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連載:第1回 店舗経営者のためのDX

コロナ禍が加速させたDX、店舗は何から手を付けるべき?

BizHint 編集部 2021年1月5日(火)掲載
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オンラインサービスが好調だ。コロナ禍の中、これまでネットサービスを利用してこなかった層も、EC(電子商取引)やデリバリー、ネット予約などのオンラインサービスを利用するようになった。その一方、店舗でのサービス(リアルサービス)は、駅前など、立地の良い店舗でもお客さまがやってこない厳しい時代がやってきた。店舗の魅力を高めるにはデジタルの力を利用することが大切。本連載では、店舗が取り組むべきDX(デジタルトランスフォーメーション)の考え方を解説していこう。

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ショップフォース株式会社
代表取締役 網永 穣さん

慶応義塾大学卒業。NTTデータに入社、新規事業開発の部隊に配属、10年近く、テキスト解析SaaS事業のビジネスディベロップメントに従事。世界初のモバイル向けコンテンツ連動広告サービスでのオーバーチュアとの提携や、ライブドアとのブログマーケティング事業の責任者を務めた後、大手法人向けのシステム開発プロジェクトなどに従事。2012年 22Inc.を創業。2020年、社名をショップフォース株式会社に変更、店舗経営のDXを実現するサービス「SHOP FORCE」を展開


コロナ禍が人々のオンラインサービス認知を広めた

2020年、コロナ禍で「リアルサービス」に制約がかかった。4月には東京都で店舗の営業活動を控えるように要請が出たが、店舗経営者にとっては死活問題。店舗を閉じていては、事業の継続が厳しいため、「オンライン」での営業活動について試行錯誤する動きが多く見られた。一方、人々は外出を極力控え、ECやデリバリーなどを利用する機会が増加、これまであまりオンラインサービスを利用してこなかった人々のオンラインサービスの経験値が一気に引き上げられることとなった。そんな中で、経験値とともに認知が広がったのがオンラインサービスの「利便性」である。

オンラインサービスとリアルサービスの違い

オンラインサービスにおいては空間の制約はなく、お客さまは世界中のどこにいても商品・コンテンツが購入できるだけでなく、性別・年齢といった情報や購買履歴を踏まえた商品がオススメされることが一般的である――「何を今さら当たり前のこと」を思われるかもしれないが、このようなオンラインサービスでは至極当たり前のことでも、リアルサービスでは実現されていないことは多い。

もちろん、リアルサービスにおいても、店主の勘と経験に基づいたオススメが売りとなっている店舗も多くある。昔から大衆に支持され続けているアニメ『サザエさん』に登場する三河屋のサブちゃんもその代表的な例である。「いつものお酒」といった漠然としたオーダーをサブちゃんに伝えれば、彼は商品を届けてくれる。サブちゃんの頭の中には、磯野家をはじめ地域のお得意さまたちの商品の好みがインプットされているのである。

高度成長期以降、全国にGMSやCVSが拡大していく中、買い物のあり方も変化していった。自ら店舗に行って、欲しい商品を取り出してレジで精算、店員が毎回違っても買い物の利便性は変わらない。店舗はオペレーションのマニュアルを作成、業務を標準化することで、容易に店舗を拡大することができるようになった。昭和、平成の時代において、いわゆる店舗での「買い物」が当たり前になっている我々だが、オンラインサービスの「買い物」が普及してくると、逆にリアルサービスの不便さを感じることがある。令和の時代において、リアルサービスがオンラインサービスに勝っている点は何があるのか、店舗経営者は、この問いかけに真剣に向き合っていかなければならない。

「貴方の店舗におけるサービスはどうすればオンラインサービスに負けないか」、「どうやってオンラインサービスを自らの武器とするか」これらの問いに答え、自らを変革させていくことが、店舗経営におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)である。

店舗経営におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)とは

「DX」は別の言い方をすると「デジタルの力で変革すること」だが、漠然としていて、具体的にイメージできないという声も多い。ここでは、店舗経営におけるDXについて、実際の事例も交えながら説明をしていく。

お客さま一人ひとりに合った顧客体験

以前より、会員カードなど、お客さま個人を識別する仕組みは存在したが、一人一台スマートフォンを持つ時代になり、スマートフォンを介在することで個人を特定できるようになった。もちろん、プライバシー保護の観点から個人情報の扱いは慎重さが求められるが、明確な説明の上の合意があれば一人ひとりを個別に認識できる。そんな中で、スマホを利用した取り組みとして店舗の「アプリ」導入が急速に進んでいる。例えば、飲食店であれば、スタンプカードやクーポン、お知らせ、メニューの表示などがアプリの機能として一般的である。しかしながら、従来からあるホームページをアプリの形にしただけのものも多く、お客さまからするとアプリをインストールするメリットが感じにくいケースも多く見られる。

そこでカギとなってくるのは、「パーソナライゼーション」だ。従来の会員カードをただスマートフォン上で表示するだけではお客さまからするとカードを持ち運ぶ手間がアプリをインストールする手間に変わったのみで、登録時の特典欲しさにインストールはされても、すぐアンインストールされてしまうだろう。進めるべきはもう一歩先。一人ひとりに合った顧客体験の提供である。

一人ひとりに合った顧客体験の提供、いわゆる「パーソナライゼーション」は現代のサービスにおいて、非常に大切な要素である。ジョギング好きな人ならご存じのナイキ社の『NIKE RUN CLUB』というアプリ、これは単に日々走った距離や場所を記録できる便利なアプリというだけではなく、距離や利用頻度からその利用者がビギナーなのかベテランなのかを把握した上で、プロフィールに合わせて、ナイキのシューズをお薦めしてくれる。「パーソナライゼーション」は、我々が意識することなく人々の生活に浸透しつつある。

米国のマクドナルドは、一部店舗では、ドライブスルーにやってきた自動車のナンバープレートを映像で識別した上で、デジタルメニューの内容を動的に変える実証実験を行っている。利用頻度や過去の注文内容を踏まえた上で「オススメ」を変えているのである。

オンラインとリアルを行き交う行動情報をおさえる

弊社のSHOP FORCEで開発を行った『UNDEFEATED』のアプリがあるが、このアプリでは、お客さまごとにIDを付与した上で、アプリ内のECと店舗それぞれの購入情報を一元管理している。

同じ店舗業態・お客さまでも、ECと店舗で購入する商品が異なることは実は多い。例えば、ドラッグストアの場合、EC(オンライン)では育毛剤や生理用品といった対面を避けて購入したい心理が働く商品や紙おむつやティッシュなど持ち運び時にかさばる商品が購入される傾向にある。同様にアパレルでも、メーカーごとのマイサイズを知っているスニーカーはECで購入するが、洋服など個体差があり、サイズ感が分からないものは店舗で試着してから購入するといったように使い分けていることも多い。

お客様情報と購買情報をつないで、状況に応じてアプローチを変えるUNDEFEATED

大半の店舗企業では、EC・店舗それぞれの購入情報は管理されている。一方でお客さまごとの購入情報まで管理した上で、状況に応じてアプローチを使い分けている店舗企業は稀である。前述のお客様(ECではスニーカー、店舗では洋服を購入)の例で言うと店舗は、別人としてしか捉えることができず、本来は興味を持っているはずの近日発売のスニーカーが出る告知チラシなどを店頭では同封できず、販売の機会を逃してしまうこともある。

一つのIDでお客さま行動情報を管理することによって、より的確な販促アプローチが実現される。画一的なアプローチではなく、属性(性別・年代)に加えて、リアルの行動だけではなく、オンラインの行動もとらえたアプローチを行うことによって、真の意味でお客さまのニーズを掴むことができるのである。

(構成:瀬川明秀 編集:上野智)

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