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2018年11月18日(日)更新

労使協定

「労使協定」とは、労働者と使用者との間で書面契約される協定のことを指します。労使協定を結ぶだけでは、労働契約上の権利義務は発生しません。特に適用範囲が決められてない場合は、その企業で働いている全労働者に対して適用されるものとなります。労使協定が締結されることにより、法定義務の免除されるケースもあります。労働基準法に基づき締結された労使協定において、使用者は社員の見やすい場所に労使協定を提示し、労働者に知らせる義務があります。

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労使協定とは

労働関係諸法令と経済活動の実態との乖離を埋めることを目的に、労使協定は広く活用されています。この労使協定の意義や効果などについて以下に記載します。

【関連】労使関係とは?意味や問題、労働組合や労使紛争への対策をご紹介 / BizHint HR

労使協定の定義

労働基準法においては労使協定という言葉そのものの記載はなく、「事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、そのような労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者(従業員代表者)と使用者で書面による協定を締結すること」と表記され、この表記全体を指して労使協定と呼んでいます。

【参考】電子申請の総合窓口e-Gov/労働基準法

労働組合とは

労働組合とは、労働者が団結して賃金や労働時間などの労働条件の改善を図るために会社と対等に交渉するために組成される団体を指します。

従業員代表者とは

従業員代表者とは、労働者の過半数を代表して労使協定の締結などを行う者を指します。

この過半数代表は労使協定などを行う者として代表を選出することを明らかにしたうえで、労働基準法に規定される管理監督者以外の労働者の中から投票や挙手などの手続きを経て選出されることが必要です。

会社は労働者の従業員代表者に選ばれたこと、あるいは過半数代表になろうとしたことを理由に、その労働者の過半数代表に対して不利益な取扱いをしてはならないとされています。

労使協定の効果

労使協定は法令と経済活動上の実態との溝を埋める調整弁として広く活用されています。企業にとって労使協定を活用することによりもたらされる効果について以下に解説します。

法定義務の免罰効果

労働基準法は、労働時間などの最低労働条件を規定し、会社にその条件を順守する義務を課しています。これらの規定に違反した場合はその事業場を運営する事業主に罰則が科されます。例え労働者と会社の間で合意があったとしても、最低労働条件を逸脱して労働者を使用した場合は事業主に罰則が適用される強硬規定です。

しかし、労働基準法の最低労働条件の規定をすべての経済活動上の労働環境に当てはめてしまうと経済そのものが停滞してしまう可能性があります。

例えば医療や物流の現場で労働時間における強硬規定を厳格に当てはめてしまうと、国民が必要な医療を受けることができなくなる、あるいは商品などを受けとれなくなる時間帯が生じてしまいます。労働時間は守られるべきだが、必要とされるサービスが受けられなくなってしまう不都合を解消しなければ、国民の生活の利便性が失われるなど不利益が生じ経済への影響も避けられません。

この不都合を解消するため、企業は強硬規定の例外を認める手段として労使協定を締結し、罰則の適用を免れることができる特別な効果、いわゆる免罰効果を得ることができます。

労使協定書について

労使協定書に盛り込むべき内容は、労使協定により例外措置を許容する法令ごとに異なり様々な様式および文面の労使協定書が存在します。

労使協定書の書式・雛型

厚生労働省はホームページ上で労使協定書の書式や雛型を公開しています。また社会保険労務士のホームページなどで労使協定書の書式や雛形を入手することも可能です。

【参考】厚生労働省/主要様式ダウンロードコーナー

免罰効果の対象とは

労働基準法における労使協定の締結を求める条項のうち、同条項に対して罰則規定が設けられている場合に限り免罰効果が及びます。なお、育児・介護休業法については、労使協定の締結を求める条項に対応した罰則規定がないので免罰的な効果は認められませんが、法的な規制を受けないという観点で効用を得ることができると言えます。

労使協定にまつわる義務

労使協定は締結に関して、所轄労働基準監督署長あての届出や有効期間の設定が求められるものがあります。

届出の義務

労使協定は締結だけではなく、所轄労働基準監督署への届出を要するものがあります。

有効期間の設定義務

労使協定には有効期間の設定を求められるものがあります。設定期間に関する法令の定めはありませんが、厚生労働省の通達により1年以上3年以内の範囲で有効期間をさだめることが推奨されています。

36協定に関しては、時間外労働の上限を1年あたりの総合計で設定する必要があるため、有効期間を1年とするものが一般的であると言えます。

労使協定の周知義務

労働基準法および労働関係省法令において労使協定を締結した場合は、事業場のすべての労働者に周知することが会社に義務付けられています。

周知の方法としては、常時職場の見やすい場所への掲示、すぐ手に取れる職場の一定の場所に備え付け、書面の交付、イントラネットへの掲示など法令で定める方法によって、労働者が必要としたときにいつでも確認可能な状態で備えおくことが求められます。

【参考】電子申請の総合窓口e-Gov/労働基準法第106(法令等の周知義務) 

労使協定の効力

労使協定は、労働基準法により定められた労働条件の最低基準にかかわる規制を解除し例外を認める効力を持っていますが、労働協約や就業規則、労働契約における法的な効力との違いについて以下に記載します。

労使協定と労働協約

労使協定と労働協約の機能や効力の違いについて以下に記載します。

労働協約とは

労働協約とは、賃金、労働時間、休日、休憩その他の労働者の待遇に関する基準について、労働組合法に則って労働者の代表たる労働組合と会社との交渉を経て取り決めた事柄を書面にしたものです。労働協約は、締結主体の労働組合の組合員に限り規律力のあるルールとなり、就業規則や労働契約に優先される規範的効力を持ちます。

労使協定と労働協約の違い

労働協約と労使協定は、双方ともに労働者集団の代表と会社が労働条件や待遇などに関する事項について協議を行い、合意が得られると労働契約に対して特別な効力を持つ点において類似していると言えます。しかし、機能や締結主体に係る要件、およびその効力が及ぶ範囲などの違いがあります。

第一に、労働協約には規律する機能があります。一方労使協定は法令の規制解除機能を有するまでで、協定そのものに職場を規律する機能はありません。第二に、労働協約の締結に労働組合の人数要件はありません。どんなに小さな組合でも締結することが可能です。一方労使協定は事業場の労働者の過半数を構成する労働組合、あるいは従業員代表者と締結することが求められます。

第三に、労働協約の影響を受ける範囲は、原則その労働組合の組合員のみとなります。一方労使協定は締結した事業場の労働者全体に効力が及びます。なお、事業場の4分の3以上の数の労働者が一つの労働協約の影響を受ける場合は、労使協定と同様に事業場の組合員以外の労働者に対してもその効力が及びます。

労働協約である労使協定とは

過半数労働組合が会社と労使協定を締結した場合は、労働基準法等に定める労使協定の効果と労働協約としての効果の双方を併せ持つこととなります。

労使協定と就業規則

労使協定と就業規則の機能や効力の違いについて以下に記載します。

就業規則とは

常時10人以上の労働者を使用している会社は、就業規則を作成し・届出の義務があります。労働基準法およびその他関係諸法令並びに公序良俗に反しない限り、労働者の同意を得ずに会社が作成した就業規則は、職場を規律する効力を持ちます。また、就業規則に合理的な労働条件が定められ、これを労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容はその就業規則で定める労働条件によるものとされ労働契約に優先します。

つまり、就業規則は規範的効力と労働者と会社の権利義務を生じさせる民事的効力が認められます。

【関連】就業規則とは?作成~届出までの手順、ポイントをご紹介/BizHint HR

労使協定と就業規則の違い

労使協定は労働基準法その他関係諸法令の規制を解除する効果を持つのみで、民事上の権利義務に及ぼす影響力はありません。規範的効力および民事的効力の双方とも持ち合わせない点で就業規則と異なります。

労使協定と労働契約

労使協定と労働契約の機能や効力の違いについて以下に記載します。

労働契約とは

労働契約は労働者個人が会社に使用されることを前提に労務の提供を会社に約束し、その提供された労務の対償として、会社が賃金を支払うこと約束することによって効力が発生する契約です。個別の労働者と会社の権利義務関係が示され、労使双方はこれに従いそれぞれの債務に対する義務を果たすこととなる民事的効力を持つものです。

労使協定と労働契約の違い

労使協定に民事的な効力は無く法令による規制を解除する効果を持つのみであるという点で、労働契約と異なります。

労使協定と労使委員会の決議

労使協定と労使委員会の機能や効力の違いについて以下に記載します。

労働委員会の決議とは

労働者と会社が労働時間その他労働者の処遇に関する協議する委員会制度を労使委員会と言います。労使委員会を設置するためには、過半数労働組合または従業員代表者を委員に任命していること、委員の半数は過半数労働組合または従業員代表者から任期を定め指名された労働者で構成されていること、およびその設置を所轄労働基準監督署へ届出しなければならないなどの要件が設けられています。

労使委員会の決議は、労使協定と同様の機能である労働基準法の規制解除機能を持ちます。

平成15年の労働基準法改正に伴い、「企画業務型裁量労働制」導入の要件として、労使協定に代えて労使委員会の決議が必要となりました。

労使協定と労使委員会の決議の違い

労使委員会は会社側委員と過半数労働組合あるいは従業員代表者と指名された労働者側委員の複数で協議し採決することが必要です。また、採決には定足数のほか、労使各側を代表する委員ごとに一定割合又は一定数以上の出席を要し、決議には出席した委員の5分の4以上の多数の賛成が必要です。

一方労使協定は過半数労働組合あるいは従業員代表者との相対の協議により協定されます。労使委員会の決議は労使協定と比較しより厳しい要件が設けられ、より強く労働者の総意を反映できると考えられます。

効力の優先順位

労働協約、就業規則、労働契約について労使協定との違いについて確認してきましたが、それぞれが保有する規範的効力の関係性について以下に整理します。

労働基準法、労働契約法および労働組合法それぞれに規範的効力に関する規定があり、効力の優先順位は次のとおりとなります。

労働基準法>労働協約>就業規則>労働契約

労働基準法は労働条件の最低限の基準を定めたものであり、労働協約や就業規則、労働契約で定められた労働条件に法令と矛盾がある場合は、効力の優先順位は労働基準法が最も優先されます。また、就業規則および労働契約よりも労働協約が優先され、労働契約よりも就業規則が優先することになります。

労使協定の位置づけ

労働協約や就業規則、個別の労働契約には職場を規律する効果がある一方、労使協定はそれ自体で労働者にその内容を強制する力を持ちません。労使協定を有効に機能させるためには、就業規則や個別の契約書に具体的な労働条件や労働者の処遇を規定する必要があります。

労働時間にまつわる労使協定

労働時間については様々な事項が法令により規制されています。労働時間に係る規制を解除する労使協定について以下に記載します。

時間外及び休日労働(36協定)

労働基準法第32条に定められた法定労働時間を超えて労働させ、または同法第35条に定められた法定休日に労働をさせる場合は、時間外及び休日労働に関する労使協定を締結し、労働基準監督署への届け出が求められます。これを労働基準法の条文番号から取って一般的に 36協定 と呼んでいます。

36協定は規制を解除するとは言え、この協定を締結することによって無制限に労働させることができるわけではなく、延長できる時間は1か月45時間(1年単位の変形労働時間制の場合は42時間)、1年360時間(1年単位の変形労働時間制の場合は320時間)を上限とし、これに対応して一定期間ごとに以下の通り限度時間が設けられています。

労使協定で定める主な事項を以下に記載します。

  • 時間外労働をさせる必要のある具体的な事由
  • 時間外労働をさせる必要のある業務の種類
  • 時間外労働をさせる必要のある労働者の数
  • 1 日について延長することができる時間
  • 1 日を超える一定の期間について延長することができる時間
  • 有効期間

【参考】時間外労働の限度に関する基準

【関連】36協定とは?残業時間のしくみや特別条項・届出・違反まで徹底解説/BizHint HR

特別条項付き時間外・休日労働

前記の36協定の上限設定には例外措置があります。実際の経済活動の中では36協定で規定した上限時間を超えた労働時間が発生する場合が往々にしてあり、このような状態が予測される場合は36協定に特別条項を付帯して協定を締結し届出することで、限度時間を超える時間を延長時間とすることができます。

ただし、この特別条項はあくまで臨時的措置であり特別な事情を汲んで認めるものであることから、特別条項が許容される期間は1年の半分を超えてはならないとされています。

労使協定で定める主な事項を以下に記載します。

  • 臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わせなければならない特別の事由
  • 延長時間を延長する場合の労使の手続
  • 延長時間を延長する一定の時間(特別延長時間)
  • 限度時間を超える時間外労働に対する割増賃金率

【参考】時間外労働の限度に関する基準

1年単位の変形労働時間制

変形労働時間制とは、法定労働時間の規制について1日および週単位ではなく、一定単位期間の1週間あたりの平均労働時間によって判断される制度です。業務の繁忙期、閑散期に合わせて労働時間を配分でき、残業時間の削減が期待できる制度となっています。

「1年単位の変形労働時間制」は、1ヵ月を超え1年以内の期間を平均して、1週間当たりの労働時間が40時間を超えないことを条件とし、対象期間における労働日数の限度は1年あたり280日、1日の労働時間の限度は10時間、1週間の労働時間の限度は52時間とされています。また、対象期間において連続して労働させることができる日数の限度は6日、特に業務の繁忙な期間においては1週間に1日の休日が確保できる日数とします。

この制度を採用するためには、労使協定の締結、労働基準監督署への届け出が必要です。労使協定で定める主な事項を以下に記載します。

  • 対象労働者の範囲(満18歳未満の年少者および妊産婦が請求した場合は範囲から除く)
  • 対象期間および起算日
    ・1ヶ月を超え1年以内の期間とすること
    ・労働日数の限度は、原則として1年280日(対象期間が3ヶ月以内の場合は制限なし)
  • 対象期間中特に業務が繁忙であるとした期間
  • 労働日および労働日ごとの労働時間 連続労働日数は原則として最長6日間(特定期間を設ければ最長12日まで連続可能)
  • 有効期間

【参考】1年単位の変形労働時間制

1か月単位の変形労働時間制

「1か月単位の変形労働時間制」とは、1ヵ月以内の一定期間を平均し、1週間たりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲内において、特定の日又は週に法定労働時間を超える労働時間を認める制度です。対象期間と起算日を定めシフト表や会社の就業カレンダーなどで対象期間の労働日すべての日について具体的な労働時間を定めることが求められます。

この制度を採用するためには、労使協定または就業規則などにより、以下の事項を定めておく必要があります。また、労働基準監督署への届け出も必要となります。

  • 変形期間における各日、各週の労働時間の特定
  • 変形期間の所定労働時間(所定労働時間の総枠≧法定労働時間×変形期間の暦日÷7)
  • 変形期間の起算日

【参考】1ヵ月単位の変形労働時間制

1週間単位の非定型的変形労働時間制

「1週間単位の非定型的変形労働時間制」とは、労働者の人数規模が小さく、業務の繁閑に機動的に人員配置を行うことが難しいと想定される事業において、1週間単位で毎日の労働時間を弾力的に増減できる制度です。

この制度を活用できる会社の事業は小売業、旅館、料理・飲食店とされ、労働者の数は30人未満に限られます。1日あたりの労働時間の上限は10時間とされ、1週間たりの労働時間が法定の40時間を超えないよう、シフト表や会社の就業カレンダーなどの書面で、少なくともその週のはじめまでに、予め各日の具体的な労働時間を労働者に通知することが必要です。

この制度を採用するためには、労使協定の締結、労働基準監督署への届け出が必要です。労使協定で定める主な事項を以下に記載します。

  • 1週間の所定労働時間を40時間以下にすること
  • 1週40時間を超えて労働した場合には割増賃金を支払うこと

【参考】電子申請の総合窓口e-Gov労働基準法第32条の5
【参考】電子申請の総合窓口e-Gov労働基準法施行規則第12の5条

フレックスタイム制

画一的な労働時間の管理ではオーバーワークが懸念される職種の労働環境改善や、働き方に対する考え方の多様化などに対応するための、時間管理のしくみが認められています。このしくみを「フレックスタイム制」と言い、導入には労使協定の締結が必要です。

フレックスタイム制は、1ヵ月以内の一定期間を清算期間として設定し、その間の総労働時間を定め、労働者自身が始業時刻、終業時刻を自律的に決定します。労働時間の管理は1日および1週間で行わず、予め定められた清算期間内の総労働時間をその期間平均して、1週間の労働時間が40時間(※特例措置対象事業場44時間)を超えないことが求められます。
※特例措置対象事業場とは、常時 10 人未満の労働者を使用する商業、映画・演 劇業(映画の製作の事業を除く)、保健衛生業、接客娯楽業のことです。

フレックスタイム制導入にあたり、労使協定の締結と併せて始業・終業時刻の決定を労働者に委ねることを就業規則に定める必要があります。

労使協定で定める主な事項を以下に記載します。

  • 対象労働者
  • 清算期間
  • 清算期間における総労働時間
  • 標準となる1日の労働時間

上記以外にコアタイム、フレキシブルタイムを設定する場合は、その時間帯を協定に加えることとなります。

【参考】独立行政法人労働政策研究・研修機構/ Q4フレックスタイム制とは何ですか。

【関連】フレックスタイム制とは?メリット・デメリット~導入方法・残業代まで徹底解説/BizHint HR

一斉休憩の適用除外

労働基準法において一定の時間を超える労働が発生する場合は、その時間に対応して定められた休憩時間を、労働時間内に事業場の全労働者に一斉に与えることとされています。しかし、労働者に一斉に休憩を与えることで業務に支障が出る事業の場合もあります。一定の事業については、適用除外事業として交代で休憩をとることが認められています。

《休憩の一斉付与の適用除外事業》

  • 運輸交通業
  • 商業
  • 金融・広告業
  • 映画・演劇業
  • 通信業
  • 保健衛生業
  • 接客娯楽業
  • 現業以外の官公署の事業

上記例外事業以外の事業においても、休憩時の電話や来客対応などの業務が発生することが往々にしてあります。こうした実態を踏まえ、事業場単位の一斉休憩付与を行わない場合には、一斉休憩の適用除外の労使協定を締結する必要があります。

労使協定で定める主な事項を以下に記載します。

  • 対象労働者の範囲
  • 対象労働者に対する休憩の与え方

【参考】電子申請の総合窓口e-Gov労働基準法第34条(休憩)、第40条(労働時間及び休憩の例外)
【参考】電子申請の総合窓口e-Gov労働基準法施行規則第15条

事業場外労働のみなし労働時間制

営業担当の労働者の外回り営業時間、出張時、あるいは在宅勤務など業務の大半を事業場外で行う労働については、事業主や管理監督者の指揮命令が及ばず、労働時間の算定が難しくなるケースが多いと言えます。このような場合に労働者があらかじめ一定の労働時間働いたものとみなし、業務遂行の具体的な方法を労働者本人の裁量に委ねるしくみを会社が採用する場合には、事業場外労働のみなし労働時間に関する労使協定の締結が求められます。

みなし労働時間の算定は、原則業務遂行に通常必要である時間をあらかじめ規定します。通常の業務遂行にあたり所定労働時間を超えて行うことが要求される場合は、その業務の遂行に通常必要とされる時間をみなし労働時間として定めます。

労使協定で定める主な事項を以下に記載します。

  • 対象となる業務
  • みなし労働時間
  • 有効期間

なお、みなし労働時間が法定労働時間をこえる場合は、さらに所轄の労働基準監督署への届出が必要です。

【参考】事業場外労働に関するみなし労働時間制

【関連】みなし労働時間制とは?メリット・デメリット~時間外・休日・深夜労働の取り扱いや判例も合わせてご紹介/BizHint HR

専門業務型裁量労働制

新技術の開発などに従事する研究者、弁護士、会計士といった専門家、テレビや新聞の取材記者や編集者など、固定化した労働時間で会社の指示に従いながら職務を遂行することが難しく、高度な専門性を要するとされると法令で規定された19の業務について、業務の進め方、手段、時間の配分方法などを労働者本人の裁量に委ねるしくみを取ることができるとされます。

このしくみを採用する場合には、専門業務型裁量労働制に関する労使協定の締結、労働基準監督署への届け出が必要です。労働時間の算定は、専門業務遂行に必要である時間をみなし労働時間として規定します。

労使協定で定める主な事項を以下に記載します。

  • 対象業務
  • 労働時間としてみなす時間
  • 業務遂行の手段や方法、時間配分等に関し労働者に具体的な指示をしないこと
  • 対象となる労働者の健康・福祉を確保するための措置の具体的内容
  • 対象となる労働者からの苦情の処理のため実施する措置の具体的内容
  • 有効期間

【参考】専門業務型裁量労働制

【関連】専門業務型裁量労働制とは?対象業務や導入手順、残業代などの注意点まで詳しく解説/BizHint HR

賃金にまつわる労使協定

賃金の支払いに関しては賃金支払い5原則に従うことが求められ、法令に反した場合には厳しい罰則が適用されます。この賃金に係る規制を解除する労使協定について、以下に記載します。

労使協定に基づく賃金支払時の控除

労働基準法により、会社は、賃金を通貨で直接労働者に全額を支払わなければなりません。ただし、所得税や社会保険料の控除は法定の項目として控除が認められています。法定控除項目以外にも労働組合費や親睦会費、団体保険保険料などの費用を賃金から控除したほうが労働者にとって利便性が高い場合があります。

このような組合費や団体保険料などを賃金から控除して支払う場合は、賃金からの一部控除に関する労使協定の締結が求められます。

労使協定で定める主な事項を以下に記載します。

  • 控除の対象となる具体的な項目
  • 控除項目ごとに定める控除を行う賃金支払日

【参考】電子申請の総合窓口e-Gov労働基準法第24条(賃金の支払い)

【関連】給与体系とは?種類や見直し、変更時の給与体系モデルもご紹介/BizHint HR

貯蓄金管理

福利厚生の一環として、労働者から貯預金を会社が管理する場合は、貯蓄金管理に関する規定を設け、貯蓄金管理に関する労使協定の締結及び届出が必要です。

貯蓄金管理規定に定める主な事項を以下に記載します。

  • 貯蓄金の管理に関する規程の作成および労働者への周知措置
  • 利子の設定(厚生労働省令で定める下限利率を下回ることができない)
  • 労働者からの貯蓄金返還請求への遅滞ない対応
  • 預金額の保全措置(金融機関等による保証契約、信託会社との信託契約など
  • 「預金管理状況報告」の提出(毎年3月31日以前の管理状況を4月30日までに報告)

労使協定で定める主な事項を以下に記載します。

  • 預金者の範囲
  • 預金者1人当たりの預金額の限度
  • 預金の利率及び利子の計算方法
  • 預金の受入及び払い戻しの方法
  • 預金の保全の方法
  • 預金の運用の方法

【参考】社内預金制度の適正な運用のために

有給休暇にまつわる労使協定

労働基準法において一定基準を満たした労働者には、一定日数の年次有給休暇を労働者に与えなければならないとされ、取得理由を問わず取得時季の指定は労働者の権利として認められています。この年次有給休暇に係る労使協定について以下に記載します。

【関連】有給休暇とは?付与日数や義務化への改正情報、買取りについてなど詳しく解説/BizHint HR

年次有給休暇の計画的付与

年次有給休暇の取得率がなかなか改善しないことが社会問題となっていますが、年次有給休暇のうち5日を超える部分については、事業の閑散期などに合わせて時季を指定して全従業員一斉に休ませることができるしくみがあります。このしくみを採用する場合に、年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定の締結が必要です。

なお、このしくみを導入した場合は、労使双方ともに時季の変更はできないことに留意が必要です。

労使協定で定める主な事項を以下に記載します。

  • 計画的付与の対象労働者の範囲
  • 年次有給休暇の日数
  • 計画的付与の具体的な方法および時季
  • 対象外となる労働者の取扱い
  • 計画的付与日を変更する場合の取扱い

【参考】独立行政法人労働政策研究・研修機構/Q12計画年休制度とは何ですか。

標準報酬日額による年次有給休暇の賃金支払

年次有給休暇を取得した場合に支払われる賃金の算定方法は次のいずれかとされています。

  1. 平均賃金
  2. 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
  3. 健康保険法に定める標準報酬日額に相当する金額

3により年次有給休暇日の賃金を支払う場合には、標準報酬日額による年次有給休暇の賃金支払に関する労使協定の締結が必要です。

労使協定で定める主な事項を以下に記載します。

  • 年次有給休暇取得日に対応した賃金の支払いを標準報酬日額とすること
  • 適用開始日

【参考】労働基準法第第39条(年次有給休暇)

割増賃金の支払としての年次有給休暇付与

1か月60時間を超える時間外労働については法定割増賃金率が適用されますが、臨時的な特別の事情等によって、やむを得ずこれを超える時間外労働を行わざるを得ないケースもあります。

このような場合、対象労働者に休息の機会を与えることを目的として、60時間超の労働時間に適用される法定割増賃金率分の割増賃金の支払に代えて、有給休暇を与えることができるとされています。この場合、割増賃金としての年次有給休暇付与に関する労使協定の締結が必要です。

労使協定で定める主な事項を以下に記載します。

  • 代替休暇の時間数の具体的な算定方法
  • 代替休暇の単位
  • 代替休暇を与えることができる期間
  • 代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日

【参考】労働基準法第第37条第3項(時間外、休日及び深夜の割増賃金)

育児・介護にまつわる労使協定

育児や家族の介護を行う労働者の職業生活と家庭生活との両立を促すために「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(育児・介護休業法)が制定されています。この育児・介護休業法に係る労使協定について以下に記載します。

【参考】育児・介護休業制度 ガイドブック 育児・介護休業制度 ガイドブック

【関連】育児休業とは?育児休暇との違い、産前休業~復帰までの流れ、助成金制度まで徹底解説/BizHint HR
【関連】介護休業とは?制度の概要や介護休暇との違い、法改正の内容、給付金まで徹底解説/BizHint HR

育児休業の適用除外者

1歳に満たない子を養育する労働者は、育児休業を取得することができます。ただし、日雇いや一定期間未満の雇用となる期間雇用の労働者は法令により取得できません。

なお、法定以外の以下の者を適用除外とし育児休業の取得を制限することが可能です。この場合は育児休業の適用除外に関する労使協定の締結が必要となります。

《育児休業の適用除外対象》

  • 入社1年未満の労働者
  • 申出の日から1年以内に雇用期間が終了する労働者 (1歳6か月までの育児休業の場合は、6か月以内に雇用期間が終了する労働者)
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

労使協定で定める主な事項を以下に記載します。

  • 除外対象労働者の範囲
  • 申出を拒む際の通知

介護休業の適用除外者

要介護状態にある対象家族を介護する労働者は、介護休業を取得することができます。ただし、日雇いや一定期間未満の雇用となる期間雇用の労働者は法令により取得できません。

なお、法定以外の以下の者を適用除外とし、介護休業の取得を制限することが可能です。この場合は介護休業の適用除外者に関する労使協定の締結が必要となります。

《介護休業の適用除外対象》

  • 入社1年未満の労働者
  • 申出の日から93日以内に雇用期間が終了する労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

労使協定で定める主な事項を以下に記載します。

  • 除外対象労働者の範囲
  • 申出を拒む際の通知

子の看護休暇の適用除外者

小学校就学前の子を養育する労働者は、一年度において5日( 小学校就学前の子が2人以上であれば10日)を限度として、病気・けがをした子供の看護休暇や、子供に予防接種・健康診断を受けさせるための休暇を、一日または半日単位で取得することができます。

ただし、日雇い労働者は法令により取得できません。なお、法定の以外の以下の者を適用除外とし、子の看護休暇の取得を制限することができます。この場合は子の看護休暇の適用除外者に関する労使協定の締結が必要となります。

《子の看護休暇の適用除外対象》

  • 入社6ヶ月未満の労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

労使協定で定める主な事項を以下に記載します。

  • 除外対象労働者の範囲
  • 申出を拒む際の通知

介護休暇の適用除外者

要介護状態にある対象家族を介護する労働者は、一年度において5日(対象家族が2人以上の場合は10日)を限度として、介護その他の世話を行うために、一日または半日単位で休暇を取得することができます。

ただし、日雇い労働者は法令により取得できません。なお、法定以外の以下の者を適用除外とし、介護休暇の取得を制限することができます。この場合は介護休暇の適用除外者に関する労使協定の締結が必要となります。

《介護休暇の適用除外対象》

  • 入社6ヶ月未満の労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

労使協定で定める主な事項を以下に記載します。

  • 除外対象労働者の範囲
  • 申出を拒む際の通知

所定外労働の制限の適用除外者

3歳に満たない子供の子育てのため、または要介護状態にある家族を介護するため、労働者が所定外労働の制限を請求した場合には、会社は制限時間(1か月24時間、 1年150時間)を超えて時間外労働をさせてはならないとされています。

ただし、日雇い労働者は法令により所定外労働の制限を請求することができません。なお、法定以外の以下の者を適用除外とし、請求に基づく所定外労働に関する制限を解除することが可能です。この場合は所定外労働の制限の適用除外者に関する労使協定の締結が必要になります。

《育児・介護のための所定外労働の制限適用除外対象》

  • 入社1年未満の労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

労使協定で定める主な事項を以下に記載します。

  • 除外対象労働者の範囲
  • 申出を拒む際の通知

所定労働時間の短縮措置の適用除外者

3歳に満たない子供を育てる労働者に対して、一日の所定労働時間を原則として6時間とする短時間勤務制度を設ける措置が義務付けられています。ただし、日雇い労働者は法令により短時間勤務制度の措置の適用対象外です。

なお、法定以外の以下の者を適用除外とし、短時間勤務制度の措置の適用対象外とすることが可能です。この場合は育児のための所定労働時間の短縮措置の適用除外者に関する労使協定の締結が必要となります。

《育児のための所定労働時間短縮措置の適用除外対象》

  • 入社1年未満の労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
  • 業務の性質又は業務の実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずることが 困難と認められる業務に従事する労働者

要介護状態にある家族を介護する労働者に対して、一日の所定労働時間の短縮など措置を講じることが義務付けられています。ただし、日雇い労働者は法令により所定労働時間の短縮措置の適用対象外です。

なお、法定以外の以下の者を適用除外とし、所定労働時間の短縮措置の適用対象外とすることが可能です。この場合は介護のための所定労働時間短縮措置の適用除外者に関する労使協定の締結が必要となります。

《介護のための所定労働時間短縮措置の適用除外対象》

  • 入社1年未満の労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

労使協定で定める主な事項を以下に記載します。

  • 除外対象労働者の範囲
  • 申出を拒む際の通知

届出の義務がある労使協定

下記の労使協定は所轄労働基準監督署長あてに届出することが必要です。

  • 時間外労働及び休日労働に関する労使協定
  • 特別条項付き時間外労働・休日労働に関する労使協定
  • 1年単位の変形労働時間制に関する労使協定
  • 1か月単位の変形労働時間制に関する労使協定
  • 1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する労使協定
  • 事業場外労働のみなし労働時間制に関する労使協定
    ※届出は法定労働時間を超えるみなし労働時間を設ける場合に限り必要です。
  • 専門業務型裁量労働制に関する労使協定
  • 貯蓄金管理に関する労使協定

労使協定の罰則

労使協定に係る罰則については、届出がないことにより免罰効果が発揮されず罰則が適用される場合と、届出義務違反による罰則が適用される場合があります。

36協定にまつわる罰則

36協定は届出により免罰効果が生じるため、届出をせずに時間外労働をさせた場合には、法定労働時間を定めた労働基準法第32条違反および同法第35条違反とされ、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に科せられます。36協定違反の処罰対象は、労働基準法第10条に定める使用者です。

《労働基準法第10条》
この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。
【引用】電子申請の総合窓口e-Gov労働基準法第10条

ここでいう使用者とは、事業主のみならず残業の要否を判断する権限を持つラインの上司なども含まれることに留意が必要です。ただし、長時間労働を課された労働者には罰則は課されせん。

【関連】36協定違反とは?36協定の概要と違反の条件・罰則を理解し、適正な法令遵守を/BizHint HR

届出義務違反

36協定以外で法令により届出が求められる労使協定の場合は、届出をしないことにより届出義務違反として罰則が適用になり、30万円以下の罰金に科せられます。

《第120条関係 30万円以下の罰金対象》

  • 時間外労働及び休日労働に関する労使協定
  • 特別条項付き時間外労働・休日労働に関する労使協定
  • 1年単位の変形労働時間制に関する労使協定
  • 1か月単位の変形労働時間制に関する労使協定
  • 1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する労使協定
  • 事業場外労働のみなし労働時間制に関する労使協定
    ※届出は法定労働時間を超えるみなし労働時間を設ける場合に限り必要です。
  • 専門業務型裁量労働制に関する労使協定
  • 貯蓄金管理に関する労使協定

【参考】電子申請の総合窓口e-Gov労働基準法第120条

まとめ

  • 労働基準法成立以降、労働時間などの強硬規定による経済活動上の不都合を解消するために、同法の罰則の適用を免除することを目的に労使協定は活用されてきました。
  • 近年は、罰則適用のない労働関係諸法令の規制を解除するものとして活用されることが増え、労使協定に期待される役割に変化が見られます。
  • 期待役割に変化は見られますが、労使協定自体では労働者の労働条件や処遇を規律することはできないことに変わりはありません。会社が適正な労働環境を整え適切な労働者の処遇を実現するために、会社と労働者の権利義務を規律する就業規則を初めとするその他労務関連諸規定を整備し、労使協議の内容を正しく反映した労使協定の締結を行うことで法令に則った労務管理を遺漏なく行うことが望まれます。

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