連載:第9回 エネルギー
脱炭素社会の進展・電気自動車の普及に対して、プラスと考える企業よりマイナス視する企業が多い
近年「脱炭素社会」「スマートシティ」といった持続可能性を重視する社会構造への転換が期待されています。「パリ協定」においては、温室効果ガス排出量を2050年までにゼロにすることを目標にかかげ、100か国以上がこれに取り組んでいます。具体策としては、電気自動車(EV)の推進や再生可能エネルギーへの転換などに、国内でも取り組みが進んでいますが、日本政府の思惑と企業の実感には差異があるようです。
「脱炭素社会の進展」「電気自動車(EV)の普及」について企業の考えはさまざま
帝国データバンクでは、TDB景気動向調査2021年6月調査とともに、「脱炭素社会に向けた企業への影響」に関する調査を行い、1万1,109社から回答を得ています。
まず「脱炭素社会の進展」が、今後の自社の事業に影響を与えるかどうかを聞くと、「影響はない」が35.0%で最多。「プラスになる」とした企業は14.8%でしたが、「マイナスになる」とした企業は16.1%でそれを上回りました。「電気自動車(EV)の普及」についても聞くと、「影響はない」が40.7%で最多。「プラスになる」とした企業は13.4%でしたが、「マイナスになる」とした企業は14.9%でそれを上回りました。
わずかの差ですが、「脱炭素社会の進展」「電気自動車(EV)の普及」ともに、負の影響を受けると考える企業が多いことがわかります。その理由については、「自社の商材にとって不安材料」「EV化によって航続距離が短くなり、配送距離に課題がある」「自動車関連企業が軒並み立ち行かないことが想定される」といった声があがりました。
なお業種別に回答を見ると、「プラスの影響」を受けるとした業種は「電気・ガス・水道・熱供給」(それぞれ45.0%、40.0%)が最多、「マイナスの影響」を受けるとした業種は「専門商品小売(ガソリンスタンドなどを含む)」(それぞれ51.7%、49.0%)が最多でした。
スマートシティ関連では「エネルギー、水、廃棄物分野」に注目する企業が多い
一方、「総合イノベーション戦略2020」などに基づき政府が推進するスマートシティへの取り組みに対し、「スマートシティに関してどのような分野に興味・関心があるか」を聞くと、エネルギー、上下水、リサイクルなどを地域内で最適管理する「エネルギー、水、廃棄物分野」が42.7%で最高になりました。
エネルギー問題について直結する分野だけに当然の結果と言えますが、2位以下では、災害の情報をリアルタイムで取得・発信する「防災分野」32.8%、「健康・医療・介護分野」25.5%、「自動走行・自動配送分野」25.4%、「金融分野」20.0%と、幅広い分野が並びます。このへんは業界によっても興味・関心の高い分野が割れるでしょう。
今後2050年に向けて、国や企業の取り組みは活発化していくと思われます。自社の注力すべき分野を見極めることが重要でしょう。
調査方法
調査期間:2021年6月17日~30日
調査対象:全国2万3,737社
有効回答:1万1,109社(回答率46.8%)
プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000326.000043465.htmlhttps://www.tdb-di.com/special-planning-survey/sp20210726.php
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