連載:第3回 人×科学×データで変わる組織
やる気の源を神経科学で解析。職場のモチベーションの正体とは
職場における自発性こそ、生産性を上げる最大の武器。近年の研究でその事実が注目されるなか、現場での課題はいかにメンバーのモチベーションを引き出すことができるのか。IT技術と脳神経科学によって感情と記憶を可視化し、その技術も応用し人の成長と幸せを促す。そんな最先端の研究を現場応用させ続けるのが脳神経科学の知見を持つ青砥瑞人さん。現在は、脳神経科学とITを組み合わせた発明活動の傍ら、様々な企業にむけて教育指導も行っています。そんな青砥さんに聞く、「人材を育てる脳科学」に迫ります。
モチベーションを生み出すための第一歩は、「安全な状況」を作ること
――青砥さんは、「感情」「記憶」を脳神経科学的に可視化するという取り組みを行っていらっしゃるそうですね。脳科学の知見から考えると、そもそもモチベーションとはどんなものなんでしょうか?
青砥さん(以下、青砥): ごく簡単に言うと、 モチベーションは感情の一種 です。そしてみなさんも感覚としてあると思うのですが、モチベーションにはいろんな種類があります。例えば、「ご飯を食べたい」「眠りたい」「仕事をしたい」「仕事をしたくない」。一般的には全部モチベーションなのですが、脳の観点からみると、それぞれのモチベーションでは共通する部分もあれば、全く異なる脳の機構を使っていることもあります。だから、脳からモチベーションを語る際には 「何に対するどんなモチベーションなのか」をしっかり定義づけする 必要がありますね。ただし、種々のモチベーションに 共通して言えることは、「生物として生存確率を高めるための行動を促し、学習させる機構」 というところでしょうか。
――多くの企業で、生産性を高めるために、いかにメンバーのモチベーションを上げるべきかという議論が行われていますが、科学的に見て「モチベーションを上げるためには」どういう要素が必要になるんでしょうか?
青砥: まずは、前提条件として脳が不安や恐怖を感じている状態だと、モチベーションは上がりにくくなります。脳内には扁桃体と言われる部位があり、恐怖や不安といった感情をつかさどっています。扁桃体の活性により、恐怖や不安を感じている状態は、危険回避のモチベーションが優先され、いわゆる生産性を高めるためのモチベーションはないがしろにされてしまう状態になるのです。
――日常を思い出してみても、不安や恐怖が生まれると、仕事のパフォーマンスが下がってしまうことは往々にしてありますよね。
青砥: 特に人間は 新しい経験に対して、ネガティブな情動を発露しやすい。 新しいことを始めようとしたりや普段とは異なる状況には、ポジティブに受容できず苦手な人が多いんです。ただ、これは生物学的に非常に健全な反応です。脳は太古昔からその基本的な仕組みは変わっていません。脳は、危険になりうるものに敏感に反応できる必要があります。
よって、新しいものというのは、情報がないわけですから、危険をもたらす可能性があります。よって、新しいものに対してネガティブな反応になるのは、生命にとって必要な反応です。
恐怖も不安もストレスも我々にとってとても大切な脳の仕組み なのです。例えば、ナイフを持った人間がそばにいるのに恐怖を覚えなかったとすると、その方の生存確率が低まることは容易に想像がつくはずです。
ストレスには「よいストレス」と「悪いストレス」がある
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