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労務

2017年3月23日(木)更新

IPOを目指すスタートアップの「労務」課題 【フェーズ別の解決方法を社労士が解説】

BizHint HR 編集部

スタートアップが上場を目指すならば、「労務」もしっかりとした体制を作らなければなりません。とはいえ、起業家にとっては、将来どんな問題が待ち受けているか未知の部分も多いはず。スタートアップの支援を数多く手がける社労士の有馬美帆さんに、フェーズ別の「労務課題」や、その解決方法を聞きました。

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    【創業期】 トラブルが表面化しづらい時期こそ、信頼できる社労士を見つけよう

    各種保険や給与計算は9割の企業が間違えている

    社会保険や給与計算など、労務まわりの業務は創業期の企業でも必ず求められるものです。

    創業期は専任の人事担当者がおらず、経営陣が労務を担当することも多いのですが、経営陣はとにかく忙しい。その結果、労務の業務がおざなりになっているケースも非常に多く見受けられます。

    労務の知識を持っている経営者は稀です。私は10年ほど社労士業務を行っていますが、その経験上、9割の企業では給与計算に何らかのミスを抱えています。

    社会保険や年金の支払額は毎月の給与額によって上下します。例えば当初の給与から金額を下げたときには、申請を出せば年金の支払額も減額されるのですが、実はそのまま放置されているケースが多い。

    このような事例がスタートアップ企業では山ほどあります。

    知人がメンバーだから、労務トラブルは顕在化しにくい

    ところが、9割の企業が間違いを抱えていても、トラブルが顕在化するのは稀です。

    なぜならスタートアップの創業メンバーはそれぞれ知り合いや友達というケースが多いから。お互いの事情を分かっているのでトラブルになりづらい。

    外部からの採用もこの時期は少ないですし、採用されたメンバーも創業期特有の「会社側の事情」に理解があることが多い。

    全員にとって、ビジネスを軌道に載せるのが最重要課題。そのため給与の多い少ないや労働時間の長さなど、待遇に関するトラブルが顕在化するケースは少ないのです。

    雇用契約や各種保険、給与計算など多岐にわたる手続きは社労士に依頼可能

    とはいえ、労務に問題を抱えたまま会社を経営するのはご法度です。

    トラブル防止の観点からも、経営陣の生産性という観点でも、雇用契約や各種保険、給与計算などの業務は社労士に依頼をし、そのほかの業務に専念するのをお勧めします。

    費用面を考えても、例えば社員数10人以下ならば月5万円程度で社労士に給与計算を依頼できます。

    これなら労務担当の社員を雇うよりも、リーズナブルなのではないでしょうか?

    労務業務は社労士に依頼したほうが、その後を考えても得

    給与の計算は簡単そうに見えて、意外と複雑です。所得税法や労働基準法、雇用保険法、健康保険法、厚生年金保険法……など様々な法律が絡みます。

    しかも、これらの法律は頻繁に改正されるので、その度に情報をアップデートしなければなりません。

    経営陣がそれらの業務を兼務するのではなく、信頼できる社労士を見つけて依頼するのが、あとあとを考えてもお得です。

    なぜなら、その後の成長フェーズにおいても、就業規則の制定や、トラブル対応が待っており、社労士の存在は必須になるからです。

    トラブルが顕在化しづらいフェーズだからこそ先手を打って、今後の成長にも対応できる社労士を見つけておくのが重要です。

    【急成長フェーズ】急拡大による「30人の壁」を越えるための方法論

    30人を超えると何かしらの労務トラブルが生じる

    「潰れるかどうか?」という創業期を乗り越えると、スタートアップは「急成長・拡大フェーズ」に入ります。

    この時期には安定した売上が立ちはじめ、また大規模な資金調達にも成功するなどして、一気に採用に力を入れ始めるスタートアップも多いでしょう。

    しかし組織には良く言われる「30人の壁」が存在します。これは労務も例外ではありません。

    社員数が30人を超えると、これまで顕在化しなかった労務トラブルが、ちらほらと散見されるようになるのです。

    背景には創業メンバー以外が入ることによる人員構成の変化

    「急成長・拡大フェーズ」は、積極的な採用活動によって組織の人員構成が大きく変化する時期です。

    成長のためには野心を持ってスタートアップに入ってくる若手人材や、大企業出身のベテラン社員の存在も不可欠で、結果的にこれまでいなかったタイプの従業員が増えることになります。

    一方で、労務面の体制については創業期のまま、整備が間に合わずに組織拡大するケースも多く、こうした場合は労務トラブルが顕在化しやすいと言えるでしょう。

    背景にあるのは、メンバー間での「働き方」についての認識の違いです。

    創業メンバーは「成長のためには長時間労働もやむ無し」という考えの人が多いのに対し、後から入ったメンバーの中には「ワークライフバランスも重視」という人も多く、考え方にギャップが生じやすいのです。

    また、創業期からのメンバーであっても、年齢を重ねたり、家族や本人の出産によって考え方に変化が生じることもあります。

    優秀な人材を組織に引きつけ、働き続けてもらうためには、組織の側もフェーズに合わせ、柔軟な働き方を受け入れていく必要があるのです。


    一方で、この頃までには、創業期から共に事業を創りあげてきたメンバーの中から、最初の退職者も出ていることでしょう。

    創業期には深く考える必要の無かった「退職手続き」の必要性が出てきたり、退職のタイミングで抱えていた労務トラブルが顕在化することもあり得ます。

    組織メンバーの約5%が何らかの問題を抱えている

    30人前後の組織で労務トラブルが顕在化するのは、単純に確率論的な側面もあります。

    「2対6対2」の“パレートの法則”ではありませんが、個人的な感覚では「全社員の内、約5%が何らかの問題を抱えている」と思っています。

    30人の5%は1.5人。つまり、30人規模を超えると、どのスタートアップも必ず一度は労務トラブルを経験すると考えられるのです。


    ちなみに、労務トラブルで代表的なのは、次の4つです。

    • うつ病の社員が出てくる
    • トラブル社員が出てくる
    • パワハラ問題が出てくる
    • 創業メンバーから退職者が出てくる

    実際に発生する労務トラブルのパターンは、会社によってケースバイケースです。

    だからこそ、場当たり的に対処をするのではなく、ひとつひとつ真摯に対応しなければなりません。

    仮に過労死自殺が発生し、裁判になった場合、1億円近い賠償金を請求されるケースも増えてきました。

    労務トラブルは対応を一歩間違えると、会社にとっても社員にとっても、大きなな損害を与えます。トラブルに対処するときは専門家である社労士に相談した方がよいでしょう。

    テンプレではない就業規則を作り、対応をしていこう

    30人前後の組織では、様々な要因によって労務トラブルが顕在化しやすいことをご説明しました。

    労務トラブルを予防し、起きた場合にも適切に対処するためには「就業規則」の存在が不可欠です。

    就業規則は、いわば「社員と会社が守るべきルール」です。きちんとした就業規則の有無で労務トラブル解決の難易度は大きく左右されます。


    健康問題や家族の介護など、様々な理由によって考えられる「休職」のケースで見てみましょう。

    何らかの理由によって「休職したい」と申し出る社員が出た場合、企業はどの程度の期間の休職を認めるべきでしょうか?

    就業規則によってケース毎の休職期間を決めておけば、将来の見通しが付きやすくなります。

    企業側から見れば、その後の採用計画や仕事の割り振りがしやすくなりますし、従業員から見ても休職できることと、その期間がクリアになっていることで安心して働くことができるのです。 (ちなみにスタートアップで設定されている休職期間は「3か月〜半年ほど」が多い様です)

    スタートアップの中には、厚生労働省が出している「就業規則のテンプレ」を使用しているところも非常に多いのですが、これはお勧めしません。

    就業規則はいざというときに企業を守ってくれる「盾」のようなものですから、自社に合ったものを制定すべきなのです。

    またこの際、給与規則や、出張規則、出産・育児・介護による離職など働き方に関する規則も盛り込みましょう。社労士と話し合うことで柔軟に就業規則が作成できます。

    社労士がきちんとアドバイスして、それぞれの企業の実情に合った就業規則が整備した場合、約100条くらいになることが多いと思います。

    既に就業規則を作成している場合は、自社で発生しうるトラブルや課題をどの程度カバー出来ているのか、社労士と一緒にチェックしてみてはどうでしょうか?

    【IPO準備期間】上場するには労務トラブル解決と体制強化が必須

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