連載:第7回 エネルギー
「新電力会社」の新規参入は、2017年のピーク以降、減少傾向に。今年は大手の倒産も発生
「電力小売りの全面自由化」が2016年から始まり6年が経過しました。事業者も増加し業界は徐々に成長してきましたが、昨年末に電力卸売価格の高騰が発生し、消費者から不満の声があがったほか、事業者によっては資金繰りが悪化し倒産するケースも発生しました。新電力会社の経営状況について、帝国データバンクが調査を行っています。
「新電力会社」の新規参入は、2017年のピーク以降、減少傾向に。
帝国データバンクが、経済産業省・資源エネルギー庁の「登録小売電気事業者」に登録された「新電力会社」を集計した結果、4月7日時点で登録小売電気事業者に登録している「新電力会社」は、全国に706社ありました。今回の調査では、みなし小売電気事業者(旧:一般電気事業者)を除いているため、2018年9月の前回調査からこれを除くと497社なので、209社(42.1%)増加したこととなります。
本社所在地を都道府県別に見ると、259社の「東京都」が構成比36.7%で最多。以下、「大阪府」「福岡県」「愛知県」「埼玉県」などが続いています。地域別では344社の「関東」が構成比48.7%で、ほぼ半分を占めています。
これら706社の設立時期では、2010年までに設立された企業が317社(構成比44.9%)を占めていました。残る半分は2011年以降であるため、東日本大震災以前・以降にわけて考えられるでしょう。さらに2016年4月に登録小売電気事業者の制度がスタートし、翌2017年にピークを迎えましたが、ここ最近の新規参入は、徐々に減少しています。
ただし、これら706社の主力事業を見ると、電気事業所やガス事業所、発電所を含む「その他」258社(構成比36.5%)が最多で、「未詳」150社(同21.2社)がそれに次いでいます。以下「サービス業」88社(同12.5%)、「卸売業」82社(同11.6%)です。
売上規模別で5つに区分すると、「10億円以上100億円未満」181社(構成比25.6%)が最多。以下、「1億円以上10億円未満」114社(同16.1%)、「100億円以上1000億円未満」103社(同14.6%)と続いており、かなり雑多な中小が参入していると推察されます。一方、電力販売を主業とする「電気事業者」133社について収益を見ると、2期連続で「増収」となった企業が65社(構成比48.9%)とほぼ半分を占めました。電力事業者の新電力事業は好調のようです。
ただし、2020年12月~2021年1月にかけて発生した電力卸売価格の高騰により、経済産業省はインバランス支払いの分割などの特例措置を発表しています。こうした特例を受けている新電力会社は174社(構成比24.6%)に達していますが、それでも資金繰りの悪化により、今年に入って大手の倒産が相次いでいます。今後さらに倒産する企業が出る可能性もあります。経産省の対応などに注意が必要でしょう。
調査方法
調査期間:2021年4月7日時点
調査方法:企業概要ファイル「COSMOS2」(147万社収録)などを基に、都道府県別、設立時期、主力事業別、売上規模別等に集計・分析
調査対象:経済産業省・資源エネルギー庁の「登録小売電気事業者」に登録された「新電力会社」
調査数:706社
プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000297.000043465.html
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p210505.html
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