【健康経営に取り組む企業事例5選】健康経営支援ツールもご紹介
健康経営は、取り組みを継続して行うことで効果があります。そのためには従業員の健康状態を把握して健康課題に応じた施策を実施し、健康意識を高めることが効果的です。この記事では取り組みを行うポイントや先進企業の取組事例や健康経営支援サービスについてご紹介します。
●健康経営のメリットや、健康経営優良法人・健康経営銘柄の詳細については、以下の記事にてご確認いただけます。
【関連】健康経営とは?メリットや健康経営優良法人、健康経営銘柄などをご紹介/BizHiHint
健康経営に取り組むためのポイント
健康経営では、経営基盤から施策まで連動して行われることが重要です。それには、健康経営優良法人認定制度の認定基準として5つに大別された「経営理念」「組織体制」「制度・施策実行」「評価・改善」「法令遵守・リスクマネジメント 」に取り組むことにより、実現が可能です。
ここでは、認定基準の中で認定要件としての評価項目が多い「制度・施策実行」の取り組みを行うポイントについてご紹介します。
従業員の健康状態について現状把握する
健康経営を行うためには、従業員の健康状態を把握することで、自社における健康課題が見えてきます。そのために有効なデータ例としては、健康診断結果やストレスチェックのデータ、勤怠管理のデータ、離職理由と離職率などの人事データがあります。
このように、社内で保有するデータに加えて健診機関からデータを入手して、心と体の両面から多角的にデータを分析することがポイントです。さらに健康組合などの保険者と連携することで、健康状態と医療費の関係や生活習慣病予防のための特定保健指導の検討など具体的な施策立案に役立ちます。
定量可能な目標を立てる
自社の健康課題を抽出したら、定量可能な指標を目標として設定することがポイントです。
それによって、計画に基づいて実施した施策の効果検証が容易になるほか、PDCAにより改善していくことができるため、継続的な健康経営が推進しやすくなります。
従業員が施策に参加できる工夫を
従業員が健康経営の施策に参加しやすくするためには、職場環境や働き方の改善のほか、従業員の健康への意識改革をあわせて行うことがポイントです。
例としては、長時間労働の抑制や有給休暇取得の促進のために施策を実施する、あるいはスポーツイベントの実施などがあります。産業医のいる場合には連携しながら、定期的な健康情報の提供や面接指導など行うとよいでしょう。こうした産業保健活動も視野に入れ、従業員の参加意欲やモチベーションを高める工夫を盛り込んだ施策を行うと効果的です。
【関連】産業医の選び方・契約の仕方、報酬の相場とは?/BizHint HR
健康経営の企業取組事例
ここでは、既に健康経営を継続的に実践することで効果を上げている企業取組事例を、健康経営優良法人2018の中からご紹介します。
健康リスクに応じた施策を実践/株式会社ローソン
ローソンは、2005年から従業員とその家族の健康づくりに取り組んでいます。その取り組みの特徴は、健診結果から従業員の健康状態を把握し、健康増進への土台となるローソンヘルスケアポイントに加えて、健康リスクに合わせた施策を行っていることが挙げられます。
施策の一例
-
健康課題の把握
全従業員の健康状態を把握するために、ディスインセンティブ施策を実施して健康診断受診率100%を達成 -
ヘルスリテラシーの向上
・健康について学ぶeラーニングや健康づくりの取り組みを一定期間行うなど条件を満たすと、ポンタポイントが最大1万ポイント付与される「ローソンヘルスケアポイント」を実施
・社員の健康意識を高めるために一定の健康増進期間を設け、歩いて元気などの参加コースとチームまたは個人の参加を選択し、条件クリアでポンタポイントを付与する「元気チャレンジ」を実施 -
職場の活性化
健康増進と社員同士のコミュニケーション活性化を目的に、大縄跳びなど運動種目のほか反復横跳びや握力などの体力測定を行う「ローソン健康大運動会」を全国8地区で開催 -
保健指導
健康ハイリスク社員の生活習慣病発症あるいは重症化予防を目的に、産業医などによる継続的な「面談フォロー」や糖尿病リスク社員対象の「宿泊型新保健指導」の実施、管理栄養士による「特定保健指導」を積極的に活用
このように健康経営の土台作りから健康づくりに向けた具体的な対策まで幅広く取り組みを実施し、健康経営を推進しています。
成功ポイント
- CHO(最高健康責任者)である社長を牽引役に、統括産業医と健康保険組合理事長がCHO補佐、人事部内に取組みの推進を担う社員健康チームを設置して組織体制を敷いている
- 各施策を推進する指標として目標値を設定
こうした取り組みによって、2015年から3年連続で健康経営銘柄に選定されたほか、2017年から2年連続で健康経営優良法人に認定されています。
【参考】ローソン/健康経営
【参考】ローソン/ローソングループ健康白書2018
健康づくりからヘルスリテラシー向上へ/花王株式会社
花王は、2008年に「花王グループ健康宣言」を社内外に発信し、健康経営を推進しています。その取り組みの特徴は、「健康づくりの5つの取り組み」を中心に行われ、健康づくりからヘルスリテラシー向上を目指して取り組みを行っていることが挙げられます。
施策一例
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健康増進・生活習慣病 予防対策
・生活習慣病による疾病の予防と削減を目的に、「健診の再検査」を徹底して早期発見と早期治療に導く対策を実施するほか、予防策として「運動・栄養セミナー」や「体力測定」、「産業医による講話会」などを実施
・喫煙者を対象に、「禁煙セミナー」や「禁煙週間」、「禁煙マラソンキャンペーン」を実施
・がん疾病の予防と削減を目的に、「健診の再検査」を徹底して早期発見と早期治療に導く対策を実施
・女性社員の健康増進を目的に、ライフステージに応じて「更年期セミナー」や「食改善セミナー」、「30歳節目研修」などを実施 -
メンタルヘルス対策
ストレスチェック実施後の「フォロー」や社内カウンセラーによる「相談」対応のほか、予防策として「メンタルヘルス研修」を計画的に実施 -
ヘルスリテラシーの向上
社員の健康意識を高めることを目的に、健康づくりに繋がる行動によってポイントが貯まる施策「健康マイレージ」を実施
この他にもヘルスリテラシーの高い社員を育成するための多くの施策を実施しています。
成功ポイント
- 社員の健康状態を比較、分析するため、診断項目や判定基準など健康診断の標準化を行った
- 社員の健康状態を可視化するため、健診結果や問診結果をデータベース化するためのシステムを導入した
- 2020年に向けて花王グループ中期経営計画「K20」を計画し、達成目標を設定して取り組みを推進している
- 2009年から「花王グループ健康白書」を作成して以降、人事担当者や産業看護職による勉強会を行い、施策の改善に取り組んでいる
- 看護職の保健指導力を高めることを目的に、保健指導検討会を実施している
こうした取り組みが認められ、花王は2012年に日本政策投資銀行による最高ランクの健康経営格付けを獲得しています。
【参考】花王/4年連続で「健康経営銘柄」に選定
【参考】花王/健やかで心豊かな生活のために
自ら取組むきっかけづくりから習慣化へ/ロート製薬株式会社
ロート製薬の健康経営の本格的な取り組みは、2004年から健康経営を推進する「オールウェル計画推進室」を設立したことから本格化しました。その特徴は、社員一人ひとりが自主的に健康づくりの取り組みを行うことを目指していることが挙げられます。
施策一例
-
ヘルスリテラシーの向上
健康意識を高めることを目的に、「日本健康マスター検定」の積極的な受験を奨励 -
ワークライフバランス
ワークライフバランスの向上を目的に、有給休暇を4日連続で取得した場合、プラス1日を特別休暇として連続5日間休暇を取得できる「4+1連続休暇制度」を実施 -
健康増進・生活習慣病予防対策
・健康増進を目的に、会長や社長をはじめ全社員参加でBMIや体脂肪率、禁煙など改善したい取り組みごとにチームを組み、チーム目標と個人目標を立てて100日間健康活動を行う「健康増進100日プロジェクト」を実施
・社員の自立した健康づくりを目的に、薬膳料理の提供や自然派整体が受けられる福利厚生施設「スマートキャンプ」を、利用料金は社員の自己負担で提供
このように、社員自ら健康維持・増進に取り組むきっかけづくりに力を注いだ施策を行っています。
成功ポイント
- 2002年から毎年全社員の体力測定を行うほか、2013年からは生活習慣病など目標値を設定し、健康経営の評価を行っている
- 2014年に日本で初めてCHO(チーフヘルスオフィサー=最高健康責任者)を設置。副社長を筆頭に、取り組みを強化する体制を整備
- 有志の社員が集まり最高顧問をCHOが務める「健康企業・健康社員プロジェクトチーム」によって、社内や社外での健康づくりの取り組み活動を行っている
こうした取り組みによって、2014年に健康経営銘柄に選定されたほか、2017年から2年連続で健康経営優良法人に認定されています。
【参考】ロート製薬株式会社/健康経営優良法人2018(ホワイト500)
【参考】ロート製薬株式会社/健康経営の推進で、社員の健康づくりと働き方改革をさらに加速
【参考】あしたの健保プロジェクト/ロート製薬株式会社|企業・健保訪問シリーズ
三位一体で生活習慣病を予防/株式会社大和証券グループ本社
大和証券グループ本社は、2008年にメタボ検診が義務付けられたことをきっかけに、健康増進の取り組みを開始しました。その特徴は、人事部と健保組合、医務室が連携して三位一体で活動することで発言力が強まり、取り組みの実行力が強化されていることが挙げられます。
施策一例
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ヘルスリテラシーの向上
健康に無関心な社員に対して健康意識を高めることを目的に、健康増進イベントの参加に応じてポイントを付与し、健康関連の景品と交換できる「KA・RA・DAいきいきプロジェクト」を実施 -
病気の治療と仕事の両立支援
がん疾患の社員に対して仕事とがん治療の両立を支援することを目的に、「ガンばるサポート」を実施 -
保健指導
イエローペーパーの中で特に重症度の高い社員に対して病状悪化の防止を目的に、受診した検査結果や処方薬、次回通院日を保健師と共有することで徹底した「フォロー」を実施 -
健康増進・生活習慣病予防対策
・健康ハイリスク者の早期発見・早期治療を目的に、保健師や上司が有所見者に対して医療機関での受診を勧奨するための「有所見者受診確認表(イエローペーパー)」を実施
・45歳以上の社員の活躍と生産性向上を目的に、健康増進の取組みを含む自己研鑽プログラムに参加してポイント獲得が水準を満たすと55歳からの給与に反映される「ポイントインセンティブ」を導入
健康データを分析した結果に基づくこうした施策は、医務室や健康保険組合と連携し、健康情報の発信や施策の実行力を強化することで推進しています。
成功ポイント
- CHOと健康経営推進課を設置し、健康保険組合、医務室の三位一体で社員の健康づくりを推進している
- 3か月に1度、CHO(最高健康責任者)、人事担当役員、産業医、健保組合常務理事が集まって健康経営推進会議を実施して社員の健康状態の把握や施策の効果検証、取り組みの改善などを行っている
こうした取り組みによって、2015年から4年連続で健康経営銘柄に選定されたほか、2017年から2年連続で健康経営優良法人に認定されています。
【参考】大和証券グループ本社/健康経営
【参考】大和証券グループ本社/健康増進の取り組み
【参考】あしたの健保プロジェクト株式会社/大和証券グループ本社 企業・健保訪問シリーズ
働き方改善と健康づくりを並行して行う/SCSK株式会社
IT企業のSCSKは、2009年に社長に就任した中井戸氏が現場社員の働き方の実態から会社の将来を憂慮したことをきっかけに、健康経営に踏み切りました。その特徴は、健康増進の施策と働き方を改善する施策を並行で行っていることが挙げられます。
施策一例
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ヘルスリテラシーの向上
社員の健康増進への理解促進を目的に、全社員対象のe-Learningに加え、部課長は集合研修も行う「健康リテラシー研修」を実施 -
ワークライフバランス
適正な働き方の定着を目的に、「みなし残業」「裁量労働制」を導入 -
過重労働対策
月平均残業時間を20時間以下と有給休暇取得日数20日を目標に、2013年に「スマートワーク・チャレンジ20」を実施、達成インセンティブの導入などで翌年に目標達成 -
健康増進・生活習慣病予防対策
社員の意識改革と健康行動の習慣化を目的に、健康診断結果や健康行動の取組むことで1年間に獲得したポイントに応じてインセンティブが支給される「健康わくわくマイレージ」の実施 -
メンタルヘルス対策
メンタル不調者に対してメンタルヘルスケアを強化することを目的に、社内クリニックに精神科の「産業医」を配置したほか、有資格の専門スタッフが相談に対応する「カウンセリングルーム」の設置
健康診断結果や社内アンケート結果などを分析し、施策の効果検証を行いながら取り組みを推進しています。
成功ポイント
- 経営トップを「健康経営推進最高責任者」として産業医など専門スタッフによる「ライフサポート推進部」と「働きやすい職場づくり委員会」が連携して推進している
- 自己管理を促すため、健康サポートシステムを導入して健康診断結果の閲覧のほか健康情報の提供を行っている
こうした取り組みによって、2018年の健康経営銘柄に選定されたほか、2017年から2年連続で健康経営優良法人に認定されています。
【参考】SCSK株式会社/CSR情報:健康経営
【参考】日経 xTECH/「残業半減・有休取得95%」、SCSKはいかにして実現したか
【参考】あしたの健保プロジェクト/SCSK株式会社|企業・健保訪問シリーズ
健康経営の推進に役立つサービス3選
健康経営に取り組む企業が増えるなか、IoTを利用したITソリューションやコンサルティングをはじめ、様々な形態の支援サービスが登場しています。こうしたサービスの活用によって健康経営の推進が支援されることで、社員の健康づくりが促進され労働生産性向上へと繋がります。
ここでは、支援サービスとコミュニティを3つご紹介します。
オフィスおかん
株式会社おかんが行う「オフィスおかん」は、オフィス向けに1食分食べきりサイズで1品100円から惣菜やご飯を提供するサービスです。常温用総菜や箸、容器を入れるボックスと専用冷蔵庫、料金箱を設置すれば、運用はオフィスおかんのスタッフが行います。
特徴としては、管理栄養士がメニュー開発を行っているほか、添加物を控えて健康への配慮がされています。利用法は様々で、ランチに活用するほか、働く女性のお弁当や夕飯づくりの代用としても利用できます。導入によって、食による健康への意識改革を促す効果が期待されます。
【関連】 社内でいつでも1品100円のお惣菜が購入できるぷち社食サービス/オフィスおかん
WellMe
デロイト トーマツ コンサルティングが行う「WellMe」は、健康経営の推進を支援するアプリケーションです。
このアプリは2つの要素から健康経営にアプローチします。ひとつは経営者向けのダッシュボードで、社員の勤怠管理など人事データや検診データから健康状態を把握し、課題に応じたKPIの選定や施策立案を支援します。もうひとつは従業員向けのスマートフォンアプリで、従業員自身で健康状態や目標設定を入力できるほか、部下のパフォーマンス向上に繋がる上司とのコミュニケーションツール、「チェックイン」機能などがあります。
これらのデータはダッシュボードで確認でき、その推移からPDCAによる改善へと役立てることで健康経営の実現をサポートします。
【参考】デロイト トーマツ グループ/健康経営アプリケーション「WellMe」と実行支援サービスのご紹介
FiNC for BUSINESS
株式会社FiNCが提供する「FiNC for BUSINESS」は、人事・健保の抱える課題を、人工知能と専門家によるサービスにより解決を目指す、ウェルネスソリューションです。
FiNC for Businessにより、様々な健康データを可視化。経営者は従業員の健康状態を把握することができ、従業員は食事や体重などライフログを入力して健康づくりに役立つ情報や相談を受けることができます。また、全国20万店舗で使える福利厚生サービスや、栄養・運動などの専門家によるウェルネス研修など、健康経営に役立つ様々なソリューションがそろっています。
【参考】従業員の心と体の健康増進トータルパッケージFiNC for BUSINESS
まとめ
- 健康経営を継続するポイントは、従業員の健康状態から課題を把握する、施策を評価するための定量的指標を設定する、従業員が施策に参加しやすい工夫をすることです。
- 先進企業に共通する特徴として、トップによるコミットメントや保険者等と連携した推進体制を組織して全社を挙げた施策の実施、PDCAによる取り組みの改善を行っていることが挙げられます。
- 健康経営を支援するためのソリューションやコミュニティが出てきています。こうしたサービスを利用して自社の健康経営の推進に役立てるのもひとつの方法です。
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