連載:第2回 IT活用 業務改革 最前線
ガラケー社員が大変身、中小企業のIT導入はトップダウンとボトムアップの使い分けがキモ
大阪府八尾市に拠点を置く錦城護謨(キンジョウゴム)株式会社。ゴム関連製品製造事業や土木事業を展開している社員300名弱の中小企業です。社内の基幹システムはオフコンのシステムであるIBM「AS400」を使ってました。そんな中小企業が最新のSaaSのITツールを導入して効率化に着手し始めたとか。これまでスマホもいじれなかった職人たちにスマホとkintoneを付与して社内改革を行った結果、見えてきたものとは。錦城護謨株式会社代表取締役太田泰造さんが中小企業におけるIT化のカギについて語ります。
錦城護謨株式会社
代表取締役 太田泰造さん
近畿大学商経学部卒業後、富士ゼロックス株式会社入社。2001年に錦城護謨株式会社へ入社し、土木事業部長、専務取締役を経て、2009年に代表取締役社長に就任。安心・安全なものづくりに取り組んでおり、歩行誘導ソフトマット「HODOHKUN Guideway」は世界三大デザイン賞のひとつ「iF Design Award 2016」の金賞を受賞するなど海外で高い評価を受ける。社員数は約300名。
トップダウンでIT化を指示するも現場からは大反発
――錦城護謨の事業内容とIT化の状況についてお伺いできますか?
太田泰造さん(以下、太田): 錦城護謨(キンジョウゴム)は大阪府八尾市に本社を置き、ゴム関連製品製造事業や土木事業などを展開しており全国に拠点があります。既存事業以外にも、視覚障害者の方の歩行を誘導するマット「歩導くん ガイドウェイ」なども手掛けています。
弊社の創業は1936年です。これまで80年以上に渡って事業を展開していますが、社内の受注管理などはIBMの基幹システム「AS400」を90年代から使い続けてきました。AS400は昔からあるオフィス業務用コンピューター、要は業務サーバーです。Windowsとは違いハッキングなどの攻撃対象にはなりにくく、セキュリティに関してはシステム投資費用が安価で済むというメリットはありますが……。IBMはすでに一部のAS400ハードウェア製品の保守サポートの廃止を発表していたりします。また、扱えるデータ量に限りがあるので、IoTのデータを取るなど拡張性にも乏しい。専任のエンジニアを置き経営にまつわるデータがわざわざAS400を通さないと見れないのは手間もかかっていましたし、経営リスクと認識していました。迅速な経営判断と事業推進を目指すなかで、システム移行は課題に挙がっていたのです。
私は富士ゼロックスの出身ですのでITに関しては接点があり、 古いシステムを使い続けて、保守メンテナンスできる人が居なくなった瞬間にすべてがブラックボックスになってしまうことを数年前から憂慮していました。 なので、オープン基盤のシステムに移行しようとしたのですが……。
構想を話すとシステムエンジニアと現場の職人たちから非常に反発されました。「動き続けてるんだからこのままでいい」と。職人たちは「情報ツール? 携帯端末とか見ないからFAXしてよ」といった声も多かったです。いくら私が「今はクラウドで新しいシステムがある。クラウド化することで情報の管理が楽になる」と伝えても、「クラウド? ナニソレ、オイシイノ?」という反応をされていました。
――現場が改革を拒むのは中小企業ではよくある話ですね。どう乗り越えたのでしょうか?
太田: 私は「IT化、SaaS導入はしたい! しなければならない!」と、その部分は譲れなかった……。そこで、大方針は私が決めてまずは情報ツールをSaaSで入れることにしました。AS400の置き換えは、人員やコストの問題もあり、まずは情報系ツールからの置き換えを優先したのです。
しかし「じゃあ、このITツールを導入するぞ! 業務をこう変えるぞ!」というところまで私が言ってしまうと、さらなる反発が起こることは目に見えていました。結局、導入したけど誰も使わない……では意味がない。 むしろ、「IT化の実務こそ、私が進めるべきではない」と考えました。となれば、私ではない人に任せるしかありません。社内を見回し、適任者を探しました。
ITツール選定のヒアリングからは全部現場に任せ、サイボウズ社の「kintone」を選びました。 これまで紙で承認作業をしていたワークフローをkintoneに置き換えることからスタートしました。
ITツール、導入成功のカギは「トップダウンとボトムアップの使い分け」
――導入を成功させたカギ、太田社長はどこにあったとお考えでしょうか?
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