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連載:第13回 よくわかる補助金・助成金 雇用・人材

高齢化対策になる建設労働者技能実習コースと呼ばれる人材開発支援助成金

BizHint 編集部 2020年3月12日(木)掲載
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さまざまな産業で人材不足が指摘されていますが、建設業界も同様です。現在建設業界の技能労働者の約3割が55歳以上といわれています。建設業界は人手不足が深刻で、職人や職人のマネジメントをする技術者のいずれも不足しています。人手不足は職人の賃金が上昇することにつながりますが、結果的に建築コストも増加することになります。最近よく聞くのが、コストが合わないので(人材不足から)開発が中止されるという事例もあります。そこでここでは建築業界の高齢化対策になる「建設労働者技能実習コース」という人材開発支援助成金について解説します。

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1. 建築業界の高齢化問題

建設業界は、実際に建設業に従事する人数が減っていることも人手不足につながっています。国土交通省の資料によると冒頭でもお伝えしたように建設業就業者の高齢化が進行しています。


グラフ1:建設業及び建設工事従事者の現状 - 国土交通省より掲出

上記グラフによると55歳以上が約34%、29歳以下が約11%と高齢化が進行しており、次世代への技術継承が大きい課題になっています。

グラフ2:高齢者の大量離職の見通し‐建設業及び建設工事従事者の現状 - 国土交通省より掲出

グラフ2によると60歳以上は10年後には大半が引退してしまい、逆に若年者の従事者を確保し、育成していくのが喫緊の課題であることがわかります。つまり建設業従事者数はグラフを見る限りでは減少の一途になっています。

グラフ2を見ると建設業種の年齢別従事者はあきらかに少ないということが見てとれます。これは人口減というよりも、若手の職人が育たない、若手が就職してこないという問題があります。特に15~19歳、20~24歳はその傾向が著しいようです。

人手不足に加えて世界的にも大打撃を与えた2008年のリーマンショックにより、日本の建設需要が激的に減りました。これは職人が減ることにつながり、その後景気が回復し、現在のような建設需要が回復しても職人の数は減少し続けています。

景気が回復しても、一旦辞めた(退職か他の産業に転職した)職人は戻らないので、労働力が一層確保しにくくなりました。そこで中小企業の人材確保を考えた上で、雇用促進や待遇改善、労働者確保育成が考えられるようになりました。今回ご紹介するのは、そうした後継者育成(労働者確保育成)のための助成金です。

2. 建設労働者技能実習コースという助成金

この助成金は「従業員に給与を支払い、技能実習を受けさせる」ことで支給されるものです。この時の技能講習(実習)に会社の経費を使うことでその一部が助成されます。本当は従業員に有給で実習を受けさせたいと考えていても、現実的には余裕がないので受けさせられなかったという事業主の助けになります。全部ではありませんが、技能実習にかかる経費や受講中の経費の一部を助成します。

2-1.事業主の受給条件

受給できる建設事業主は以下のどれかの条件に当てはまる必要があります。

  1. 雇用保険の適用事業主
  2. 建設労働者を1名以上雇用する中小建設事業主
  3. 建設労働者を2名以上雇用している事業所を雇用か下請けする中小建設事業主

(2)と(3)は意味が違います。(2)は雇用する建設労働者が1名以上ですが、(3)は下請け(または雇用)としての中小建設事業主であり、下請け先事業所には建設労働者が2名以上いることが条件になっています。また建設労働者にも受給条件が課されています。中小建設事業主が雇用する雇用保険の被保険者に対して、事業主が認定訓練を受講させたときに、助成金の受給ができるようになります。

2-2.支給される金額

助成金には経費助成と賃金助成の2種類があり、前者は講習を受講した際に発生した経費、後者は講習を受講した時間に発生した労働者の賃金に対して支給されます。

  1. 経費助成 実際にかかった経費の六分の一が支給
    ・都道府県から認定訓練助成事業費補助金か広域団体認定訓練助成金の交付を受け、認定訓練を行う雇用保険の適用を受ける事業主
    ・雇用管理責任者を選任している
  2. 建設労働者一人当たり、一日4,750円支給(生産性要件を満たすと追加6,000円支給)
    ※生産性要件:労働生産性を向上させると助成金が割増されます

2-3.申請手続き

経費助成を受ける場合は、1か月前までに管轄のハローワークに「人材開発支援助成金(建設労働者認定訓練コース 経費助成)計画届」及び添付書類を提出し、講習修了後に、都道府県から補助額通知が送付されます。通知が発行された日付から2か月以内に、再度計画書届を提出したハローワークに「支給申請書」を提出します。

賃金助成を受ける場合は、講習受講前提出書類はありません。講習が終わった後に、補助額通知の封書が郵送されますので、「人材開発支援助成金(建設労働者認定訓練コース 賃金助成)支給申請書」を管轄ハローワークに提出してください。

3.登録教習機関委託なら計画届不要に

最後に旧建設労働者確保育成助成金から名称や内容が変更になり、現在の「建設労働者技能実習コース」になってから変わった部分を説明します。従業員が技能実習を受けると、3つのパターンに沿って助成されます。

  1. 自らが実施した場合
  2. 指定登録教習機関等以外に委託
  3. 登録教習機関等に委託

①と②は計画届を「2-3.申請手続き」のように提出する必要があります。しかし③に限っては必要ありません。登録教習機関とは、労働安全性法がベースになって規定された 政府公認の機関 です。

この機関では、建設機械などの運転、作業主任者の選定に必要な免許を交付する、技能実習を行うなどをします。

事業主自らがこの登録教習機関になることも可能で、日本全国にあります。厚生労働省の「登録教習機関一覧(都道府県別)」から検索することができます。また自らが登録教習機関になる場合の実施手続きもあります。

詳しくは厚生省の「登録教習機関などの登録申請と実施事項の手続き」をご覧ください。

平成30年10月1日以降からは、「③登録教習機関等に委託」して実施すれば、計画届を提出する必要がなくなりました。

4.まとめ

人材不足解消のためには、人材そのものを採用するだけでなく、後継者を育成する必要があります。特に建設業界は重機の扱いや技術面での人材育成は欠かせません。そのためには建設業の働き方の抜本的改善が必要です。

人材確保のために技能実習を従業員に受けさせるだけでなく、適切な賃金水準を確保・安定的に仕事量を供給・社保の加入促進・建設キャリアアップシステムの構築など、さまざまな取り組みを行う必要があります。

今回は労働力の中でも建設業界の人材不足について触れましたが、今回ご紹介した以外にも女性の活躍推進や職場環境の改善・教育訓練の充実など、まだまだ環境改善が可能な部分が多くあります。ぜひ、さまざまな角度からご検討ください。

監修:長谷川祐也(中小企業診断士/経営学修士) 執筆:リカル

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