連載:第69回 総合 2020年1月~3月
働き方改革、多くの企業で成果実感。「労働時間減少を感じた企業」は20%以上増加
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所は、「『働き方改革』と組織マネジメントに関する実態調査」の結果を公開しました。本調査によると、2017年に実施した調査と比較して、様々な項目で働き方改革の成果を実感している企業が増加しています。特に、「長時間労働者の減少、総労働時間の減少」については、前回の調査よりも20ポイント以上増加し、成果を挙げている企業が多いことがわかりました。一方で、「業務効率・労働生産性の向上」の実感については約5ポイントの増加にとどまり、生産性向上により労働時間が短縮されているとは言えない状況にあるようです。
働き方改革、2年前よりも成果を実感
働き方改革による成果の実感について質問した結果、多くの項目において、2年前よりも成果実感を得ている企業の割合が増加しました。
最も成果実感が増加したのは「長時間労働の減少」で、2017年の44.7%に対し、2019年は62.3%と、約20ポイント増加しています。しかし、「業務効率・労働生産性の向上」の実感については31.1%(2017年)→36.5%(2019年)とわずかな増加にとどまり、労働時間は少なくなっても業務効率の向上までは実感できてないことがわかりました。
働き方改革の進捗・達成状況について質問したところ、「当初の目的を達成して、改革推進をほぼ終えた」とした企業はわずか0.6%と、非常に少ない結果となりました。「順調に推進中である」と回答した企業が27.0%、「当初の目的を変更・拡張し、さらなる成果に向けて取り組んでいる」と回答した企業は13.8%です。
一方、「推進中であるが、苦戦している」と答えた企業は52.2%と半数を超え、働き方改革に取り組みつつも難しさを感じている企業が多いこともわかりました。
働き方改革の進捗状況ごとに、重視する目的を聞いた結果、「拡張」段階の企業はどの目的も重視している傾向にあり、「順調」段階の企業は「従業員の生活の質」を重視していることがわかりました。
「職種による状況の違い」や「管理職の負荷」が課題に
働き方改革の進捗により、「推進課題」にどのような違いがあるかについて質問した結果、苦戦段階の企業では「予算や権限の不足」「現場や他部署との連携」「改定ノウハウが不足」などの課題を挙げる企業が多い傾向にあります。
また、どの進捗段階においても「部門・職種による状況の違い」「管理職の負荷」を課題としている企業が多いことが判明しました。
管理職への負荷を軽減するため、支援していることを聞いてみると、情報共有やコミュニケーション、制度の見直しなど、様々な工夫を取り入れているようです。
次に、働き方改革の推進・運用体制について進捗状況ごとにまとめた結果です。「拡張段階」の企業においては【指標化】【協働的な体制】【対話的な推進】のいずれにおいても積極的に推し進めていることがわかりました。
働き方改革で取り入れている特徴的な施策について聞きました。
「拡張段階」の企業では、生産性向上の深層部にあたる「業務改善・ 効率化」や「組織・事業デザインの見直し」に積極的な傾向があります。加えて、働き方の「多様化」「柔軟化」の施策も同時推進しているようです。
労働時間管理の施策は定着期へ
生産性向上に関する施策の導入状況について聞いた結果を2年前と比較します。
今回の結果から、【労働時間管理・指導】施策の多くは定着期に入っていると言えるでしょう。2年前には導入率が低かった「6.勤務間インターバル」は、14.9%から26.4%へと11.5ポイントも増加しています。さらに、4分の1以上の企業が今後の導入を検討しているようです。
導入・実施率が増加している施策としては、【業務改善・効率化】施策の「9.業務フローの改善」「12.知識・スキル教育」が挙げられます。一方で、【組織・事業デザインの見直し】は全体に検討率が高い傾向にあるようです。
【生産性基準の評価】については、検討率が低下しました。ルール構築から事業課題解決へのシフトが見受けられます。
働き方の「多様化」「柔軟化」に関する施策の導入率を2年前と比較します。
【均等処遇】は、障害・女性・高年齢などの個人属性を切り口とした施策が先行し、「4.正規/非正規雇用従業員の間の処遇格差の是正」の検討率が大きく高まる結果となりました。【育児両立】【介護・傷病治療両立】施策では、性別を問わず、従業員のライフイベントと仕事の両立を支援する取り組みが進んでいます。
また「16.副業・兼業の許可・促進」は、導入・検討率ともに倍増しました。
個人の働き方の自由度が高まることには懸念も
働き方改革が職場や従業員にどのような変化を及ぼしているのかについて聞いたところ、上記のようなコメントが挙がりました。「働き方改革」による組織マネジメントヘの影響において、事業・経営への影響の観点から、個人の働き方の 自由度を高めることに懸念があることが伺えます。
「働き方改革」を通じて「個を生かす」ことと、組織マネジメントヘの影響が、実際どのような関係にあるかについて、「個を生かす」変化についての7項目(図表13に項目例)の傾向を基に分類したところ、「働きやすさ」と「働きがい」の組み合わせで4パターンが見いだされました。
このことから、以下のような傾向が挙げられます。
- 「働きやすさ」と「働きがい」が同時に高まっているHH群が、従業員規模や業種に偏りなく、一定数存在する。
- HH群では、「協働・共創」を測る11項目(図表13に項目例)の平均値が最も高い。
- 「働きやすさ」と「働きがい」を同時に高める「働き方改革」が、組織に「協働・共創」を生み出すことが示唆される。
これらの結果から、「働き方改革」が組織マネジメントに及ほす影響を「個を生かす」「組織を生かす」の2軸によるモデルで描いてみると、「個」と「組織」の両方が生かされる、右上の象限は「協働・共創」と表現できます。
他方で、個人偏重となり組織の強みが生かされなくなることも、組織偏重となり個人の生活や個性が尊重されなくなることも、「働き方改革」の意図するところではないことがわかります。
「働きやすさ」と「働きがい」の両立には対話的な推進が重要
それぞれの群ごとに、どのような推進体制や施策を導入しているのかについてまとめました。
推進・運用体制について聞いたところ、「働きやすさ」と「働きがい」を両立している企業 (HH群)は、「2.複数部署の連携・協働体制」に加え、事業現場との【対話的な推進】に特徴があることがわかります。
それぞれの導入施策について聞いたところ、生産性向上施策において、HH群は、【業務改善・効率化】【組織・事業デザインの見直し】への取り組みが突出していることがわかりました。
また、働き方の多様化施策において、「働きやすさ」が高まっている企業 (HM群)は「6.育児、10.介護、11.傷病治療、との両立のための法定義務を上回った仕組みに力を入れる傾向があります。
働き方の柔軟化施策において、HH群に特徴的な施策は、「4.フリーアドレス」「14.転勤見直し」「15.OB·OGネットワーク」「16.副業兼業の許可推進」などです。「1.在宅勤務」「13 .長期休職制度」。 HM群に特徴的なのは「8.定時外の会議の削減·禁止」については、HH群・HM群共に導入が多い傾向にありました。
調査概要
プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000079.000029286.html
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