インセンティブ制度の設計方法と企業の導入事例をご紹介

インセンティブ制度とは、社員のモチベーション向上や組織の業績向上などを目的に、特定の行動や結果に至るまでのプロセス、物事に対する考え方に対して表彰したり、報奨金を与える報酬制度です。当記事では、インセンティブ制度の設計手順や設計する際の注意点、インセンティブ制度の導入と、活用に成功している企業事例など分かりやすく解説します。

インセンティブ制度に関する基本的な知識や導入によるメリット、デメリットについては以下の記事をご覧ください。
インセンティブ制度とは?導入のメリット・デメリットを解説/ BizHint

インセンティブ制度設計の手順

まず、インセンティブ制度を正しく設計するための手順から紹介します。

導入目的を明確にする

インセンティブ制度を設計する上で最も重要なのが、導入目的の明確化です。導入目的を明確にすることによって、効果測定時のKPIが設定しやすくなり、コストパフォーマンスの最大化も図りやすくなります。

明確な導入目的は、社員たちの納得感や評価の公平感も高めてくれます。全社員が新たなインセンティブ制度をポジティブに受け入れ、積極的に活用する環境を構築するためにも、しっかりと導入目的を明確にしておきましょう。

従業員のニーズを把握する

報酬アップや臨時ボーナスの支給。工夫や努力、成果に対する賞賛や表彰。目標達成や自己実現に向けた的確な支援。価値観や理想の働き方が異なるように、やりがいを感じる要因や仕事に対して本気で向き合うきっかけ、モチベーション向上に効果的な取り組みは十人十色です。

自社の社員たちがどのようなニーズを持ち、どのような形のインセンティブに魅力を感じるのかを正しく把握しておかなければ、高い効果を期待できるインセンティブ制度を設計することはできません。社員全員のやる気を刺激し、多くの成果を生み出せる仕組みを構築するためには、従業員に対して丁寧にヒアリングを実施し、社員一人ひとりの仕事観と真正面から向き合う必要があるのです。

インセンティブ制度の詳細を決める

このステップでは、導入目的の達成と従業員ニーズへの対応を同時に実現可能なインセンティブ制度を設計するため、さまざまな要素を踏まえながら以下の項目について一つひとつ具体的に検討していきます。

導入目的や従業員ニーズによって、最適なインセンティブ制度は大きく異なります。制度導入後の社内の雰囲気や従業員の反応をイメージし、自社に適したインセンティブ制度になっているかしっかりとチェックしましょう。また、短期的な視点ではなく長期的な視点を持ち、持続的に運用可能な制度になっているか確認するため、人件費の変動シミュレーションを実施しておきましょう。

インセンティブ制度の周知徹底を行う

インセンティブ制度の詳細が決まったら、社員に対して周知徹底を図ります。この際、実施内容だけをただ伝えるのではなく、現在の経営課題やインセンティブ制度を採用した理由、導入によるメリットやデメリット、歩合制(歩合給)との違いについても丁寧に説明することが大切です。

インセンティブ制度を「営業職等の職種で優秀な成績をおさめた社員だけに金銭的報酬が与えられる欧米的な成果主義の報酬制度」と勘違いしているビジネスパーソンは決して少なくありません。誤解されたままでインセンティブ制度を導入してしまうと、人間関係の悪化や社内コミュニケーション量の低下、不平不満の噴出、離職率の増加など、思いもよらない事態を招いてしまいます。

社員との密な情報共有は何よりも有効なリスク対策です。インセンティブ制度を通じて全社員のモチベーション向上を実現させるためにも、この段階で社員たちのあらゆる疑問や不安を解消しておきましょう。

効果や悪影響について定期的にチェックする

インセンティブ制度は多くのメリットとデメリットを合わせ持っています。そのため、制度を導入して終わりではなく、導入による効果や悪影響について定期的にチェックを行う必要があります。

より良い制度にするために制度の見直しや改善を行うことは大切です。しかし、短期間のうちに何度も大幅な変更を加えることは社員たちの混乱や反感を招く原因になるため好ましくありません。企業側の都合で安易に変更を加えるのではなく、従業員ニーズやモチベーションへの影響を重視し、適切なタイミングを見極めた上で必要最小限の変更を加えるように心掛けましょう。

【チェックポイント】

インセンティブ制度を設計する際の注意点

インセンティブ制度は、組織と人材の双方に多くのメリットを与える素晴らしい制度です。

次の4つのポイントに注意することで、制度導入によるメリットの最大化とデメリットの最小化を実現させることができます。

全社員、全職種を制度の対象にする

インセンティブ制度とは、一般的な人事評価基準とは異なる角度から人材を評価することで社員一人ひとりにスポットライトが当たる機会を増やし、社員の成長を促進しながら組織全体の業績向上や活性化を図る施策です。しかし、実力に応じたインセンティブ付与を強く意識するあまり、実績を数値化しやすい営業職のみを制度の対象とする企業や、実績を数値化しづらい事務職や人事職を制度の対象外とする企業は決して少なくありません。

一部の社員や職種だけをインセンティブ制度の対象にした結果、制度対象外となった社員のモチベーションやチームワークが低下してしまっては、インセンティブ制度を導入した意味がなくなってしまいます。社員全員の成長意欲と貢献意欲をバランスよく刺激し、組織全体の業績向上や活性化へと正しく反映させるためには、全社員・全職種をインセンティブ制度の対象にしなければならないのです。

成果だけでなくプロセスや貢献度合いも評価する

社員の中には、アシスト役に徹することで最高のパフォーマンスを発揮する人もいます。そのようなタイプの人材をインセンティブ制度上で評価し、モチベーションの維持向上を図るためには、成果だけでなくプロセスや貢献度合いも評価の対象に加えなければなりません。

個々の存在意義を認め、成果以外の部分に対してもインセンティブを付与することは、チームワークや組織力を高める上でも重要なことです。自分の役割を果たすことで正当な評価を受けられることを理解した社員たちは、成果を奪い合うことなく、情報やノウハウをしっかりと共有し、チームや組織として多くの成果をあげられるように努めてくれるでしょう。

達成不可能な条件や基準を設定しない

どれだけ魅力的なインセンティブを提示したとしても、それを得られる可能性が万に一つもない状態では、社員のやる気を引き出すことはできません。付与条件や評価基準は、インセンティブの内容以上に慎重かつ適切に設定しなければいけない項目なのです。

業務を通じた個人成長の促進と組織の業績向上を同時に実現させるため、常日頃から組織内の人材に対して強い関心を持って接し、個人の努力によって達成可能なラインをしっかりと見極めた上で制度設計を行いましょう。

トータル・リワードを意識する

トータル・リワードとは、社員に対する報酬を総合的な動機づけの仕組みとして捉え、金銭的インセンティブに固執することなく、様々な種類のインセンティブをバランスよく包括するマネジメント体系です。

人は誰しも「生理的欲求」、「安全欲求」、「社会的欲求」、「承欲欲求」、「自己実現欲求」という5段階の欲求を持っています。そのため、社員たちのモチベーションを常に高い状態で維持し続けるには、その時点における欲求段階を正しく把握し、5種類のインセンティブを適切に組み合わせながら提供していかなければならないのです。

【5種類のインセンティブ】

  1. 物質的インセンティブ … 賞与や手当など、成果に応じてお金やモノを支給
  2. 評価的インセンティブ … 心理的評価(賞賛や表彰)、地位的評価(人事評価での高評価や昇進)
  3. 人的インセンティブ … 上司や先輩との良好な関係性、職場やチームの居心地の良さ
  4. 理念的インセンティブ … 企業理念への共感によるモチベーションアップ
  5. 自己実現的インセンティブ … 仕事を通じた自己実現や個人目標の達成

インセンティブ制度の導入と活用に成功している企業事例5選

インセンティブ制度は既存社員のモチベーション向上だけではなく、新たな人材の確保にも効果的な施策です。社員たちのやる気を最大限に引き出し、社外の優秀な人材たちに「あの企業で働いてみたい」と思わせるインセンティブ制度を構築することができれば、企業の成長スピードは更に加速します。

ここでは、インセンティブ制度の導入や活用に成功した5つの企業事例を紹介します。

株式会社メルカリ

部署や拠点を超えたメンバー同士の交流に力を入れ、「シャッフルランチ」や「TGIM」、「Global Donuts」など数多くのコミュニケーション活性化施策を実施している株式会社メルカリ。そんな株式会社メルカリでは、2017年から感謝や賞賛の言葉とともにボーナスをリアルタイムで送り合うことができるピアボーナス制度「メルチップ」を実施しています。

「メルチップ」で使用している「Unipos」というツール上では、1日平均300件、多い日には1000件近くの投稿が行き交っています。また、「Unipos」には他人の投稿内容に共感することができる拍手機能がついているため、自分から直接想いを伝えることが苦手な方でも拍手という形で感謝の気持ちやポイントを送ることができます。

【「メルチップ」概要】

【参考】メルカリメンバーが会社の出来事に”我が事”感を持つ理由/Unipos BLOG
【参考】贈りあえるピアボーナス(成果給)制度『mertip(メルチップ)』を導入しました。/mercan (メルカン)
【参考】ほぼ全員がもらってる!?オリジナルな進化を遂げるメルチップの活用術|まちコラ#15/ mercan (メルカン)

株式会社オリエンタルランド

東京ディズニーランドや東京ディズニーシーなど、日本でも有数の大型テーマパークを運営している株式会社オリエンタルランド。株式会社オリエンタルランドでは、キャストの優れたパフォーマンスや長年の貢献に応えるため、「スピリット・オブ・東京ディズニーリゾート」や「ファイブスタープログラム」など様々な表彰制度を設けています。

その中でも特に付与条件が明確で分かりやすいインセンティブが「長時間勤務表彰/サービス・アワードプログラム」。努力することで誰もが達成可能な条件を設定しているためモチベーションを高い状態で維持しやすく、新卒入社者の3年後定着率が常に9割を超え続けるなど、早期離職の防止にも寄与しています。

【「長時間勤務表彰/サービス・アワードプログラム」概要】

【参考】アワード/東京ディズニーリゾート キャスティングセンター
【参考】OLCグループ CSR REPORT 2018/オリエンタルランド

株式会社デンソー

働き方改革の先進企業である株式会社デンソーでは、2017年から「Start-Up応援金」というインセンティブ制度を実施しています。「Start-Up応援金」は健康増進や学びに関する取り組みを社員が自発的に実施することで付与されるインセンティブです。

株式会社デンソーは、働き方改革によって作り出した時間を個人成長や新たな価値創造に活用することで、更なる生産性向上へと繋げる「正の循環」を生み出そうとしているのです。

【「Start-Up応援金」概要】

【参考】デンソーの働き方改革と長期方針実現に向けて
【参考】働き方改革の先へ。学びによる価値創造でパラダイムシフトを乗り越える【デンソーの事例】/GLOBIS 知見録
【参考】Start-up 応援金

株式会社オルトプラス

ソフトウェアの開発や運営を行う株式会社オルトプラスでは、自社開発の「コミュニティオ」というプラットフォームを使用して社内仮想通貨「JOY」を発行し、社内の活性化や職場環境の改善に役立てています。

従業員間で報酬を送り合うピアボーナスは優れたサポーターや隠れた貢献を正しく評価するのに効果的ですが、社内仮想通貨ではピアボーナスの導入効果に加え、企業からの戦略的なインセンティブ付与が可能。付与する条件や付与される量を企業側で細かく設定可能なため、インセンティブを社内で発生したさまざまな課題や問題をピンポイントで解決させるために活用することができます。

【「JOY」の概要と実際に行われた施策例】

【参考】バックオフィスから企業文化は作れる!社内仮想通貨JOYをコーポレートブランディングに活用してみた!/株式会社オルトプラス’s Blog
【参考】社内仮想通貨“JOY”実証実験スタート!ブロックチェーン技術を用いた多機能通貨プラットフォームの実証実験を開始〜社内通貨を通した社内活性化とモチベーションの最大化を狙う〜/altplus

GameWith

ゲーム攻略情報サイト「GameWith」やYouTubeゲーム実況チャンネル「GameWith TV」など、さまざまなメディアを通じて最新のゲーム情報を発信しているGameWith。ゲームの紹介や攻略を行う記事を作成する上で、ゲームの長時間プレイは欠かせません。

そのためGameWithでは、プライベートな時間を割いてゲームのやりこみを行っているメンバーの努力に報いるため、業務時間外のゲームプレイ時間に応じた手当を支給する「ゲームインセンティブ」を実施しています。

【「ゲームインセンティブ」概要】

【参考】「好き」を仕事にする社員に寄り添うユニークなインセンティブ/週刊アスキー
【参考】ゲームするだけで2万円支給!?夢のような福利厚生をもつ企業7選/東京上野のWeb制作会社LIG

まとめ