連載:第40回 リーダーが紡ぐ組織力
指示待ち組織が活性化した理由。27年の現場経験が教えてくれたリーダーの鉄則
「提案しても最初から否定される」「言われたことだけやっておけばいい」――。かつて、そんな空気が漂っていた企業があります。2023年4月、創業者である社長の急逝により、現場のエンジニアとして27年のキャリアを持つ橋本吉充さんがコスモテクノス株式会社の新社長に就任しました。経営の素人だった橋本さんは、創業以来30年トップダウン型だった組織を、どのように変えようとしたのでしょうか。橋本さんが見出した「組織を変えた鉄則」とは。詳しく伺います。
コスモテクノス株式会社
代表取締役社長 橋本 吉充 さん
信託銀行子会社でプログラマー・エンジニアとして5年の経験を積んだ後、フリーランスとして活動。その後、コスモテクノスの業務を請け負ったことをきっかけに1997年入社。2020年に取締役就任、経理事務や人事採用など社長補佐も担当。2023年4月より現職。
27年間の現場経験が照らし出した組織の盲点
──血縁関係のない2代目社長ということですが、社長就任の経緯から教えていただけますか。
橋本吉充さん(以下、橋本): 2023年4月、先代社長が持病の心臓病により急逝されました。私は1997年に入社して以来、この会社でエンジニアとして働き、そして2020年に取締役、同時期に社長の補佐役として経理事務や人事採用を兼務していましたが、取締役は名ばかりで、実際はすべて先代が決めている状況でした。
先代社長は創業者であり、唯一の株主。相続人である先代の弟さんからは「会社のことはよくわからないので、社内から新社長を選んでほしい」というお話があり、それまでの経験を買っていただき、取締役会での推薦で私が社長に選ばれました。
──橋本社長は先代の経営スタイルをずっと見てこられたわけですね。当時の組織風土はどのようなものでしたか?
橋本: 先代は創業者として強いリーダーシップを持ち、売り上げを着実に伸ばしていきました。教育熱心で、どちらかというと社員の成長にも関心を持っていた方でしたね。私が入社した当時は15名ほどの組織でしたが、その後、事業を軌道に乗せ、社員数も25名程度まで増やして組織を成長させています。
ただ、経営スタイルは典型的なトップダウン型で、すべての決裁が社長経由。有給休暇の申請さえも社長宛のメールが必要でした。少し気分屋な一面もあったので、社員たちの提案が最初から断られるというようなこともあり、 次第に社員たちは「言われたことだけやればいい」という受け身の姿勢になっていきました。
──その状況は長く続いたのでしょうか?
橋本: はい。27年近くその状態が続いていました。とはいえ、2015年には社員数が25名程度まで増えたので、部長・課長職を先代が新設しましたが、これも形だけの改革で。私も突然「部長代理」を任命されましたが、具体的な責任範囲や権限が明確ではなかったんです。
プロジェクトで問題が起きると、その役職者に責任を転嫁するような状況も…。 また、教育熱心が故に、社員の能力以上の仕事を与えてしまっていたということもあり、それを社員たちが断れない状況が続いてしまっていたんです。
結果的に社員たちから相談や報告は上がってこなくなりましたし、退職者も増えていきました。当時の私はというと、そうしたことを課題に感じつつも、なかなか組織を変える勇気が出なかったのです。
──昨年4月、突然の社長就任だったかと思います。組織課題の改善に向けて、どのようなことに取り組まれたのでしょうか?
橋本: 正直、経営については自信がありませんでした。社長になる直前の2年間ほど、取締役として社長補佐として経理事務や人事管理をやっていたものの、組織のマネジメントに関しては先代社長がすべて決めていたからです。
先代のように強いリーダーシップを持って組織を束ねていく自信もなく、自分が社長としてどんな組織を作りたいのかも、正直わからなかったのです。
そこで、 「どんな会社を作りたいか?どんな組織で働きたいか?」と自分の心に聞いてみたんです。そうすると、組織づくりにおける大切なことが見えてきました。
――それは何だったのでしょうか?
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