アメリカと日本でこう違う!タレントマネジメント導入の経緯


日本でも10年ほどの間、企業で導入が試みられているタレントマネジメントという人事管理システム。アメリカからスタートしたシステムですが、どのような経緯で導入されたのでしょうか。日米で比較してみます。

アメリカで導入された経緯
当初は優秀人材(トップタレント)を選別する考え方
アメリカでタレントマネジメントが求められ始めたきっかけは、トップ人材の発掘のためでした。CEOが将来の自分の後継者になる人材を見つけて育成するために、タレント(能力)を持った人が必要でありタレントマネジメントという概念が生み出されたのです。
最初にタレントマネジメントの先鞭をつけたのは、マッキンゼー&カンパニー社です。1997年に同社は「The War for Talent」という考え方を世に問います。これは、トップ人材をいかに確保するかが企業にとって最重要課題であるというものです。アメリカでは人材は必要に応じて調達するものという考え方が盛んだったため、当時のタレントマネジメントは人材育成よりは将来のリーダーとなる人材確保を重要視していました。そのため、当時のタレントマネジメントは優秀な人材を選別することでした。
新たな人材育成方法が必要に
しかし、優秀な人材を選別していく材管理はよい人材をじっくり育成するという長期的な視野に欠けています。また、社員は高いモチベーションを維持しながら仕事をすることができません。そこで、従来のタレントマネジメントが再興され、トップ人材だけでなく全社員のタレントを重視する考え方へと変化しました。例えば、適材適所に人員を配置することで員一人一人の生産性を上げたり、優秀な人材の離職率を下げるための方法としてタレントマネジメントが活用されるようになりました。
グローバル企業では人材管理の統一基準が必要に
世界各国に社員を抱えるグローバル企業では世界中にいる社員に適切なチャンスを与えスピーディーに人材発掘・育成を行う必要があります。そのため統一された評価基準を設けて、各国社員のタレントを一括して把握できる方法が必要になります。そこでゼネラル・エレクトリック社、マイクロソフト社、ヒューレット・パッカード社などの有名グローバル企業がタレントマネジメントを統一的な評価基準として採用することになりました。
■参考URL
http://www.recruit-ms.co.jp/issue/feature/0000000161/2/ https://www.works-i.com/pdf/r_000314.pdf
日本で導入された経緯
従来の人事管理では対処できない問題が増加
一方、日本でも企業を取り巻く状況は大きく変化をしています。性別や雇用形態の多様化が進み、社員も自分自身のキャリア形成に関して意識をするようになりました。しかし、日本企業では未だに社員に対して一律した人事管理を行っており、社員の意識やニーズとの乖離が大きくなっています。また、リーマンショック以降、人件費削減のため昇進や昇格の門戸も狭まり、今までの画一的な人事システムでは社員のモチベーションを保つことが非常に難しくなってきました。このように変化を迫られている日本企業に求められているものは社員一人ひとりと向き合うことでキャリア形成に貢献し、社内で最大限の活躍の機会を提供するという意識です。それはまさに「タレントマネジメント」だということができます。
少子化による人材不足
少子高齢化で企業がのぞむ若手人材を探しにくくなったため、既存社員も含めたタレントの把握・管理が必要になりました。
グローバル企業の誕生
海外にも多数の拠点を持つグローバル企業が増え、広く世界でリクルーティングを行う必要が出てきたため、適切なリクルーティングのための統一基準が必要となり、タレントマネジメントの導入が進みました。
■参考URL http://www.recruit-ms.co.jp/issue/feature/0000000161/3/ http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1601/05/news034.html http://it-trend.jp/talent-management/article/explain https://jinjibu.jp/article/detl/manage/298/ https://jinjibu.jp/article/detl/manage/299/
アメリカと日本の相違点
グローバル人材の考え方の相違
日本企業では、グローバルに人材を集めるという意識が低く、社内の生え抜きの人材を重要ポストに就ける傾向があります。中途採用や海外人材の積極的な登用をしていない点が、アメリカの企業との大きな相違点です。
従来の人事管理の枠組み(年功序列など)が強い
転職市場が成熟しているアメリカには、人材をタレントとして捉える風土があります。しかし、日本企業は依然として年功序列型で、正規社員・非正規社員の区別も明確にあるため、年齢や身分に関係なく人材を見るタレントマネジメントをどこまで導入できるかが問題になります。
社員が自分のキャリア形成に意識が薄い
アメリカと違い転職が一般的でなく年功序列であった日本企業では、会社の指示する通りに異動し仕事をこなしていけば自然とキャリアパスが築けるようになっていました。しかし、タレントマネジメントという考え方が出てきたことで、社員一人一人が自分のキャリア構築について、もっと意識を持たなければならなくなってきています。
ジョブローテーションという制度がある
日本独自の人材育成方法としてジョブローテーションがあります。定期的・強制的に各部署を異動させることで人材を育てていくシステムですが、この中にどこまでタレントマネジメントを組み込めるかが課題です。
■参考URL
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1511/20/news016.html http://it-trend.jp/talent-management/article/explain http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1601/08/news037.html
まとめ文
・タレントマネジメントは、アメリカではトップタレントを選別するシステムだった
・その後グローバル企業における人材確保と育成の手段として活用された
・日本でも労働環境の変化にともない、このシステムを導入する企業が増えている
・導入に際しては、日本企業独自の課題も多い
日本でもタレントマネジメントというシステムの認知度は上がっていますが、今後は日本企業独自の問題点をクリアしつつ、どこまで導入していけるのかが課題だと言えます。
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