連載:第7回 経営・SaaSイベントレポート2020
ニトリに学ぶ「多数精鋭」の組織づくり。成長角度を上げるHRテック活用術
「ただ増収増益を続けるだけでなく、成長角度を上げるには『人』と『組織』を強くする仕組みが必要です。その鍵を握るのは、HRテックの活用です」––––そう話すのは、株式会社ニトリホールディングスの組織開発室 室長・永島寛之さん。他社の人事を担当される方から「業務の効率化やコスト削減のために、HRテックを導入したい」という声も聞こえてきますが、実はそれは誤りだと言います。永島さんが自社で取り組みを実践するなかで見出した、HRテックを成長に活かすために必要な条件についてお届けします。
1998年東レ株式会社入社。国内外のB2Bマーケティング経験後、2007年にソニー株式会社入社。ソニーラテンアメリカ(米国フロリダ)赴任。アメリカ出店を果たした株式会社ニトリホールディングスに2013年に入社。2015年より人材採用部長、2018年より採用教育部長、2019年より組織開発室 室長。採用、育成、人事異動を統括。従業員の成長を起点としたタレントマネジメントをテクノロジーで構築することに全力投入中。教育のテーマは「越境好奇心」。
複雑で属人的な人事制度が、古い管理手法からの脱却を阻む
テレワークが浸透するにつれて、仕事内容を限定せず自社に合う人を雇用する「メンバーシップ型採用」から、決められた仕事内容に当てはまる人を雇用する「ジョブ型経験者採用」へと、安易に方針転換をはかる企業が増えています。
永島さんによると、非連続に大きく成長しようとすると、個人の成長が組織の成長に繋がるような人事制度にしていく必要があり、その時に「ジョブ型」を採用すると、組織が硬直化して個人の成長が企業の成長にリンクしていかなくなるそうです。
日米の違いで見ると、ジョブ型経験者採用をする国はアメリカ、メンバーシップ型採用で終身雇用と年功序列を守ってきたのは日本です。
日米ともに、大手企業はどこも、従業員を経営資源のひとつとして捉え「人的資源管理」をベースとした人事管理を行ってきました。この構造が、HRテックの発達で「個の成長支援」の方向に大きく変わっていこうとしています。
アメリカの企業が、従業員の個の成長にまで目を配ることができるようになった理由は、HRテックの早期導入にあると永島さんは主張します。
アメリカと日本、どちらの国も元は組織(マス)管理で、企業は従業員の個の成長まで見る余裕がありませんでした。
アメリカでは、ジョブ型人事による組織の硬直化と低成長を打開するため、HRテックを早めに導入した結果、比較的簡単に個の成長支援へ舵を切れました。
そして、個の成長に合わせてジョブ定義を変えていくことを繰り返して、良い社員が長く組織に残るようになり、日本が捨て去ろうとしている、メンバーシップ型採用に興味を持ち始めた企業が増えています。
個人が成長し、長く勤務して、結果的に「終身雇用」になったらワンダフルだよねというストーリーです。
一方、日本企業が持つ、属人的な等級・評価制度や職位制度が、HRテックの導入の障壁になっていると指摘します。
「課長代理」「課長代理補佐」といった複雑な役職階層に人事が縛られていると、組織中心の考え方から個の成長支援になかなかシフトできません。その状態のまま、テクノロジーを入れようとすると「ノイズ」だらけになってしまいます。
当社は多数精鋭型で、極端にフラットな組織ですが、職務上の階級が少ないシンプルでフラットな組織を目指すと、HRテックを活用しやすくなると感じています。
日本企業に多く見られる、たくさんの階層を設けた「ピエロ帽型」組織。リーダーを役割のひとつと捉え、ポストよりも職務の質を追求する「菅笠型」組織のほうが、属人的なルールや変なKPIがなくなり、HRテックの導入ハードルが下がるそうです。
HRテックを導入する理由は、業務効率化やコスト削減のためではない
HRテックを導入・活用するメリットとして、人事担当者の業務効率化やコストの削減を真っ先に思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。けれども、永島さんはそれとは異なる理由で採用を決めたと言います。
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