連載:第8回 よくわかる補助金・助成金 雇用・人材
職場の高齢化が進んでも悩むことなかれ!ベテラン活用でおトクな職場に早変わり!
本日ご紹介する助成金は、「ベテラン従業員さんがまだまだ活躍する職場」にぴったりの支援策になっています。また、「若手従業員確保への環境整備がまだまだ途上で、慢性的な人出不足に苦しむ企業」向けにも、導入を検討すべき支援策となっています。高齢従業員さんのみならず、会社全体の人事戦略とともに早急に検討すべき施策といえるでしょう。
1.「65歳超雇用推進助成金」とは
65歳超雇用推進助成金は、高齢の労働者が、意欲と能力のある限り、年齢に関わりなく働くことができる 生涯現役社会 を実現することを目的として、 65歳以上への定年引上げ や 高年齢者の雇用管理制度の整備 、 高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換 を行う事業主を対象とした助成金です。
内閣府などによると、現在、4人に1人以上が高齢者となっており、世界でも有数の高齢化が進んだ国と言えるのが今の日本です。
高齢化が進行すると、まずもって問題となるのは、労働人口の減少によって生産能力が低下し、それに伴って経済力が低下する。つまり税収が不足することにつながります。加えて健康を損なった高齢者の増加は、医療費の増加を招き歳出の増加につながり、政府の財政が厳しくなり、国力の低下を招くことが予見されます。
高度成長時代においては、それほど高齢者が働かなくても、団塊の世代では、生産人口の方が高齢者よりも多く、若者たちの労働だけで日本経済を成長させることができました。しかし、現在の日本はどうでしょうか?若者が減り続け高齢者が増え続けています。生産性の向上やイノベーションにより革命的に生産性が向上することを期待するだけでは、経済を支え続けることが困難になっています。
そこで、政府は「生涯現役社会」というスローガンを掲げ、高齢者のやりがいと健康維持にもつながるような施策を打ち、彼らを労働力として活用できる社会を目指しています。この助成金制度には、大きく3つのコースが設定されています。
2.大きく3つの助成金に分かれています。
(1) 65歳超継続雇用促進コース
このコースでは、さらに3つの取り組みが設定されており、それぞれ助成を受けることができます。ただし、1事業主1回限りの支給ですので注意が必要です。
・65歳以上への定年引上げ
・定年の定めの廃止
・希望者全員を66歳以上の年齢まで雇用する継続雇用制度の導入
【主な要件】
- 上記の3つの制度について労働協約又は就業規則に規定・整備したうえで、制度を実施したこと。加えてこれらの制度を規定する際にコンサルタントに依頼するなどして費用支出をしたこと。書類作成や支給申請には、特定の資格が必要ですが、人事コンサルティングを受けることに関しては、特に制限がありませんので、懇意にしているコンサルタントに一度相談をしてみてください。
- 事業所が、高年齢者雇用推進員の選任を行い、高年齢者雇用管理に関する措置を実施していること。
- 法律違反のないこと。具体的には、3つの制度の実施日から過去1年間および支給申請日までの間に、高年齢者雇用安定法第8条又は第9条第1項の規定に違反していないこと。
- 支給申請日前日までに1年以上働いている60歳以上の労働者が1人以上いること。(日雇い労働者などは含まれず、雇用保険に入り、継続して働いていただいている方に限ります。)
(2)高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
このコースは、高年齢者が健康でやりがいをもって働ける環境整備を行い、かつ、労働協約や就業規則に定め、役所の認定を受けることで助成金の受給が可能となります。
【主な要件】
- 雇用管理整備計画の認定と実施運営 高年齢者の雇用を積極的に行うために、能力開発、能力評価、賃金体系、労働時間等の 雇用管理制度の見直しを行い、導入すること。または、医師もしくは歯科医師による健康診 断を実施するための制度を導入します。これらの取り組みを盛り込んだ「雇用管理整備計画」を作成し、(独)高齢・障害・求職者 雇用支援機構理事長に提出してその認定を受けること。 当たり前のことですが、認定を受けた雇用管理整備計画に基づき、設定した実施期間内に計 画を実行することが必要です。
(3)高年齢者無期雇用転換コース
このコースは、50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者の無期雇用労働者への転 換を実施した場合が対象となり、助成金を受給することができます。
【主な要件】
- 無期雇用転換計画の認定 「無期雇用転換計画」を作成し、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長に提 出してその認定を受けること。 そして、こちらも、この無期雇用転換計画に基づき、計画の実施期間中に、高年齢の有期 契約労働者を無期雇用労働者に転換することが必要です。
このほかにも、いくつかの受給要件がありますので、必ず下記のURLから事業所の管轄機構にお問い合わせください。
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
3.支給額
(1) 65歳超継続雇用促進コース
定年引上げ等の措置の内容や年齢の引上げ幅、60歳以上の雇用保険被保険者数に応じて少しずつ金額に違いがあります。
(2)高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
雇用管理制度の整備等の実施に要した経費の額に、以下の助成率をかけた金額。中小企業は、大企業と比較して有利になっています。
※1 雇用管理制度の整備等の実施に要した経費は、雇用管理制度の導入又は見直しに必要な 専門家等に対する委託費、コンサルタントとの相談に要した経費です。初回に限り30万円とみなします。
2回目以降の申請は、30万円を上限とする経費の実費を対象経費とします。
※2 生産性要件については、次の機会にご紹介します。簡単にいうと、ひとりあたりの営業利益が増加した場合とお考え下さい。詳しくは、厚生労働省のホームページをご確認ください。
厚生労働省HP
4.受給手続きの流れ
(1)計画に認定を受ける。
計画は、計画開始の2か月前の日までに申請し認定を受ける必要が あります。
(2)助成金の申請は、実施後速やかに行う。
支給申請は、対象者に対して正規雇用に転換後、賃金を6か月分支給した日の翌日から起算して2か月以内に申請する必要があります。
事前の準備が大切です。
5.受給に当たって注意すべきこと
- 助成金の申請に関して、道立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構から調査を受けたり、各種の報告を求められたりする場合があります。もちろん、期限までに機構の求める書類が提出されない場合、助成金は支給されません。
- 意図せずとも不正受給を行った事業主は、助成金の返還を求められることは当然のことですが、会社名は、機構のホームページに公表されたり悪質な場合は刑事事件として告発されたりする、こともありますので、細心の注意が必要です。
- 提出書類や添付資料は、そのコピーを支給決定されたときから5年間保存が義務付けられています。
6.まとめ
いかがでしたでしょうか?
地方のモノづくりや販売の現場では、すでにベテラン従業員さんのスキルが発揮され、活躍できているのではないでしょうか?これら地域に愛されている事業所ではこのような助成金の存在を知り、制度の導入運用を行うだけで助成金が支給されるのであれば、さらに働きやすい職場環境整備を進めることができるのではないでしょうか?ぜひご検討ください。そして、地方を明るく元気にしていただければ幸いです。
(執筆)
株式会社プロデューサー・ハウス
山本哲也
中小企業診断士
この記事についてコメント({{ getTotalCommentCount() }})
{{selectedUser.name}}
{{selectedUser.company_name}} {{selectedUser.position_name}}
{{selectedUser.comment}}
{{selectedUser.introduction}}