面接
採用プロセスの中でも「面接」は、書類上では知り得ない応募者の人柄やコミュニケーション能力を知ることができる貴重な機会です。今回は採用活動において、最も重要といえる面接の目的やポイント、面接の種類・手法、質問事例と合わせてご紹介いたします。
面接を行なう目的とは?
優秀な人材を獲得するためには、面接の導入が必要不可欠です。しかし、面接は何も人事部だけの仕事ではなく、応募者と一緒に働くことになる現場社員も採用担当者として、面接に参加することもあります。自分と一緒に働く仲間を見極める上でも面接の目的をしっかりと把握しておかなければいけません。
応募者の個性を知る
面接を行なう目的の一つが応募者の個性や特性を知ることです。コミュニケーション能力はもちろん、ストレス耐性や考え方、価値観、仕事に対する熱意など、書類上で伺い知ることができない情報を得る機会が面接です。採用担当者は職務経歴書に記載された内容を具体的に掘り下げ、応募者がどのように仕事に取り組んできたかを見極めなければいけません。
また、面接は応募者に任せたい業務の内容や労働条件を伝え、企業と応募者の認識をすり合わせる場としても活用できます。
自社への志望度を高める
自社が獲得したい人材は、競合他社も同様に獲得したい優秀な人材といえます。そのため、獲得したい人材に入社してもらうためには、自社への志望度を高める必要があります。特に新卒採用に関しては、2016年3月卒業者の就職率が97.3%を記録し、「売り手市場」となっています。この売り手市場の傾向は今後も続くとされているため、企業は応募者に自社への志望度を高めてもらう施策を講じる必要があります。
自社の魅力は会社説明会などでもアピールできますが、面接は応募者に直接アピールする絶好の機会とです。そのため、採用担当者には応募者に入社を促す、「口説き」ともいえる能力が求められます。また、応募者の質問に直接回答することで、不安や疑問点を解消できる機会にもなります。
入社後のミスマッチを防ぐ
新卒採用 や中途採用、アルバイト採用に限らず、入社後のミスマッチによる早期退職は少なからず発生してしまいます。時間的・金銭的コストを損失しないためにも、ミスマッチによる早期退職は最小限に抑止する必要があります。そのためにも面接を通じて、自社の社風や応募者の希望職種にギャップがないかをしっかりと確認し合い、採用後の配属部門の情報提供を行なうことが大切です。
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採用担当者が心得るべきポイント
優秀な人材を獲得するためにも、面接に臨む採用担当者は心得なければならないポイントを押える必要があります。
面接の雰囲気作り
面接に臨む応募者は基本的に緊張しています。応募者にリラックスさせ、面接の雰囲気作りを行なうのも採用担当者の重要な仕事の一つです。笑顔で応対する、採用担当者から自己紹介を始める、応募者の自己紹介を聞く、経歴書から読み取れる情報を基にアイスブレイクを行なうことが、一般的な面接の雰囲気作りの手法です。
応募者の緊張をほぐさずに面接を始めると、応募者の本音や実力を聞き出せずに面接が終了してしまいます。採用担当者自身もリラックスし、面接に臨むようにしましょう。
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面接で注意したいポイント
採用担当者は応募者を見極める上で注意しなければならないポイントがいくつかあります。それが「応募者の過去の業績に対する過大評価」、「短時間での判断」、「質問の深堀をしない」の3つです。
応募者の過去の業績に対する過大評価
応募者は採用担当者に好印象を与えるため、過去の業績をアピールしようとします。しかし人事評価エラーの多くが、応募者の過去の実績による「ハロー効果」によるものだと指摘されています。
ハロー効果とは、目立ちやすい特徴に引きずられて、他の特徴の評価が歪められる現象を指します。応募者の過去の実績に引きずられ、欠点や弱みを見抜けずそのまま採用してしまうことも多いので、アピールされた過去の実績を過大評価することは避けましょう。
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短時間での判断
多くの採用担当者がしてしまいがちな行動の一つが、短時間での判断です。
人は見た目や最初の言動により、その人の人間性を判断してしまう傾向にあります。社会人としての最低限のマナーは守られるべきですが、重箱をつつく様な粗探しや短時間での判断は効果的ではありません。
逆に第一印象に引っ張られ、優秀な人材と誤認してしまう人事評価エラーを誘発してしまいます。見た目や言動は判断材料の一つではありますが、それだけで応募者の力量を判断するのは間違いといえます。
質問を深堀しない
「質問を深堀しない」行為は、応募者の真の実力を知ろうとする手段を放棄することと同意です。質問内容を明確にし、深堀することでアピールされた実績の信憑性が増します。また、質問の受け答えから応募者の論理的思考力や地頭の良さなども同時に見極めることができます。
面接官の印象を大切にする
応募者にとって、面接官や採用担当者は入社を志望する企業の社員であり、企業の看板として認識します。そのため、人事部はもちろん、採用担当となった現場の社員は身だしなみに気を使わなければなりません。髪型を整える、口臭に気をつける、清潔さや誠実さを感じ取れる服装マナーを心がけましょう。
また、面接時は相手に興味を持ちながら、話を進めるなど、応募者を気遣ったコミュニケーションを意識しなければなりません。相手の目を見て、和やかな雰囲気を保ちつつ、しっかりとコミュニケーションを取ることが大切です。その他に印象の悪い面接官の特徴として、以下の項目が挙げられます。
- 姿勢や態度が悪い
- 暴言や上から目線でのやりとり
- 応募者に対する質問がない
- 応募者の事前情報を把握していない
- 話を何度も遮られる
このような面接は、面接官・採用担当者だけでなく、自社のイメージも悪化させてしまいます。肝に銘じて、面接に臨むようにしましょう。
面接と面談の違いを把握する
採用プロセスの中に、面接とよく似たプロセスである「面談」があります。この面談は面接とは定義が異なり、採用担当者は違いを把握しておく必要があります。
面接とは?
面接は企業が応募者の能力や職務に対する意欲を見極める場であると定義付けられています。そのため、面接は応募者にとって、自分自身を企業側に理解してもらう場と捉えています。
面談とは?
採用活動における面談は企業と応募者が対等な関係で相互理解を深める場として定義付けられています。書類選考や面接などの採用プロセスを終え、内定・採用確定後に実施されます。また、次の選考に進んでもらうために、企業が応募者にアピールする場でもあります。面談では一般的に今後の仕事内容や配属先、待遇、応募者のキャリアプラン、入社条件などが話し合われます。
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知っておきたい面接手法・種類とは?
採用活動に欠かせない面接には多くの手法・種類があり、企業が求める人材や選考状況に合わせて、選択することができます。
構造化面接
構造化面接とは、面接者(採用担当者)が変わったとしても応募者への対応や面接内容が変わらないようにする面接方法です。
元々、カウンセリングの現場で取り入れられた手法であり、現場の社員が採用担当者として面接に参加する際に効果を発揮します。一定の評価基準に従い、面接官のスキルや能力に依存しない面接が行なえることから、面接経験の少ない採用担当者でも実施が可能です。また、面接でやってはいけない対応や、事例をマニュアルに記載するなどの事前対策も講じることができます。
その反面、応募者の個性や自由な発想を評価しにくく、マニュアルに定められた人材以外の人材を確保しにくいというデメリットがあります。
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オンライン面接
オンライン面接とは、応募者がウェブカメラを通じて、採用担当者と面接を行なう採用手法の一つです。応募者は自分の動画を撮影し、企業に応募できるなど時間や場所に捉われずに選考を進めることができます。
また、地方出身の学生や学校の授業を優先している就活生、会社勤めと転職活動を両立している応募者ともスケジュール調整がつきやすく、応募者の時間的・金銭的負担を軽減できるメリットがあります。企業としても幅広い人材と面接を行なえ、採用担当者の面接能力の向上にもつながります。
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コンピテンシー面接
コンピテンシー面接とは、企業が求める職種や職務を担える人材を見極めるために、就活者の行動を客観的な要素と位置付け、評価する面接です。自社で成果を出している人材の考え方や行動を基準にしているため、自社が求める能力やレベルに見合った人材を確保することができます。
コンピテンシー面接は誤認しやすい応募者のうわべだけの能力ではなく、具体的な行動能力を測ることができます。さらに、応募者がアピールするエピソードを深堀していく面接手法を取るため、応募者の矛盾を見抜き、信憑性の高い情報を取得することもできます。
書類や通常面接では推し量ることができない応募者の能力を見極める有効な面接手法といえます。
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圧迫面接
圧迫面接とは、採用担当者が応募者に対して、言葉や態度で威圧しながら、面接に臨む採用手法です。威圧することにより、応募者のストレス耐性を測る、柔軟性・統率性を測る、一部顧客による理不尽な主張や発言への対応力を測る際に行なわれます。
しかし、近年ではパワハラが問題視されるようになり、内定辞退や企業の社会的信用の失墜、訴訟リスクなどのデメリットが多いため、見直しが進んでいます。
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優秀な人材を見極めるポイント
面接は、応募者が優秀な人材であるかを見極める重要な機会です。そのため、面接に臨む採用担当者は、優秀な人材を見極めるためのポイントをしっかりと理解しておく必要があります。
業務遂行能力を見極める
応募者が優秀な人材であるかどうかは、応募者が持つ業務思考能力を見極める必要があります。
業務遂行能力はビジネスマナー、責任感、チャレンジ精神などが挙げられます。ビジネスマナーは面接時の服装マナーや挨拶、話し方などから評価することができます。責任感の有無は達成してきたこれまでの業績について、どのような苦難をどんな工夫で最後までやり遂げたか掘り下げてことで評価が可能です。「他責にしない」、「上司・顧客・同僚と約束を守っている」かどうかのエピソードも評価判断につながります。
チャレンジ精神は、「なぜその業務を取り組んだのか?」という質問で、上司の指令や事業部の方針にただ従うのではなく、能動的に新しい職務や業務改善に取り組んでいるかを判断できます。また、読書の有無の質問は、積極的に自己啓発に努めているかを判断するのに有効です。
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過去の実績の具体性を探る
応募者の力量を測る上では過去の実績に焦点を当てることが大切です。応募者の人柄や論理的思考力、ストレス耐性、課題解決能力の有無は、過去にどんな課題をどのように克服してきたかを掘り下げることで見えてきます。さらには、応募者が何を大切にし、どのような考え方を持ち、どういった行動を取る人物かも把握することができます。
仮に過去の実績に嘘をついていたとしても、話を掘り下げていくことで、応募者の答え方に違和感や矛盾が生じ、嘘を見抜くことができます。「なぜ?」や「具体的には?」という質問を繰り返し、過去の実績を掘り下げることが大切です。
短期間の中で成長できるかどうか
優秀な人材は、短期間の中でも常に成長できる力量と意欲を持っています。これらの能力は1時間という短い面接の中でも感じることができます。面接官の最初の質問にうまく答えられなかったとしても、軌道修正を行い、的確な答えを提示できる人材は優秀な人材といえます。
このように、面接という限られた時間内でも相手の意見に耳を傾け、柔軟に対応しようとする思考は応募者の成長意欲に直結しています。そのため、採用担当者は質問を通じて、応募者がどのように応対するかをしっかりと見届ける必要があります。
面接で使える質問例
面接では書類では知り得ない応募者の能力を測ることができます。中でもコミュニケーション能力、人物像(個性や適正、ストレス耐性)、志望度・向上心などは、面接を通じて評価します。これらの能力を測るために、面接で使える質問を例文つきでご用意しましたので、ぜひ参考にしてみてください。
コミュニケーション能力を測る質問例
ビジネスマンとして、最も必要な能力がコミュニケーション能力です。このコミュニケーション能力を測る質問例は以下の内容が考えられます。。
自己紹介をお願いします
自分自身について、限られた時間内に紹介する能力はプレゼン能力の有無と、相手との意思疎通を図ろうとする姿勢を評価することができます。
好きなことは何ですか?
回答例がなく、採用担当者の質問の意図を理解し、適切な回答を行なわなければならない質問です。採用担当者に興味を持ってもらえるような内容を取捨選択し、相手にわかりやすく、伝えられるかどうかを見極めることができます。
職場に苦手な人物がいた場合、どのように対応しますか?
自分が苦手とする人物に、どのようにアプローチし、コミュニケーションの円滑化を図るかを見極めることができます。また、人間関係でのトラブル対応能力も同時に評価することができます。
人物像を測る質問例
応募者がどのような考えや価値観を持っているかは、面接を通じてのみ、見極めることができます。以下の質問は応募者の人物像を測るための代表的な質問例です。
ご自身の強みをどのように自社で活かせると思いますか?
自分の強みを認識しているかどうかと、自分に対する評価の姿勢が垣間見える質問です。この質問により、応募者が持つ性格や判断能力を見極めることができます。
これまでの挫折経験とその乗り越えた方法を教えてください
失敗や挫折体験に対して、どのように向き合い、解決したかを探る質問例です。ストレス耐性の有無もチェックできる他、困難な事柄に対する姿勢や取り組み方を把握することができます。
退職後にブランクがある(転職回数が多い)のはなぜですか?
ネガティブな質問に対しても、偽ることなく、その理由や自分の考えを伝えられる誠実さと、他人の鋭い意見を受け入れる謙虚さを測ることができます。
志望度や向上心を測る質問例
採用担当者にとって、応募者の自社に対する志望度や向上心の有無は重要な判断材料となります。
当社にはどんなイメージをお持ちですか?
どれだけ企業研究を行なっているかを知ることができる質問です。企業研究の程度は、自社への志望動機を測る最適な判断材料といえます。
あなたを採用した際の当社のメリットを教えてください
自己PRを通して、自社への志望度を測れる質問です。また、応募者の強みやスキルも同時に把握でき、企業が求める職務内容や役割を相互に擦り合わせられるメリットがあります。
10年後、どのような仕事をしていたいですか?
応募者が描くキャリアプランを通じて、成長意欲を測れる質問です。マネジメント志向か、それともスペシャリスト志向かを把握でき、仕事に対する価値観も同時に知ることができます。
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採用担当者のサポート方法とは?
採用担当者は人事部付けの社員だけに限らず、応募者が配属される部門の上司や同僚が採用担当者の対象となりえます。そのため、人事部としても採用担当者をサポートする体制の構築を実施しなければいけません。
採用担当者用マニュアルの作成
人材採用を安定化し、効率よく優秀な人材を獲得するためには採用担当者向けマニュアルの存在が不可欠です。また、マニュアルを作成する際は「何のために面接を行なうのか?」を明確にする必要があります。コミュニケーション能力の有無、自社への志望度の高さ、スキルの有無や適性など、面接を通じて、何を得るかを具体的に指示しなければいけません。
また、プロセスの抜け漏れがないように網羅性を確保し、選考基準の統一、採用担当者への面接ルールの共有が必要となります。
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採用担当者向けトレーニングを実施する
精度の高い面接を行なうためには、一定以上のスキルと心構えが必要となります。これらの能力はトレーニングを実施することで習得可能です。採用担当者向けトレーニングは、主に面接の基本を学ぶ講義と面接ロールプレイの2種類が一般的に実施されます。採用担当者向けのトレーニングを提供するコンサルタント会社と提携しながら、トレーニングを実施するのもおすすめです。
これらのトレーニングは、採用担当者の面接能力(評価基準を明確化し、応募者の強みを引き出す能力)の向上や自分自身に対する自信を得ることに寄与します。採用担当者の能力が向上すれば、内定辞退の減少や採用担当者による広報効果の最大化が期待できます。
【関連】面接官トレーニングで選考の精度や効果を上げる方法を、具体例を交えてご紹介 / BizHint HR
まとめ
- 優秀な人材の獲得は企業の将来を左右する重要なミッションです。
- 人事部はもちろん、面接に臨む全ての採用担当者は面接を行なう目的をきちんと理解し、面接に臨む必要があります。
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