連載:第4回 エネルギー
カーボンニュートラル社会が実現したらどうなる?デロイト トーマツが2050年のシミュレーション結果を発表
デロイトトーマツグループは、2050年に二酸化炭素の排出量と吸収量が同一となる「カーボンニュートラルの社会」が実現した場合、日本の経済社会のあり方がどうなるかについてのシミュレーション結果を発表しました。その結果、もしカーボンニュートラル社会が実現した場合、蓄電設備に対する投資が拡大するため発電・系統費用が拡大する可能性があることが判明しました。
カーボンニュートラル社会では発電・系統費用が拡大する可能性
カーボンニュートラル社会の電源構成では、再生可能エネルギーや原子力発電などの脱炭素エネルギーのシェアがほぼ100%になることがわかりました。
ガス火力発電所において水素を活用する水素発電やCCS(CO2回収・貯留技術)を活用する場合は、再生可能エネルギーが約60%、原子力が約10%、脱酸素型火力発電が約30%の割合となります。再エネ中心ケースの場合、再生可能エネルギーの割合が約90%にのぼります。
上記は、発電・系統費用の比較結果です。現状(約11円/kWh)に比べ、再生可能エネルギー中心になった場合、コストは約22円/kWhまで拡大、再エネ+水素発電・CSSだった場合でも約14円/kWhまで発電・系統費用が増加する試算になっています。
※上記グラフの金額はシミュレーション結果をベースとして、DTCで発電にかかる費用と系統・蓄電等のインフラ投資にかかる費用を推計したものです。実際の電力需要者に課せられる電力料金は、この数値以外に各種費用等が加算されるため、実際の電力料金とは異なります。
カーボンニュートラル社会では大量の蓄電設備を導入する必要がある
シミュレーションの結果、カーボンニュートラル社会では多い場合で約40GW以上もの蓄電設備を導入する必要が出てくる可能性があるようです。それらの投資は、電力コスト上昇の要因となるでしょう。
それを防ぐには、水素発電やCCSの導入、蓄電設備の代替として活用するためのEV(電気自動車)などの電動モビリティの普及、VPP(Virtual Power Plant)などのソフト的な需給調整、再エネの地産地消の推進、などの取り組みが必要となります。
CCSや水素発電を導入すると、蓄電池や系統網への投資は1/3~1/4に抑制できるという分析結果も出ています。
カーボンニュートラル社会ではEVや燃料電池自動車の推進が必要
カーボンニュートラル社会においてはクリーンエネルギーを活用しつつ、モビリティの電動化(EVや燃料電池自動車)を進めることが必要であることも判明しました。
動型再生可能エネルギーの調整のための蓄電機能として、EVを活用することも可能として分析を行った結果、乗用車におけるEV比率は約7割まで上昇するようです。
カーボンニュートラル社会では「セクターカップリング」の考え方が重要
本シミュレーション分析では、変動型再生可能エネルギーの調整力として電解水素を生成し、需要側において燃料利用していくことを織り込んでいます。この場合、約1,300億Nm3の水素需要が推計されました。
カーボンニュートラル社会では、大量に生じる再生可能エネルギー余剰電力を活用してクリーン水素を生成し、熱源や輸送用燃料(E-fuel)、基礎化学原料等として利用する「セクターカップリング」の考え方が重要となるでしょう。
調査概要
プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000341.000000202.html
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