声がけなどによって、突然転職してしまうからです。

    優秀な人材の獲得には、これまで一般的だった転職サイトなどの情報源を通じた発信だけで無く、自社がターゲットとする人材であれば潜在層までもターゲットにしてメッセージを届けようとする姿勢が求められているのです。

    多様な価値観に合わせた情報発信

    また、これまで通りに人材紹介会社などを経由して転職する場合でも「採用マーケティング」の重要性は増しています。

    経済が成熟するにつれ、人々のモチベーションの源泉は多様化しています。 従来であれば、会社の知名度や安定性、高い年収など、会社を選ぶ際の判断基準は分かりやすいものでした。

    しかし、これまで安定していると思われていた大手企業であっても経営が傾き、リストラを余儀なくされる姿を多く目にした現代の求職者は、会社の知名度や年収だけで無く、より多面的に働く場所を選んでいるようです。

    たとえば

    「社会的にどんな意義のある事業なのか」
    「どの様な人たちと働くのか?」
    「どの様な経験・スキルを得ることができ、50−60代までを視野に入れたキャリアが築けるのか?」

    といった点です。

    こうした様々な観点における自社の魅力を、実際に転職活動に入ってからの限られた期間で余さず伝えることは容易ではありません。

    むしろ新たな「働き方」や「キャリア」について関心を持っている人たちが転職活動に入る前から自社を認知してもらえるよう、継続的な情報発信を行っていくことが採用市場における差別化の重要なポイントとなっているのです。

    3.「採用マーケティング」の概要

    採用マーケティングでは採用ターゲットとなる人材が自社を認知してから、入社し活躍するまでのプロセスを以下の図のような「ファネル」で表現します。

    「ファネル」とは英語で「漏斗(ろうと)」の事で、左側が太く、右側に行くほど細くなっているのが特徴です。

     

    「潜在層」として企業から発信される情報に接触した人材が、より具体的に転職について検討し始めることで「顕在層」となります。

    「顕在層」の人材が特定のポジションへの応募や、企業からのスカウトに変身すれば「候補者」となり、選考を通過して企業からの内定(オファー)を受諾すれば、入社して従業員となります。

     

     

    従来、一般的だった採用手法の問題点としては以下のようなポイントが挙げられます。

    1. 企業の情報発信のターゲットが、求人サイトのユーザーや人材紹介会社の利用者など顕在層に偏っていた
    2. 企業から発信される情報が、企業概要や経営トップのメッセージなどに偏っており、そこで働く従業員のリアルな姿が伝わっていなかった
    3. 情報発信と母集団形成に投下されるリソースが「応募数」など、最終的な採用の成果と必ずしも一致しない指標で決定されており、リソースのムダがあった
      (採用に結びつかないムダな応募が多い求人媒体への広告費の投下など)
    4. 応募やスカウト返信後の「ユーザー体験」は重視されず、選考プロセスの途中での企業に対するイメージの改善・悪化に戦略的に取り組めていなかった

    こうした採用手法の課題は、先に述べたような採用競争の激化に加え、応募者・候補者が非常に多様な情報源に自由にアクセスできるようになったことで浮き彫りになっています。

     

    従来であれば、企業が外部のコンサルティング会社やライター、カメラマンに依頼し、自社が「こうありたい」と願うイメージを形にしてもらった上で、求人サイトなどを通じて発信するという手法が一般的でした。

    しかし現在では、転職に関する口コミサイトや新卒就活生を対象にした掲示板、あるいはFacebookをはじめとするSNSを通じて、「友達の友達」といったツテを辿って、実際にその企業で働く社員の声をチェックすることが非常に容易になっています。

    また同時に、選考過程で外部に発信されているイメージとは違う対応を受けた、失礼な対応をされた、といった候補者の声も外部に伝わりやすくなっています。

     

    4.消費者マーケティングの世界で起きたこと

    採用の世界で今起きていることは、これまで消費者をターゲットとしてマーケティングの世界で起きてきたこと基本的には同じです。

    消費者マーケティングの世界でも長い間、テレビ広告に代表されるマスマーケティングを通じ、消費者に「刺激」を与えることでブランドを認知してもらうことが最も重視されてきました。
    (これは求人サイト上で目立つ場所に広告を表示し、大量の応募を集めようとする姿勢に似ています)

    一方で、消費者が実際に店頭に足を運び、商品が陳列された棚を目の前にして行う意思決定に影響を与える余地は少ないと考えられてきたのです。

     

    この考え方に一石を投じたのが、2000年代に入ってからP&Gが大規模な消費者の行動分析にもとづいて打ち出した、「First Moment of Truth(FMOT)」「Second Moment of Truth(SMOT)」という考え方です。

     

    「Moment of Truth」とは「真実の瞬間」を意味し、消費者が企業の商品やサービスと接する僅かな時間で、そのブランドに対する評価を決定する瞬間を指します。

    P&Gの調査では、消費者は実はテレビ広告を見てすぐに次に購入するブランドを決定しているのでは無く、店頭に足を運び、棚を眺めた際のわずかな時間で意思決定をしていることがあきらかになったのです。

    この瞬間を「First Moment of Truth」(1つ目の真実の瞬間)と呼びます。

     

    Google ZMOT 公式サイトより

     

    これに対して「Second Moment of Truth(SMOT)」とは、消費者が購入した商品を実際に使用し、使用感にもとづいて評価を決定する瞬間を指します。
    実際に使用した上での評価は、次回のリピート購入についての意思決定や、周囲の家族や友人への口コミに影響しますから、SMOTも非常に重要です。


    その後、インターネットが普及したことでP&Gが打ち出したこのフレームワークに対し、検索エンジンのGoogleがあらたな視点を付け加えました。

    それが「Zero Moment of Truth (ZMOT」です。

    Google ZMOT 公式サイトより

     

    ZMOTはその名の通りFMOTの前に位置し、消費者がテレビCMやWeb広告で商品やサービスを認知してから、実際に店頭やWebサイトで購入するまでの間に行われる検索行動を指します。

     

    従来であれば実際に商品・サービスを使用した消費者の声は、その人の周囲の限られた範囲に留められていました。

    しかしインターネットの登場により、だれでも自分の口コミを投稿し、また他の人の投稿を検索して呼んだ上で、購入の意思決定をすることが可能になったのです。

     

    これは情報発信の主導権が、大手メーカーやマスコミから、消費者の手に移ったことを意味しています。

    従来であれば、企業側に取って都合が良く、売上を最大化することのできるメッセージをマスメディアを通じて拡散することは、資金力さえ有れば非常に容易でした。

     

    しかし現代では、企業側が発信しているメッセージが消費者の共感を呼ぶものであるか?、また実態に即し、裏表のないものであるかどうかが非常に重要です。

    消費者に共感される企業のメッセージはSNSなどを通じて拡散され、投下した広告費以上の効果をもたらすのに対し、商品やサービスそのものの価値とかけ離れたメッセージは消費者の反論や、ネガティブな口コミによって効果を打ち消されるのです。

     

    企業にとっては、自社の商品やサービスがターゲットする顧客を明確にし、彼らの共感を呼ぶような大義名分、「世の中にどういう価値を届けたいのか」というビジョンを打ち出しながら、それを具体化した商品を提供していくことが、いままで以上に求められていると言えます。

     

    採用市場・転職市場において企業が提供しているのは、人々がそれぞれの人生の中の一定期間、平日の大部分の時間を過ごす「職場」という商品です。

     

    消費者マーケティングの世界と同様に、組織のミッション・ビジョンを打ち出すことや、外向けのイメージと実態に乖離のない、従業員の生の声が採用の追い風になる様な組織であることが、求められているのです。

     

    5.採用マーケティングに取り組む企業に求められるもの

    データの蓄積・分析による採用活動の効率化

    消費者マーケティングの世界では、特に2000年代以降、インターネット広告の普及や様々なアドテクノロジーの登場によって、広告による効果の可視化と効率化が進みました。

    ムダの可視化と効率化は必ずしも広告費の削減を意味しません。「実は効果が無かった」広告に投入されていたリソースを削る一方、本当にターゲットとしたい消費者に対し、よりきめ細かく、行動や感情の理解に基づいたコミュニケーションが行われるのです。

     

    採用の世界で必要とされていることもこれと同様です。

    従来は顕在層だけをターゲットとしていたのに対し、今後は潜在層もターゲットにする。

    新卒採用だけを行っていた企業が、即戦力の中途採用を開始する。

    あるいは優秀なエンジニアを求め、海外からの直接採用に進出する。

     

    採用担当者が向き合うべき人材、情報のチャネルなど、やるべき事は増え続けています。

     

     

    自社の将来の成長にとって、最も必要な人材を獲得するには何をすべきか? 妥協無く取り組むためには、応募経路毎の採用コスト(総額・単価)や、人材会社毎のパフォーマンスなど、現在の採用活動の問題点を可視化し、リソースの再配分の余地を見つけることが第一歩です。

     

    さらに今後必要な視点として、選考における見極め精度の向上が挙げられます。

    従来の採用活動、特に中途採用においては、面接における質問は書く面接官に任されており、採用した人材が本当に優秀であったのか?自社でパフォーマンスを発揮できる人材で有ったのかといった観点は、十分に顧みられてきませんでした。

    しかし、採用活動が人材の獲得を通じて事業貢献するためのものだとすれば、本当の採用コストは単に入社した人数では無く、一定期間後に離職せずに会社に残っており、事業に貢献している人材に対するコストで評価されるべきです。

     

    これまで採用を担当する部署と、入社後の受け入れや育成・評価を担当する部署はべつである事が多く、またデータも別々に管理されていることからこうした視点は十分に追求されて来ませんでした。

     

    まずは現在の採用活動に関するデータを集約し、改善の余地を洗い出すことから。そしてその先には採用後のここの人材のパフォーマンスをデータ化し、比較することで開ける大幅な改善のポテンシャルがあるといえます。

     

    採用マーケティングに耐えうる、魅力ある組織をつくる

     

    「採用マーケティング」を企業の成長に最大限活かそうとするならば、取り組むべきことはデータ分析に留まりません。

    先ほど見たように、テクノロジーの進化と普及は、情報発信の主導権を消費者の手にもたらしました。

     

    データ分析の結果、様々な情報チャネルからの発信を最適化し、採用プロセスにおけるムダを徹底的に省いたとしても、最終的に向き合わなければならないのは「自社がどの様な職場であるのか?」というポイントです。

     

    企業として組織として、優秀な人材が能力を最大限に発揮し、また学習しながら成長していける場所なのか? またその様な人材がミッション・ビジョンに共感し、組織へのエンゲージメント(愛着)を感じながら、より貢献したいと思える組織なのか?

     

    「採用マーケティング」における情報発信のあり方を徹底的に追求していった場合、最後に競合企業との差を生むのは、職場としての自社の魅力であり、そこで働く従業員がいかに魅力的に映るか?というポイントなのです。

     

     

    採用マーケティングの関連記事

    11件中 1 - 5件

    採用マーケティングの関連記事をもっと読む

    採用マーケティングに関連するおすすめコンテンツ

    中途採用の記事を読む

    ニュースや勉強会の情報を受取る

    フォローしたキーワードの最新トピックをトップページに表示します。 フォローはでいつでも変更することができます。
    フォローを管理する

    目次

    フォローする

    このページの目次

      フォローする