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2018年12月21日(金)更新

パートタイム労働法

パートタイム労働法とは、パートタイム労働者と正社員との格差解消など、待遇改善を目的とするものです。パートタイム労働者は、少子高齢化の進行や多様な働き方が求められる中、今後も増加していくことが予想されるため、企業においては、パートタイム労働法における事業主の義務など十分を理解し、適切に管理していかなければなりません。

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パートタイム労働法とは

パートタイム労働法とは、正しくは、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」と言う法律で、平成5年6月に制定され、同年12月に施行されました。

パートタイム労働者の待遇改善などを目的とするもので、制定後もパートタイム労働者の状況にあわせて改正が行われています。


なお、平成30年6月の働き方改革関連法の成立によって、有期雇用労働者もこの法律の対象に含めることとされ、法律の名称も「パートタイム・有期雇用労働法」(正しくは、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)に変わることになっています。(2020年4月1日から施行)


パートタイム労働法の目的

パートタイム労働法は、少子高齢化による労働人口の減少や一定時間に縛られない多様な働き方が求められる中、パートタイム労働者の企業における重要性が増しているにもかかわらず、正社員と比べて低い賃金、待遇であるという実態を鑑み、適正な労働条件の確保や雇用管理の改善などを図るために制定されたものです。

対象となるパートタイム労働者とは

パートタイム労働法の対象となるパートタイム労働者とは、厚生労働省の定義では、「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者(一般的に正社員のことを指し、もし、いなければフルタイムの労働者を指します。)の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」とされています。

このため、雇用契約上、「契約社員」や「嘱託社員」、「アルバイト」などとされていても、その立場にかかわらず、正社員の1週間の所定労働時間よりも短ければ、パートタイム労働法におけるパートタイム労働者に該当することになる一方、フルタイムで働く有期契約労働者などはこの法律の対象になりません。

【参考】パートタイム労働者とは/厚生労働省

パートタイム労働者の現状と問題点

パートタイム労働者は、パートタイム労働法が制定された以降も年々増加しており、企業においてもなくてはならない存在になっています。

しかしながらその一方で、なかなか正社員との待遇の格差が縮まらないなど、いまだに多くの問題を抱えています。

パートタイム労働者の現状

パートタイム労働者数は、総務省による「平成28年労働力調査」によると、全雇用者総数(5,561万人)の約3割となる1,683万人(うち約7割が女性)となっています。

今後、少子高齢化により労働力人口の増加が期待できないことから、パートタイム労働者が増加することはあっても、企業における雇用体制が見直されない限り、減少することはないものと考えられます。

【パートタイム労働者数の推移(短時間雇用者数の推移)】

【出典】【政府広報オンライン】改正パートタイム労働法が施行

また、厚生労働省による「平成28年パートタイム労働者総合実態調査」によると、パートタイム労働者を雇用している事業所は69.1%(前回の平成23年調査では66.1%)となっており、さらに、正社員とパートタイム労働者の両方を雇用している事業所の6.6%(平成23年調査では6.5%)では、パートタイム労働者の役職者がいるとの結果も出ているなど、企業におけるパートタイム労働者の重要性が高まっていることが伺えます。

【パートタイム労働者を雇用している事業所の割合】

【出典】【厚生労働省】平成28年パートタイム労働者総合実態調査の概況

【パートタイム労働者の役職者の有無及び役職者の種類の割合】

【出典】【厚生労働省】平成28年パートタイム労働者総合実態調査の概況

パートタイム労働者の問題点

パートタイム労働者が増加し、企業における重要性が高まっているにもかかわらず、パートタイム労働者が抱えている問題としては次のようなものが挙げられます。

  • 労働条件が不明確になりやすい。
  • 正社員と勤務実態が同様である場合でも賃金その他の待遇面が異なる場合がある。
    (賃金のほかの待遇には、教育訓練の実施や福利厚生施設の利用などがあります。)
  • 正社員になる機会が得られず、キャリアアップを図れない。

これらは、パートタイム労働法が制定された当初よりあった問題ですが、あまり改善が見られないため、政府はパートタイム労働法の大幅な改正を行うなど、その改善に力を入れています。

【参考】短時間労働者対策基本方針 概要/厚生労働省

これまでの主な改正内容

パートタイム労働法の制定後、パートタイム労働者は増加を続けるとともに正社員と比べて賃金の低さや待遇の悪さが社会問題となっていきました。

そのことに対応すべく、平成19年と平成26年に大幅な改正が行われています。

平成19年改正法(平成20年施行)

平成19年の改正では、パートタイム労働者がその有する能力をより有効に発揮できる雇用環境を整備するため、次のような改正が行われました。

  • 雇い入れ時に昇給や退職手当、賞与の有無を労働条件として明示することが義務化
  • 雇い入れ後にパートタイム労働者から求められた場合は、待遇を決定するに当たって考慮した事項の説明が義務化
  • パートタイム労働者の働き方に応じた待遇の決定が義務化 (職務内容などが正社員と同一であるパートタイム労働者については差別禁止)
  • 正社員を募集する場合はその募集内容を雇用しているパートタイム労働者に周知するなど、正社員に転換するための措置を講ずることが義務化
  • パート労働者から苦情の申し出を受けたときは、事業所内で自主的な解決を図ることが努力義務化
  • 紛争解決援助の仕組みとして、都道府県労働局長による助言や指導、勧告、また、均衡待遇調停会議による調停が新設

【参考】パートタイム労働法の一部を改正する法律(平成19年法律第72号)の概要/厚生労働省
【参考】パートタイム労働法が変わります 平成20年4月1日施行/厚生労働省

平成26年改正法(平成27年施行)

平成26年の改正では、パートタイム労働者の公正な待遇を確保し、納得して働くことができるよう、次のような改正が行われました。

  • 正社員と同視すべきパートタイム労働者の要件であった「無期労働契約の締結」をなくし、その対象範囲を拡大
  • パートタイム労働者の待遇を正社員の待遇と異なるものにする場合には、職務の内容、人材活用の仕組み(人事異動などの有無やその範囲)などを考慮し、不合理な待遇であってはならない旨の原則規定を追加
  • 雇い入れ時に、雇用管理の改善などに関する措置の内容について説明することが義務化
  • 相談窓口などの体制を整備することが義務化
  • パートタイム労働法違反の企業名公表制度が新設

【参考】パートタイム労働法の改正について/厚生労働省

パートタイム労働法のポイント

パートタイム労働法には、パートタイム労働者の雇用管理を改善するための事業主の責務のほか、国や地方公共団体が必要な施策を推進する責務なども規定されていますが、ここでは主な事業主の責務を中心に説明します。

労働条件に関する文書交付等

事業主は、パートタイム労働者を雇い入れたときは、以下の事項を文書の交付などにより速やかに明示する必要があります。

  • 昇給の有無
  • 退職手当の有無
  • 賞与の有無
  • 相談窓口

このほか、労働基準法では、「契約の期間」や「有期労働契約の更新基準」、「就業場所と業務内容」、「始業・終業時刻」、「所定時間外労働の有無」、「休憩時間・休日・休暇」、「賃金の決定方法」、「退職に関する事項」などについて文書で明示することが義務付けられていますので、パートタイム労働者の場合には、これらに加えて上記4つの事項が、労働条件通知書などの書面により明示しなければならないということです。

なお、パートタイム労働者が希望する場合には、電子メールやFAXによる明示でも構わないこととされています。

【関連】労働条件通知書とは?雇用契約書との違い、記載事項や交付時期まで徹底解説/BizHint HR

就業規則の作成・変更時の意見聴取

就業規則の作成や変更の際には、労働基準法では、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者の意見を聴く必要があることとされていますが、パートタイム労働者に適用される就業規則の作成や変更については、パートタイム労働者の過半数を代表する者の意見を聴くように努めなければなりません。

パートタイム労働者の待遇の考え方

パートタイム労働法では、パートタイム労働者の待遇について、正社員との働き方の違いに応じて、そのバランスを図るための措置を講ずることが規定されています。

パートタイム労働者の待遇の原則

事業主は、雇用するパートタイム労働者の待遇を正社員と異なるものにする場合には、当該パートタイム労働者と正社員の職務の内容(業務の内容および責任の程度)、人材活用の仕組み(人事異動などの有無やその範囲)や運用などその他の事情を考慮して、不合理なものにならないようにしなければなりません。

この原則は、平成26年の改正で新たに規定されたものですが、すべてのパート労働者に適用しなければならない考え方です。

パートタイム労働者の待遇の決定

パートタイム労働者の待遇については、「職務の内容」、「人材活用の仕組みや運用」の2つの要件を正社員と比較することにより、賃金、教育訓練、福利厚生について決定しなければなりません。

具体的には、下記の表のとおりです。

【パートタイム労働者の待遇に関する事業主が講ずべき措置】

【出典】【厚生労働省】パートタイム労働法のあらまし

例えば、「職務の内容」、「人材活用の仕組みや運用」の両方が正社員と同一であるパートタイム労働者については、賃金、教育訓練、福利厚生については、正社員との差別的取扱いは禁止されており(上記表の◎部分)、同一待遇としなければなりません。

なお、上記の表の賃金としての退職手当や家族手当、通勤手当、また、福利厚生としての慶弔休暇や社宅の貸与などについては、このあとで説明する「パートタイム労働指針」の中で、正社員と同一視できるパートタイム労働者以外はすべて努力義務とされています。(つまり、上記の表の記号「-」は、「△」と同じ意味(努力義務)です。)

正社員への転換の推進

事業主は、パートタイム労働者が正社員に転換することを推進するため、次のいずれかの措置を講じなければなりません。

  1. 正社員の募集を行う場合には、その内容を雇用するパートタイム労働者に周知する。
  2. 正社員のポストを社内公募する場合、雇用するパートタイム労働者にも応募の機会を与える。
  3. パートタイム労働者が正社員に転換するための試験制度を設ける。
  4. その他、正社員に転換するための措置を講ずる。

例えば、上記1の措置を新卒採用に限定して行う場合には措置を講じたとは言えませんし、3の措置の実施にあたり、必要以上に厳しい要件(勤続期間や資格などは可)を設ける場合には措置を講じたとみなされない場合がありますので注意が必要です。

なお、パートタイム労働法では、実際に正社員に転換させるところまで求めていませんが、上記の措置を講じていても、長期にわたって正社員への転換実績がない場合には、そもそも措置の内容に問題がある可能性もありますので、措置を講じた後もその内容を検証していくことが求められます。

事業主が講ずる措置の内容の説明

事業主は、パートタイム労働者の雇い入れた時は、待遇について正社員との均衡を図ることや正社員への転換方法など、雇用管理の改善措置の内容を説明しなければならず、雇い入れ後もパートタイム労働者から説明を求められたときは、待遇の決定にあたって考慮した事項を説明しなければなりません。

雇い入れ時と説明を求められたときに説明義務があるものは下記のとおりです。

【説明義務が課せられる事項】

【出典】【厚生労働省】パートタイム労働法のあらまし

なお、説明の方法は、口頭によるほか説明すべき事項が記載された文書を交付することでも構わないこととされています。

相談窓口等の体制整備

事業主は、パートタイム労働者からの相談に応じるための体制を整備しなければなりません。

相談窓口は、個人であるか組織であるかを問われていませんので、雇用する労働者の中から相談担当者を決定するか、このあと説明する短時間雇用管理者に担当させるほか、外部の専門機関に委託するなどの対応が考えられます。

短時間雇用管理者の選任

事業主は、常時10人以上のパートタイム労働者を雇用する事業所(本店や支店、営業所などの単位)ごとに短時間雇用管理者を選任するように努めなければなりません。

この短時間雇用管理者に期待されている業務は次のとおりとされています。

  • パートタイム労働法などに定められたパートタイム労働者の雇用管理の改善などについて事業主の指示に従って必要な措置を検討し、実施すること。
  • 労働条件などについて、パートタイム労働者の相談に応じること。

なお、この短時間雇用管理者を選任した場合には、所定の様式により都道府県労働局へ届け出ることが求められています。

【参考】短時間雇用管理者を選任しましょう/厚生労働省

苦情の自主的解決

事業主は、パートタイム労働者から苦情の申し出を受けたときは、事業所内における通常の苦情処理対応によるほか、人事担当者や短時間雇用管理者などに担当させて、事業所内で自主的に解決するように努めなければなりません。

なお、対応しなければならない苦情の内容は、パートタイム労働法で規定されている事業主の義務とされている事項や差別的取扱いが禁止されている以下の事項に限定されています。

  1. 労働条件の文書交付等
  2. 雇入れ時の雇用管理の改善措置の内容の説明
  3. 雇入れ後に求められた場合の待遇の決定についての説明
  4. 待遇の差別的取扱い禁止
  5. 職務の遂行に必要な教育訓練の実施、福利厚生施設の利用
  6. 正社員への転換を推進するための措置

都道府県労働局長による紛争解決の援助・調停

前述のパートタイム労働者の苦情に関して自主的解決ができなかった場合には、事業主、パートタイム労働者の双方、または、どちらか一方は、都道府県労働局長に対して必要な助言や指導、勧告などの援助の申し立て、また、均衡待遇調停会議(都道府県労働局に設置される弁護士などの専門家を調停委員とする組織)による調停を申請することができます。

紛争解決の流れのイメージは下記の図のとおりですが、助言や指導、勧告などの援助の申し立てや調停の申請をしても、実際にその助言や指導、勧告、調停案を受諾するかどうかは事業主、パートタイム労働者の任意になります。

なお、事業主は、パートタイム労働者がこの申し立てや申請をしたことを理由に解雇やその他の不利益な取り扱いをすることは禁止されています。

【紛争解決の流れ】

【出典】【厚生労働省】パートタイム労働法のあらまし

【参考】紛争解決援助制度について/厚生労働省

パートタイム労働指針について

パートタイム労働指針とは、正しくは「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針」というもので、パートタイム労働法の規定に基づいて、事業主が講じなければならない雇用管理の改善措置が、適切かつ有効に実施されるために必要な事項が定められたものです。主な事項について説明します。

【参考】事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針/厚生労働省

労働に関する法令の遵守

パートタイム労働法は、基本的にパートタイム労働者の雇用管理の改善などのために事業主が講じるべき措置を定めたものであり、パートタイム労働者を雇用していくうえでは、正社員と同様に、労働基準法のほか、労働契約法、労働安全衛生法など労働関係法令を遵守しなければなりません。(主に注意すべき法令とその内容については後述します。)

労働条件の一方的不利益変更の禁止

パートタイム労働者の雇用管理を見直す際に、正社員やその他の労働者の労働条件を合理的な理由もなく一方的に不利益に変更することは許されません。

個別の労働条件を変更するためには、その労働者との合意が必要になりますし、全体の労働条件を就業規則によって変更する場合にはその内容に合理性が求められます。

フルタイム有期契約労働者への配慮

所定労働時間が正社員と同様であるフルタイム有期契約労働者については、前述のとおりパートタイム労働法の対象にはなりませんが、これらの労働者についてもパートタイム労働法の趣旨を考慮した雇用管理が求められます。

労働時間の配慮

パートタイム労働者は、家庭の事情などにより特定の日や時間帯に勤務していることが多いため、労働時間や労働日を設定または変更する場合には、パートタイム労働者が抱える事情を十分に配慮し、できるだけ残業を避け、また、労働日以外の日に急に出勤させることがないように努めなければなりません。

各種手当の正社員との均衡の考慮

パートタイム労働法では、賃金のうち、職務に密接に関連する基本給や賞与、役付手当などについては、正社員との均衡を図ることとされていますが、退職手当や家族手当、通勤手当のように職務に密接に関連するものではない手当についても、正社員との均衡を図るように努めなければなりません。

福利厚生の正社員との均衡の考慮

パートタイム労働法では、パートタイム労働者に利用の機会を与えるように配慮すべき福利厚生施設として、給食施設や休憩室、更衣室が挙げられていますが、医療、教養、文化、体育、レクリエーションなどを目的とした福利厚生施設の利用および事業主が行うその他の福利厚生の措置についても、正社員との均衡を考慮するように努めなければなりません。

労使の話し合いの促進

パートタイム労働法で定められている労使間の話し合いや苦情の申し出については、前述のとおり限定された事項だけの対応が求められていますが、その事項だけに限らず、広く対応していくように努めなければなりません。具体的には次のとおりです。

  1. 待遇の決定にあたって考慮した事項の説明を求められた際には、説明義務がないものについても応じるように努めなければなりません。
  2. 苦情の申し出を受けたときは、対応義務がないものについても応じるように努めなければなりません。
  3. 雇用管理の改善措置を講じるときは、パートタイム労働者の意見を聴く機会(例えば、職場での労使協議やアンケートなど)を設けるなど、適当な工夫をするように努めなければなりません。

不利益取り扱いの禁止

パートタイム労働法で定められている手続きや社会通念上許されるべき行為を理由として、不利益な取り扱い(解雇や減給、契約更新の拒否など)をすることはできません。具体的には次のとおりです。

  1. 就業規則の作成、変更の際に意見を求められるパートタイム労働者の過半数代表者であることやその過半数代表者になろうとしたこと、また、過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取り扱いをすることはできません。
  2. 待遇の決定にあたって考慮した事項の説明を求めたことを理由として不利益な取り扱いをすることはできません。(不利益な取り扱いをおそれて説明を求めることができないような職場環境にならない配慮も必要です。)
  3. 親族の葬儀などのために勤務しなかったことを理由として解雇などが行われることは適当とは言えません。

短時間雇用管理者の氏名の周知

パートタイム労働法では、常時10人以上のパートタイム労働者を雇用する事業所ごとに短時間雇用管理者を選任するように努めることとされていますが、この短時間雇用管理者を選任したときは、短時間雇用管理者の氏名を事業所の見やすい場所に掲示するなどにより、雇用するパートタイム労働者に周知させるように努めなければなりません。

他の労働関係法令で定めるルール

パートタイム労働指針でも示されていますが、パートタイム労働者を雇用していくうえではパートタイム労働法だけでなく、その他の労働関係法令も遵守しなければなりません。

特に注意すべきものとしては次のものが挙げられます。

有期労働契約の更新・雇止めの制限

有期労働契約を更新する場合、しない場合の考え方としては、労働基準法の規定に基づいて「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」というものが示されており、有期労働契約であるパートタイム労働者には当然に適用されるものです。

【参考】有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について/福岡労働局

契約の更新

雇用主は、契約を1回以上更新し、かつ1年を超えて継続して雇用しているパートタイム労働者との契約を更新しようとする場合には、契約の実態およびパートタイム労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするように努めなければなりません。

雇止め

有期労働契約を更新しない(雇止め)場合には以下の措置を講じなければなりません。

  1. 雇止めの予告
    有期労働契約(1年を超える契約や3回以上更新している契約が対象で、あらかじめ契約を更新しない旨を明示している場合を除く。)を更新しない場合には、少なくともその契約期間が満了する日の 30 日前までに、その予告をしなければなりません。
  2. 雇止めの理由の明示
    雇止めの予告をした場合に、パートタイム労働者が契約を更新しない理由についての証明書を請求したときは、遅滞なく交付しなければならず、実際に契約を更新しなかった場合においても、パートタイム労働者が契約を更新しなかった理由についての証明書を請求したときは、遅滞なく交付しなければなりません。

また、労働契約法においては、有期労働契約であっても該当労働者が契約の更新を希望しており、かつ、その契約が過去に反復して更新されていて実質的に無期労働契約と言える場合や、労働者が雇用の継続を期待することが合理的であると考えられる場合、また、雇止めをすることに合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められないなど場合には、雇止め自体が認められず、労働者の希望に応じる形で従前と同一の労働条件で契約の更新を承諾したものとみなすこととされています。

解雇の制限

解雇については、労働契約法において以下のような制限があり、パートタイム労働者にも適用されます。

  1. 無期労働契約の場合
    客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効になります。
  2. 有期労働契約の場合
    やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができません。

また、労働基準法においては、解雇しようとする場合には、少なくとも 30 日前にその予告をしなければならず、30 日前に予告をしない場合には、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。

労働保険・社会保険の適用

労働保険には、雇用保険と労働者災害補償保険(いわゆる労災)があり、社会保険には、健康保険や介護保険、厚生年金保険があります。

労働者災害補償保険は、パートタイム労働者を含むすべての労働者に適用されますが、その他については、一定の要件を満たす場合にパートタイム労働者にも適用されます。

労働保険

労働者災害補償保険については、業務中の業務災害、通勤中の通勤災害を補償することなどが、労働者災害補償保険法で定められており、労働者に保険料の負担なくすべての労働者に適用されます。

雇用保険ついては、給付内容や被保険者資格などが雇用保険法で定められており、下記の要件に該当する場合にパートタイム労働者にも適用されます。

《雇用保険の加入要件》
31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であり、1週間の所定労働時間が20 時間以上であること。

なお、これまでは65歳以上で入社した労働者は雇用保険には加入できませんでしたが、平成29年1月からその年齢制限が撤廃されました。

【参考】雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!/厚生労働省

社会保険

健康保険や介護保険、厚生年金保険については、給付内容や被保険者資格などが、それぞれ健康保険法や介護保険法、厚生年金保険法に定められており、下記の要件に該当する場合にパートタイム労働者にも適用されます。

  1. 健康保険の加入要件
    1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が一般社員の4分の3以上であること。
    ただし、1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が4分の3未満であっても、常時501人以上の企業に勤める労働者であり、週の所定労働時間が20時間以上であるなどその他の要件を満たす場合には加入することができます。
    なお、健康保険として加入できるのは75歳までになります。(75歳になると後期高齢者医療制度へ移行します。)
  2. 介護保険の加入要件
    要件というよりも健康保険料とあわせて介護保険料が徴収される期間と言った方が正確ですが、40歳以上65歳未満の医療保険加入者(ここでは健康保険加入者)が対象になりますので、上記の健康保険の加入要件を満たしていれば自動的に加入します。
    なお、65歳以降の保険料は原則として年金から控除されることになります。
  3. 厚生年金保険の加入要件
    要件としては健康保険と同様で、加入できるのは原則として70歳までになります。

【参考】健康保険(協会けんぽ)・厚生年金保険の資格取得及び配偶者等の手続き/日本年金機構

年次有給休暇の取得

年次有給休暇については、労働基準法(施行規則)において、一般の労働者とは別にパートタイム労働者(週の所定労働時間が30時間未満の者)の勤務日数に応じた付与日数が定められています。具体的には次の表のとおりです。

【パートタイム労働者(週所定労働時間30時間未満)の年次有給休暇の付与日数】

【出典】有給休暇ハンドブック/厚生労働省

産前産後休業および育児・介護休業の取得

一般的に「産休」と言われる産前産後休業については、すべての女性労働者が取得できるものであり、パートタイム労働者であるか否かは問題になりませんが、育児休業や介護休業については、有期契約労働者としての要件を満たす場合に取得することができます。

なお、パートタイム労働者が健康保険や雇用保険に加入している場合には、出産手当金や育児休業給付金などの支給を受けられる場合がありますが、ここでは各休業の取得資格について説明します。

産前産後休業

産前産後休業については、労働基準法で定められており、正社員のほか、契約社員、パートタイムなどすべての女性労働者が取得することができるものです。

産前休業と産後休業の具体的な内容は次のとおりです。

  1. 産前休業
    出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から、労働者が請求した場合に取得することができるものです。労働者本人の意思で出産まで働くことは可能です。
  2. 産後休業
    労働者の請求にかかわらず、使用者は労働者の出産の翌日から8週間は就業させることができないことになっています。産後6週間を過ぎたあと、労働者本人が希望し、かつ、医師が認めた場合には働き始めることができます。

育児休業

育児休業については、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(いわゆる育児・介護休業法)で定められているもので、原則として子が1歳に達するまで(最長2歳に達するまで延長可)取得できるものです。

一般的に有期労働契約であるパートタイム労働者が取得するためには、申し出時点で次のいずれの要件も満たしている必要があります。

  1. 入社1年以上
  2. 子が1歳6か月(2歳までの育児休業の場合は2歳)に達する日までに労働契約が満了し、更新されないことが明らかでないこと。

さらに、使用者が労働者の過半数を代表とする者との書面による協定(労使協定)の締結があれば、次の労働者は育児休業を取得することができません。

  1. 入社1年未満の労働者
  2. 申し出の日から1年以内(1歳6か月又は2歳までの育児休業の場合は6か月)に雇用期間が終了する労働者
  3. 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

【関連】育児休業とは?育児休暇との違い、産前休業~復帰までの流れ、助成金制度まで徹底解説/BizHint HR

介護休業

介護休業についても、育児休業とあわせて育児・介護休業法で定められているもので、介護を必要とする家族1人につき通算93日まで、3回を上限として分割して取得できるものです。

育児休業と同様に、有期労働契約であるパートタイム労働者でも取得できる場合がありますが、こちらも、申し出時点で次のいずれの要件も満たしている必要があります。

  1. 入社1年以上
  2. 介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6か月経過する日までに労働契約が満了し、更新されないことが明らかでないこと。

さらに、労使協定の締結があれば、次の労働者は介護休業を取得することができません。

  1. 入社1年未満の労働者
  2. 申し出の日から93日以内に雇用期間が終了する労働者
  3. 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

【参考】介護休暇制度/厚生労働省

【関連】介護休業とは?制度の概要や介護休暇との違い、法改正の内容、給付金まで徹底解説/BizHint HR

健康診断の実施

健康診断については、労働安全衛生法においてその実施が定められているものです。パートタイム労働者であっても、次のいずれの要件も満たす場合には、事業者は健康診断を実施しなければなりません。

  1. 無期契約労働者、または、有期契約労働者であって契約期間が1年以上(深夜業その他の特定業務に従事する場合は6か月以上)である者、また、契約更新により1年以上雇用されることが予定されている者、1年以上引き続き雇用されている者
  2. 1週間の所定労働時間が、当該事業所において同種の業務に従事する正社員に比べて、4分の3以上である者(所定労働時間が正社員の4分の3未満であっても概ね2分の1以上であれば、一般健康診断を実施することが望ましいとされています。)

【参考】パートタイム労働者の健康診断を実施しましょう!!/厚生労働省

まとめ

  • パートタイム労働者は、少子高齢化の進行や多様な働き方が求められる中、今後もますます増加していくことが予想される。
  • パートタイム労働者は正社員と同様の業務に従事していることも多く、企業の中でも重要な役割を果たしている。
  • パートタイム労働者の中には、非自発的にその就業形態に甘んじている場合もあり、各企業は正社員への転換制度をより一層整備していくことが求められる。
  • パートタイム労働法は、パートタイム労働者の雇用管理の改善などについて定められた法律であり、パートタイム労働者を雇用するうえでは、労働基準法のほか労働関係法令を遵守しなければならない。

<執筆者>
本田 勝志 社会保険労務士

関西大学 経済学部 経済学科 卒業。1996年10月 文部省(現文部科学省)入省。退職後、2010年に社会保険労務士試験に合格。社会保険労務士事務所などでの勤務経験を経て、現在は特定企業における労務管理等を担当。


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