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2018年11月10日(土)更新

労使関係

労使関係とは、労働者と使用者との関係です。労働者個人と使用者との関係である個別的労使関係と、労働組合と使用者との関係である集団的労使関係とに、大きく分けることができます。ここでは後者の意味を中心に、労働組合についての概略、会社と労働組合との関係、労使紛争が発生したときの解決方法などについて説明します。

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労使関係とは

「労使関係」という言葉は「industrial relations」の訳語です。直訳すれば”産業関係”ですが、労使関係という訳が定着しています。では、労使関係とは何を指すのでしょうか?

労使関係の意味

労働者と使用者との関係を、広く「労使関係」といいます。「労使」は「労働者個人と使用者(個別的労使関係)」を意味することもあり、また「労働組合と使用者(集団的労使関係)」を指すこともあります。

では、まず「労働者」の定義からみていきましょう。

労働者の定義

労働組合法3条では、労働者について次のように定義しています。

この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者をいう。(労働組合法3条)
【引用】電子政府の総合窓口e-Gov/労働組合法

労働基準法における「労働者」の定義は次のとおりです。

この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業または事務所(以下「事業」という)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。(労働基準法9条)
【引用】電子政府の総合窓口e-Gov/労働基準法

このように、労働組合法と労働基準法では「労働者」の定義が少し異なっています。労働基準法では「事業に使用される者=労働者」とされていますが、労働組合法では使用関係には言及していません。

労働組合法における「労働者」の意味は、労働基準法におけるそれよりも広く、失業者も含まれます。また場合にもよりますが、契約の形式が業務委託契約であっても「労働者」と認められることがあります。(INAXメンテナンス事件 平成23.4.12最高裁)

使用者の定義

次に「使用者」の定義ですが、この言葉の意味については、労働組合法には何も書かれていません。

労働基準法には「使用者」の定義があり、「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう(10条)」とされています。

雇用関係との違い

「雇用関係」という言葉は、雇用契約で結ばれた個々の労働者と会社との関係という意味で使われます。一方「労使関係」という言葉は、雇用関係と類似の意味で使われることもありますが、労働組合等と会社との関係という意味で使われることの方が多いかもしれません。

雇用関係が個別の関係であることに対し、労使関係は集団的な関係をも示すことが、この2つの違いです。

労使関係の現状

次に、日本における労使関係の現状についてみていきましょう。

労使関係の背景

現在日本においては、労働組合組織率の低下、労働組合員の減少、集団的な労使紛争の減少といった状況がみられます。このことから、本の労使関係はおおむね安定している様相がうかがえます。

労使関係維持の認識

厚生労働省が発表した労使関係に関する統計をみても、「労使関係が安定的に維持されている」との認識をもつ労働者は、「おおむね安定的」と合わせて89.5%にのぼります。一方「労使関係は不安定」及び「やや不安定」と答えた労働者は4.3%のみという結果が出ています。

この数字から、全体的に労働者は、労使関係が「安定している」という認識をもっていることがわかります。

しかしこの認識は、企業規模により差がみられます。企業規模別のデータをみると、「安定的」と答えたのは、5,000人以上規模の企業では90.8%である一方、30~99人規模の企業では83.7%にとどまっています。また「不安定」と回答した比率は、5,000人以上規模の企業が4.2%であるのに対し、30~99人規模の会社は7.5%と、企業規模が大きいほど、労働者は労使関係が安定的であるとの認識が強いことがうかがえます。

【参考】労働組合活動に関する実態調査

日本の労使関係の特徴

日本の雇用の特徴として、従来から「終身雇用制」「年功制賃金」「企業別労働組合」などが挙げられてきました。これらは揺らぎがみられるものの、未だに日本の雇用に存在しているものです。新規学卒者が一斉に雇用され、企業内で教育訓練され、年を経るごとに賃金は上昇し、労使問題が起きればその企業の労働組合が対応するという雇用の形は、日本において長い期間続いてきたものです。

そしてこうした雇用は、基本的に「正社員」にのみ当てはまるものでした。パート労働者や契約社員は、臨時的・補助的な労働力として、このような雇用の枠外にいたのです。

労使関係をとりまく問題

しかし近年、パート労働者や契約社員など、いわゆる非正規雇用労働者が著しく増加してきました。こうした労働者は、正社員と比べて雇用調整がしやすいため、長びく不況下では、企業は非正規雇用の比率を上げざるを得なかったという背景があります。そして、非正規雇用労働者については、正社員と比べ賃金制度など基本的な処遇が十分に整えられていない会社も少なくなく、個別の紛争が増加傾向にあります。

また、こうした労働者は企業別労働組合に加入できないことも多いため、労使問題が起きたときは合同労組など“外の”組合に相談することになり、会社との距離は益々離れることになります。

今後も正社員以外の労働者は増加していくと予想されます。会社側の雇用事情のみならず、自ら短時間勤務を望んで働く労働者も数多くおり、雇用の形は多様化が進んでいます。こうした時代の要請として、会社側は従来の正社員中心の労使関係だけでなく、正社員以外との労使関係も根本的に見直す必要があると言われています。

労使関係論とは

労使関係論とは、労使関係に着目した研究の総称です。労使関係の定義や歴史、労働経済学、労働市場との関係、日本と諸外国との比較等、様々な観点から労使関係を扱うものです。

労働組合とは

さて、労使関係は大きく「個別的労使関係」と「集団的労使関係」に分けることができます。個別的労使関係の当事者は会社と労働者個人ですが、集団的労使関係の当事者は会社と労働組合です。

次はこの「労働組合」についてみていきましょう。

労働組合の定義

労働組合法では、労働組合について次のように定義しています。

この法律で「労働組合」とは、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう。(労働組合法2条)
【引用】電子政府の総合窓口e-Gov/労働組合法

労働組合と認められないものは

更に労働組合法2条では、労働組合と認められないものについて、次のように定めています。

  • 監督的地位の労働者その他使用者の利益を代表する者の参加を許すもの
  • 団体の運営経費の支出について、使用者の経理上の援助を受けるもの
  • 共済事業その他福利事業のみを目的とするもの
  • 主として政治運動または社会運動を目的とするもの

上に挙げた団体は、「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的とする」という労働組合の定義から外れるものだからです。

【参考】労働組合法

労働組合の目的

労働組合の目的は、前述のとおり「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ること(労働組合法2条)」です。

労働者というものは、現実として会社よりも弱い立場です。個々の労働者が一人で会社に対峙しようとしても、限界が存在することは否めません。ですから労働者は団結することでその立場を強化し、労働条件等について会社と交渉してきたという歴史があります。

憲法28条でも「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」とされ、労働者の団結権、団体交渉権、団体行動権(労働三権といいます)が認められています。

労働協約

労働組合の役割の一つに労働協約の締結があります。労働協約とは、労使交渉における合意事項を書面化したもので、双方で記名押印(または署名)することで効力が発生します。(労働組合法14条)

この労働協約には、就業規則や個別の労働契約に優先する強い効力が認められています。

労働組合の種類

さて、労働組合には次のような種類があります。

  • 産業別組合
    産業別に組織された労働組合をいいます。職種にかかわらず同一の産業の労働者で組織される組合形態です。企業別組合が集まり産業別に組織化されたものを指すこともあります。
  • 職種別組合
    職種別に組織された労働組合をいいます。産業や企業の枠を超えて、同一の職種の労働者で組織する組合形態です。
  • 企業別組合
    特定の企業の労働者で組織される労働組合をいいます。日本における労働組合は、この型のものが大多数です。
  • 合同労組(ユニオン)
    職種や企業に関係なく1人で加入できる形態の労働組合をいいます。企業別組合のない中小企業の労働者や非正規労働者が多く加入しています。

日本の労働組合の特徴

日本の労働組合の大きな特徴として「企業別組合」が多いことが挙げられます。日本には終身雇用制があり、労使の問題は企業内で起き企業内で解決されることが多かったため、この型の労働組合が増加したとも考えられています。

労働組合をとりまく問題

しかし企業別組合は、その会社“内”の存在であることは否めず、そのため経営者側への強行な要求を避け、労使協調路線を取りやすいという問題があります。そのため、労働組合本来の機能が十分に果たし切れていないと批判されることもしばしばあります。

そして時代の変化により、労働組合という組織自体が弱体化しているという問題もあります。

労使関係の個別化

以前、日本の労働者の賃金水準がまだ低い時代には、労働者は団結して「全体的な」賃上げ要求をしていました。しかし賃金水準が一定レベルまで上昇した後は、労働者は団結する必要性が薄くなり、労働者の要求は個人単位のものに移ってきたと言われています。

労使関係が集団的なものから個別的なものへシフトしているため、労働組合自体が絶対的に必要なものではなくなってきているのです。

労働組合組織率の低下

そうした状況を反映してか、日本の労働組合の組織率は年々低下しています。平成28年の労働組合基礎調査によれば、昭和25年に55.8%であった労働組合推定組織率(=雇用者数のうちの労働組合員の割合)は、平成元年には25.9%、更に平成28年には17.3%まで減少しています。

また組合員数も長期的にみると減少しており、平成元年に1,200万人を超えていた労働組合員は、平成23年には1,000万人を切り、平成28年時点で994万人となっています。

しかしその一方で、パートタイム労働者の推定組織率は増加しています。平成25年に6.6%だった推定組織率は、平成28年には7.5%まで上昇しています。

パートタイム労働者は企業別労働組合に加入できない場合もあり、合同労組(ユニオン)に個人で加入することも多く、近年、合同労組の活動は活発化してきている状況です。

【参考】労働組合基礎調査(厚生労働省)

安定した労使関係のための方策

さて、次に労使関係の安定について考えてみましょう。安定した労使関係を築き、維持するためにはどのようなことを心掛ければよいのでしょうか?

安定した労使関係とは

安定した労使関係とは、労使間の紛争のない、あるいは少ない状態であるといえます。

こうした状態を作るには労働法令違反がないことが前提です。まず労働法令違反がないかチェックし、もしあった場合は早期に是正しなければなりません。

企業側が心がけること

企業体質的なセクシュアルハラスメントやパワーハラスメントなどは、経営者側からの一方的な目線では気づきにくいかもしれません。ですから企業側は、労働者の意見や提案をよく聴いていくよう心がける必要があります。労働者側の意見を聴き、企業側の意見も伝え、両者の意思疎通がスムーズに行われる状態は大切なものです。

会社側の圧力が強すぎて物も言えないような会社環境は、結果的に労使紛争をもたらします。労使間で円滑に情報や意見の交換が行われる環境があれば、潜在的な労使問題をごく初期の段階で発見することができます。そして労使紛争を未然に防止することができるのです。

労使紛争が発生したら

しかし、それでも会社と労働者との間では紛争が発生してしまうことがあります。ここでは、労使紛争についての基本的な事項をみていきます。

労使紛争とは

労使紛争とは、労働者と使用者(経営者)間の、労働関係における争いごとのことです。労働者と使用者の利害や意見にずれが生じることは多々あり、大小様々な労使紛争が起きています。

労使紛争の種類

労使紛争は、個別紛争と集団紛争とに大きく分けられます。また権利紛争と利益紛争という分け方もあります。順に説明していきます。

個別紛争

個別紛争とは、労働者個人と使用者との個別的な紛争です。紛争の内容は、解雇や労働条件、セクシュアルハラスメント・パワーハラスメントなど様々です。近年は個別紛争が増加しています。

集団紛争

集団紛争とは、労働組合等と使用者との紛争です。紛争の内容は、賃上げや賃金カット、労働時間、定年年齢など多岐に渡る内容となっています。従来の労使紛争は、集団紛争が多かったのですが、近年は減少傾向にあります。

権利紛争

労働基準法等の法律や就業規則などで規定された(既存の、または既存であると主張される)権利の存在や内容を争う紛争のことです。権利紛争は個別紛争になじみます。

利益紛争

賃上げなど、既存の権利ではなく新たな利益を焦点とした紛争のことです。こちらは集団紛争になじむものです。

紛争解決にあたる機関とは

紛争解決の機関は、次の通りです。

  • 個別紛争の解決機関
    都道府県の紛争調整委員会、労働基準監督署、ハローワーク、労政事務所、裁判所など
  • 集団紛争の解決機関
    労働委員会、裁判所

個別紛争の解決法

次に、労使間の個別紛争が起きたときの解決についてみていきます。

当事者間の自主的解決

労使紛争が起きたときは、まず両当事者が話し合いの場を持つなどして自主的な解決を試みます。また会社内に相談窓口を設置する等の努力も、紛争の未然防止のためには有効だと考えられます。

個別労働紛争解決制度

個別紛争は裁判によって解決することができますが、裁判には長い時間と費用がかかります。そこで紛争の迅速かつ適正な解決を目的として、平成13年に「個別労働紛争解決促進法(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律)」が施行されています。

この制度では次の制度が用意されており、無料で利用することができます。

  • 総合労働相談コーナーでの情報提供や相談
  • 都道府県労働局長による助言や指導
  • 紛争調整委員会によるあっせん

司法による解決手続制度

司法による解決手続に、労働審判制度があります。労働審判も迅速・適正な解決を目指して作られた制度です。

労働審判の審理は労働審判委員会が行います。労働審判委員会は、1名の審判官(裁判官)と2名の審判員(労働に関し専門的な経験をもつ者)とで構成されています。労働実務に通じた審判員が審理に加わることで、より適切かつ妥当な解決法が提案されると言われています。

また労働審判の審理は3回以内と定められているため、解決までの時間も短く済みます。

労働審判の過程で調停がまとまれば両者の合意による解決となります。しかし調停がまとまらない場合は労働審判が下されることとなります。この労働審判には異議を申し立てることができますが、その場合は訴訟手続に移行します。

集団紛争の解決法

次に、集団紛争の解決法について順にみていきましょう。

労働委員会による解決

集団紛争の解決機関として労働委員会があります。労働委員会には都道府県労働委員会とその上部組織である中央労働委員会とがあります。

調整的解決

調整的解決は、労使の利益の調製を図り、両者の合意をもとに解決をする方法です。労働委員会の行う調整的解決手続きには、「あっせん」「調停」「仲裁」があります。

  • あっせん
    あっせん員が労使間の主張を確認し、紛争を和解に導くものです。
  • 調停
    調停委員会が調停案を作成し、労使双方に調停案の受諾勧告をするものです。調停案の受諾は義務ではありません。
  • 仲裁
    労使双方が仲裁委員会に紛争の解決を任せる方法です。仲裁委員会の作成した仲裁案の受諾は義務とされています。

判定的解決

調整的解決が労使双方の合意に基づいていることに対し、判定的解決は労働委員会や裁判所など公の判定者が判定を下す解決法です。

使用者が不当労働行為(労働組合加入を理由とした不利益取扱いや団体交渉の拒否等、労働組合法7条で禁止されている行為)をした場合、労働組合が都道府県労働委員会に申立てを行い、それに基づいて労働委員会が判定を行います。不当労働行為が認められた場合は、労働委員会は使用者に対し救済命令を発し、不当労働行為が認められない場合は申立ての棄却命令が出されます。

この都道府県労働委員会の判定に不服があるときは、労使ともに、中央労働委員会に再審査の申立てをすることができます。

司法による解決手続制度

また、都道府県労働委員会の判定に不服がある場合は、訴訟を提起することもできます。中央労働委員会の再審査の結果に不服がある場合も同様です。

行政訴訟

この場合は、裁判所に訴訟を提起し、判定命令の取り消しを求めて争うことになります。この訴訟の申立てには期限が定められており、使用者側は命令書の公布から30日以内、労働者側は6ヶ月以内とされています。

まとめ

  • 労使関係とは、労働者と使用者との関係のことで、個別的労使関係と集団的労使関係に大きく分けることができます。
  • 労使紛争は、集団紛争が減少傾向にある一方、個別紛争は増加しています。
  • 個別紛争の解決には、裁判手続以外に労働審判制度や個別労働紛争解決制度などがあります。

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