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連載:第12回 医療・医薬・健康

薬剤師の7割以上が「調剤薬局よりもドラッグストアに将来性がある」と回答。薬局が生き残るためにできることは?

BizHint 編集部 2020年12月3日(木)掲載
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合同会社スマスタが実施した「調剤薬局の将来性についてのアンケート」によると、多くの薬剤師が「調剤薬局の将来」に危機感を覚えていることが判明しました。今後、ブランド力や資金力のある大手調剤薬局やドラッグストアのシェアがより高まっていくと考えている薬剤師が多く、調剤薬局が生き残るためには時代に合わせた工夫が必要だと考えているようです。

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薬局が生き残る鍵は「オンライン服薬指導」と「在宅」

「今後、薬局が生き残るのに必要な条件は何だと思いますか?」の質問に対して最も回答が多かったのは、「オンライン服薬指導」と「在宅」(74.5%)、次に「面対応」(44.3%)でした。

同率一位だったオンライン服薬指導と在宅対応について、具体的には以下の意見が寄せられています。

  • 新型コロナウイルスの感染拡大がきっかけとなり、オンライン診療や電話診療を求める患者さんがとても増えたと思う。それに伴い、患者さんの家に近いことやオンラインや電話での服薬指導が求められていると感じる。
  • 高齢化が進むので在宅は必須だが、情報社会において薬をもらう作業に時間を取られるのは意味のない時間だから。いかに生活の中で病院と薬局にかかる時間、存在感を無くすかがか鍵。
  • 高齢化社会がどんどん進んでいくため在宅は欠かせないと思います。若い方は忙しい人が多いのでオンライン服薬指導が便利で好まれると考えました。
  • 薬局で待っていれば患者が来る時代ではなくなったのは確か。こちらから出向いていく時代に変わったと感じるため。在宅医療がその一つだと思う。オンライン服薬指導も患者が薬局に来るわけでなく、ある意味薬局が患者宅(インターネットを介して)出向いている形だと考える。
  • 在宅医療のほうが、薬局の処方箋調剤よりも加算点数が高く、利益を上げやすいため。オンライン医療は、感染症予防の観点から必要性が高まると感じています。
  • 利便性という点で、24時間営業よりも、自分の都合の良い時間に薬がもらえるオンラインは今後の主流になってくるかと思います。服薬指導さえ済んでしまえば受け取りは自由、深夜でも薬局前に宅配ボックスを設置して受け取りができれば薬局が開局している必要はないと思います。

第三位の「面対応」については、以下の意見が挙がりました。

  • 門前のクリニックの処方箋をさばくだけの薬局は今後、不要になると思う。かかりつけ薬局として存在するために、面対応は最低限しないといけないと思う。
  • 実際に自分が在宅非対応・処方箋集中率95%超の小規模薬局に務めているが、経済面・業務面ともに隣のクリニックありきの状況であり、患者さまにとっては使い勝手が悪そうである。複数の処方箋を持参する患者様も、「在庫がないなら、こっちの処方箋はよそにだすからよい」と言って隣のクリニックの処方箋以外は持ち帰っている状況がある。
  • 新規開業する医師の門前も含め、面応需は必要だと思います。面対応して集中率を下げないと調剤基本料が下げられるためです。

多くの薬剤師が「今後、大手調剤チェーンのシェアが高まる」と回答

「今後さらに大手調剤チェーンの寡占が進む(業界内でのシェアが高まる)と思いますか?」と聞いた結果、「はい」と回答した人は84%で多くの薬剤師が大手の寡占が進むと考えていることがわかりました。

その理由として、「資金力・規模・ブランド力が高いから」と回答した人が最も多く、次に「在庫・デッドストックのリスクが低いから」「「M&Aが加速しているから」が続きました。

「資金力・規模・ブランド力が高いから」と回答した薬剤師からは以下のような意見が寄せられています。

  • 経済力の差が一番大きいと思う。薬学部卒しかいない小規模薬局は経済や経営を学んでいないことが多いと考えるため、経済重視の世の中ではなかなか歯が立たない。
  • 処方箋の多様性が広がるにつれ、薬の取扱量の多い大手は有利だと思います。また、人手が多いので在宅と外来と人の振り分けがしやすいのも有利だと思います。前は小規模薬局の方が融通が利くイメージがありましたが、高齢者が増えるにつれて融通ばかりが優先していては残っていけないような気がします。
  • 資本に余裕がないと必要な投資を思い切って行いにくく、結果、顧客が求めるニーズに応えきれない。また、地域薬剤師会による結びつきが非常に薄く、情報共有において役に立っていない。その点、大手チェーン店であれば組織としての結びつきも当然比較的強く、情報共有もしやすい。結果、情報量においても個人薬局に比べて充実し、高いレベルで業務が行える。
  • ブランド力は日本人特に高齢の方には影響力が大きいと思ったため。未だに先発品にこだわる患者さんや、CMをしている著名なメーカーのジェネリックなら変えてもいいと限定する患者さんは一定数いるので、大手は強いと思う。

一方で、「いいえ」と回答した薬剤師からは、以下のような意見が挙がりました。

  • 地域差もあると思います。高齢者の多い地方は全国チェーンで転勤のある若手薬剤師より、地域に根差した薬剤師の方が頼りになる。昔ながらの面薬局に強みがあると思います。
  • 調剤報酬点数が下がることで以前より(大手の)力や魅力が減ったように感じます。地元に根付いた薬局が信頼も厚く、これからはより求められると感じています。
  • 大手調剤チェーンは、対応の仕方がマニュアル化されており、地域医療にはそぐわないと思います。特に都市部の方と過疎地域の方では薬局へ求めるニーズが違います。規模の小さい企業の方が現場の意見は通りやすいと考え、先述の回答になりました。
  • 医療プラットフォーム企業の台頭が凄まじいから。大手や中小の差が外部企業によって埋まっていく。そのチャンスを中小や個人が掴めれば大手調剤チェーンの寡占に歯止めがかかるはず。
  • その土地の事情に精通した個人経営の薬局もある程度は残っていくものと思います。調剤薬局は価格競争にはならないことも大きい。
  • 前は大手チェーンで働いておりましたが、今の中小企業に13年勤めて感じることは生き残るためにはいかに地域に求められる薬局になるかです。時代も違うので比較は出来ませんが、今の店舗の方が患者さん一人一人の顔が見える求められる薬局という印象があります。

7割以上が「ドラッグストアの方が将来性がある」と回答

「今後、調剤薬局とドラッグストアのどちらに将来性があると感じますか?」という質問に対しては、75.5%が「ドラッグストア」、24.5%が「調剤薬局」と回答しています。

それぞれの意見は以下の通りです。

ドラッグストアに将来性がある

  • 調剤併設のドラッグストアが一番将来性を感じます。ドラッグストアの商品は、スーパーなどに負けていない安価な価格設定となっており、買い物に来られるお客さんも多いです。薬の待ち時間にドラッグストアの中で時間を潰すのは有意義であると思われます。有意義である中で売り上げが増えるかもしれないので、良い経営法だなと思っています。
  • 調剤併設型ドラッグストアに勤務しているが、自己研鑽や学習面のサポート、福利厚生、給与、働きやすさなどの面から優秀な新卒や若手薬剤師は大手の調剤併設型ドラッグストアに集まっているように思います。
  • 診療報酬改定の影響を受けずに、安定した経営を行えると思います。医療費圧迫の問題が大きくなるにつれてセルフメディケーションが重要視され、セルフメディケーション税制も導入されているので、今後ドラッグストアの将来性は明るいのではないかと考えています。
  • コロナ禍で、日用品を取り扱う業界と医療業界の需要はどんな時代も廃れないのではないかと感じた。よって、その両者の機能を兼ね備えているドラッグストアは、時代の変化にとても強いのではないかと思うようになったから。一方で調剤薬局は、通院を控える患者の影響で厳しい経営を強いられている。
  • 主婦層をターゲットとした場合、ポイントがつくことも鑑みてドラッグストアの人気が高くなっています。調剤薬局を併設することで待ち時間を潰しやすく、在宅管理でも薬だけではなく、日用品の配達を一手に引き受けられるのは需要が多いと思います。高齢社会で介護施設に入れず、自宅で介護する人を増加することを考えると、主婦層に便利な薬局は愛されると思います。 介護用品、対応人員やバイタリティが違うから。陳列できる商品数も桁違いであるし、大手が実施しているプライベートブランドなどに、個人薬局は対応出来ない。
  • 医薬品適正使用(特にポリファーマシー)の観点からすると調剤薬局のような治療を重視する経営路線よりも、予防医療や医療保険を使用しないようなOTC、サプリメントを多種揃えている経営路線の方が医療経済面からも将来性があると思われる。

調剤薬局に将来性がある

  • 日本に限って言えば、保険医療は国民性と親和性が高く、今後もこの傾向は続いていくと思われる。製薬業界もOTCより医療用医薬品の方が市場が大きく、セルフメディケーション税制などもあまり機能していない。医師しか診断名を下せない現行では医師不在の医療経済は民間療法以外には成熟することはなさそう。
  • ドラッグストアが最初は将来性があると感じましたが、オンライン服薬指導が広まるとまだまだ変われるのではないかと考え、こちらを選びました。
  • 次世代薬局「薬局3.0」が提唱されており、今後、調剤薬局はさらに薬剤師の業務拡大が求められるため、将来性ありと思われる。もし薬局3.0化がスムーズに進むのならば、ドラッグストアでOTCを扱う薬剤師は減ってゆくのでは。ドラッグストアは非薬剤師の業務を拡充させて薬剤師数を減らす方向になってゆくのでは、と考えている。
  • 初めはドラッグストアにチェックを入れたくなったが、オンラインを介してなんでも購入できる時代では、わざわざ店舗を持つドラッグストアの方がマイナス収支になる可能性もあると考えた。
  • 高齢者に対しては、調剤薬局などの需要は今後も高いように思います。ある程度専門性も求められていくと思います。
  • 高い薬剤も院外処方箋で出していく時代になっていくと思うので、調剤薬局のほうが利益は高いと思います。ただ降圧剤など、生活習慣病の薬が処方箋無しに購入できるようになったら、話は変わってくると思いますが…。
  • 在宅の技術が求められていくと思うので、既にノウハウのわかっている調剤薬局の方が将来性があるのでは。調剤薬局は箱出し調剤になり、対人業務に割ける時間ができ、力を入れるようになると思う。

飲食店併設や宅配型薬局のアイデアも

新しい形の薬局についてのアイデアについて聞くと、

  • カフェ・レストラン併設薬局
  • オンライン・ウーバー(宅配)薬局

などのアイデアが集まりました。

その他にも、AIを活用した薬局や24時間営業の無人薬局、サプリメント・健康食品に特化した薬局などのアイデアが挙がっています。

調査概要

調査方法:インターネットによる調査
調査対象:就業中の薬剤師の男女
調査機関: 2020年11月16日~11月25日
調査エリア:全国
サンプル数:106名

プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000061619.html

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