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ホテル業界の人手不足は深刻?原因と対策を解説

BizHint 編集部 2019年3月20日(水)掲載
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ホテル業界は全業種の中でも人手不足が深刻で、有効求人倍率や離職率が高い特徴があります。人手不足の原因には長時間労働、不規則な勤務形態、休日取得日数の少なさといった厳しい労働環境があり、対策には生産性の向上や、評価・教育制度の整備が重要です。本記事ではホテル業界の人手不足の原因や対策を紹介します。

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ホテル業界が人手不足に陥っている理由

ホテル業界の人手不足の現状は深刻です。例えば国土交通省が厚生労働省「職業安定業務統計」を元に作成した資料によると、2017年度の宿泊分野の有効求人倍率は6.15倍で、全職業合計の1.38倍と比較しても顕著に高い数字を示しています。

【出典】国土交通省 観光庁:「観光や宿泊業を取り巻く現状及び課題等について」(2019年1月28日)

では、なぜこのような状況に陥っているのでしょうか?

宿泊需要の増加と従事者数の伸び悩み

ホテル業界が人手不足に陥っている理由は、旅行・宿泊需要の高まりに対して従事者数が追いついていないという背景があります。

ホテル・旅館へのニーズは、インバウンド需要の増加などで年々高まっています。2012年に836万人だった訪日外国人旅行者は2018年に3,000万人を超え、外国人の延べ宿泊者数も約2,600万人泊から約7,900万人泊へと約3倍へ拡大しました。

同時に外国人旅行者の6倍から7倍を占める国内旅行者も徐々に増加しています。2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けてこの傾向が拡大することが予想されており、そのためにも具体的な施策が必要です。

一方でホテル業界への従事者数はそれほど増加していません。総務省統計局の「労働力調査」によると、2019年までの直近10年間での従事者数は300万人台後半から400万人前半程度で安定的に横ばいで推移しており、増え続ける宿泊需要に対して従業員が不足している状況がわかります。

数年前から民泊が参入ブームになることで受け皿になる可能性も取り沙汰されましたが、営業日数が制限されるなどの法改正があり、依然としてホテル・旅館業界が重要な役割を担っています。

【参考】国土交通省 観光庁:「観光や宿泊業を取り巻く現状及び課題等について」(2019年1月28日) 【参考】総務省統計局:「労働力調査 第4表 主な産業別就業者数」(2019年1月)

過酷な労働環境が原因?

ホテル業界に従事する人数が増加しない1つの背景として、離職率の高さが挙げられます。厚生労働省の発表によると、例年の新規学卒就職者の3年以内離職率は約30%台で推移しているのに対して、宿泊業・飲食サービス業は約50%程度で、2015年卒業者の中で最も高い水準です。

【出典】厚生労働省:「新規学卒就職者の離職状況(平成27年3月卒業者の状況)を公表します」

この離職率の高さや、業界全体として人手不足になっている原因には、長時間労働、不規則な勤務形態、休日の少なさといったホテル業界特有の事情が考えられます。

ホテルは基本的に24時間365日営業しており、いつでも利用客の要望に応えられる体制を組まなければなりません。これが、シフト制による不規則な勤務時間や長時間労働、休日の少なさに繋がります。

実際に憧れを持ってホテル業界に就職した人でも「休みが少なくて思ったよりも辛い」と離職していきます。休暇の取りやすさやワークライフバランスといった福利厚生面も人材確保の課題と言えるでしょう。

ホテル業界の人手不足対策とは?生産性向上と離職防止

ホテル業界の人手不足解消のためには、ホテル業界特有の働き方に即した生産性向上と、働き手のモチベーションを引き出すための評価・教育制度の整備といった対策が有効です。

1. 労働時間の長さ・休日の少なさを生産性向上で解決

人手不足への対策には労働者の生産性を向上させることが重要です。労働効率が上がれば、現状の労働時間の長さや少ない休暇日数といった課題も緩和できる可能性があります。

1-1. ITツール導入

ホテル業界は接客、料理、清掃など人手による作業が非常に多いため、人手不足が解消しづらいのが課題です。しかし現在ではホテル・旅館向けのITツールが普及しており、大幅に効率化したり、あるいは自動化できる業務も増えてきています。

例えばインターネット予約の比率を高めれば予約対応の業務を効率化できます。また、宿泊日、人数、予約内容といった顧客関連の情報も手書き管理ではなくデジタルで一元管理し、PC・タブレット端末などで共有・更新することも可能です。あるいは従業員にそれぞれ端末を持たせれば、来館案内、顧客からの要望、清掃時間といった緊密なコミュニケーションも実現できます。

近年は接客ロボットを導入する企業が注目されていますが、それ以外にもホテル業務の多様な場面で活躍するITツールがあり、それらを活用することでオペレーションの効率化や従業員の負担軽減が期待できます。

ツール導入の費用負担を懸念する事業者も多いですが、導入したほうが生産性向上によって採算性が高まるケースも多くあるため、柔軟な検討がポイントです。

【関連】【用途別】業務効率化ツール12選!導入ポイントもご紹介/BizHint

1-2. 従業員の多能力化

ホテルでは業務の種類に多様性があるのが特徴です。一般的に部門は宿泊、料飲(レストラン)、宴会、営業企画、管理と分かれており、宿泊部門1つをとってもフロント、客室、コンシェルジュ、ハウスキーピングなどがあります。それぞれに専門のスキルや経験が必要なため、単に人数だけを確保してもシフトの平準化が難しく、特定のスキルを持つ人材が少なければ一部の従業員に業務負担が偏ってしまうのが課題です。

そこで有効な解決策となるのが、従業員の多能力化です。1人2役、1人3役と担当できる業務を増やしていけば、専門人材を同時に何人も投入する必要がなく、最小人数で効率的なシフトを組むことができます。また、一部の専門人材に業務が集中することがなく、長時間労働の改善や休日取得の推進にもつながる可能性があります。

多能力化するにあたって教育のコストや、能力を見える化・評価するコストはかかりますが、生産性向上によって補える見込みの高い手段だと言えます。

【関連】多能工化の意味とは?メリット・デメリットと進め方/BizHint

1-3. 業務のマニュアル化・標準化

業務が多岐にわたる上にスキルが属人化しやすく、また離職率が高いために常に新人を教育しなければならない状況のホテルでは、人材教育のコストも膨大だという問題があります。そこで解決策として業務をマニュアル化し、作業を標準化することが有効です。

マニュアル化を実施すれば、新人教育や従業員の多能力化の際の労力を抑えられます。また、業務を洗い出す過程で客観的に見直しができ、無駄を削減できる可能性もあります。

さらに、マニュアルを利用して作業を標準化することも有効です。作業手順や、あるいは接客方法でも、可能な部分は統一すれば、従業員1人1人の作業効率向上やサービス品質のぶれの低減につながり、従業員全体のレベルを底上げできます。また、経験豊富な従業員が退職したとしても、そのノウハウを予め共有しておけば業務レベルの低下を抑えることも可能です。

1-4. スキルの見える化とシフト編成の見直し

生産性向上には、業務スキルの見える化と、それを基にしたシフト編成の合理化も有効です。

例えば清掃や食事提供などの業務で、担当する従業員や担当チームの組み合わせによって作業効率が違うケースがあります。管理者がシフトを編成する際は、生産性のばらつきを考慮してある程度余裕を持った人数を配置したいケースもありますが、その結果、実際の勤務では空き時間が発生する場合もあります。

非効率な配置を防ぎ生産性を向上させるためには、個々人のスキルを定量的に見える化し、習熟度に応じた合理的なシフトを編成することがポイントです。必要最小限の人員でシフトを組むことで効率が上がるだけでなく、予定客数などを考慮しながら手が空きそうな従業員を休暇に回すことで働き方の改善にもつながります。

2. 評価制度や教育制度の整備で人材の定着を目指す。

人材の定着を目指し人手不足を解消するためには、評価制度や教育制度を整備することも有効です。ホテルは他業種と比較して賃金が低く、また非正規雇用の割合が多いのが特徴と言えます。従業員が将来のキャリアパスを明確にイメージし、努力がどのように待遇面に反映されるのかを理解できる環境を作ることは人材の定着に不可欠です。

評価制度の施策の例には、等級制度が挙げられます。経験や能力・知識をランクで分け、等級に応じた業務・役職を任せ、待遇も上げていくという制度です。等級制度があることで自分のポジションを客観視でき、目標に到達するまでに何をすべきなのかが明確になり、モチベーションの向上にもつながります。

また、ホテル業界で人材育成といえば、座学よりも現場に配属して仕事をしながら覚えるOJTが主体という企業もありますが、配属先の上司・先輩によって教育方法に差があったり、業務が忙しく教育に十分な時間が割けない場合もあります。

人材育成と定着を図っていくためには、経験と勘に頼る教育スタイルだけでなく、マニュアルを元にした能力の平準化など、教育レベルを保てるような制度の充実が重要だと言えます。また、経営幹部や中核人材を育成するためには、現場だけでなく経営・マネジメントといった外部研修も有効です。

【関連】人事評価制度とは?評価対象や評価手法、企業事例などもご紹介/BizHint
【関連】Off-JTとは?OJTとの違いやメリット・デメリットを解説/BizHint

まとめ

  • ホテル業界は人手不足が深刻な状況で、全業種と比較しても有効求人倍率、従業員過不足DI値、離職率が高い傾向があります。
  • ホテル業界の人手不足の背景には、長時間労働、不規則な勤務形態、少ない休暇日数といった厳しい労働環境があります。
  • 人手不足対策としての生産性向上施策には、ITツール導入、従業員の多能力化、業務標準化、スキル見える化とシフト編成の見直しなどが挙げられます。
  • 人手不足対策として定着率を高めるには、キャリアパスを明確にする評価制度や教育制度の整備も重要です。

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