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【生産性向上の企業事例5選】取り組む手順や成功ポイントもご紹介

BizHint 編集部 2019年4月10日(水)掲載
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生産性向上とは、投入する経営資源に対して得られた成果を大きくするための取り組みです。働き方改革によって、効率よく柔軟な働き方へ変化が求められるなか、生産性向上は必須の経営課題となっています。この記事では、生産性向上に取り組み企業事例を5社ご紹介するとともに、どのような施策を行うのかを決める手順や成功させるポイントについてもご紹介します。

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生産性向上とは

様々な要因から生産性向上に取り組む企業は確実に増えています。そもそも日本の生産性を世界レベルで見るとどの程度なのでしょうか。

日本生産性本部の「労働生産性の国際比較」によると、2017年の日本の時間当たり労働生産性はOECD加盟36カ国中20位で、特に主要7カ国の中では1970年以降最下位を継続するなど、低い水準となっています。

また、IMDの「世界競争力年鑑」によると、1995年以降20位前後で推移しており、上位には香港やシンガポールなど着実に競争力を高めているアジア各国に比べて遅れをとっている状況です。

人手不足や働き方改革の一環としてだけでなく、グローバル化のなかで競争力を発揮するためには、生産性向上は日本企業にとって必須の経営課題といえます。

生産性向上の施策は大きく4つのパターンがあります。

  • 投入資源減: 例/無駄な業務をなくす など
  • 成果増: 例/教育や人材育成など従業員の能力向上による生産性向上 など
  • 規模縮小: 例/不採算部門の売却や縮小 など
  • 規模拡大: 例/採算部門の設備投資や増員 など

本記事では、これらのパターンを自社に合った取り組みへと具体化させていく過程と、生産性向上の企業事例についてご紹介していきます。

【参考】日本生産性本部:労働生産性の国際比較
【参考】三菱総合研究所:IMD「世界競争力年鑑」からみる日本の競争力 第1回 IMD「世界競争力年鑑」とは何か?


「生産性向上」の詳細や具体的な施策については、こちらの記事で詳しく解説しています。
【関連】生産性向上のために企業が行うべき施策や取組事例をご紹介/BizHint


生産性向上の取り組みを決定する手順

自社の生産性向上を図るには、目的を明確にして問題点を洗い出した上で、具体的な取り組みを決める必要があります。

目的を明確にする

目的の設定は取り組みの方向性を決める重要な要素です。これは、具体的に取り組みに成功したときのイメージやビジョンから考えるとよいでしょう。例えば、システム化で業務の効率化を進めてさらに利益を上げる、業務改革で無駄な業務をなくし全社員の残業をゼロにするなどが考えられます。

目的達成のために必要な改善点についても明らかにしておくと、次の問題点の洗い出しが行いやすくなります。

問題点を洗い出す

目的と改善点から問題点を全て洗い出していきます。担当者では把握しきれない問題点を見落とさないためにも、現場を調査して従業員から意見をもらうのもひとつの方法です。出てきた様々な問題点の中から、緊急度と重要度の高いものをピックアップし、優先順位をつけるなどして絞り込んでいきます。

問題解決のための取り組みを決める

改善するべき問題点が明らかになったら、問題解決策となる取り組みを決めていきます。目的に沿ったテーマを決めた上で、具体的な取り組み内容を決定するとスムーズです。

生産性向上」の記事でも紹介している、以下の5つの取り組みに関しては成功例も多く、テーマ決めの参考としてもお勧めです。

  • 業務の見える化
  • IT技術の有効活用
  • コア業務への集中投資
  • 従業員エンゲージメント・モチベーションの向上
  • 適切な人材配置と人材育成

また、達成度や効果を把握して取り組みの改善に役立てるために、定量的な目標も合わせて設定しておきましょう。PDCAを回しながら改善していくことで、生産性向上を定着化させていくことが狙いです。

手順については、経済産業省が開発し、日本能率協会コンサルティングが提供するポータルサイトの「チェックシート」と「改善マニュアル」も役立ちます。ぜひ参考にしてみてください。
【参考】日本能率協会コンサルティング:サービス産業生産性向上ポータル

生産性向上の企業取組事例

それでは、生産性向上に取り組み、成果をあげている企業の事例を5社紹介します。

業務の見える化と取り組みを継続する仕組みで業績回復/株式会社良品計画

良品計画は、西友のプライベートブランドとして「無印良品(MUJI)」を1980年に立ち上げ、現在では約7,000品目の取り扱い、国内外に900店舗以上を展開する大手製造小売企業です。

きっかけ

業績の急激な悪化により2001年には38億円もの赤字となったことをきっかけに、経営改善の一環で社員の働き方も見直し、社長主導のもと業務改革と仕組みづくりによる生産性向上に取り組むことになりました。

取組内容と効果

主な取り組みとしては、「 業務の標準化 」と「 マニュアルの整備 」です。

業務が標準化されたことで無駄な仕事がなくなりました。また、現場で見つかった問題点と改善点を反映するため、マニュアルを毎月更新する仕組みにしたことで、業務改善を継続しています。また、指導者マニュアルを作成することで、人材育成の仕組みも構築しました。

その結果、定時退社率93%、2015年には過去最高益の約160億円を達成しています。

成功ポイント

良品計画の生産性向上が実現できたポイントは、トップ自らが主導し全社を挙げて取り組みを行ったことです。また、まずは現場の状況を調査して属人的な業務に問題があることに気づき、業務マニュアルを作成して改善し続ける「仕組み」をつくったことにあります。

経営トップの行動が取り組みの大きな推進力になり、仕組みが取り組みを定着化させたことによって、企業風土が改善されて業績の回復と成長に繋がったのです。

【参考】勝ち続ける会社が考えていること。無印良品を立て直した「仕組み」とは|経営をアップグレードしよう!中小・ベンチャー企業の生産性を10倍上げるWEBマガジン
【参考】東洋経済オンライン:良品計画元会長が語る 生産性向上の秘訣とは何か

RPAを導入で業務改善と共に顧客満足度も向上/トリンプ・インターナショナル・ジャパン株式会社

トリンプ・インターナショナル・ジャパンは、世界有数の大手女性下着メーカーの日本法人です。1995年に「ノー残業デー」を導入するなど、働き方改革以前から業務効率化や生産性向上のための取り組みを積極的に実施しています。

きっかけ

増加するECサイトからのオーダーに対して、処理業務が追いつかず出荷が遅れてしまったことにより、顧客満足度が低下。早急に改善するべく業務改革に取り組むこととなりました。

取組内容と効果

顧客の様々な要望に応えるシステム開発には大幅な時間とコストがかかることから、環境はそのままに処理業務を効率化させるためRPAを導入。受注から出荷までの業務を全て自動化しました。

オペレーション業務が人からロボットに代わった結果、作業時間が短縮されミスもなくなるなど業務が大幅に改善されました。結果的に顧客満足度も向上しています。

成功ポイント

個別対応などの煩雑な作業をこなしながら、休むことなく短時間でミスなく処理するRPAの導入によって、処理業務の問題解決と生産効率を高めることができた点が、成功のポイントです。

【参考】RPA テクノロジーズ株式会社:導入事例 EC運営における受注処理業務をデジタルレイバーで自動化

抜本的経営改革のためのクラウドシステムを導入して売上向上/陣屋

陣屋は創業から約100年の神奈川県にある老舗旅館です。倒産の危機を乗り越え、現在では旅館業に加えIT事業も行うなど、活躍の幅を広げています。

きっかけ

2009年、存続の危機に陥っていた陣屋旅館を現女将と代表取締役が継承。売上は過去10年下がり続けていて危機的な状況でした。そのため、旅館を立て直すためには短期間での業務改善が必須な状態だったのです。

取組内容と効果

経営を立て直しの解決策を見出すには、それぞれ個人で持っていた情報を見える化することで旅館運営全体を把握することが重要だと考え、 全ての業務を一元管理できるクラウドシステムを独自に開発して導入。

それまで口頭やボードの手書きで共有されていた様々な情報が、システム上で管理・共有されたことで業務効率化と顧客サービスの向上を実現。結果、売上92%アップと業績の回復に繋がっています。そのほか、週休3日制の導入などで従業員満足度も向上し、離職率は33%から3%へと改善されました。

成功ポイント

IT化への抵抗は大きかったものの、導入をきっかけにシステムを活用せざるを得ない業務環境の整備を着実に進めました。また、社長や女将・マネージャークラスが率先して使用したことで徐々に浸透が進み、全社員を巻き込む取り組みとして大きな成果に繋がっています。

【参考】サービス産業生産性協議会:株式会社陣屋コネクト「きめ細かい旅館サービスを効率的に実現する クラウドアプリケーション」
【関連】ITの力で赤字旅館をよみがえらせた経営改革とは?【Future of Work Japan 2018 イベントレポート】/BizHint

POSレジ導入によるデータ活用でサービス向上とリピート率アップを実現/オオクシ

複数のブランドで理美容室の運営を行うオオクシは、独自の生産性向上の取組により成長を続けている注目の企業です。

きっかけ

多店舗展開に伴う人件費が増加していたにも関わらず、業態の性質上大幅な新規顧客の増加を見込めませんでした。そこで、再来店率を向上させることで売上増加を目指す取り組みを実施することに。

取組内容と効果

売上データを分析して顧客ニーズを詳細に把握するためにPOSレジを導入。来店客の年齢・担当したスタッフ・提供したサービス内容はもちろん、地域の行事などの情報もデータ化。このデータをもとに顧客のニーズを把握し、再来店率の向上に取り組んでいます。

そのひとつとして、接客マニュアルの作成が挙げられます。上記のデータをもとにして作成されたマニュアルを使った研修も実施し、店員のスキル向上に努めました。

その結果、リピート率85%を達成したほか、売上は15年間連続の2桁増加など大きな成果に繋がっています。

成功ポイント

POSレジのデータの分析によって顧客ニーズを見える化し、求められるサービスを可視化した点はもちろん、そのデータをもとにしたマニュアル作成と研修の実施と並行して、成長を記録したノートで指導役社員とのコミュニケーションをとり、生産性向上の意識づけを徹底したことが挙げられます。

【参考】サービス産業生産性協議会:株式会社オオクシ 顧客データの収集・分析により、サービスレベルと顧客リピート率の向上を実現
【参考】生産性向上・人材投資事例集/財務省関東財務局

1日6時間労働の導入で社員の意識改革と自発性を引き出す/株式会社ZOZO

アパレル系オンラインショッピングサイト「ZOZOTOWN」を運営しているZOZO(旧スタートトゥデイ)は、年々成長を続けています。

きっかけ

以前から慢性的な残業の問題を抱えていたことと、生産性をあげるために効率よく働いてほしいという社長の発案から、1日6時間労働時間(通称「ろくじろう」)への挑戦をはじめました。

取組内容と効果

2012年5月から、9時から15時までの「 1日6時間労働制度 」を導入。この制度は強制ではありませんが、6時間労働と8時間労働では同じ給料となっているところに社員のモチベーションを引き出す工夫があります。

その結果、前年と比べて労働生産性が25%アップしたほか、導入半年後には1日の労働時間が約9時間から約7時間へと減らすことに成功しています。

成功ポイント

全社で一斉に制度を導入しつつ実施方法は各部署のトップに任せたことで、それぞれのチームが1日6時間を実現するための工夫や助け合いを自発的に行なったことが挙げられます。

【参考】東洋経済オンライン:「当たり前を疑う。」1日6時間労働導入の狙い。
【参考】日経 xTECH:スタートトゥデイが挑戦する6時間労働制「ろくじろう」、開始1年で何が変わったか

生産性向上に成功している企業の共通点

事例として挙げた企業では、以下のような共通点が見られます。

  • 全社の取組みとして現場レベルで一斉に施策を行っている
  • 業務の見える化を行ったうえで適切な改善策を打ち出している
  • 仕組みをつくって改善を継続している

このような特徴が、生産性向上による業績の好調や従業員満足度の向上などの大きな成果に繋がっている理由でしょう。

紹介した事例の他にも、様々なITツールや、BPOといったアウトソーシングの活用によって効果をあげているケースも多くあります。こうしたサービスや新しい技術の導入を検討する際は、事前にBPR(業務改革)を行うなど、抜本的な改善を視野に入れておくことがポイントです。

生産性向上への取り組みは、継続することで様々な効果があります。最新のサービスについても常にチェックしておくことで生産性向上に役立てられるでしょう。

まとめ

  • 人手不足や働き方改革の一環に止まらず、変化するビジネス環境のなかで競争力を発揮するには生産性向上は多くの日本企業にとって必須の経営課題です。
  • 生産性向上に取り組む手順は、目的と改善点を明確にして問題点を洗い出し、問題解決の取り組みを決めてから実施することがポイントです。
  • 生産性向上のために継続するための仕組みをつくり、全社を挙げた取り組みとして現場レベルで実行することが効果を高めるポイントになります。

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