連載:第3回 補助金・助成金 活用術
こんなものにも助成金が!?実際にある変わった補助金・助成金
世の中にはさまざまな補助金・助成金があります。国が支援するものに変わったものは少ないのですが、地方自治体などではその地域独特のニーズを反映した補助金・助成金が実施されています。 なかには「え?こんなものにも補助金や助成金がもらえるの?」というものも存在します。そこで今回は、そんな「ちょっと変わった補助金・助成金」についてご紹介します。変わった名称の補助金や助成金でも、真面目で真摯な目的のものばかりです!
1.ニーズがあるところに補助金・助成金あり
補助金や助成金は社会のニーズがあるからこそ、いろいろな種類があります。たまに「変わり種」だと思う補助金があっても、その背景には「地域を活性化させたい」「社会問題を解決したい」という真剣な思いが込められています。
変わった補助金・助成金であっても、しっかり活用すると地域貢献につながることもあります。補助金・助成金は金銭的な意味だけでなく、その成果が地域に還元されることも目的としており、見えないところで効果を発揮する場合もあります。
しかしこのような制度は実際に幅広く告知されていないこともあり、自分で情報を取得して申請しなければなりません。そしてこれからご紹介する補助金・助成金は、ご自身の経営する企業がある自治体でも募集されている可能性があります。
2.こんなものにも補助金・助成金
では実際に、どのような補助金・助成金があるのでしょうか。少し変わった補助金・助成金の代表的なものをいくつかご紹介します。
(1)アニメで地域おこし、アニメなどコンテンツを活用した誘客促進事業費補助金
日本を代表するソフトパワーへと成長したアニメーション。近年ではアニメの舞台となった地域に外国人観光客が押し寄せるなど、その効果は年々大きくなっています。例えば漫画「スラムダンク」のモデルとなった神奈川県鎌倉市の江ノ電鎌倉高校駅前には、中国・台湾からの観光客が増え、ファンにとっては「聖地」となっています。
また、茨木県大洗を舞台にした「ガールズ&パンツァー」は、地域との連携でもっとも成功したものの一つです。ファンによる「聖地巡礼」を目的に大洗にやってくる観光客は、年間15万9,000人にもなり、直接的な経済効果だけで2.7億円にもなるといわれています。
このような成功事例から各地では、アニメや映画などのコンテンツを観光資源として活用し、観光客の誘致につなげる活動を支援する補助金や助成金を増やしています。
東京都でも、アニメなどコンテンツを活用した誘客促進事業費補助金があり、観光客誘致に積極的に取り組んでいます。対象事業は集客イベント事業だけでなく、施設・構造物などの建設・改修・整備に関する事業、情報発信などに関する事業といった形で幅広く支給されます。施設・構造物等の建設・改修・整備に関する事業は上限2,000万円、情報発信等に関する事業、集客イベント事業は500万円と高額なので、関連事業を行う企業には人気があります。
東京都産業労働局:令和元年度 第2回アニメ等コンテンツを活用した誘客促進事業
(2) 総務省「異能 (Inno)vation」プロジェクト(通称変な人)
ちょっと変わった研究をしている人を表彰するイグノーベル賞をご存知でしょうか。すぐに役に立たなくても、人と違う視野や研究によって将来、世の中に大きな成果を残すことができるかもしれない、という視点で考えられた賞です。その価値観に通じるものが、総務省の「異能 (Inno)vation」プロジェクト(通称変な人)です。
ITユニークな開発をしている人に対して支給される補助金、異能vation プログラムもその一つです。通称「変な人プログラム」といわれ、そのネーミングから話題となりました。2019年は「ICT分野において破壊的な地球規模の価値創造を生み出すために、大いなる可能性がある奇想天外でアンビシャスな技術課題への挑戦を支援します」として1年間300万円上限で公募されていました(※1)。
2018年の受賞者は、最後まで機能が残るといわれる耳に着目した「耳で5感を感じコントロールできる耳飾りの研究」や、死後の概念を変えるかもしれない「人の遺伝子情報を他の生命体の遺伝子情報内に保存する研究」、「ヒト型ロボットに眼力(めぢから)を与えるための研究」など、変わったものばかりです。
年間で300万円までの援助だけでなく、協力協賛企業グループによる支援などもあり、企業の方向性が合えばチャンスを広げることができます。
異能Vation
(※1)応募受付終了しました。
(3)新しい飼い主を探して助成金
近年ではペットを飼うことが単なるブームではなく、生活の一部として定着し、年々動物愛護の意識も高まっています。しかし、捨て犬・捨て猫の問題は依然として大きく、毎年数多くの犬猫がさつ処分となっています。
こうした状況を少しでも変えるため、公益財団法人どうぶつ基金では、「飼い主がいない猫や犬のために新たな飼い主を探す活動を行っている」団体・個人に対して、助成金を支給しています。これは行政による 犬猫の団体等譲渡事業推進のための助成金制度 であり、申請期間は2020年1月1日から末日までです。
助成額は犬・猫ともに一頭当たり5,000円。ペットショップや猫カフェなど、動物関連の事業を行う場合は、創業支援補助金と組み合わせることで効果的に活用できます。性質としては社会貢献に近い助成金なので、ご自身の目指す事業とよく相談して利用するようにしましょう。
どうぶつ基金:助成金/行政による犬猫の団体等譲渡事業推進のための助成金制度
(4)害獣駆除で作物を守ると同時に助成金も取得
近年、クマ、イノシシ、シカなどの害獣被害が多発しています。これは気候変動が理由とも、人の生活圏が広がり動物の生活圏と重なってしまったことが原因ともいわれています。
ただ、こうした害獣により毎年のように農作物に大きな被害が出ています。環境省によると、シカなどは生息数が増加しており、昨年の農作物被害額は200億円を超えました。
そのためこういた害獣の駆除に関して、各自治体では狩猟免許の取得などに助成金を出し、奨励しています。
たとえば京都府の木津川市では、狩猟免許の申請手数料、登録手数料、猟友会の年会費などの補助金が支給されます。散弾銃の購入についても補助率1/2上限15万円を支援しています。千葉県袖ケ浦市では、わな狩猟免許を対象に、狩猟免許試験の手数料と初心者狩猟講習会の受講料を支援しています。
現実的に企業に対してのメリットというと多少薄いのかもしれませんが、例えばジビエ料理を提供するレストラン経営者などが取得するのも良いかもしれません。
3.まとめ-補助金・助成金で地域のニーズを把握
前段の狩猟免許に関する補助金・助成金などは、一見普通の生活とは関わりないように見えます。しかし、見方を少し変えれば起業や事業拡大のヒントにつながります。補助金や助成金がある、ということはそれだけニーズがあり、公的な意義があるということです。本来は事業拡大のために費用をかけてマーケティングを行うところですが、それらを省略できます。
たとえば狩猟免許などは、企業を経営しながら漁師になるという話ではありません。しかし狩猟免許の助成がある、ということはそれだけ農作物などに被害が発生している=かなりの害獣が存在している、ということです。
その事実が事業の可能性にもつながります。前段最後にお伝えしたように地元で獲れたジビエをメインに使った飲食店となれば、かなりのインパクトがあるでしょう。そしてすでにこうした補助金などを活用し、ジビエ料理の商品開発などが進められている地域も増えています。事業者は、創業支援や地域活性化支援と農業系補助金・助成金を組み合わせることで、事業規模を広げることも可能です。
変わった補助金・助成金はタイトルも内容も一風変わっています。しかしそこからヒントを得ることで、その効果を何倍にも高められるでしょう。ぜひ一度、ご自身の企業のある自治体で確認してみてください。
監修:長谷川祐也(中小企業診断士/経営学修士)
執筆:リカル
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