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連載:第1回 【野中郁次郎・一橋大学名誉教授に聞く、人事発・勝ち続ける組織のつくりかた】

イノベーションの本質は「共感」にあり【野中郁次郎・一橋大学名誉教授に聞く、人事発・勝ち続ける組織のつくりかた】

BizHint 編集部 2018年2月22日(木)掲載
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「イノベーションは、いかにして起こしうるのか?」。その答えは、既にさまざまな研究者や経営者らから提示されてきましたが、いまだに日本が「イノベーション後発国」の地位に甘んじているという現実が厳然としてあります。いったいなぜ、日本ではイノベーションが起こらないのでしょうか。本気でイノベーションを起こすためには、いったい何が必要なのでしょうか? 今回BizHint編集部では、あらゆる企業人が切実に抱えるこれらの問いを、世界的なイノベーション研究者である野中郁次郎・一橋大学名誉教授に直接ぶつけるという試みを企画しました。聞き手は、人事発のイノベーション創発をうったえ、様々なイノベーターへの連続インタビューも手がける、リクルートマネジメントソリューションズエグゼクティブプランナーの井上功氏です。1980年代からその研究が世界の注目を集め、30年後の現在もなお世界中の研究者から参照され続ける野中氏の不朽の理論を、現代の企業人の悩みを知り抜く井上氏が丁寧に紐解く全3回のインタビューには、すべての日本の企業人、特に人事担当者にとってこれからの時代を生き抜く道しるべとなる示唆の数々を詰めました。

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日本企業復活の条件とは?

数十年来の低迷は、過去の成功体験への過剰適応が原因

――先生とは、僕がリクルート時代に手掛けた経済産業省との共同事業でお世話になって以来のご縁です。忘れもしない、2011年3月14日に先生にご登壇いただく予定だったシンポジウムが、3月11日にあの震災があって中止になってしまいました。それからもう7年近く経ちます。

野中: そうだったね。

――当時の経産省との共同事業は、「いかにしてイノベーションを組織的に起こしうるか」というテーマでやっていて、何かと先生にご指導いただきながら取り組んでいました。あれから少しずつイノベーションの重要性は認識されつつあると思いますが、日本企業の現状を見る限り、その認識がまだまだ不足していることを痛感させられます。  例えば2017年末時点での世界時価総額ランキングを見ると、1位がApple、2位がAlphabet、つまりGoogleですね、3位がマイクロソフトで4位がAmazon、5位がFacebookなんです。そのいっぽうで、1989年のランキングを調べると、1位から10位までの中で8社が日本企業でした。

野中: ええ、そうです。

――社会学者のエズラ・ヴォーゲルが「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言ったのは1979年ですよね。それから40年近く経った今、アメリカの企業に押し負けて、すっかり日本企業は存在感を失ってしまいました。日本企業はこの「失われた40年」、特にバブルが崩壊して以降、生産性ががくっと下がったままです。

この状況を変えるためには、先生は何が必要だとお考えでしょうか。

野中: 僕は以前、仲間の研究者とともに書き上げた『失敗の本質』(ダイヤモンド社、1984)という本で、日本軍を組織論的に研究したことがあるんだけれど、その究極のところにあるのが、 過去の成功体験への過剰適応(オーバーアダプテーション) です。近年の日本企業が奮わないのは、いまだにこの性質が存在しているからではないかな。

1984年に発刊され、日本的組織論・戦略論の名著として名高い『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』(左がダイヤモンド社のオリジナル版、右が1991年刊行の中央公論新社の文庫版)。戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝夫、村井友秀氏らとともに、野中氏も名を連ねている。

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