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連載:第20回 総合 2020年1月~3月

企業の50.1%が正社員不足 ~人手不足に対する企業の動向調査(2019年10月)~

BizHint 編集部 2019年12月11日(水)掲載
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人手不足による企業への影響は「需要増加への対応が困難」がトップにあげられるなど、企業の成長を抑える要因の一つとなっている(帝国データバンク「人手不足の解消に向けた企業の意識調査」)。また、2019年4月から順次施行されている働き方改革関連法にともない、長時間労働の是正や年5日の年次有給休暇の取得義務化など、労働環境は大きく変化している。そのため、企業には生産性の向上による業務の効率化などが求められている。 そこで、帝国データバンクは人手不足に対する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2019年10月調査とともに行った。

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調査結果(要旨)

1.正社員が不足している企業は 50.1%(前年同月比 2.4 ポイント減)となり、若干の減少がみられたものの、5 割超の高水準となった。
業種別では「情報サービス」(75.3%)が最も高く、「建設」(70.4%)も 7 割を上回っている。以下、「運輸・倉庫」「自動車・同部品小売」「娯楽サービス」「医療・福祉・保健衛生」など 7 業種が 6 割台となった。規模別では「大企業」は61.4%となり 10 月として過去最高を更新した。一方で、「中小企業」は同 3.0 ポイント減の47.3%と減少傾向にある

2.非正社員では、企業の 29.3%で人手が不足していた(前年同月比 4.8 ポイント減)。業種別では「飲食店」(同 6.1 ポイント減)は 78.3%となり、8 割近い企業で人手不足を感じている。
次いで、「娯楽サービス」「旅館・ホテル」「飲食料品小売」が 6 割台で上位。規模別ではすべての規模で 1年前を 3 ポイント以上下回っており、全体を通して人手不足感が弱まっている

3.人手不足割合を『製造』『非製造』別にみると、1 年前と比較して『製造』では大きく減少した一方で、『非製造』はほぼ横ばいとなった。
また、『製造』に分類される 11 業種のうち、正社員では 10 業種で、非正社員では 9 業種で 1 年前より減少し、なかには 10 ポイント以上減少している業種もみられた

1. 正社員不足は 50.1%、前年同月からやや減少するも高水準続く

現在の従業員の過不足状況を尋ねたところ(「該当なし/無回答」を除く)、正社員について「不足」していると回答した企業は 50.1%となった。依然として半数を超える高水準ではあるものの、1 年前(2018 年 10 月)から 2.4 ポイント減少した。「適正」と回答した企業は 41.1%で同 1.0 ポイント増加、「過剰」と回答した企業は 8.8%で同 1.4 ポイント増加となった。

「不足」していると回答した企業を業種別にみると、「情報サービス」(75.3%、1 年前比 0.9 ポイント増、2 年前比 4.4 ポイント増)がトップとなり、「建設」(70.4%、同 1.8 ポイント増、同6.9 ポイント増)においても 7 割以上の企業が不足を感じていた。以下、「運輸・倉庫」(66.1%、同 4.5 ポイント減、同 2.4 ポイント増)、「自動車・同部品小売」(65.7%、同 0.7 ポイント増、同7.5 ポイント増)、「娯楽サービス」(63.6%、同 7.0 ポイント増、同 28.5 ポイント増)、「医療・福祉・保健衛生」(61.8%、同 12.3 ポイント増、同 4.7 ポイント増)などの 7 業種が 6 割台となった。不足割合が 6 割以上となった業種は、1 年前と比べて 1 業種増加している。

規模別にみると、「大企業」(61.4%)は 6 割以上の企業が「不足」と感じていた。1 年前から 0.6ポイント増加しており、10 月としては 6 年連続で過去最高を更新。「中小企業」は 47.3%(1 年前 比 3.0 ポイント減)、「小規模企業」は 43.8%(同 1.5 ポイント減)の企業が不足していた。「大企業」の不足割合は増加している一方で、「中小企業」では減少している。

企業からは、「官庁工事は繁忙期の状況に入り、年末の現場が重なり人手不足の状況」(一般管工事、北海道)や「12 月までは工事が集中している状態で人員の不足が考えられる」(一般電気工事、新潟県)といった季節需要が好調であることによる人手不足を感じている様子がみられた。他方、「従業員の確保が出来ないため運営出来なくなるという心配もある」(情報家電機器小売、千葉県)といった将来を不安視する声や、「システム開発やソフトウェア案件が多いが人手不足で受注できない」(ソフト受託開発、東京都)、「人手不足から受注チャンスを逃している」(金属製屋根工事、青森県)など、案件の受注機会の損失に関する声がさまざまな業界からあげられている。

2. 非正社員の人手不足割合は 29.3%、前年同月比 4.8 ポイント減で、3 規模とも減少傾向

非正社員が「不足」していると回答した企業(「該当なし/無回答」を除く)は 29.3%となった(1 年前比 4.8 ポイント減)。正社員と同様に不足感は減少しているが、非正社員の方が減少幅は 大きく、10 月としては 3 年ぶりの 2 割台に低下した。
一方、「適正」と回答した企業は 62.6%(同2.9 ポイント増)、「過剰」は 8.1%(同 1.9 ポイント増)だった。 業種別にみると、「飲食店」は 78.3%(1 年前比 6.1 ポイント減、2 年前比 2.2 ポイント減)となった。1 年前より減少しているものの依然として 8 割近い企業が不足と感じており、高水準での 推移が続いている。

また、「娯楽サービス」(64.2%、同 9.3 ポイント増、同 11.5 ポイント増)、「旅館・ホテル」(61.9%、同 14.1 ポイント増、同 36.9 ポイント増)、「飲食料品小売」(60.7%、 同 4.4 ポイント増、同 0.2 ポイント減)の 3 業種が 6 割台となった。以下、スーパーや百貨店などを含む「各種商品小売」(58.3%、同 5.8 ポイント増、同 4.0 ポイント増)、「人材派遣・紹介」 (55.8%、同 1.1 ポイント増、同 3.3 ポイント減)、「メンテナンス・警備・検査」(54.6%、同 1.1ポイント減、同 0.6 ポイント減)などが 5 割台で続いた。

規模別では、「大企業」は 33.7%(1 年前比 3.3 ポイント減)、「中小企業」は 28.1%(同 5.2 ポイント減)、「小規模企業」は 29.4%(同 3.4 ポイント減)となり、すべての規模で 1 年前を 3 ポ イント以上下回る結果となった。

非正社員において人手不足が目立った業界の企業からは、「警備業界については、各社ともに注文要請が相次ぎ、人手が不足している」(警備、神奈川県)や、「相変わらず人手不足であり、働け るレベルの方は企業から引っ張りだこになっている状態」(労働者派遣、東京都)といった声があげられた。

3. 製造業の人手不足割合は大きく減少するも、非製造業はほぼ横ばいで高水準続く

今回の調査では全体でみると、人手不足割合は正社員、非正社員ともに減少傾向にある。しかし、不足割合の上位 10 業種をみると、そのうち正社員では 9 業種、非正社員では 8 業種が 1 年前(2018 年 10 月)より増加しており、全体の傾向とは異なる動きを示している。上位 10 業種の顔ぶれを具体的に見ると、「建設」「運輸・倉庫」や、「旅館・ホテル」「娯楽サービス」などの接客業といった労働集約型の業種が上位となっている。一方で、製造業に関する業種は上位にはみられない。そこで、全 51 業種を『製造』と『非製造』に分類し、人手不足割合の動向を分析した。

『製造』では、正社員の不足割合は39.3%となり 1 年前(2018 年 10 月)から 9.1 ポイント減、非正社員では22.8%で同 11.5 ポイント減となり、人手不足割合は 1 年間で大きく減少している。それに対して『非製造』をみると、正社員では 54.3%で同 0.2 ポイント増、非正社員では 32.2%で同1.9 ポイント減とほぼ横ばいで高水準が続いている。『製造』と『非製造』では異なる動きがみられた。

また、『製造』に含まれる 11 業種をみると、正社員では 10 業種で、非正社員では 9 業種で 1 年前より人手不足割合が減少している。なかには 10 ポイント以上減少している業種もみられた。10 月の『製造』の景気 DI は前年同月比 9.2 ポイント減となるなど景況感の悪化が続いており、人手不足割合に影響を与えている可能性が示唆される。

まとめ

「TDB 景気動向調査」(帝国データバンク)によると、10 月の景気 DI は前月比 1.1 ポイント減の 43.9 となり、3 カ月ぶりに悪化した。国内景気は低調な設備投資や消費税率の引き上げにより後退局面入りの可能性が続くなか、さらに台風による被害が悪影響を及ぼしていた。こうしたなか、正社員は 5 割を超える企業で人手不足を感じていることが明らかとなった。

業種別では「情報サービス」「建設」が 7 割を上回り、「運輸・倉庫」「自動車・同部品小売」「娯楽サービス」「医療・福祉・保健衛生」などの 7 業種で 6 割台となった。他方、「大企業」は 10 月として過去最高を更新した一方で、「中小企業」は減少するなど、企業規模による不足感の違いが拡大しつつある。他方、非正社員では約 3 割の企業で人手不足を感じている。「飲食店」は 8 割近い水準で推移しており、次いで「娯楽サービス」「飲食料品小売」「旅館・ホテル」の 3 業種が 6 割台、さらに「人材派遣・紹介」「メンテナンス・警備・検査」なども 5 割台で続いた。また、すべての企業規模で減少するなど、非正社員の不足割合は全体を通して減少傾向にある。

総じて、正社員、非正社員を問わず、『サービス』『小売』『運輸・倉庫』などが含まれる非製造業は、製造業と比較して多くの企業が人手不足を感じていることが明らかとなった。こうした産業に対して、政府は重点的に人手不足の解消に向けた支援を行うことが求められよう。

転載元:帝国データバンク

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