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イノベーション

2018年4月13日(金)更新

ミッションでイノベーターを集め、自由に群れさせよ【野中郁次郎・一橋大学名誉教授に聞く、人事発・勝ち続ける組織のつくりかた】

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世界的なイノベーション研究者である野中郁次郎氏に「なぜ、日本ではイノベーションが起こらないのか?」「本気でイノベーションを起こすためには、いったい何が必要なのか?」を聞く企画の第2弾。前回の記事では、日本企業が奮わない現状の背景に「過去の成功体験への過剰適応」とMBA式の「分析至上主義」があることを喝破した野中氏に、それらを克服して「共感/共観によるイノベーション」を生み出す方法について聞きました。では、イノベーションを起こす上で、人事はどのような役割を果たせるのでしょうか。自らも「人事発のイノベーション」を訴える井上功氏が、現状認識を踏まえつつ詳らかに問うていきます。野中氏は昨年、アメリカ海兵隊について組織論的研究を行った『知的機動力の本質』(中央公論新社、2017)を発表しています。同書のなかで米海兵隊の人事システムに注目する野中氏は、まさに人事こそが経営の真髄であり、鑑識眼をもっていい人材を洞察し、イノベーターを厳しく選び抜きながら、採用後は自由度を与えていつも「群れている」状態を作ることが、人事の果たすべき役割であると説いています。新しい価値が生み出されるイノベーティブな組織に自社を生まれ変わらせたいと願う全人事担当者必読のインタビュー第2弾をお届けします。

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人事こそ、経営の真髄である

「一番重要な仕事は人事」

――イノベーションや価値創造に対する日本企業の人事部の意識は、この5年で少しずつではありますが、高まってきていると感じています。僕は5年ほど前、「人事発でイノベーションを起こす」というアイデアを各社の人事部に話してまわったことがあるんですが、その時点では、彼らはほとんど気にしていなかった。

それが、5年経ったいまようやく「ああ、そうか」と納得されるほどには変わりました。人事部は、既存事業の構造改革も然ることながら、新しい事業を起こすということもやらなきゃいけない。徐々にそのことが認識され始めている気がします。

人事のご経験もある先生は、そのような状況変化についてどのようにお考えでしょうか。

野中: 僕は、GEの前CEOジェフ・イメルトを非常に尊敬しているんですが、たまたま僕がバークレーにいたときに社長就任直後のイメルトが来て、学生に向けて話すのを聞いたことがあります。彼はそこで、 「諸君、俺は社長になったその日から、一番重要な仕事はOB(Organizational Behavior、つまり人事)だと思っている」 と言ったんですね。当時、MBAでOBなんてものを専攻する学生はほとんどいなくて、MBAで人気のファンクションといえばファイナンスかマーケティングだった。そこに彼が来て、「OBだよ」と言った。それが、今でもずっと忘れられないんです。

イメルトは、先代社長のジャック・ウェルチのような銭もうけ重視の考え方から、いい人材を採ることにだんだんと移行していったんだけれど、日本好きで知られる彼は、 日本の経営の本質として人事を重視する考え方がある ということをおそらく知っていたんです。

実際、日本が元気だった頃の社長候補はみんな人事部長だったんですよ。

――人のことは人事が一番よくわかっていますから、納得です。

野中: そう。かつて人事というのは、いつも会社の中をぶらぶらしながら、上司から必ずしも評価はよくないけれど優れた人間がいないか、目を光らせていたんです。僕も人事をやっていたからそれはよくわかります。いつも組合と飲みながらそういうどさ回りをやっていた。トヨタの人事などは現在でもそうしていると聞きます。

大事なのは、会社のどこに優れた人材がいるかを常に察知しているということ。人事には、そういうセンサーが必要だと思います。 どういう人材が会社にいるかを感知して、それを人事、あるいは教育につなげていく。それが本来の人事の役割 です。

それと同時に、かつての人事はトップダウンとボトムアップのバランスをうまくとって仕事をしていましたから、そういう意味では 人事で苦労した経験なくして経営でうまくいくはずがない とも言えるんです。

以前の日本では、意識的にせよ無意識的にせよ、人事が経営のキーになっていました。人事と教育が人を育てるという文化が今でも日本に残っているのは、やはり日本の経営者がヒューマンキャピタルを最重要に考えてきた証拠です。社是を見るとそれがよくわかりますよ。

――それこそ、日本的経営のエートスの一側面ですね。

野中: どの経営者も、言っていることは要するにヒューマンキャピタルなんです。柳井正さんもそう。YKKも「善の循環」と言っていて、人間ベースであることを理念にしている。 それがもっと実体化していけばいい と思います。前回お話ししたようにいまは少しアメリカ流の経営に過剰適応してしまっているけれど、もっと本質を考えたほうがいいと思う。

海兵隊の強さを支える「エリートとしての人事」

「【野中郁次郎・一橋大学名誉教授に聞く、人事発・勝ち続ける組織のつくりかた】」バックナンバー

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