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連載:第4回 経営・SaaSイベントレポート2021

「心理的安全」だけでは変わらない。組織力強化のカギとなるもの

BizHint 編集部 2021年8月11日(水)掲載
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「心理的安全性」が組織づくりで重視されるようになりましたが、それだけでは組織パフォーマンスは発揮されず、かえってモラルの低下を招くリスクすらあることをご存知でしたか? 本当に強い組織になるためには、心理的安全を成果につなげる「ある要素」が必要なのです。企業の再生や変革など、人や組織、事業に関わるコンサルティングを行っている株式会社Consulente HYAKUNEN CEOの前山 匡右さん、同社リサーチ・フェローで武蔵野大学経営学部経営学科准教授の宍戸 拓人さんが、学術研究やデータ解析事例に基づき、心理的安全を成果・組織パフォーマンスにつなげる方法や、組織パフォーマンスを上げるリーダーシップの特徴について解説します。モデレーターは、同社取締役、上野 佐保さんです。

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前山 匡右さん
株式会社Consulente HYAKUNEN/株式会社Maxwell’s HOIKORO CEO

電機メーカー、シンクタンクを経て創業。様々な分野の知見とコンサルタント、経営者として培った実践知を統合し、大企業の全社変革、新規事業創造、経営トップの育成など、難度の高い分野のコンサルティングを数多く実施。HRテック分野のスタートアップ株式会社Maxwell’s HOIKOROのCEOを務める。

宍戸 拓人さん
武蔵野大学経営学部経営学科准教授/株式会社Consulente HYAKUNEN リサーチ・フェロー 博士(商学)

組織の中で起こるコンフリクトの研究を専門分野とし、心理学的知見をもとに、組織のパフォーマンス向上に向けた研究を行う。

モデレーター 上野 佐保さん
株式会社Consulente HYAKUNEN 取締役

医療法人向け経営コンサルティング(経営戦略、財務、組織人事)と、幅広い業界における人事制度構築、大規模合併人事、組織開発など組織・人事分野におけるコンサルティングに従事(約200社、内医療法人30法人以上)。シンクタンクを経て現職。武蔵野大学しあわせ研究所客員研究員、診療情報管理士

心理的安全が不祥事へのきっかけに…⁉

上野佐保(以下、上野): 「心理的安全」とは、対人関係に関わるリスクを安心してとれるという信念が、チーム内で共有されている状態を指します。

心理的安全を構成する要素の一例をご紹介します。

  • 仕事でミスしても責められない
  • 問題に気付いたらオープンに指摘することができる
  • 周りと違っていても仲間として受け入れられる
  • 困った時に助けを求められる
  • 努力が無下にされない
  • ユニークなスキルや才能に価値が置かれる

これだけ見れば心理的安全はいいことばかりのように見えますが、本当に組織が良くなっていくのかというと、心理的安全だけでは限界や弊害があります。

宍戸拓人(以下、宍戸): 複数の論文を基にしたメタ分析の結果、上司との関係性や職務特性、同僚との関係により心理的安全が高まり、エンゲージメントやパフォーマンス、学習行動、コミットメント、職務満足などが向上すると証明されています。その一方で、 心理的安全は会議などで沈黙を破る効果はあっても、イノベーティブで価値ある発言を促す効果はそこまで持っていない ことも分かりました。

前山匡右(以下、前山):やさしいだけじゃ価値のある議論は生まれない ということですよね。心理的安全があれば仲が良く何でも言える環境ができるけど、それが価値のある議論を生むわけではない。ただの馴れ合いに留まってしまうリスクがあるんです。

宍戸:「心理的安全が高いと、非倫理的な意思決定をしてしまう」 という驚きのデータもあります。成果志向や結果志向が強すぎるチームで心理的安全が高まると「成果のために倫理や道徳を軽視する意見」を述べることに抵抗がなくなり、結果として非倫理的な意思決定が行われやすくなるんです。

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