連載:第19回 コロナ危機と闘う
気鋭の経営学者とカリスマ中小企業診断士が緊急提言! 4つのお悩みに答えます!
コロナ禍の今、中小企業ではこれまでになく新規事業を立ち上げようとする動きが活発になっている。しかし、資金も人材も限られた中で中小企業がゼロからイチを生み出すのは簡単なことではない。アイデアは出ても、それを実際に事業化できる企業は少ないのが現状だ。新規事業を生み出せる中小企業は何が違うのか? 中小企業をこれまで1000社近く取材してきた専修大学の三宅秀道准教授と、中小企業の創業、経営改善等の支援を数多く手がけてきたカリスマ中小企業診断士の黒澤元国さんに、新規事業を生み出せる企業についての4つの疑問をぶつけてみた。
経営学者。専修大学経営学部准教授。早稲田大学商学研究科博士課程単位取得退学。東京大学ものづくり経営研究センター研究員などを経て現職。著書に『新しい市場のつくりかた』(2012年/東洋経済新報社・刊)がある
埼玉県商工会議所連合会広域指導員。中小企業診断士。大学卒業後、大手流通会社等の勤務を経て、秩父商工会議所に入所。2021年4月より現職。企業の経営革新や再生、地域資源活用、まちづくり等の支援にかかわる。
Q1 新規事業をアイデアから形にするには、どういうプロセスで進めればいい?
三宅: コロナ禍で困っている企業も多いと思いますが、困ってから「どうしよう」ではやはり遅いんです。普段から当たり前のように既存事業が不振になったらどうするかを考えていないと。メディアの記事などで「窮余の一策が当たった」という話が出てくることがありますが、よく聞いてみると普段からの素地がある事例が多い。
元は乳児用のオムツカバーなどを作っていたフットマークは水泳帽を着想するんですが、実は経営者が以前からボランティアでYMCAに出入りしていて、その頃はまだ少なかったスイミングプールのことを知っていたんです。それで、学校でプール授業が本格化したら子どもたちをどう識別するんだろうという問いに辿りついた(図❶)。
気持ちの余裕がなくなってからでは、貧すれば鈍す、でアイデアも出なくなる。普段から考えておくべきです。
黒澤: 急にやろうと思っても、できるものではないですね。何かの積み重ねが結果となって表れるのが新商品開発。これはというヒントがつかめたときに、どう動けるのかも重要です。
ひとつ好事例があります。居酒屋と猪肉の串焼きの販売店を経営している会社がありました。肉質が固く歯ごたえがある猪肉を独自の低温調理で柔らかくして炭火で焼いたものが観光客に大人気でした。ところが、コロナで観光客が激減。余った猪肉の処分に悩んでいたところ、偶然、床に落ちた肉を飼い犬が美味しそうに食べたのだそうです。ここから、ドッグフードにできないかを考え始めました。(図❷)。
注目したいのは、ここからの行動です。すぐに獣医に相談。猪肉をドッグフードにしていいのかを確認しました。また、栄養士に成分分析を依頼。試作品を作って、愛犬家仲間に試してもらって商品化の可否を検討。さらには弁理士に権利関係の相談を持ちかけました。どうしたら商品化できるのか、道筋を立てながら課題を解決していった。単なるアイデアで終わらせず、具体的なアクションを取っていく。中小企業は、なかなかここまでの行動ができないことが多いんです。
三宅: 相談をされた獣医や栄養士、愛犬家仲間は地元のネットワークからですか。
黒澤: そうです。ただし、許認可については、ネットで調べて弁理士に相談するのがよいと判断し、外部の方にお願いしています。
三宅: 地域コミュニティをうまく使う、というのはいいですね。特に大きくない地域の場合は、異業種の人たちの集まりになる。そうすると、違う切り口でいろいろ教えてもらえる。同業種同士の交流では、他の業界の知見は得られないですから。
黒澤: それは言えますね。異業種間の交流により、自社の強みを改めて知ることで新商品開発のヒントを得られます。それが無い場合は商工会議所に相談するとよいでしょう。ところで、最近は商品開発に使える補助金が増えていますが、補助金があるからと言って自社と全く関係のない領域で勝負するのはお勧めできません。
三宅: バスケットボールのピボットですよね。両方止まってもいけないし、両方動いてもいけない。軸足はそのままに、片方だけ動かす。そのときのヒントには、社会の大きな動きもあると思います。
携帯電話が一般的になり始めたころ、靴紐のメーカーが、携帯電話の革製ストラップを売り出して成功した事例があります。このとき「これもIT革命だ」と言われて、情報技術とは関係ないのですが、たしかに社会変化としてはIT革命に寄せているわけです。不易と流行ですね。
Q2 マーケティング担当者もいない中で、新商品のアイデアをどう発想する?
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コロナ危機と闘う
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