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連載:第23回 経営危機からの復活

稲盛経営者賞受賞に至る14年。父の借金18億から始まり、異例の高利益率企業への軌跡

BizHint 編集部 2021年12月1日(水)掲載
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愛媛県松山市に本社を置く、ABC開発株式会社。同社の西口社長が24歳の時、18億円の負債を抱えた父親の会社が倒産。社会人経験が無く「誰よりも長く働く」ことしかできなかった西口社長は、借金返済に奮闘します。しかし、頑張れば頑張るほど従業員との間には溝が……。その後、働く目的を「借金返済」から「従業員の幸せの実現」に転換し、さらには土木業界の地位向上を目指すことに。その背景には、稲盛和夫氏の教えと、手段としての利益の追求がありました。多額の負債を乗り越え、今年度の売上予測は15億円超、経常利益率は13%と高い水準を誇る、同社の再生までの道のりと社員を幸せにするためのヒントをお聞きしました。

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ABC開発株式会社
代表取締役 西口泰宏さん

1978年愛媛県出身。早稲田大学商学部を卒業後、米国にてフリーター。24歳の時、父親の会社が倒産し、帰国。26歳で「ABC開発株式会社」を起業。建設業、不動産業、運送業、環境事業など土地開発に関わる幅広い事業を展開する。2010年に、京セラの創業者であり名誉会長の稲盛和夫氏が塾長を務める「盛和塾」に入塾。2017年、盛和塾世界大会において稲盛経営者賞を受賞した。


24歳で父の借金を背負い、ダンプカー1台で起業

――最初に、ABC開発株式会社起業までの経緯を教えていただけますか?

西口泰宏さん(以下、西口): 僕は大学を卒業した後、米国に渡り、公認会計士を目指しながらアルバイトをしていました。そんな生活が半年ほどたったある日、母から「父の会社が倒産する…」との連絡が…。民事再生が認められればなんとかなるかもしれない、という母の言葉を聞いて、半ば勢いで帰国したのが2002年。24歳の時でした。

父の会社の惨状は、想像以上でした。 総資産が1億円にも満たないのに、負債総額は18億円。 どれだけでたらめな経営をしていたのか、数字を見ただけでわかりますよね。自宅は競売にかけられ、会社の電気も止められている……。幹部も含め、従業員のほとんどは辞めてしまっていて、わずか数名の従業員だけが残された状態でした。

そんな中、僕の日本での社会人生活の1日目は、父の会社の民事再生法認可の裁判から始まりました。結果的に認可は下りたものの、目にした光景は今でも忘れられません。そこには債権者の方々がいらっしゃいました。怒っている人、困り果てている人、悲しんでいる人……。それを目にした途端、僕は一気に不安の波に飲み込まれそうになりました。

しかし、家族を助けるために反対を押し切って帰ってきたのです。挫けるわけにはいきません。この状況で、自分には何ができるのか…と考えを巡らせた結果、何もない自分にできるのは「とにかくがむしゃらに働くこと」だけ。債権者の方々を前に、覚悟を決めました。

僕が「第三者」として債権者と何度も交渉を続け、最終的には5億4,000万円の借金を10年かけて返済することになりました。しかし、当時の年商は6,000万円ほど。10年で借金を返済するためには、10倍の6億円の売上を作る必要がありました。

――そこから、ABC開発の立ち上げに繋がるのですね。

西口: はい、父は採石業を営んでいましたが、需要が年々減少している上に利益率も悪く、 いくら頑張って働いても、このままでは再倒産してしまう… という危機感がありました。何かできることはないか…と頭を悩ませていた中、ふと気付いたことがあったんです。

それは、採石現場に日々出入りしている運送会社の中に、挨拶や身なりなど、「ビジネスパーソンとしてきちんとしている会社」が見当たらなかったこと。

服装はスリッパとジャージで清潔感も無い、挨拶もできない…。これを、ヤマト運輸や佐川急便といった一般消費者向けの大手運送会社のセールスドライバーのように、制服や名刺を整え、ビジネスマナーを身につければ、それだけで他社と大きな差別化になる…。

今いる採石をはじめとした土木・工事現場を舞台に活躍する、「きちんとした運送会社」を作ろう 、と。営業の頑張り次第で、この業界で一番になれるのではないかと考えました。

そこで2005年、母と僕とトラック運転手さんの3人で、古くて安いダンプカー1台を購入し運送会社を設立。それがABC開発の始まりです。最初はとにかく信頼を得るために必死に働きました。誰よりも長く働けることは僕の取り柄だったので(笑)。

そうして3年くらいがんばっていると、少しずつ状況が変わっていきました。応援していただける味方が増えてきたのです。債権者の方からも仕事を回していただけるようになりました。従業員も増やしながら、運送業だけでなく、道路や駐車場を作るアスファルト事業や不動産事業などにも幅を広げ、順調に売上を伸ばしていくことができました。

そして2010年。 ついに借金をすべて返しきることができたんです。


ABC開発の従業員は、職人含め全員が名刺を持っている。身なりもきちんと整え、「お客様に信頼されること」を第一にしている

「借金返済」から「従業員の幸せ」。働く目的を変えたのは従業員との‶溝”。異例の月給制導入へ

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