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イノベーション

2018年4月13日(金)更新

自社の存在意義を問う「知的バトル」を全社に仕掛けよ【野中郁次郎・一橋大学名誉教授に聞く、人事発・勝ち続ける組織のつくりかた】

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世界的なイノベーション研究者である野中郁次郎氏に「なぜ、日本ではイノベーションが起こらないのか?」「本気でイノベーションを起こすためには、いったい何が必要なのか?」を聞く企画の第3弾。第2弾では、イノベーション創発における人事の果たすべき役割について野中氏に聞きました。人事は経営の真髄であり、人事は自身もイノベーターとして、優秀な人材を徹底的に選び抜き、自由度を与えて群れさせること。海兵隊やGoogle、Netflixの事例とともに、組織がイノベーティブであるために人事が果たすべき役割が明らかにされました。今回は、そうした役割を踏まえつつ、組織にイノベーションを起こす人事が理解しておくべき本質的な考え方について伺っていきます。自身でもイノベーション創発をテーマにした研修事業を手がける井上氏からの問いかけに対し、ミッションそのものを戦略として、組織の中で不断に磨きあい、知的機動力を高めるべきであると説く野中氏の語りから、これからの人事のあるべき姿が浮かび上がってくる、全人事担当者必読のインタビューです。

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「失敗の本質」とは“知的機動力”である

旧日本軍の最大の敗因は、アメリカ海兵隊の「知的機動力」

――先生は、これからの日本企業が模範とすべき存在として米海兵隊を研究されていますよね。その成果をまとめた『知的機動力の本質』(中央公論新社、2017)においては、その核心として「知的機動力」という概念を提示され、「アメリカ海兵隊が体現している『知的機動力』こそが激動する二十一世紀の『知識社会』でイノベーションによって新しい知識と価値を創造し続ける組織に必須の能力だ」とも書かれています。

先生はなぜ、アメリカの海兵隊に注目されているのでしょうか。

野中: 僕は以前、太平洋戦争を受けて『失敗の本質』(ダイヤモンド社、1984)という本を書いたんだけれども、 そのときの「失敗の本質」は何かというと、端的に言えばアメリカ海兵隊に負けたこと なんですね。

――海兵隊の存在が、旧日本軍敗戦の本当の要因であると。

野中: そう。太平洋戦争というのは、その名の通り海の戦いです。そして、それを可能にしたのが海兵隊という存在だったんです。

当時、アメリカはハワイに基地を持っていて、そこからターゲットである日本に到達するまでの最短ルートが検討されました。そのとき、陸地づたいで戦うという従来の陸軍の発想ではなく、直線でストレートに行ける「海」が選ばれた。

それを技術的に考えたとき、マリアナ諸島(日本側から言えばサイパン・グアム)を押さえれば、あとはB29で爆撃できるということがわかりました。そこから日本までの距離が、ちょうどB29で往復できる距離だったんですね。

それでもう、勝負はあったようなものでした。僕も年寄りですから、3月10日の爆撃を経験しています。そのとき僕の家は焼けてしまったんだけれど、あの時点で、日本というのはもう完全に孤立した存在であるということをはっきりと理解しました。

そういう意味で、 海の戦いを有利にした海兵隊の力こそ、アメリカの勝因であり、旧日本軍の最大の敗因である と言うことができるんです。

――そしてその力の源泉が、知的機動力であると。

野中: そう。知的機動力*1とは要するに、職種の壁を越えてダイナミックにコラボレートする力のことです。 この知的機動力があることで、「賢く戦う(fighting smart)」、すなわち損失を最小限にとどめ、敵に最大限の打撃を与えることが可能になった。 それこそが、海兵隊の強さの秘訣であると言えます。

1)知的機動力……「リーダーのみならず組織成員一人ひとりが現実の市場や技術などの環境変化と組織の動きを感じ取り、組織のビジョンやゴールに向かって組織やその構成単位が常に正しい方向に進んでいるかを適時適切に判断しつつ、戦略や戦術をダイナミックに変えながら組織的に行動していく」(『知的機動力の本質』iii ll.4-8)同書は、旧日本軍の敗因を分析した『失敗の本質』の姉妹篇として書かれ、「アメリカ的合理主義と日本的人間主義の融合」を訴える。アメリカ海兵隊の知的機動力を分析した第一部と、アメリカ海兵隊のドクトリンである『ウォーファイティング』の全訳である第二部によって構成されている。

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