連載:第7回 よくわかる補助金・助成金 雇用・人材
出戻り社員の受入れで即戦力化!~両立支援等助成金「カムバック支援助成金」のご紹介
人手不足が続く中、一度退職した社員の再雇用を前向きにとらえる企業が増えています。過去に雇用した社員であれば、人柄を知っている安心感や、業務経験を活かした即戦力化などが期待できます。今回は、こうした「出戻り社員」の再雇用に係る助成金として「両立支援等助成金」の中から、「カムバック支援助成金(再雇用者評価処遇コース)」をご紹介します。このコースは、妊娠、出産、介護等を理由に退職した方を再雇用する制度を導入し、実際に雇用した事業主に助成金が支給されます。さっそく内容を確認していきましょう!
1. 「カムバック支援助成金(再雇用者評価処遇コース)」とは?
妊娠、出産、育児、介護または配偶者の転勤等(配偶者の転居を伴う転職を含む)を理由とした退職者が適切に評価され、配置・処遇される再雇用制度を導入し、実際に、希望する方を再雇用した事業主に支給される助成金です。
(1)支給額
支給額は、雇用人数などによって変わります。下記の支給額を確認ください。
中小企業の場合、1人目は38万円、2人目以降は28.5万円、中小企業以外の場合、1人目は28.5万円、2人目以降は19万円が支給され、最大5名まで対象となります。生産性要件を満たした場合は、助成額が<>内の額に増額されます。
中小企業の範囲とは?
中小企業の範囲は、下記のとおりです。
生産性要件とは?
助成金を申請する事業所が次の要件を満たしている場合は、助成金の割増等が行われます。なお、厚生労働省のHPには、生産性を算定するための「生産性要件算定シート」が掲載されていますので参考にしてみてください。
①直近の会計年度における「生産性」が、
・その3年前に比べて6%以上伸びていること または、
・その3年前に比べて1%以上(6%未満)伸びていること(※別途要件あり)
②「生産性要件」の算定の対象となった期間中に、事業主都合による解雇(退職奨励を含む)をしていないこと
出典:厚生労働省HP
(2)対象となる事業主
続いて、対象となる事業主の要件を確認していきましょう。要件は次のとおりです。
1 妊娠、出産、育児、介護または配偶者の転勤等(配偶者の転居を伴う転職も含む)を理由とした退職者について、退職前の勤務実績等を評価し、処遇の決定に反映させることを明記した再雇用制度を導入すること。
具体的には、次の要件をすべて満たす再雇用制度を労働協約または就業規則に規定することが必要です。
※ 過去に再雇用制度を設けている場合であっても、要件に沿った制度内容に改正すれば対象となりますが、改正日以降の再雇用が対象となります。
2 上記の制度に基づき、対象となる労働者を再雇用し、無期雇用者として6ヶ月以上継続雇用し、支給申請日においても雇用していること。
3 次のすべての制度を労働協約または就業規則に規定していること。
①育児・介護休業法第2条第1号に規定する育児休業
②同法第23条第1項に規定する育児のための所定労働時間の短縮措置
③同法第2条第2号に規定する介護休業
④同法第23条第3項に規定する介護のための所定労働時間の短縮等の措置
ポイント
対象となる再雇用制度は、育児・介護休業法第27条に基づく制度で、妊娠、出産、育児または介護を理由とする退職者が、退職した事業所の事業主等に再び雇用されることについて特別に配慮する制度をいいます。1の要件をすべて満たす制度を規定し、実際に社員を6カ月以上継続雇用することが必要です。なお、厚生労働省のHPには、再雇用制度の規定例も記載がされています。
(2)対象となる労働者
続いて、対象となる労働者の要件を確認していきましょう。
再雇用制度に基づき再雇用する労働者は、離職後1年以上経過している方が対象です。また、助成金の支給にあたっては、無期雇用者として6ヶ月以上継続雇用し、支給申請日においても雇用していることが必要となります。
具体的には、次の要件をすべて満たす労働者が対象となります。
ポイント
②では、退職理由と再雇用の希望は、書面(労働者の申出書や事業主が作成した再雇用希望者登録簿など)で確認できることが必要です。また、⑤では、再雇用制度に沿って、退職前の経験、能力、退職後から再雇用までの経験等を評価し、賃金、配置、役職等に反映させていることが、支給申請書で確認できることが必要となります。提出前に準備しておきましょう。
(4)受給の手続き
書類を一式そろえたら、次の申請期限までに事業主の本社等の所在地を管轄する都道府県労働局に提出します。申請は、継続雇用6か月後と、継続雇用1年後の2回に分けられ、助成金はそれぞれ半額ずつ支給されます。
(a)1回目(継続雇用6か月後)の申請
再雇用日から起算して6か月が経過する日の翌日から2か月以内
(b)2回目(継続雇用1年後)の申請
再雇用日から起算して1年が経過する日の翌日から2か月以内
2. 助成金活用によるメリット
助成金には、キャッシュが手に入るという金銭的なメリットがありますが、企業にとってのメリットはそれだけではありません。
社内に再雇用制度を整備することで、過去に業務経験のある優秀な人材を獲得することができます。また、会社の理念や企業文化を理解している人材であれば、採用後のミスマッチによる退職リスクも低いといえます。出戻り社員の受入れは、採用・育成コストを抑えつつ、人柄の知れた優秀な人材を採用できるなど、会社にとって大きなメリットがあります。
3. まとめ
助成金が支給されるためには、社内規定の新設や改定が必要となります。しかし、再雇用制度の確立により、やむをえず退職した優秀な社員が戻りやすい社風を醸成することができます。人材獲得が課題となる中、助成金をきっかけに、出戻り社員が再び活躍できる環境づくりを進めてみてはいかがでしょうか。
出典:厚生労働省HP
(執筆) 株式会社プロデューサー・ハウス 辻村藍
中小企業診断士
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