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連載:第1回 よくわかる補助金・助成金 雇用・人材

残業削減で助成金がもらえる!?~時間外労働等改善助成金~

BizHint 編集部 2019年12月23日(月)掲載
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一連の働き方改革で、2020年4月から中小企業でも残業時間の上限規制が適用されることになりました。とはいえ、いきなり残業を減らすのは難しいものがあります。「残業するな!でも仕事はきっちりやれ!」では何も変わりません。残業を減らすには社員の意識を変えるなどさまざまな取り組みが必要です。今回は、そんな残業を減らす取り組みでもらえる「時間外労働等改善助成金」のご紹介です。

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1.残業時間の上限規制

 2020年4月より中小企業でも残業時間の上限規制が適用されます。これにより月45時間、年360時間が残業上限になり、特別な事情があったとてしても以下を超えることができなくなります。

【時間外労働上限時間】

  • 年720時間 以内
  • 複数月平均80時間 以内 休日労働を含む
  • (どの2~6カ月平均をとっても、1月あたり80時間を超えないこと。)
  • 月100時間 未満 休日労働を含む

 これまでとの違いは何かというと、従来も残業上限は月45時間、年360時間でしたが、労使合意さえあればいくらでも増やすことができたのですね。日本の残業時間が青天井といわれるゆえんです。

 ここにメスが入れられ、労使合意があろうと、どんな事情があろうと、上限を守らないといけなくなりました。違反すると罰則もあります。  

2.取り組みコース

 時間外労働等改善助成金は、2018年4月にリニューアルした中小企業・小規模事業者の働き方改革を支援する制度です。5つのコースがありますが、ここでは残業時間抑制に直結しやすい以下3つのコースを取り上げます。

 2019年度の申請受付は終了しているものもありますが、間に合うものがあればぜひチャレンジしたいところです。

(1)職場意識改善コース(2019年9月30日申請締め切り)
(2)勤務間インターバル導入コース(2019年11月15日申請締め切り)
(3)時間外労働上限設定コース(2019年11月29日申請締め切り)

3.成果目標と助成金

 各コースには「成果目標」が設定されており、それぞれの成果目標の達成度合いに応じて助成金がもらえる仕組みです。「成果目標」といってもそんなにハードルの高くないものもありますので以下順に見ていきましょう。  

(1)職場意識改善コース ~目標未達でも助成金がもらえる!~   

①成果目標

(ア)年次有給休暇の取得促進 特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇)の何れか1つ以上を全ての事業場に新たに導入すること
(イ)所定外労働の削減 労働者の月間平均所定外労働時間数を5時間以上削減させること

②助成金額

 成果目標(ア)(イ)の達成状況によって、取組実施にかかった経費の一部が交付されます。

 成果目標(イ)の月残業5時間削減はともかく、成果目標(ア)の特別休暇導入はそんなにハードルが高くなさそうですね。(ア)だけ達成しても助成金がもらえるのが嬉しいところです。

(2)勤務間インターバル導入コース~社員の健康確保のために~

 「勤務間インターバル」とは、勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の「休息時間」を設けることです。例えばインターバルを11時間と設定したら、23時まで残業した場合、翌朝の始業時刻は11時間後の10時以降となります。睡眠不足でふらふらの社員を働かせても効率が落ちるだけなので、理にかなった制度と言えます。

 2019年4月から勤務間インターバル制度導入が努力義務化され、大企業を中心に導入が広がっています。中小企業でも導入を後押しするため、本助成金「勤務間インターバル導入コース」が設定されました。以下成果目標と助成金額をみていきましょう。

①成果目標

(ア) 新規導入
 まだ勤務間インターバルを導入していない事業場では、過半数の労働者を対象とする、休息時間が9時間以上の勤務間インターバルに関する規定を就業規則等に定めること

(イ) 適用範囲の拡大
 既に勤務間インターバルを導入している事業場であっても、対象が労働者の半数以下である場合、範囲を拡大して過半数の労働者を対象とすることを、就業規則等に規定すること

(ウ)時間延長
 既に9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場において、過半数の労働者を対象として、2時間以上延長して休息時間数を9時間以上とすることを就業規則に規定すること

②助成金額

 下記上限額の範囲で、対象経費に3/4を乗じた額。

 勤務間インターバルコースの成果目標も、とりあえず制度を導入すればいいので比較的取り組みやすいといえるでしょう。また労務管理ソフトなども対象経費に含まれているので出退勤時間の管理もしやすくなります。何よりも社員の健康確保に必要な制度なので、導入をぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

(3)時間外労働上限設定コース~36協定の見直しに~

  2020年4月からの残業時間上限規制に向けて、36協定の見直しを検討されている企業等にピッタリの助成金です。

①成果目標

 全ての事業場において、36協定(平成31年度又は平成32年度に有効のもの)の延長する労働時間数を短縮して、以下のいずれかの上限設定を行い、労働基準監督署へ届出を行うこと。

(ア)時間外労働時間数で月 45 時間以下かつ、年間 360 時間以下に設定

(イ)時間外労働時間数で月 45 時間を超え月 60 時間以下かつ、年間 720 時間以下に設定

(ウ)時間外労働時間数で月 60 時間を超え、時間外労働時間数及び法定休日における労働時間数の合計で月 80 時間以下かつ、時間外労働時間数で年間 720 時間以下に設定

②助成金額

 取組の実施に要した経費の一部を、成果目標の達成状況に応じて支給します。

以下のいずれか低い方の額

  • 1企業当たりの上限200万円
  • 記上限額
  • 対象経費の合計額×3/4

※ 上記の他に週休2日制導入に向けて休日を増やした場合は別途加算額があります。

 残業時間の多い企業が達成したほうが、上限額が高くなる仕組みです。とはいえ、これまで長時間労働が当たり前であった企業にとっては、なかなかハードルの高い取り組みです。しかし2020年4月からどのみち残業時間上限規制が適用されることを考えると、早めに手を打っておいたほうがよいともいえるでしょう。

4.助成金の対象となる経費

 助成対象は、実際にかかった経費の一部となります。以下が助成対象の経費となります。

  • 労務管理担当者に対する研修
  • 労働者に対する研修、周知・啓発
  • 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング
  • 就業規則・労使協定等の作成・変更
  • 人材確保に向けた取組
  • 労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新
  • テレワーク用通信機器の導入・更新
  • 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
    (小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など)

 自社だけで取り組むのも難しいものです。この機会に外部専門家によるコンサルティングを受けるのも一つでしょう。

申請手続き等その他詳細はこちら

[厚生労働省 労働時間等の設定の改善]
 <職場意識改善コース> 
 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/syokubaisiki.html

<勤務間インターバル導入コース>
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000150891.html

<時間外労働上限設定コース>
 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000120692.html

5.まとめ

 いかがでしたでしょうか?2018年11月に実施された「過重労働解消キャンペーン」では、8,494もの事業所に労働基準監督署の調査が入り、うち2,802事業場で違法な時間外労働が認められたため、是正に向けた指導が行われました。

 監督署に怒られるからではなく(もちろんそれもありますが)、長時間労働→人が定着しない→人手不足でますます残業が増える→さらに人が定着せず、新規採用もうまくいかない、の負のスパイラルに陥らないためにも、ぜひ働き方改革を進めてみましょう。その際には助成金や外部専門家の力も使ってお得に上手にやりたいですね。

(執筆)株式会社プロデューサー・ハウス 佐藤 智美
中小企業診断士/社会保険労務士

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