連載:第95回 経営危機からの復活
「利益はうんちと同じ」尊敬する経営者の言葉で目が覚めた。倒産寸前の会社をV字回復させた“たった一つの指針”
BizHint 編集部
2025年11月28日(金)掲載
“利益の追求”は企業にとって不可欠である――。そう考える経営者は多いのではないでしょうか。かつては多額の借金を抱え、倒産寸前だった株式会社こんの。同社は、利益最優先の経営を捨てたことで、V字回復を果たしました。2015年には「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」を受賞。以降、売上・利益も成長し続け、人手不足とは無縁の優良企業に生まれ変わっています。利益を追求しない会社が、なぜV字回復できたのか?その根幹には、“ある経営者たち”との出会いと、社長が貫き通した“たった一つの指針”がありました。25年に渡り同社を牽引する、紺野道昭社長に伺います。
「業績さえ上がれば会社を変えられる」と思っていた。独りよがりな経営の限界
――紺野社長がご入社された当時の状況を教えていただけますか?
紺野道昭さん(以下、紺野):当社は1951年に私の祖父が創業し、主に古紙専門のリサイクルを行っている会社です。私が入社したのは1993年。今では考えられないほど悲惨な状況でした…。
まず、決算書を見て愕然としました。借金と年商が同額で、4年に1度しか黒字がなく、利益が出てもすべて返済に消えてしまう。銀行や会計事務所から「もう貸せない」「潰れた方がいいんじゃないか」と見放されるほどの経営危機に陥っていました。
なんとか人を集めようと求人を出しても真っ当な人は来ない…。社内には正直、ガラの悪い社員で溢れていました。勤務態度も良いとは言えず、毎日殺伐としていましたし、定刻や出勤日に全員が揃ったことは一度もないほど。人は全然定着せず、常に人手不足でした。
私はとにかく、人手不足を補填するため、とにかく働きました。夕方まで福島、夜は郡山に移動して仕事なんてこともザラでしたし、過労で入院したこともあります。そんな中、十分な準備ができないまま、2000年に33歳で父から社長を継ぎました。
当時の私は、 「業績さえ上がれば会社を変えられる」 と信じていました。だからこそ、社長になったからには良い結果を残さないと…そう意気込んでいた矢先、市場全体の悪化も重なり、2000年度は過去最悪の決算に…。自分のやっていることがすべて空回りしているようで、幹部社員からは「前の社長の方がよかった」「余計なことをするな」と言われました。借金は減らず、銀行、会計事務所、社員にも見放されている…。精神的に追い詰められ、命を絶つことも考えたほどです。
ただ、そこから25年たった今。市況による波はありますが、しっかり成長曲線を描けています。リーマンショックや東日本大震災などの危機を乗り越え、2013年にはV字回復を達成。2025年2月期の売上は約40億円で、利益率も業界ではかなり高い水準になっています。人材確保も順調で、求人の募集を出すとすぐに人が集まり、 ありがたいことに人手不足とは無縁の状態 です。
――なぜそこまで変われたのでしょうか?
紺野: 尊敬する多くの経営者の方々に出会い、私自身の意識が変わったことが大きいですね。 大事なのは売上や利益、業績ではない ということに気づかせていただきました。
実際に当社は、利益をあげるための「生産性を上げる」「コストを削減する」といった施策は一切やっていません。 たった一つのことだけを追求してきました。 これこそが、当社を生まれ変わらせ、V字回復からその後の成長につながったと確信を持っています。
――それは一体?
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バックナンバー (95)
経営危機からの復活
- 第95回 「利益はうんちと同じ」尊敬する経営者の言葉で目が覚めた。倒産寸前の会社をV字回復させた“たった一つの指針”
- 第94回 倒産寸前だった地方中小のV字回復。“救われた”社長が挑み続ける「覚悟の経営」
- 第93回 「社員の意識は変えられない」と悟ったリーダーが見直した、組織を変えるたった一つの考え方。V字回復の裏にあった転換点
- 第92回 倒産寸前の会社を蘇らせた唯一の指針。「絶対に諦めない」リーダーの覚悟と信念
- 第91回 指示待ち組織を変えたリーダー。社員の主体性を引き出すために徹底した「2つの原則」