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2020年の景気、「悪化」と見込む企業は37.2% ~景気回復に必要な政策、「人手不足の解消」が2年連続でトップ~2020年の景気見通しに対する企業の意識調査

BizHint 編集部 2019年12月19日(木)掲載
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2019年12月9日に発表された7-9月期の実質GDP成長率2次速報は、前期(4~6月期)比 0.4%増(年率換算で1.8%増)となり、4四半期連続でプラスの成長となった。省力化投資などの設備投資や公共工事、五輪関連の建設需要などに加え、消費税率引き上げ前の駆け込み需要も好影響を与えた。一方、相次ぐ自然災害や世界経済の動向、人手不足の深刻化などの懸念材料もあり、業種や地域で景況感に格差が生じている。そこで、帝国データバンクは、2019年の景気動向および2020年の景気見通しに対する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2019年11月調査とともに行った。

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調査結果(要旨)

  1. 2019年の景気動向、「回復」局面であったと考える企業は 3.7%となり、2年連続で1ケタ台となった。他方、「踊り場」局面とした企業は 47.1%と半数近くにのぼったほか、「悪化」局面とした企業は 31.2%と前回調査(2018年11月調査)から14.0ポイント増加し、7年ぶりの3割台に上昇
  2. 2020年の景気見通し、「回復」局面を見込む企業は6.8%で、2年連続で1ケタ台となった。「踊り場」局面になると見込む企業は32.8%と、前回調査(38.2%)より減少したものの、「悪化」局面を見込む企業は37.2%で2年連続で増加しており、過去3番目に高い水準となった。景気の先行きについて、1年前より厳しい見方を強めている様子がうかがえた
  3. 2020年景気への懸念材料は、「人手不足」が46.2%で最も高かった(3つまでの複数回答)。以下、「中国経済」(34.8%)が3割超で続き、「原油・素材価格(上昇)」(24.9%)、「米国経済」(22.8%)、「消費税制」(22.1%)が続く
  4. 景気回復のために必要な政策、「人手不足の解消」が 39.6%(複数回答)と4割近くにのぼり、トップとなった。次いで、「個人消費の拡大策」(33.8%)、「所得の増加」(31.3%)、「公共事業費の増額」(26.7%)、「個人向け減税」(26.5%)が続いた。他方、災害に対する政策を重視している企業もみられた
  5. 景気回復のために必要な政策、「人手不足の解消」が39.6%(複数回答)と4割近くにのぼり、トップとなった。次いで、「個人消費の拡大策」(33.8%)、「所得の増加」(31.3%)、「公共事業費の増額」(26.7%)、「個人向け減税」(26.5%)が続いた。他方、災害に対する政策を重視している企業もみられた

1. 2019 年の景気、「悪化」局面が 7 年ぶりに 3 割台に

2019 年の景気動向について尋ねたところ、「回復」局面であったと考える企業は 3.7%となり、2年連続で1ケタ台となった。他方、「踊り場」局面とした企業は 47.1%と半数近くにのぼった。

また、「悪化」局面とした企業は 31.2%と 2018 年の景気動向(2018 年 11 月調査)から 14.0 ポイント増加し、2012 年以来7年ぶりの3割超えとなった。「分からない」は 18.0%となり、前回調査と同水準で推移した。

「回復」局面とみている企業からは、「ラグビーW 杯や 2020 年の東京五輪への設備投資の影響により稼働率がやや上がっている」(電気通信工事、埼玉県)や「インバウンド需要、万博に向けたホテル建設などが活発に行われており、建設需要をけん引している」(浄化槽清掃・保守点検、大阪府)などという意見が聞かれた。また、「災害復旧工事・作業が本格化し、発注などが増えている」(園芸サービス、東京都)といった、災害復旧による工事の増加を好材料と捉えている声もあがった。しかし、半数近くを占める「踊り場」局面とみる企業からは、「外的要因や自然災害、消費税率引き上げなど景気悪化に繋がる条件は多いように思えたが、結果は思ったほど低調ではなく善戦したと感じる」(普通倉庫、北海道)など、悪材料もあったなか、景気が踏みとどまったと考えている見方もあった。

他方、「悪化」局面とした企業からは、「消費税率引き上げが購買意欲を著しく減衰させている。2%増の重さを軽くみていた」(野菜卸売、福岡県)といった意見にあるように、消費税率引き上げの影響を強く感じている様子がうかがえた。また、「世界経済のけん引役であった中国の減速影響は大きい。経済動向に対する不安は企業の投資や消費者行動に至るまで幅広くマイナスの連鎖を生んでいる」(電気機械製造、東京都)といった意見も聞かれた。

2. 2020 年の景気、「悪化」と見込む割合(37.2%)は過去 3 番目の高さ

2020年の景気について、「回復」局面になると見込む企業(6.8%)は、2019年の見通しを聞いた前回調査(9.1%、2018年11月実施)から 2.3ポイントの減少となり、2 年連続で 1ケタ台となった。「踊り場」局面は32.8%と前回調査(38.2%)より減少した。一方で、「悪化」局面を見込む企業(37.2%)は2年連続で増加しており、調査開始以来3番目に高い水準となった(2009年見通し 70.5%、2008年見通し43.1%)。景気の先行きについて、1 年前より厳しい見方を強めている様子がうかがえた。

「悪化」局面を見込む企業を業界別にみると、『小売』が 40.7%でトップ、次いで『不動産』(40.1%)も同じく4割台で続いた。また、本調査で 2019年の景気を「悪化」局面とした企業の割合と 2020年の景気を「悪化」局面と見込む企業の割合を比較すると、『建設』や『不動産』、『サービス』で10ポイント以上の増加がみられた。企業からも「東京五輪関連の投資が終わり、観光もピークを迎え、悪化局面に入る」(木造建築工事、北海道)や「地域の不動産業においては、復興特需の反動で低迷期に入ると思われる」(不動産管理、熊本県)といった声や「現状はキャッシュレスポイント還元などにより、消費税率引き上げの影響は小さいとみている。しかし、2020年6月までの限定的な動きであり、その後は下落幅が大きくなると予想する」(化粧品小売、東京都)などといった意見があげられた。


3. 2020 年景気への懸念材料、「人手不足」がトップ、米中関連の項目も上位

2020 年の景気に悪影響を及ぼす懸念材料を尋ねたところ、「人手不足」が 46.2%で最も高かった(3 つまでの複数回答、以下同)。前々回調査(47.9%、2017 年 11 月調査)から3年連続して5割近くの企業で悪材料と捉えている。

次いで、「中国経済」(34.8%)が 3 割超で続き、「原油・素材価格(上昇)」(24.9%)、「米国経済」(22.8%)、「消費税制」(22.1%)、米中貿易摩擦などの「貿易摩擦の激化」(21.8%)が 2 割台で続いた。とりわけ、米国や中国に関連した項目で前回調査から増加がみられた。企業からも「中国経済が年々悪化傾向という記事が増えており、大企業の設備投資意欲の低下が感じられる。米中貿易交渉の行方によっては、この状況がさらに顕著になり、中小零細企業にまで影響が及ぶ」(電気機械器具卸売、茨城県)などといった意見があげられ、海外の動向をリスクとして捉えている様子も浮き彫りとなった。

4. 景気回復に必要な政策、「人手不足の解消」(39.6%)が 2 年連続でトップ

今後、景気が回復するために必要な政策を尋ねたところ、「人手不足の解消」が 39.6%(複数回答、以下同)と4割近くにのぼり、トップとなった。前回調査に引き続き2年連続で最も高くなっており、企業は人手不足の解消を、今後の景気回復に向けた喫緊の課題として捉えている様子がうかがえた。次いで、「個人消費の拡大策」(33.8%)、「所得の増加」(31.3%)、「公共事業費の増額」(26.7%)、「個人向け減税」(26.5%)が続いた。企業は、個人消費の拡大や所得の増加といった個人の消費行動につながる政策を求めている様子もみられた。

他方で、「貿易摩擦の緩和」(22.6%)や「災害対策」(21.4%)を必要な政策とみている企業が増加した。特に、災害に関しては、「災害対策」以外にも、水害、土砂災害、噴火などの「災害復興(地震は除く)」(20.0%)や「震災復興」(11.7%)といった災害が起きた後の政策をあげる企業も多く、近年多発する自然災害への強い危機感が表れた。

まとめ

2019年の景気は、「回復」局面と考える企業が2年連続で1ケタ台となる一方で、「悪化」局面とする企業は7年ぶりに3割台となるなど、景気動向は前年に引き続き厳しさの増す1年だったと言えよう。さらに、2020年の景気を「悪化」と見込む企業は、前回調査より増加し、サブプライム問題からリーマン・ショックまでの影響を大きく受けていた2009年景気見通し(2008年11月調査)、2008年景気見通し(2007年11月調査)以来、3番目の高さとなった。景気の先行きについて企業は、1年前より厳しい見方を強めている様子がうかがえた。

2020年の景気の懸念材料として「人手不足」をあげる企業が4割超に達した。3年連続して5割近くの企業で悪材料ととらえており、引き続き、景気を押し下げる筆頭とみられる。また、「中国経済」や「米国経済」の動向を懸念する企業も増加しており、米中の貿易摩擦をはじめとする海外の経済動向が大きな焦点となってこよう。

今後の景気に必要な政策として、多くの企業で「人手不足の解消」をあげていた。2年連続で必要な政策のトップとなり、企業は政府に対し深刻化する人手不足の解消を強く求めている様子がうかがえる。さらに、多くの企業で企業活動の停滞を招くなどの大きな影響を与えていた自然災害に対する政策も重視している。

今後、減速しつつある経済を再び上向かせるためには、政府は人手不足の解消や海外経済のリスクに対応した政策を進めるとともに、災害対策に資する政策も進めることが重要となろう。

転載元:帝国データバンク(「特別企画 : 2020 年の景気見通しに対する企業の意識調査」)

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