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中小企業経営者が頭を悩ませる事業承継の課題と対策を解説

BizHint 編集部 2019年3月5日(火)掲載
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事業承継は企業経営者にとって避けては通れない問題です。いざ事業承継をしようと思った時には「後継者がいない」、「相続税がかかりすぎる」などの理由で困るケースがよくあります。今回は事業承継の課題とその対策について解説していきます。

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中小企業が抱える事業承継の問題点

そもそも、なぜ事業承継となったときに頭を悩ませる事態になるのか、以下で解説します。

事業承継のための準備ができていない

事業承継は、主に経営者の高齢化によって自分ではこれ以上経営が困難となった場合に生じます。ここで問題となるのは「経営が困難となったとき」というタイミングです。事業承継には時間がかかるため、経営が困難となったときよりも前の段階で準備をしていく必要があります。

しかし経営者の方の多くは事業承継を考え出すのが「自分が引退したい」というタイミングであることが多く、事業承継のための準備がしっかり出来ていないケースがよくあります。そのため、運良くM&Aなどで買い手が見つかればいいですが、最悪は泣く泣く事業を畳まざるを得ない場合になることもあります。

後継者の育成や不在

事業承継の場合は後継者に事業を任せるのが通常です。後継者には経営者の息子であったり、これまで経営者の右腕として業務を行ってきた役員や従業員がなるケースが多くみられます。

しかし、全ての会社にこのような後継者がいるとは限りません。理由は、単純に後継者がいなかったり、後継者と考えられる者に経営を任せるほどの器量を持った人間がいなかったりと様々ですが、事業承継を考える場合には早い段階で後継者探しとその育成が重要です。

【関連】「後継者育成」とは?円滑な事業継承のための計画立案・育成プランをご紹介/BizHint

株式の譲渡の問題

いざ事業承継を考えたときに問題となるのは、経営者が保有している株式をどうするかです。

事業承継をするときは、経営者の株式を後継者に譲渡する必要があります。つまり、後継者が経営者から株式を購入するお金を有していなければならないということです。

通常、そのようなお金を有しているケースは少なく資金面で問題となります。また、無償で株式を譲渡することも可能ですが、今度は贈与した株式に対する贈与税がかかってきます。そのため事業承継を考える際はどのようにして株式を後継者に移していくのかを考える必要があります。

企業価値と相続税の問題

オーナー企業に特有なのが、「オーナー=経営者」という構造です。

オーナーの立場に立った場合は相続税を抑えたいため会社の利益はなるべく減らしたくなりますが、経営者の立場に立った場合は利益を出して企業価値を上げたいというジレンマに陥ります。このようにオーナー経営者ならではの悩みが背景に存在します。

中小企業がまず行うべき事業承継対策

問題点の解説でも出ていますが、事業承継の対策は、何よりもはやめの取り組みが重要です。

それでは、上記のような問題がある中で経営者としてどのような対策が必要であるのか、行うべき対策順に説明します。

まず最初に取り組むこと

最初に、早い段階で取り組む必要がある事項について説明します。

現状分析

まず1番最初にしなければならないことは現状分析です。事業承継は株式の移転が伴うものなので、特に現在の株式の価値がいくらなのかの把握が非常に重要になります。この価額により事業承継のためにどれほどのお金が後継者に必要になるのかが判明し、その後の事業承継のスキームが大きく変わることになります。

そのほか、会社が金融機関から借り入れた借入金に対して経営者自身が個人保証をしている場合なども、事業承継に当たって影響してくるため、現在の会社の状況がどのような状態なのかを把握することが必要です。

なお、先に説明した株価算定を含め、現状分析には専門的知識が必要となるため、税理士などの専門家に依頼することをお勧めします。

後継者候補の見極め

後継者候補の選定も早い段階で必要です。当然、後継者候補はいきなり出てくるものではありません。基本的には長い時間をかけて選定・育成することになります。

後継者の有無も今後の事業承継のスキームに大きな影響を及ぼすため、出来れば後継者候補となり得る可能性のある人物を複数名見極めておく必要があります。

株主の見極め

後継者の見極めの後は、株主の見極めが必要です。後継者が会社の意思決定を自由に行うことができるように、基本的には後継者に株式を集約するのが一般的です。しかし、中には経営者の親族がそれぞれ株式を分散して保有していたり、そもそも誰が株主かわからない状況となっている会社もあるため、株主の整理が必要となるのです。

その上で、後継者に対立する可能性のある人物など、事業承継後の会社経営に悪影響を及ぼす可能性がある場合には、そのような人物には株式を手放してもらうことの交渉が必要です。

株主の見極めは事業承継でも最も重要な部分なので、事業承継後の後継者の会社経営が円滑に進むよう慎重に検討しましょう。

事業承継の方法を知る

次に事業承継対策としてどのような方法があるのか解説します。

親族内承継

親族内承継はその名前のとおり、経営者の親族(主に息子)に事業を承継する方法で、一般的な事業承継の方法です。一般的に周囲の理解を得られやすく、贈与や相続による承継という選択肢をとれるというメリットがあります。

ただし、事業を承継する親族がこれまで会社で働いていた従業員のトップに立つことから、後継者は年上の部下が出来たり、以前の経営者の親族という目で見られることによる軋轢が生まれることもあります。

さらに、事業内容についても従業員のほうが詳しいという事態も生じる可能性があることから、早い段階から会社で働かせることや、経営者と行動を共にさせ経営の勘どころを学ばせるといった育成が必要です。

親族外承継

親族外承継は経営者の親族外に事業を承継させる方法です。主に後継者となるのはこれまで経営者の右腕として事業を引っ張ってきた従業員がなるケースが多くみられます。事業の内容を熟知しているため、従業員もこれまでの関係性から受け入れ易いです。

ただし、親族外の後継者が事業を承継する場合は、経営者から株式の購入が必要ですが、株式購入資金を準備することが困難であることから、実現しないことが多いです。これは、贈与や相続での承継により取得コストが抑えられる親族内承継との大きな違いといえます。

M&A

M&Aは他社に会社を売却する方法です。親族内、親族外での承継が困難な場合も当然あります。そのような場合に会社を他社に売却することで、経営者は売却代金を手にすることができ「ハッピーリタイア」をすることができます。

ただし、M&Aは簡単に買い手が見つかるわけではなく、仮に見つかったとしても金額面の交渉、会社売却後の従業員の待遇等の交渉が難航することも。そのため、お互いの条件をきちんと擦り合わせた上でM&Aを実行するには、時間をかける必要があるでしょう。

【関連】M&Aによる事業承継を行うためには?メリットやプラットフォームもご紹介/BizHint

清算

これは事業承継にはなりませんが、上で説明した親族内承継、親族外承継、そしてM&Aのどの事業承継対策も行うことができなかった場合の方法です。

事業承継の1番の問題は、やはり後継者が株式を取得する資金と相続が生じた場合の相続税を支払う資金をどうするかです。取得した株式は保有する必要があるため資金化することができません。仮に相続により株式取得した場合には、資金化ができない株式に相続税がかかり、相続税の支払いのための資金をどう工面するかで苦労します。このような事態にならないよう、廃業してオーナーが清算配当を受け取り、株式を資金に変えるという手法もあります。

【関連】「事業承継」とは?3つの方法と実施手順、成功ポイントを徹底解説/BizHint

経営の見える化と磨き上げ

以上のように、事業承継対策にはいくつかの方法がありますが、どの方法を取るにしても経営状況をきちんと把握し、企業の魅力を高めることが成功の近道です。

後継者にとっては、これから事業を承継するわけですから、承継する事業に夢があり、今後の展望を描けるようなものでなければ「引き継ぎたい」と思えないですし、M&Aの場合についても、買い手企業が魅力を感じるよう経営状況をきちんと説明して売り込まないといけません。

このように、事業を引き継ぎたいと思う人や会社が現れるよう、魅力作りには一際力を入れる必要があります。

専門家、中小企業庁(事業引き継ぎ支援センター等)に相談

これまでは事業承継へ向けての対策を説明してきましたが、次に実際に事業承継を実行しようとした場合には、まず税理士などの専門家や、中小企業庁による事業引き継ぎ支援センターなどへ相談することとなります。

事業承継は、経営者が保有している株式を後継者に移すことで行われます。したがって、相続財産となる資産のうち、特に株式を特定の人物に移す必要があるため、他の相続人が相続する財産との兼ね合いで必ず問題が起きます。また、相続税も関係しており、専門的な知識がないと誤った計算の結果、最悪数千万単位で払う必要のなかった税金を払わなければならない可能性も生じてきます。

【参考】中小企業基盤整備機構:事業引継ぎポータルサイト

国の各種制度を理解、活用

承継計画の策定を行う上で、避けては通れないのが中小企業庁や金融庁の取組みである事業承継支援施策の理解です。

以下では、その中でも特に押さえておきたい制度をご紹介します。まずはどのような支援施策が用意されているのかを知った上で、活用を検討する(要件を整える)のが事業承継を成功に導く近道です。

事業承継税制

株式を後継者に渡していく際に税金(譲渡税や贈与税、相続税)が発生するのは上述したとおりですが、その負担の重さが原因で後継者への承継が進んでいない例は少なくないです。

事業承継税制は、株式を後継者へ渡す際に発生する後継者が負担すべき贈与税もしくは相続税の納税負担が「全額」猶予される制度です。ただし2023年3月末までに認定経営革新等支援機関お墨付きの承継計画を提出したり、その他の要件を整える必要があるため早めの検討が必要です。

なお、この制度は上場会社には適用できませんのでご注意ください。

【関連】事業承継税制とは?概要やメリット・デメリット、改正による要件緩和の内容をご紹介/BizHint

遺留分に係る民法の特例

オーナー経営者の個人財産全体に占める非上場株式(事業承継をしたいと考える会社の株式)の割合が高く、公平な遺産分割が阻害されるケースがあります。

後継者に株式を集中させてしまうことでその他の相続人の遺留分(最低限認められている相続分)が侵害され、遺留分侵害額を金銭で請求されることになります。その結果、新たにお金を捻出しなければならない、場合によっては株式を処分しなければならない、経営権の希薄化(株式保有割合の低下)やそもそも経営に集中できないという事態が発生します。

このような本末転倒な事態に陥ることを防ぐために、事前に相続人全員の合意を得ることで、当該株式を遺留分計算から除外することが特例制度として認められています。

また、遺留分は相続時の時価で判定されるため、遺留分を侵害しない形で生前に株式贈与を受けたとしても、後継者のその後の経営努力によって当該株式価値が大きく増加した結果、遺留分を侵害する可能性が出てくるというのは制度上の大きな問題となります。後継者のやる気がそがれ、経営に大きな支障が出ることは容易に想像できます。

このような事態を防ぐために、上記同様相続人全員の合意を得ることで、当該株式の遺留分計算上の価値を生前贈与時の価値に固定することが特例制度として認められています。

この2つの特例は、事業承継税制を適用する際にも併せて検討しないと骨抜きな承継計画になってしまう可能性があるのでご注意ください。

【参考】中小企業庁:事業承継を円滑に行うための遺留分に関する民法の特例

経営者保証に関するガイドライン

金融機関から借入を行う際に融資条件の1つとして、経営者による個人保証を求められることがありますが、後継者にとってはこの個人保証が事業承継を思いとどまらせる大きな要因となります。

経営者保証に関するガイドラインを活用することで、事業承継時に前経営者の保証債務を当然に引き継がせるのではなく、保証債務の解消や適切な保証金額の設定等を通して個人保証の見直しを図るいい機会を得ることができます。

ただし、自社の経営状況の見直しや金融機関への一層の情報提供等が求められますので、一朝一夕に成り立つ問題ではない点にご注意ください。

【参考】中小企業庁:経営者保証に関するガイドライン

中小企業における事業承継の現状

本章では、今後事業承継について考えてみたいという方のために、中小企業における事業承継の現状をまとめています。

現経営者の事業継続の意思

少し古いデータになりますが、中小企業の経営者の事業承継の意思についてアンケート調査の結果が図表1です。

【図表1】現経営者の事業継続の意思

【出典】中小企業庁:中小企業白書2014

図表1によると、「事業を何らかの形で他者に引継ぎたい」と考えている経営者が、中規模企業では約 6 割存在することがわかります。

この中で「自分の代で廃業することもやむを得ない」と回答した経営者のうち、約 3 割は事業承継を検討した経験を有していることが図表2でわかります。

【図表2】廃業を決断する前の事業承継の検討状況

【出典】中小企業庁:中小企業白書2014

こうした経営者が事業承継を検討しながら、なぜ廃業することもやむを得ないという結論に至ったかの結果が図表3です。

【図表3】事業承継が円滑に進まなかった理由

【出典】中小企業庁:中小企業白書2014

図表3によれば、「将来の事業低迷が予測され、事業承継に消極的」と回答した者が最も多く、次に「後継者を探したが、適当な人が見つからなかった」という回答が続いています。

事業承継の課題としては、「経営の磨き上げによる魅力の作り」そして「後継者不足」であることがわかります。

【図表4】休廃業・解散件数、倒産件数の推移

【出典】中小企業庁:中小企業白書2017

さらに図表4をみていると、倒産件数は減少しているものの、2016年度には休廃業・解散件数は過去最多となっており、後継者不足が深刻な問題となっていることがわかります。

【図表5】中小企業の経営者年齢の分布(年代別)

【出典】中小企業庁:中小企業白書2017

また、最近のデータ(図表5)によると、最近20年間で経営者年齢の高齢化が進んでいることがわかり、今後も事業承継が中小企業の大きな問題となってくることが予想されます。

形態別の事業承継の状況(親族内、親族外)

次に事業承継を行う場合の形態別の事業承継の状況ですが、図表6をみてみると親族外承継は全体の3分の1を占め、親族外承継の多くの場合は社内人材が後継者となっていることがわかります。

【図表6】後継者選定状況・親族外承継の現状(中規模法人)

【出典】中小企業庁:中小企業白書2017

ここで注目すべきは、「後継者候補もいない」企業そして「後継者候補あり」企業で合わせて約6割の企業が後継者が決まっていないことです。

【図表7】後継者の選定を始めてから了承を得るまでに掛かった時間

【出典】中小企業庁:中小企業白書2017

図表7は後継者の選定を始めてから了承を得るためにかかった時間です。およそ4割弱の企業が後継者の確定までに3年以上かかっていることがわかります。

以上のことから、後継者の選定には時間がかかり、さらに経営の引継ぎに関する対策についても進んでいない企業が数多くあることがわかります。

【図表8】経営の引継ぎに関する課題と対策・準備状況(後継者決定・未決定)

【出典】中小企業庁:中小企業白書2017

また、図表8をみてみると、経営の引継ぎに関して「後継者を決定している企業」と「未決定の企業」でもその意識に大きな差があることがわかります。

決定している企業では、課題と感じている事項に対して対策・準備を行っている割合が高いのに対し、未決定の企業では対策・準備を行っている割合は低く、事業承継に対する準備が進んでいないことが目に見えます。

事業承継の事例

それでは最後に、中小企業で事業承継を行った企業事例をご紹介します。

株式会社オーテックメカニカル

株式会社オーテックメカニカルは親族外承継を行っています。当時の経営者は「経営計画発表会」を行うなど、社内に経営の方向性を浸透させると同時に、現経営者を従業員の中から取締役に抜擢し、経営を引き継いでいきました。

早い段階で後継者の選定とその育成に力を入れており、株式の異動も少しずつ行うことで、長い期間をかけて上手なやり方で事業承継を行ったといえます。

【参考】中小企業庁:中小企業白書2017

株式会社大谷

株式会社大谷は親族内そして従業員の中での親族外の後継者が見つからず、社外から公募により事業承継を試みましたがうまくいかずに、結果的には親族内承継をきっかけに次世代を見据えた組織づくりに取り組んだケースです。

親族内、親族外での事業承継を検討する際の問題点や、親族内承継となった場合の後継者が乗り越えるべき課題が非常によくわかる事例です。

【参考】中小企業庁:中小企業白書2017

まとめ

  • 事業承継の注意すべき点には、「経営者の高齢化」、「後継者の問題」、「株式譲渡の問題」そして「企業価値と相続税の問題」があります。
  • まず行うべき事業承継対策は、「現状分析」、「後継者候補の見極め」そして「株主の見極め」です。
  • 事業承継の方法は、「親族内承継」、「親族外承継」、「M&A」そして「清算」があります。
  • 事業承継を実施する場合は、専門家や中小企業庁(事業引き継ぎ支援センター等)を活用しましょう。
  • 事業承継を実行するためには多くの時間がかかるため、早い段階での準備が必要です。

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